「認知症ケア関連の専門看護師を目指したいけれど、該当する資格はある?」という看護師の方に向けて、認知症看護に特化した資格をご紹介します。資格を取得し、専門的な知識や技術を持っていることが証明できれば、今後のキャリアアップにつながることも。また、このコラムでは専門看護師と認定看護師の違いについても解説します。自分の目指す看護師像がどちらの資格とマッチしているのかを判断するのに役立ててみてください。
現在、専門看護師の専門看護分野のなかに認知症看護という分野は存在しておらず、「認知症専門看護師」という資格はありません。専門看護師として認知症看護に関わりたい場合には、「老人看護専門看護師」の資格を目指すのが良いでしょう。そのほか認知症看護に特化した資格としては、認知症ケア専門士や認知症看護認定看護師が該当します。
専門看護師という立場で認知症の看護に関わりたい人は、老人看護専門看護師資格を取るのが良いでしょう。専門看護師とは、日本看護協会から「高い水準の看護を行うための技術と知識を持ち、卓越した看護を提供できる」と認められた看護師のこと。専門看護師になる際には、「がん看護」「小児看護」「感染症看護」「在宅看護」など、全13種類の専門看護分野のなかから自分の専門を選択します。
しかし、この13種類のなかに認知症看護という分野は設定されていません。各分野のうち、認知症看護に関わるチャンスが多いのは「老人看護」です。老人看護分野の特徴は、「嚥下障害や認知症など複雑な健康問題を抱える高齢者に向けて、生活の質向上を目的とした高水準の看護を提供する」というもの。老人看護と認知症看護は関係が深いため、老人看護専門看護師として働くことで自然と認知症ケアに関わる機会が増えるでしょう。
老人看護専門看護師のほかにも、認知症ケア専門士や認知症看護認定看護師などの資格を取ることで、認知症ケアについてより深い知識や高いスキルを身に付けられます。それぞれどのような資格なのかを確認しておきましょう。
認知症ケア専門士とは、認知症ケアに対する高度な技能と優れた学識のみならず、倫理観を兼ね備えた専門技術士のこと。日本認知症ケア学会が主催する、介護と医療どちらの現場においても役立てられる民間資格です。また、幅広い現場で活用できるだけでなく、取得がしやすいこともこの資格がもつ魅力の一つ。資格保有者の多くは介護業界のスタッフですが、看護師の受験者も一定数存在しており、2019年の時点で8,000人以上の看護師が認知症ケア専門士の資格を保有しています。受験資格として「認知症ケアに関わる施設において、認知症ケアの実務経験が過去10年の間に3年以上あること」という縛りはあるものの、日頃から認知症患者と接することの多い看護師であれば、それほど難しくない条件といえるでしょう。
認知症看護認定看護師とは、各専門分野において、高い水準の看護を実践できる看護師であることを証明する資格です。専門看護師と同様に、日本看護協会から認定を受けることで認定看護師を名乗れるようになります。認知症看護認定看護師は、全部で19ある認定看護分野のうち、認知症ケアに特化した認知症看護のスペシャリスト。先述の認知症ケア専門士と比べて資格取得の難易度は高くなりますが、取得することで看護師としてのスキルアップが期待できます。
専門看護師と認定看護師の違いは、その役割にあります。専門看護師の役割が6つであるのに対し、認定看護師は3つ。認定看護師と比べ、専門看護師のほうが求められる役割が広範囲に渡ります。「認知症ケアに特化した看護師を目指すには、専門看護師と認定看護師どちらになるべき?」と悩んでいる人にまず必要なのは、それぞれの役割を確認すること。両者の役割の違いを理解することで、自分が目指している看護師像に近い資格がどちらなのかを判断できるでしょう。
日本看護協会によると、専門看護師の役割は次の6つとされています。
患者やその家族が抱える病気と、その背後にある不安や葛藤などさまざまな要因を総合的に把握し、必要な看護を実践する。
看護師やそのほかの医療関係者の相談に乗り、「より患者やその家族のためになること」に視点を置いたアドバイスを行うことで問題の解決を図る。
医師や看護師、地域の訪問看護ステーションなど、さまざまな職種や施設と連携し、患者が必要なケアを円滑に受けられるように調整する。
患者やその家族の思いを尊重したケアを行うために、ほかの看護師や医療関係者に働きかけながら倫理的な問題や葛藤の解決を図る。
地域や施設全体における看護の質を向上させるために、看護師に向けて専門知識や技術に基づいた教育を行う。
専門知識や技術の向上に貢献するために、日々の看護における課題を対象とした研究活動を行い、その成果を実践に役立てる。
専門看護師の役割にみられる特徴は、患者の看護だけではなく、その家族や地域と連携したケアや現場の人材育成、課題解決のための研究など多岐にわたる業務に関わるという点です。そのため、専門看護師は看護分野全体のスペシャリストといえるでしょう。
参考元
公益社団法人日本看護協会
専門看護師ってどんな看護師?
認定看護師の役割としては、次の3つが挙げられます。
患者やその家族に対して何が最適なケアであるかを専門知識にもとづいて判断し、実践する。
介護実践を通じ、自らが手本となることで、周りの看護師に対して高水準の看護が行えるように指導する。
看護現場で直面する問題や疑問に悩む看護師の相談に乗り、改善策を導き出すための支援を行う。
認定看護師の役割にみられる特徴は、患者に向けて高度な知識と技術を活かした看護を提供するとともに、実践を通してほかの看護師に対する指導を行うという点。つまり、認定看護師は現場のリーダー的役割を持った存在です。専門看護師が看護全体を見渡す立場であるのに対し、認定看護師は現場での実践に重きを置いたスペシャリストといえます。
参考元
公益社団法人日本看護協会
認定看護師ってどんな看護師?
認知症看護認定看護師とは、認知症に対する正しい理解を深めるための啓発活動や、症状の進行度に応じた適切なケア、認知症患者の家族に対するサポートなどを行う看護師のこと。認知症看護認定看護師は、認知症患者の暮らしやすい環境づくりのために欠かせない存在です。ここでは認知症看護認定看護師の具体的な役割や、その必要性について解説します。
認知症看護認定看護師の役割として挙げられるのは、認知症患者の発症から終末期にいたるまでの病状管理や、療養に適した生活環境を整えるためのケアなどです。具体的には、「認知症患者の人権擁護」「暴力や暴言、徘徊など行動心理症候の予防と緩和」「総合的なアセスメント」「進行度に合わせた看護計画やその実施」といった取り組みを行っています。
認知症患者は脳の働きが悪くなることで、時間の感覚が麻痺したり、人の顔がわからなくなったりします。それを支える家族や周りの人々も大変ですが、一番困っているのは患者本人。認知症看護認定看護師は、認知症患者に対する深い理解のもと、患者本人ができるだけ自分らしく、そして、質の高い生活が営めるような環境づくりに貢献しています。
高齢化に比例して認知症患者数が増加の一途をたどる現代社会では、認知症患者に対してより適切なケアを提供する認知症看護認定看護師の存在が重要になってきました。
厚生労働省は、2025年に認知症患者の数が700万人を突破するという予想値を発表。認知症患者やその家族をどうやってサポートしていくかが、現代の日本社会における政策課題の一つになりつつあります。
大切なのは、認知症患者やその家族が社会的に行き詰まる前に、彼らをサポートする体制を整えること。そのためには、医療スタッフや関連機関が連携を強化し、患者の情報を共有、把握する必要があります。そこで重要になるのが、患者の行動や心理状態を観察しながら、本人が納得して治療を受け入れてもらえるようにアプローチする存在です。その役割を担う認知症認定看護師は、今後の認知症看護において、ますます存在意義が高まるでしょう。
参考元
厚生労働省
「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)の概要」
認知症看護認定看護師になるためには、認定看護師教育機関へ通わなくてはなりません。また、その教育機関に入るための受験資格も必要とされます。今後、認知症看護認定看護師になることを検討中の人は、どのような手順を踏むべきか確認しておきましょう。
認定看護師教育機関で学ぶためには、看護師として5年以上の臨床経験(うち3年以上は認知症看護の実務経験が必要)を積むことが条件となっています。そのため、まずは認知症患者のケアを行う現場において看護師としての経験を積みましょう。
受験資格を得たのち、入学試験に合格した人は認定看護師教育機関で必要なカリキュラムを受講します。教育機関にはA課程認定看護師教育機関とB課程認定看護師教育機関の2つがあり、必要受講期間やカリキュラムの特徴は以下のとおりです。
開講期間:6カ月~1年
受講時間数:600時間以上
カリキュラムの特徴:特定行為研修を組み込んでいない
開講期間:1年以内
受講時間数:800時間程度
カリキュラムの特徴:特定行為研修を組み込んでいる
A課程については、2026年度をもって教育が終了となる予定です。カリキュラムの詳細については日本看護協会のWebサイトに記載があるので、常に最新情報を確認するようにしましょう。
認定看護師教育機関での専門教育課程を修了後、認知症看護認定審査を受験します。試験内容は筆記試験のみ。この試験に合格した者が、晴れて認知症看護認定看護師を名乗れるようになります。
資格取得後は、5年ごとに書類審査による更新が必要です。未申請や更新審査不合格となった場合には、その年の12月末で資格が失効となります。うっかり申請漏れなどをしないように、更新年度はしっかりと把握しておきましょう。
認知症看護認定看護師は主に医療機関で活動していますが、認知症患者が増えるなか、医療現場以外にも活躍の場が広がってきているようです。たとえば、地域の認知症問題を考える集会に講師として参加したり、認知症ケアの勉強会で指導的な役割を担ったり。また、認知症患者の家を直接訪問し、その家族に向けて認知症ケアの指導を行うこともあるようです。認知症看護認定看護師の活躍する場所が広がるとともに、その需要は今後ますます高まると予想されています。
認知症に関わる専門看護師や認定看護師を目指すために、より専門的な業務に携われる職場に転職したいと考えている人は、転職エージェントに相談してみてはいかがでしょうか。
看護のお仕事は、忙しい看護師の皆さんに代わり、ご希望に合った求人を探し、紹介する転職支援サービスです。キャリアアドバイザーが、あなたのキャリアアップにつながる転職を精一杯サポートします。サービスはすべて無料のため、転職エージェントの利用が初めてという方も安心してご利用ください。
記事の制作について
「レバウェル看護 看護師さん向けお役立ち情報」では、
記事の制作・公開にあたってのポリシーを定めています。
詳細は下記よりご確認いただけます。
キャリア
働く場所
選考対策
資格
その他
読みもの
連載