人の生と死が交錯する病院。だからこそ、時に通常ではありえない体験をするナースがいます。ナースに起きた奇妙な出来事。今回は、内科病棟編をお送りします。
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私は「ついているナース」と言われています。そう、私が夜勤に入ると急変やステルベンが多いんです。だからペアになる看護師には、いつも嫌な顔をされていました。
その日は、珍しく静かな夜でした。私がこの病院に来てから、こんなに何もない夜勤は初めてだったかもしれません。私は巡視に回っていました。本当に静かで、規則正しいベッドサイドモニターの音が響くほか、物音もしませんでした。
私が勤務している病棟はへの字に折れ曲がったいる造りで、ナースステーションはちょうど真ん中にあります。それは、廊下の折れ曲がってすぐ横にある部屋で起こりました。
そこは個室部屋で、その日の夕方に空きベッドになったばかり。珍しく空きのままになっていました。
誰もいないはずの個室ですが、中で「コトン」と音がしたのです。
「おかしいな」と思い、確認にドアを開けるとやはり誰もいません。「気のせいかな」と部屋を出ようとして、ふと何かが気になり振り向きました。
部屋を見回すと病室の窓枠のところに何かが置いてありました。近づいてみると、それは水仙の花でした。病室を空ける時は必ず忘れ物を確認します。それに途中から折れているにもかかわらず、まだ花はしおれていませんでした。
私は不思議に思い、その水仙を手に取りました。その瞬間、首筋にヒヤリとした風を感じて、一気に緊張状態に陥ったのです。さらに、気持ちは走り出してこの場を離れたいのに、身体がまったく動きませんでした。心臓がせりあがり、冷や汗が一気に吹き出ました。
そして、背後に誰かの気配を感じたのです。
動けない私は声も出ず、身体の中でめいいっぱい叫びました。
すると近づきつづあった何かは、ぴたっと動きを止めました。声に出ない声を感じ取られたことで、私は余計に恐怖を感じました。
少ししてから、その何かがゆらっと動く気配があり、か細い高い女性の声でこう言いました。
「あなたに看取ってもらってよかった、ありがとう」
後ろ向きでしたが何かの気配が消え、同時に私の身体を包んでいた緊張が解けるのがわかりました。
気づくと、手にしていた水仙を私は気づかぬうちに握りしめており、茎がだらんと垂れていました。
私はいそいでナースステーションに戻り、グラスに水を入れて、水仙をさしました。
今度は後ろから「どうしたの?」という今日のペアの同僚の現実的な声がして、私はホッとしたのと同時に、腰くだけになり床に座り込んでしまいました。
同僚は震える私に毛布をかけてくれ、落ち着くまで背中をさすってくれました。
私はぼんやりと机の上に置いたグラスに入った水仙を見上げました。
「ああ、そうだ」と私はやっと思い出しました。私が夜勤の時、看取った患者さんの中に、お花がとても好きな50代の女性がいて、「今の時期はね、庭の水仙がとても綺麗なの」と話してくれたことを。
この花はお礼だったんだ!?__そう思うと同時に、さっき背後にいたあの女性にひどい態度をとってしまったことが悔やまれ、そしてすぐに、また違った恐怖が襲ってきました。
水仙はナースステーションの端っこに飾られ、1週間後にしおれて、誰かに捨てられてしまいました。
一生懸命心をこめて看護をしていれば、病院で出会う“普通ではない出来事”は怖くはないのかもしれません。
あれ以来、私は「ついてるナース」ではなくなったのですが、患者様を看取る機会には、とにかくその人を尊敬し、その人を敬って、誠心誠意ケアをさせていただこと思っています。
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最後の看取りをしてくれた彼女に、亡くなった患者さんが感謝の気持ちを届けに来たのでしょうか!?
水仙を枯らすまいと走った彼女は無我夢中だったようですが、枯らさなくてよかったです。水仙を捨てた誰かの身に、何も起こっていないことを願います。
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