
ここでは、「保健師助産師看護師法(通称:保助看法)」の内容についてわかりやすく解説します。この法律では、はじめに保健師と助産師、看護師の各資格について定義されています。
・資格の定義
〔保健師〕
第二条 この法律で保健師とは、厚生労働省の免許を受けて、保健師の名称で、保健指導に従事する業務をおこなう者のことである。
〔助産師〕
第三条 この法律で助産師とは、厚生労働省の免許を受けて、助産または妊婦、じょく婦、新生児の保健指導を行う業務をする女子のことである。
〔看護師〕
第五条 この法律で看護師とは、厚生労働省の免許を受けて、傷病者もしくは、じょく婦に対する療養上の世話、または診療の補助を行う者のことである。
〔准看護師〕
第六条 この法律で准看護師とは、都道府県知事の免許を受けて、医師、歯科医師又は看護師の指示のもと、傷病者もしくは、じょく婦に対する療養上の世話または、診療の補助を行う者のことである。
・看護師の裁量がおよぶ範囲
保健師助産師看護師法の第五条では、「この法律で看護師とは、厚生労働省の免許を受けて、傷病者もしくはじょく婦に対する療養上の世話または、診療の補助を行う者のことである」とあります。この「療養上の世話」とは、患者の症状を観察すること、環境の整備、食事の提供、清拭、排泄の介助、生活指導など、看護師が主体的に判断して看護対応する看護師本来の業務です。
また、「診療の補助」とは軽微な医療行為の一部について補助するもの。注射や採血、点滴、医療器具の操作など、幅広い医療処置があります。ただし「診療の補助」には、保健師助産師看護師法・第三十七条で以下のように規定されています。
「主治の医師又は歯科医師の指示があった場合を除くほか、診療器械を使用し、医薬品を授与し、医薬品についての指示をし、その他医師又は歯科医師が行うのでなければ衛生上、危害を生ずるおそれのある行為をしてはならない(臨時の応急の手当てを例外的に許容)。」
つまり、「医師の指示」なしに「診療の補助」を行ってはならないことになっているのです。
保健師助産師看護師法は、戦後にたびたび改正されてきました。その経緯についても、ここで抜粋してわかりやすく解説します。
保健師助産師看護師法が制定される前は、産婆規則(助産婦規則)、看護婦規則、保健婦規則とそれぞれ別々の規則でした。各資格の要件や免許、業務内容が規定され、個別の職能団体を組織して、保健師と助産師、看護師の連携はなかったのです。
しかし終戦後、日本をしばらく統治していたGHQ(連合国最高司令部)の行政改革指導によって、「保健婦助産婦看護婦は同じ看護を行う者としてその資質を向上し、もって医療および公衆衛生の普及向上を図る」という目的のもと、1948年(昭和23)保健師と助産師、看護師がひとつになり保健婦助産婦看護婦法が制定されました。この保健婦助産婦看護婦法の制定で、はじめて看護業務が統一され、看護職が世界標準として認められることになったわけです。
それ以降、保健婦助産婦看護婦法が大きく改正されたのは1951年に誕生した「准看護婦」のとき、そして2001年(平成13)の「性別による相違をなくする名称の統一(看護婦→看護師)」(平成13年法律第153号)の2回となっています。
▼参照:日本看護協会
ここでは、医師の業務と看護師の業務の関係性について解説していきましょう。医師法十七条では「医師でなければ、医業をなしてはならない。」と規定されており、医師でない看護師は医療行為を行ってはならないことになります。具体的な法規の内容は、以下の通りです。
「疾病やケガの診断、手術、薬の処方といった医療行為は、高度な医学的知識と技術を有する医師が行うべきであり、医師の指示があったとしても看護師がこれらの医療行為を行ってはならない」
一方で保健師助産師看護師法・第三十七条には、「主治の医師又は歯科医師の指示があった場合を除くほか、診療器械を使用し、医薬品を授与し、医薬品についての指示をし、その他医師又は歯科医師が行うのでなければ衛生上、危害を生ずるおそれのある行為をしてはならない(臨時の応急の手当てを例外的に許容)。」とあります。つまり医師の指示があれば、診療器械の使用や医薬品の授与、その他のさまざまな医療行為を看護師に許容する内容になっているのです。
昭和26年9月15日付け旧厚生省医務局長通知では「看護師の業務の範囲外の行為であり、医師または歯科医師の指示があってもこれを行うことができない」と行政解釈され、かつて看護師は患者に静脈注射が打てませんでした。しかし、保健師助産師看護師法・五条に定める「診療の補助」の範疇に含まれるとの司法判断が出され、平成14年9月30日に厚労省医政局長通知により、以下のような行政解釈へと正式に変更されました。
「医師又は歯科医師の指示の下に保健師、助産師、看護師及び准看護師(以下「看護師等」という。)が行う静脈注射は、保健師助産師看護師法・第五条に規定する診療の補助行為の範疇として取り扱うものとする。」
看護師の技術や知識の向上にともない、その業務範囲も広まってきています。今後も医療機器の進化や看護教育・研修などの充実により、さらなる変化が見込まれるでしょう。
古い裁判事例の「自己が当然になすべき職務行為の一部を自らの『手足におけるのと同一の関係』において担当せしむるもの」(大判昭13・10・14)とする判決内容を見ると、当時は看護師の地位が非常に低かったことがわかります。その一方で、法的な責任を免除するための理論としても機能していました。このように、昔は医師と看護師の関係性について「医師は頭脳で看護師は手足」という図式で解釈されていたようです。
しかし現在では看護師の地位も向上し、専門性が認められるようになりました。それと同時に、昔は医師にのみ課せられていた法的責任が、看護師にも課せられる時代になったということでもあります。
このように看護師個人が法的責任を問われる時代の中で、「医師の指示に従って行った医療処置が、後になって業務の範囲外とされたのでは看護師は安心して業務を遂行することができない。だから、看護師が行いうる業務範囲を明確にして欲しい」という声も上がっています。確かに看護師の業務範囲を明確にすることで責任範囲が限定され、医師が看護師業務以外の指示ができなくなるというメリットもあるでしょう。しかし、幅広い医療内容のすべてを法律で規定することは、事実上無理なことです。そのため、法律をある程度抽象的な表現にして、個別の事例にあてはめて解釈するしかありません。
また、看護師の業務範囲が柔軟に広がってきた背景にも、法律がある程度抽象的な表現を行ってきた点が考えられるでしょう。しかし法律の抽象的な表現を誤って解釈し、看護師が処罰されるようなことがあれば、萎縮医療、萎縮看護を招きかねません。法律の安易な解釈による処罰ではなく、今の医療には自由で風通しの良い環境が求められています。
保健師助産師看護師法は看護師の資格の定義からはじまり、第五条では「この法律で看護師とは、厚生労働省の免許を受けて、傷病者もしくはじょく婦に対する療養上の世話または、診療の補助を行う者のことである。」と定められています。看護師と医師の業務の線引きは、とても曖昧です。幅広い医療分野を細かい法律で規定することには無理があり、ある程度は抽象的な表現しかできないという問題があります。
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