助産師の中でも高度な知識と技術を持つアドバンス助産師。定期的に更新が必要な分、実力が図られる資格ですが、自分のスキルや知識が実践的なものである証明にもなります。しかし、簡単に取れる資格ではないうえ新しい資格のため「どうやって取得するのか分からない…」という助産師もいるでしょう。このコラムでは、アドバンス助産師の目的や新規申請・更新方法について解説するので、興味がある方はチェックしてください。
アドバンス助産師とは、高度な知識や技術を持つことを認められた助産師のことを指します。制度が始まったのは2015年。2016年には就業している助産師の約30%がアドバンス助産師の資格を取得したことが日本看護協会で発表されています。
助産師免許は更新制ではないため、習得後に個人の経験や能力を図る術がありません。そこで、助産師が社会のニーズに応えているのか審査する「CLoCMiP?(助産実践能力習熟段階)レベルⅢ認証制度」に合格することで、実践的な能力が備わっていることを公的に証明できます。
CLoCMiP?(助産実践能力習熟段階)レベルⅢ認証制度の目的は、以下の3つを確認することです。
1.妊婦や褥婦、新生児に対してレベルの高い安全な助産とケアを行うこと。
2.助産師がこの認証制度を活用して継続的に自己啓発を行い、専門的な知識や技術を高めていくなかで、明確な目標設定に繋げられること。
3.助産師の能力を可視化して、誰にでも到達レベルがわかるようにすること。
近年さまざまな周産期医療が登場し、助産師の能力低下が懸念されているため、この制度を通して計画的に能力強化を図る狙いがあります。アドバンス助産師とは、助産ケアの安全性や質を高められるだけでなく、社会的な信用度やイメージを向上させられる資格なのです。日本助産学会の発表によれば、2020年3月時点でアドバンス助産師の資格を持つのは12,739人と、多くの助産師が試験に合格しています。
アドバンス助産師になるには、CLoCMiP?レベルⅢ認証制度に申請したのち、書類審査や試験に合格する必要があります。
新規に申し込める対象者の条件は、CLoCMiP?レベルⅢ認証取得経験がないことと、日本の助産師国家資格を有し、満5年以上の実践経験を積んでいることです。認証は5年ごとの更新制で、審査料としてその都度50,000円必要となります。申請はアドバンス助産師プラットフォームから行えるため、忘れないように期間内に手続きを済ませましょう。
また、審査の過程で書類の追加提出を求められる可能性があるので、申請書類や研修終了証などは合格発表まで必ず保管しておいてください。
参照元
一般社団法人日本助産学会
アドバンス助産師について
公益社団法人日本看護協会
CLoCMiP
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新規でCLoCMiP?レベルⅢ認証制度を受けるには、以下の要件をすべて満たさなければなりません。ここでは2021年の新規要請要件を参考にご紹介するので、アドバンス助産師を目指している方は参考にしてください。
まず、2021年の場合は新規試験締切日(2021年8月20日(金))までに、CLoCMiP?レベルⅢの総合評価が「B」以上に到達している必要があります。総合評価「B」以上を受けるためには、助産師免許を習得してから新規申請の締切日までに、以下の実施例数と条件を満たさなければなりません。
・分娩介助例数100例以上(うち70例以上は経腟分娩)
・新生児の健康診査100例以上
・妊娠期の健康診査200例以上
・産褥期の健康診査200例以上
・プライマリーケース20例以上
・集団指導(小規模指導)の実践と指導が行える
・母親学級、両親学級の実践と指導が行える
・緊急時の対応(BLS、多量出血など)の実践と指導が行える
条件を満たしたら、助産実践能力習熟段階(クリニカルラダー)活用ガイドに基づいて、実施例数承認書に内容を記入します。記入する際は、助産実践能力がある上司(助産師か医師)に実施例数承認者をお願いしましょう。申請者が異動している場合は前の部署の上司に実施例数承認者になってもらうことも可能です。
アドバンス助産師になるには、必須研修とステップアップ研修の受講が必須です。新規申請する際は2016年1月1日から申請締切日までの間に、日本助産評価機構が承認した「研修承認番号」が付与された必須研修をすべて受講しましょう。どちらの研修もオンデマンドで受講できるので、近場で研修が受けられない、タイミングが合わないときには活用してください。受講する必要がある研修は以下の通りです。
・新生児蘇生法(NCPR)Bコース以上
・分娩期の胎児心拍数陣痛図(CTG)に関する研修
・フィジカルアセスメント:妊娠期
・フィジカルアセスメント:脳神経
・フィジカルアセスメント:呼吸/循環
・フィジカルアセスメント:代謝
・フィジカルアセスメント:新生児
・子宮収縮剤の使用と管理
・助産記録
・妊娠から授乳期における栄養
・周産期のメンタルヘルス
・母体感染のリスクと対応
必須研修と同じように、ステップアップ研修も助産師評価機構が承認したものをすべて受講します。2016年1月1日から新規申請の締切日までに、以下の研修を必ず受講しましょう。
・出血の対応に関する研修(常位胎盤早期剥離)
・周産期の倫理に関する研修
・助産師及び後輩教育に関連した研修
また、ステップアップ研修では学術集会に参加する必要があります。2016年1月1日から申請締切日までに、一般演題発表と講演(基調講演や教育講演など)が含まれる学術集会に参加しましょう。
たとえば、日本助産学会や日本母子看護学会、日本周産期メンタルヘルス学会といった学術集会はステップアップ研修の条件を満たしています。ほかにも条件を満たす学術集会はたくさんあるので、興味のあるものや参加する機会があるものに出席しましょう。
各要件を満たしたのであれば、アドバンス助産師の新規申請のために実施例数承認書と施設内承認書の提出を行います。実施例数承認者は助産実践能力がある上司(助産師か医師)、施設内承認者は看護部長や上長、施設長のみが認められるのでお願いしておきましょう。
申請用の書類はアドバンス助産師プラットフォームでダウンロードできるので、必要に応じて印刷してください。
参照元
一般財団法人日本助産評価機構
2021年新規申請
一般財団法人日本助産評価機構
オンデマンド研修
2022年からアドバンス助産師の更新申請要件は新しいものに変わります。既にアドバンス助産師の資格を持っている方もこれから取得する方も、新しい更新申請の要件について押さえておきましょう。
従来の更新要件との大きな変更点は、技術面と知識面を統合し、研修受講などの実績をもとにCLoCMiPレベルⅢに到達することを確認することです。また、2022年から新しい更新申請要件が適応される影響で、2020年と2021年の更新申請区分はひとまとめにされるので対象者の方は注意しましょう。
2022年からのアドバンス助産師更新要件は、要件を満たせば誰でも申請可能です。新規の申請同様、研修や学術集会に参加して更新の申し込みを行いましょう。2022年の更新要件は以下の通りです。
・必須研修(20項目各90分)
・選択研修(研修:70~150時間、助産実践:0~80時間の計150時間)
・学術集会(3回参加)
・総合評価A
アドバンス助産師の更新申請では新規申請時に比べて高い能力を求められます。申請要件を満たせるように、普段から自己研鑽に励みましょう。
アドバンス助産師の更新要件の中には、日本助産評価機構が承認した必須研修20項目を各90分受講することが含まれます。受けるべき研修項目は以下のとおりです。
1.妊産褥婦のフィジカルアセスメント:脳神経
2.妊産褥婦のフィジカルアセスメント:呼吸/循環
3.新生児のフィジカルアセスメント
4.臨床推論
5.臨床薬理(妊娠と薬)
6.臨床病態生理
7.分娩期の胎児心拍数陣痛図(CTG)
8.緊急時の対応
9.母体の感染
10.妊娠期の栄養
11.妊娠と糖尿病
12.授乳支援
13.後輩指導・助産師教育
14.医療安全と助産記録
15.災害時対応
16.助産師と倫理
17.意思決定支援(演習含む)
18.メンタルヘルス
19.WHC指定項目から選択(1)
20.WHC指定項目から選択(2)
WHC指定項目は多様な性の支援、女性に対する暴力予防の支援、ウィメンズヘルスケア提供のための基盤能力、不妊・不育の悩みを持つ女性支援の4つから選択します。
また、必須研修では2021年までの旧要件を2017年9月1日から2022年8月20日に受講していた場合、2022年の更新要件として振り替えることが可能です。既に研修を受けているものがあれば、振り替えできるか確認してみましょう。
選択研修では150時間の受講が必須です。助産実践時間があれば、最大80時間まで選択研修の時間として計上できるのでチェックしましょう。また、選択研修では日本助産評価機構の承認がなくとも、一定の条件をクリアしていれば有効な研修として認められます。有効な選択研修と認められるには、個人以外が主催し、研修内容は助産実践能力に関するもの。そして、研修時間は1項目60分以上で、主な研修対象者が専門職であることが必須です。特に、受講証明書を発行している研修が望ましいでしょう。詳細は日本助産評価機構がまとめているので、有効な研修についてよく知りたい方は一度確認してください。
学術集会には3回参加することが求められます。学術集会の分野は不問、プログラムに講演(教育講演や基調講演など)と一般演題発表が含まれていれば問題ありません。更新申請の締切日までに必ず参加しましょう。
アドバンス助産師の更新申請時はCLoCMiPレベルⅢの総合評価でAを獲得しなければいけません。評価方法については「助産実践能力習熟段階(クリニカルラダー)活用ガイド」に載っているので、必要に応じて参照してください。
2022年から更新申請の要件が新しくなるため、旧要件と混同しないように注意しましょう。旧要件の必須研修を振り替えに使うときは、残りの項目を確認して漏れがないように気を付けてください。選択研修では助産実践時間に応じて研修に必要な時間が変わるので、しっかり計算して更新要件を満たせるように調整しましょう。
参照元
一般財団法人日本助産評価機構
2022年更新申請
助産師の上位資格であるアドバンス助産師の資格を取得することで、助産技術や知識に自信がつくうえに患者や職場からの信頼が厚くなり、モチベーションを維持して働けるというメリットがあります。客観的に助産実践能力を証明できる資格なので、転職に活かすこともできるでしょう。アドバンス助産師は助産師免許や看護師免許と異なり、5年ごとの更新が必要なため自己研鑽の習慣を作るきっかけにもなります。
助産師としてより高みを目指すのであれば、アドバンス助産師の資格を取得してみましょう。
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