「看護師の新人教育」とは、どのような流れや方法なのか知りたい方は多いでしょう。新人看護師に対する教育体制は医療機関ごとに異なりますが、基本的には年間計画に沿って、プリセプターをはじめとする先輩看護師が指導するものです。このコラムでは、看護師の新人教育の基本的な流れやプリセプターの役割、指導をするうえでの注意点などをお伝えします。
看護師の新人教育をするプリセプターとは、「1人の新人看護師に対して、マンツーマンで教育・指導を行う先輩看護師」のこと。プリセプターの主な役目は、新人看護師が一人前の看護師になるまで、看護技術やアセスメント、看護師として自己管理などのお手本を示すものです。また、新人看護師の身近な相談役として、悩みを聞きアドバイスを行うなど、メンタル面でのフォローも担います。このような教育法を、「プリセプター制度」と呼びます。この制度の主な目的は、新人看護師が学校を卒業後、実際の医療現場でギャップや不安を感じないよう、先輩看護師が技術面や精神面でサポートすることです。新人教育の国全体の取り組みとしては、2010年から新人看護師研修を行うことの努力義務化、2011年の厚生労働省による「新人看護職員研修ガイドライン」の作成などが挙げられます。新人看護職員研修ガイドラインの内容は、プリセプターをはじめとする新人教育担当者の定義や望ましい指導法など。このように、看護師の新人教育は重要視されており、新人看護師の育成に注力している医療機関は多くあると考えられます。
プリセプターになるには、特別な資格は必要ありません。しかし、新人教育を担当するという責任な大きな役割のため、一定の能力が求められます。プリセプターの条件は独自の基準を設けている職場が大半ですが、おおよそ3年以上の臨床経験がある看護師が任されることが多いようです。下記に、プリセプターに必要な主な能力を5つ挙げます。
看護師の新人教育において、適切な看護技術や看護知識、看護理念などを分かりやすく伝える能力は重要です。プリセプターとして自身のキャリアを踏まえて、その経験を教育モデルとして示すことが求められます。そのためには、自身が持つ看護経験や知識を客観的に評価することが必要です。
プリセプターとして新人看護師と良好な関係を築くには、コミュニケーション能力が求められます。新人看護師は、慣れない業務や研修期間で緊張や不安を感じやすくなっているため、日常的に積極的にコミュニケーションをとり、困っていることがないか常に気を配ることが大切です。
新人看護師一人ひとり、看護技術や知識を習得するぺースは異なるもの。そのため、各々の習熟度に合わせた指導法を行うことが必要です。新人看護師が抱えている問題や不安点を一緒に考え、改善策提案して実行する力が求められます。
プリセプターには、新人教育の研修プログラムを立案する能力が求められます。研修内容や期間は医療機関ごとに異なりますが、基本的には所属部署の看護理念や目標、新人研修にあてられる時間などあらゆる面を考慮して設定します。そのためには、プリセプターとして広い視野を持ち、部署内の人員構成や看護業務、目指す看護師像などを深く理解しておく必要があります。
プリセプターの重要な役目の1つは、新人看護師がどの程度実践的な看護能力を身につけ、設定した目標に近づいているのかを見極めること。そのためには、定期的に新人看護師の看護能力や看護師としての姿勢、判断力や行動力などを細かく評価する必要があります。
新人教育の流れは医療機関によって異なりますが、ここでは基本的な流れをお伝えします。
新人教育の到達目標を、項目ごとに設定するものです。基本的には所属部署で必要な看護や処置などの技術面と、 業務管理や情報管理といった管理面で設定します。具体的な項目内容は医療機関や部署ごとに異なりますが、各項目の到達の目安をいくつかの段階で表し、いつまでに到達すべきものかも設定するのが基本です。到達の目安は、プリセプターの指導がなくても自立して看護を実践できることが一般的でしょう。
新人教育プログラムの年間計画を立てます。年間計画とは、おおよその時期に分けて、新人看護師の習得すべき看護技術や知識、行動といった到達目標の項目を設定するものです。就業先によって年間計画の内容は異なりますが、基本的に新人看護師が学ぶことは以下のようなことになります。
職場の規則やスタッフの役割、社会人としてのマナーや接遇を学ぶ。病院の構造やシステム、他部門との規則が理解できる。1日の業務の流れが分かる。
プリセプターの指導により、担当患者へのケアや看護記録の入力ができる。タイムスケジュールに沿った看護を行える。
担当患者の全体像をとらえ、必要に応じたケアを実践できる。ケアの優先順位を考え、看護内容を組み立てられる。
自ら担当患者の状況を把握し、反応を見ながら必要なケアを行える。急変時・緊急時の対応ができる。チームの一員として責任のある行動を安全な看護を行える。
担当患者の状況から抱えている問題を明確にし、実施した看護の結果を次の看護に活かすことができる。 重症患者や救急患者に対し、個別に応じたケアが行える。自身の看護経験を振り返り、看護観を述べられる。今後の課題と目標が立てられる。
到達目標を設定し、環境が整ったら新人研修を実施します。主な研修の流れを以下にまとめます。
看護倫理や看護技術、看護管理などの習得を目的として、研修プログラムに沿った講義を行います。講義は医療機関内で行う方法のほか、通信教育やeラーニングでの学習法を導入しているケースもあります。
患者のアセスメントや状況に応じた判断、患者ごとの個別性を重視した対応などを学ぶものです。ロールプレイングやシミュレーションなどで行います。
講義や演習で学んだことを、実際の医療現場で実践するものです。新人看護師が自ら判断して適切な処置やケアを行えるかチェックし、状況に応じてフォローします。また、看護を実践したあとに課題点をまとめ、手技の手本を見せるなど復習を行い、段階的に臨床経験を積んでいきます。
職場によっては、新人教育で課題を出すケースもあります。課題内容は、所属する部署や科目に関する疾患の自己学習やレポート提出などです。
チェックリストによる評価とは、新人看護師が基本的な看護知識・技術を持っているか、看護師としての行動をしているかなどを項目ごとにチェックするものです。チェックリストで評価する内容は、「看護の基礎知識・技術」「安全な看護ケアを提供するための知識・技術」「看護師としてあるべき基本的な姿勢と態度」などがあります。リストのチェックは、1カ月や3カ月ごとなど、定期的に新人看護師とプリセプターを含むほかの看護師と話し合って行うのが一般的です。評価は、項目一つひとつが達成できているだけではなく、一連の看護行為として行えているかもチェックします。
新人教育の目的は、新人看護師の「実践的な看護能力の習得」だけではなく、「働きやすい環境を作り、離職を防ぐ」という点もあります。新人教育には、プリセプターシップ以外にも下記のような組織体制があるのでチェックしましょう。
エルダー制とは、新人看護師に対して特定の先輩看護師が相談役となり、主にメンタル面や生活面、学習方法のフォローなどを行うこと。
メンターシップとは、新人看護師に対して特定の先輩看護師が業務の指導や助言をする、相談に乗ること。一般的には、直接的な現場での指導者という立ち位置ではなく、支援者的な役割を持ちます。
チーム支援型とは、新人看護師に対して特定の教育・指導担当係を配置するのではなく、部署ごとなどチーム全体で教育を行うこと。チーム内で各々の看護師が、得意分野を指導するような方法です。
新人教育を行うことは、看護師としてステップアップできるチャンスであり、大きな転機です。新人看護師に業務の流れや看護師としてのあり方を教えることで、自身の看護観や所属部署の看護理念を再認識できるきっかけにもなるでしょう。「新人教育の経験がしてみたいけど、現職場では機会がない」という方は、転職をして新しい職場で経験を積むと、新人教育に関われる可能性が多くあります。
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