在宅医療の最前線で活躍する訪問看護師へのインタビューシリーズ。今回は、名古屋市のFootage訪問看護ステーションに勤務する今泉 亜以(いまいずみ あい)さんを取材。持病をコントロールしながら、利用者さまに寄り添うケアを追求する今泉さんに、看護観や訪問看護のやりがい、大変さなどについて伺いました。
プロフィール
今泉 亜以(いまいずみ あい)さん
Footage訪問看護ステーションに勤務する31歳。静岡県にある大学の看護学部4年生の時に1型糖尿病を発症し、持病と戦いながら国家試験に合格。卒業後は、総合病院の整形・結核病棟に勤務。その後、精神科病院、母校での看護教員補助、愛知県内のクリニック勤務を経て、非常勤で順天堂大学の保健看護学部へ。在籍中に、訪問看護にも携わるようになり、静岡県内の訪問看護ステーション勤務を経て、2020年5月より現職。趣味は家族と一緒にゴルフを楽しむこと。
ーー現在の職務内容について教えてください。
名古屋市千種区にあるFootage訪問看護ステーションで働いています。利用者さまは様々で、例えばストーマをつけた方や精神疾患をお持ちの方、末期癌の方、小児の利用者さまなどがいらっしゃいます。当ステーションではチーム制を採用しているため、そうした利用者さまを基本的にステーションのメンバーみんなでケアしています。
ーー訪問看護師になろうと思ったきっかけは何でしたか?
主人も看護師で、愛知県内の大学院を卒業後、静岡へ引っ越し、私は当時勤めていた愛知県内のクリニックを辞めた後、縁あって順天堂大学保健看護学部へ非常勤で入職しました。そこで総合病院の退院支援室に長い間勤めた方と一緒に働く機会があり、その方が勤めている訪問看護ステーションのお話を聞くうちに、地域看護について興味を持ち、同じところで働かせていただくことになりました。
その後、大学で学生を指導するなかで自分の看護観に向き合う機会が多くあり、看護師としてステップアップしてみたい気持ちが強まっていきました。キャリアの選択肢としては、持病の糖尿病コントロールもあって病棟勤務は難しいのですが、例えばフットケアなど同じ病気を持つ患者さまを対象にした新しい知識・技術を学んでクリニックなどで活かすのか、訪問看護を続けるのか、正直なところ迷いました。悩んだ末、自分は利用者さまと密に関われる訪問看護に面白みを感じていてること、始めたばかりの訪問看護をまだ投げ出したくないと思っていることに気が付きました。そして、訪問看護ステーションにて非常勤で働く道を選びました。
長く働ける職場環境が良かったので、訪問看護ステーションをいくつか見学しました。Footageに決めた理由は、企業としての取り組みに魅力を感じたことや自分のフィーリングが合ったからですね。
ーー訪問看護師になる前に、不安はありましたか?
もちろんありましたよ。訪問看護をするのは、ベテラン看護師だというイメージがありました。私には病棟勤務の経験が少なく、自分の看護技術や知識で訪問看護に対応できるか不安でした。訪問には一人で行くことが多いですが、実際には一人で判断することばかりではないんですよ。例えば現場で不安なことや分からないことが出たら、他のスタッフに電話で直接質問できるし、会議アプリやLINEのグループ機能を通じて、いつでも相談できます。訪問看護のハードルは自分が考えていたようにすごく高いものではないと、働いてみて初めて分かりました。
あとはスタッフ間での勉強会など、自分たちで学ぶ環境も作っています。そこは病院や大学に勤めていたときより多く感じます。今の職場では自分で営業したり、売上を気にしたりと、仕事の範囲が広くなったので、経営や働き方についても勉強するようになりました。スタッフそれぞれがアンテナを張って情報をキャッチし、シェアしながら会社を作り上げていく感じです。
▲職員それぞれが得意とする分野で勉強会を開催。利用者を増やすために、営業の作戦会議を開くことも
ーー訪問看護のやりがいや面白さについて教えてください。
訪問看護は、利用者さまの生活に寄り添って行われます。法律で定められた看護師の役割は「療養上の世話、または診療の補助」ですが、訪問看護では「生活の援助」まで広がっていることを実感しています。病棟と違い訪問看護では、利用者さまのご自宅の様子から、たくさんのことが分かります。例えば部屋に飾ってある写真や小物などから、利用者さまのご趣味やご家族についての情報を得て、「訪問中にこんな話をしたら良いのでは」「もともとアクティブに過ごされていた方なので、散歩を提案したらよろこんでくれるのでは」などと考え、コミュニケーションやサポートに取り入れています。決まった形ではなく、自分たちでいろいろ方法を工夫して実践できるところが、訪問看護の面白さだと思います。
あと訪問看護では、色々な人たちと関われるのもうれしいですね。例えば利用者さまやそのご家族さまから人生経験について伺ったり、ケアマネージャーやヘルパーの方とやり取りをするなかで、さまざまな価値観に触れることができるので、良い刺激を受けています。
ーー訪問看護をしていて大変だと思うことは何ですか?
責任の重さでしょうか。私は、訪問看護師になってから看取りのケアに携わるようになりました。ご利用者さまとそのご家族さまはご自宅での最期を希望されていますが、利用者さまの状態が悪く不安になり、寄り添うご家族さまも戸惑い不安を表出される場面では、どう支援していくのが良いのかと、難しさを覚えます。また、在宅の現場は、どうしても医療体制が病院に比べて整っていない状態です。そんななか自分に何ができるのか、ケアの方法は正しかったのか、もっとできることがあったんじゃないかと、何度も自分に問いかけてしまいます。
もちろん周りのスタッフに相談したり、何かあれば先生にすぐ連絡を取れるのですが、基本的に利用者さま宅には一人で行くので、自分の役目はすごく大きい。自分がしっかり看ないといけないので、分からないことは絶対、関係者に確認・連絡するようにしています。
▲フラットな関係でみんなが主役、仲が良いというFootage訪問看護ステーションのメンバー。その一体感が、「何でも聞ける」「相談できる」環境を形作っている
ーー訪問看護師として大切にしていることはありますか?
自分の価値観を押し付けないことです。病院看護では病気の治療が主な目的なことが多いですが、訪問看護の場合はご自宅での治療に加え、利用者さまの生活の望みを一緒に叶えていくことが大切だと考えています。
利用者さまのやりたいことは、例えば「家族とペットと一緒に過ごしたい」「寝心地は悪いけど、あの布団で寝たいんだ」など、本当にさまざまです。そういう希望を持つことはすごく大事で、利用者さまの生きがいなんですよね。それを失ってしまったら、病状が良くなっても利用者さまの笑顔が戻ってこない可能性もあります。
最期の時を待つ利用者さんとお話すると、「またあれをやりたかったな」とか「ああいうふうに生きたかったな」「こうして家族といられて嬉しかった」ということをおっしゃいます。利用者さまが人生をどう過ごせたか、どういうことをできたのかがやっぱり生きていく中で大切なんだと思います。利用者さまがやりたいことをやれるようにサポートすること、利用者さまがなるべく自由に考えて行動できるようにサポートすること、それが私たちの仕事なんだと思います。
ーーこれから看護師としてどう成長していきたいですか?
看護にはどんな形でもずっと関わっていきたいと思います。おばあちゃんになっても看護師として働き続けていきたいですね。今の仕事がすごく面白くて、たくさんの人と出会えたり、自分の視野が広がったりする訪問看護は、自分に合っているなと。他にも、大学で働いた経験もあるので、訪問など看護の良さを伝える仕事にも興味がありますし、糖尿病関係の専門資格を取って、そのケア方法を発信していくことにも興味があります。自分の将来を、楽しんでいきたいですね。
ーーありがとうございました。
▲愛猫との2ショット。愛嬌たっぷりの姿で安らぎと癒やしを与えくれる相棒に、今泉さんはメロメロなんだとか
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