看護師マガジン
2019.11.11
今年もインフルエンザが流行し始めています。看護師として働いていると、予防接種はいつ受ければいいの?感染したらいつから学校や会社に行っていいの?などと質問されることもあるのではないでしょうか。
そんな時に困らないためにインフルエンザについてまとめてみました。改めてインフルエンザについて考えてみましょう!
インフルエンザは、「インフルエンザウイルス」が引き起こす感染症です。
風邪と症状が似ていますが、原因となるウイルスが異なります。気管支炎や肺炎などを併発し、重症化することがあるのもインフルエンザの特徴です。
インフルエンザウイルスはA型、B型、C型に分類されます。その中で、毎年流行の原因となる季節性インフルエンザはA型とB型です。
【A型】
144種類もの型があるが、ヒトの間で流行するのは香港型とソ連型の2種類とされている。ウイルスが変異しやすく、毎年のように小さな変異をしている。
【B型】
山形型とビクトリア型の2種類がある。A型ほどは変異しない。
【C型】
A型やB型に比べ、より変異しにくい。
【A型】
高熱、頭痛、関節痛などインフルエンザの症状が著しく現れるのが特徴。
【B型】
発熱、頭痛、関節痛などA型と同様の症状が現れるが、高熱ではなく37度台の発熱や下痢・腹痛がみられることもある。
【C型】
鼻水程度の軽い症状。一度感染すると抗体ができ、生涯持続すると考えられている。
新型インフルエンザは、季節性インフルエンザとは抗原性が大きく異なるインフルエンザとされており、ほとんどの人が免疫を獲得していないことから急速に蔓延します。
いつどこで発生するか予測困難であり、ひとたび発生すれば生命や健康にまで影響を及ぼす可能性があります。2009年に大流行した新型インフルエンザは、世界中で猛威をふるいました。
インフルエンザの感染経路には、飛沫感染と接触感染の2種類があります。
【飛沫感染】
咳やくしゃみで飛び散ったしぶき(飛沫)を吸い込んでしまうことにより感染。
【接触感染】
皮膚や粘膜の直接的な接触、ドアノブやタオルなどを介しての間接的な接触により、病原体が付着することで感染。
インフルエンザの潜伏期間は1~4日で、個人差がありますが平均すると約2日です。また、インフルエンザの感染力が強いのは、発症1日前から発症後3日目といわれています。
つまり、まだ症状の現れていない潜伏期間の時点で感染する可能性があるということです。これがインフルエンザが流行する理由のひとつであると考えられます。
インフルエンザの検査は、発症直後では正しく陽性反応が出ないことがあります。感染してからあまり時間が経っていない段階では、ウイルスが十分に増殖していないためです。
検査のタイミングとしては、検査キットの種類にもよりますが、早くても発症から6時間以上とされています。できれば12時間以上経過しているといいでしょう。
インフルエンザの主な治療法は、抗インフルエンザ薬の服用です。インフルエンザ発症から48時間以内に服用すると、ウイルスの増殖をおさえることができます。
また、対症療法として解熱鎮痛剤や鎮咳薬、去痰薬などが処方されることもあります。
現在、抗インフルエンザ薬には以下の5種類があります。
・リレンザ(吸入)
・イナビル(吸入)
・タミフル(経口)
・ゾフルーザ(経口)
・ラピアクタ(点滴)
いずれも治療効果に差はないとされています。
入院を要する重症者や服薬が困難な場合には点滴、小児や高齢でうまく吸入することができない場合には経口など、年齢や状況に応じて確実に投与できる薬剤が選択されています。
・十分に休息をとる
・水分、栄養分を補給する
・他者との不必要な接触を避ける
・手洗い、うがいの励行
・手指消毒(アルコールを含む消毒液)
・正しいマスクの着用(咳エチケット)
・適度な湿度(50~60%)を保つ
これらの方法によって感染経路を断つことで、感染拡大の防止につながります。
学校保健安全法では、インフルエンザは出席停止となっており、以下の条件を両方満たしていなければ登校することができません。
・発症後5日が経過していること
・解熱後2日(幼児は3日)が経過していること
発症日とは、医師の診断日に関わらず、発熱した日をいいます。発症日の翌日から1日目とカウントするため注意が必要です。
成人の場合、インフルエンザに関して労働安全衛生法には規定されておらず、法的な規制は特にありません。会社によっては制限がある可能性もあるので、就業規則を確認するようにしましょう。
季節性インフルエンザは例年12月頃から流行し始めることが多く、10~11月には予防接種をしている方が多いと思います。毎年なにげなく打っているかもしれない「インフルエンザワクチン」についてみていきましょう。
現在接種されているインフルエンザワクチンは4価といい、4種類の病原体が入っています。A型2種類とB型2種類が入っており、C型は入っていません。
インフルエンザワクチンは、国立感染症研究所の調査データとWHO(世界保健機関)の推奨をもとに、ワクチンに含むウイルスを選定し作られています。
インフルエンザワクチンは、抗体を獲得するまでに約2週間かかります。効果は5ヶ月ほど持続するとされており、流行が始まる10~11月頃までに接種するのがいいでしょう。
・生後6ヶ月~12歳:2回接種(1回目と2回目は2~4週間あける)
・13歳以上:通常1回接種
12歳以下は免疫がつきにくいため、2回接種が一般的です。13歳以上は、医師が必要と認める場合を除き、1回で効果が得られるとされています。
インフルエンザワクチンは、一般的に妊娠中のすべての時期において安全であり、重症化を防ぐためにも接種が推奨されています。
日本では病原性をなくした不活化ワクチンが使用されており、胎児に悪影響を及ぼしたという例は報告されていません。同様の理由で、授乳中であってもワクチン接種は支障がないとされています。
インフルエンザの基本について振り返ってきましたが、ここでは看護師としてインフルエンザの患者さんと接する場合について考えてみましょう。
インフルエンザが疑わしい患者さんがいた場合、医師に報告しすみやかにインフルエンザ迅速検査を行います。インフルエンザと確定したら、抗インフルエンザ薬を投与し、個室隔離します。
大部屋に入院していた場合は、同室者に予防投与を行うこともあります。院内発生時の対応策を確認しておくといいでしょう。
【発生時の対応のポイント】
・発生状況の確認、把握
・感染拡大防止
・感染源の正しい処理
次のような基礎疾患を持つ方は、インフルエンザにかかると重症化しやすいといわれています。
・慢性呼吸器疾患
・慢性心疾患
・代謝性疾患
・腎機能障害
・免疫不全
発熱などインフルエンザ様の症状だけでなく、呼吸状態や意識レベル、嘔吐下痢などの症状がないか観察しましょう。重症化のサインを見逃さないことが重要です。
小児では、まれにインフルエンザから急性脳症を発症することがあります。
インフルエンザ脳症が疑われる症状としては、意識障害やけいれんが挙げられます。また、意味不明な言葉を発したり、急に怒り出すなどの異常な言動がみられることもあるので注意が必要です。
妊娠中は重症化しやすいため、インフルエンザが疑われた場合はすぐに受診するようにしましょう。ただし、ほかの妊婦さんにうつしてしまう可能性があるため産婦人科への受診は避け、一般病院の内科を受診したほうがいいでしょう。
また、抗インフルエンザ薬を内服しても胎児に重大な影響を及ぼす可能性は少ないとされています。
最後に、覚えておくと役に立つかもしれないインフルエンザの豆知識をご紹介します。
インフルエンザウイルスは、気道の粘膜に付着してから約20分で細胞内に取り込まれてしまいます。そして24時間で100万個にまで増殖します。
インフルエンザウイルスは、くしゃみ1回で約200万個、咳1回で約10万個も飛散するといわれています。
ワクチンに入れるインフルエンザウイルスについては、WHOが主となり国際会議が行われています。調査結果をもとに、南半球用と北半球用の推奨株が毎年2月と9月に決定されています。
インフルエンザへの理解は深まりましたか?毎年流行するインフルエンザですが、改めてまとめてみると意外と知らないこともあったかもしれません。ぜひ看護に役立ててくださいね。
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