在宅医療の最前線で活躍する訪問看護師へのインタビューシリーズ。今回は、H&Hホールディングス 訪問看護ステーション デライト桜新町に勤務する成田 菜摘(なりた なつみ)さんを取材。精神科や外科など、病棟勤務で培ったスキルを活かして、訪問看護に携わる面白さや大変さについてお聞きしました。
プロフィール
成田 菜摘(なりた なつみ)さん
株式会社H&Hホールディングス 訪問看護ステーション デライト桜新町勤務の35歳。看護学校卒業後、精神科慢性期閉鎖病棟に5年間勤務。その後、7年間の総合病院(整形外科・形成外科・泌尿器科・外科病棟)、3年半の専門病院(足病科・糖尿病内科)での勤務を経て、2020年3月から現職。趣味は、愛犬とのお洒落なカフェ巡り。
ーー現在の職務内容について教えてください。
東京都世田谷区にある精神科をメインにした訪問看護ステーションに所属し、利用者さま宅やグループホームに訪問しています。一件あたりの訪問時間は30分で、利用者さまの生活状況、精神状態の観察や服薬管理、利用者さまの状況次第で医療機関と連絡を取り、受診の手配をすることもあります。ほかにもデイケアや保健師、行政機関と連携し、情報提供などを通して利用者さまが地域での生活を継続するためのお手伝いもしています。
ーー訪問看護の道に進もうと思ったきっかけは何ですか?
前職に勤めながら転職先を探しているとき、紹介会社に相談をしたら訪問看護の仕事を勧められたんです。それがきっかけですね。ずっと病院に勤めていたので、病院以外の看護職に興味がありました。精神科病棟での看護経験を活かせる職場ということで、現職を紹介してもらいました。精神科の仕事から離れて10年くらい経っていたのですが、その仕事は好きだったので、また携わりたいと思っていたところでした。ちょうどいいタイミングでした。
ーー訪問看護師になる前に不安はありましたか?
はい、2つありました。一つは初めての訪問看護への漠然とした不安で、もう一つは病院で培った看護スキルが衰えてしまうのではないかという不安でした。でもとにかくやってみてから判断しようと、考えを切り替えました。
実際に訪問看護を始めてみると、未経験だったことも看護スキルの面も、心配するほどではありませんでした。訪問看護は基本的に1人で行動するので、そこが病棟との違いで一番の不安だったんですが、今のステーションでは1人1台iPadが支給されていて、ステーション内のグループチャットにいつでも連絡できます。夕方ステーションに戻ってからは、先輩や管理者と話し合う時間もあり、色々相談したりアドバイスを受けたりできます。
また、現職の訪問看護ステーションは精神科に特化しているとはいえ、利用者さまには高血圧や糖尿病、心疾患の症状をお持ちの方がたくさんいらっしゃいます。例えばアルコール依存症の利用者さまは肝臓を悪くしている場合が多く、そういった利用者さまに身体面でのアドバイスをさせていただく機会が頻繁にあるため、一般の病院で働いていたときの知識や技術をつねに活かせている状態です。
ーー訪問看護師のやりがいや面白さについて教えてください。
精神疾患をお持ちの利用者さまをケアするうえでは、利用者さまとの関係構築がとても大切です。その過程で症状に良い影響が出てくるのを身近に感じられるのが面白いところだし、やりがいを感じます。
以前、訪問を嫌がっていた利用者さまがいました。私たち訪問看護師がお宅に伺っても全く話してくれなくて。どうしたらいいか悩みつつ、テレビ番組やアイドルの話など病状以外の何気ない話をするようにしました。すると、少しずつ利用者さまから話してくれるようになったんです。今では、「また来週来てくれるのを楽しみにしています」と言ってくれるようになりました。待っていてくれると思うとうれしいですね。
ーー利用者の方に心を開いてもらえるように、工夫していることはありますか?
例えば芸能人や可愛い動物の話とか、普段の生活で利用者さまとの話のネタになりそうな情報をなるべくたくさんキャッチして、頭の中の引き出しに溜めるようにしています。訪問時には様子を見てその中から合うものを引き出してコミュニケーションを取るよう工夫していますね。私が担当する30分が利用者さまにとって楽しい時間になるように心掛けています。そうやって利用者さまとの関係性が少しずつ深まっていくところが、楽しいですね。
ーー訪問看護師の大変なところは何ですか?
いろんな利用者さまがいるので、正直言うとなかには自分と相性が合わない方もいるんです。それでも、訪問時間の30分は一緒に過ごします。以前は利用者さまと話が続かなかったり、利用者さまの反応がほとんどなかったりすると心が折れそうになることもありました。でも訪問看護師の存在意義は、利用者さまそれぞれで違うんですよね。利用者さまによっては、私たちがただそばにいるだけで意味があって、その時反応がなくても実は話を聞いくれていたり、次の訪問時に声をかけていただいたりして。他のスタッフに相談をすると、ほとんどみんな同じような経験をしていて、「そういうこともある」「仕方ないよ」と言ってくださる先輩も多くいました。それで気持ちを切り替えられるようになりました。
ーー今後どんな風に成長していきたいですか?
直近の目標としては、社会復帰支援について知識を増やすことです。利用者さまには30~50代の働き盛りの世代が多く、就労支援や地域のコミュニティなどについて私たちはよく質問を受けます。でも現状、私にはそれに応えるだけの知識が十分になくて、回答に時間がかかってしまうときがあるんです。精神疾患を持つ方にとっては、社会復帰に向けて一歩踏み出したいと思うタイミングでほしい情報を得られたり、具体的な行動を起こせたりすることが大事です。タイミングを外してしまうと、せっかく出たやる気がなくなってしまうこともあります。1人で訪問できるようにはなりましたが、まだまだ覚えるべきことは多いなと感じています。
あとは、管理業務もできるようになりたいですね。今の職場は雰囲気も良くて働きやすい環境なんです。そういう職場環境は、長く働くために大事な条件です。前の職場では主任をしていたので、その経験を活かしながらスタッフの管理や教育について学び、ステーションの運営やスタッフの活躍を支えていきたいと思います。
ーー訪問看護師になろうか迷っている方に向けて、アドバイスをお願いします。
以前の私がそうだったように、病棟などで身につけたスキルが訪問看護で維持できるのか、気になる方は多いかもしれません。でも実際の現場では、訪問看護師になるまでに培ったスキルや知識を活かして働くことができるし、退院後の患者さまの様子を知ることができるので、看護観を深められると思います。
また、病棟勤務だと業務に追われて目まぐるしく時間が過ぎていって、患者さまの内面にまで関われないことがよくありましたが、訪問看護師になってからは利用者さまをメインに考えて看護ができています。利用者さま一人ひとりとじっくり向き合っていきたいという人には、ぜひ経験していただたいですね。
ーーありがとうございました
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