東京医科歯科大学生体材料工学研究所 中村亮一先生にインタビューしました!

2020.12.16

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目次

◆はじめに

『医療・看護現場で働く方に、いつもとは違った視点でその分野を研究している人を知ってもらいたい』という想いで始まったこちらの大学の研究室紹介。
第1回目は東京医科歯科大学生体材料工学研究所 教授の中村亮一先生にお伺いしました。
主に『新しい手術を実現する「コンピュータ外科学」』を研究されています。

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研究の概要について教えてください

情報技術・ロボット技術等を応用した新しい手術を実現する「コンピュータ外科学」の研究を推進しています。
内視鏡下手術のような低侵襲手術(体に負担の少ない手術)は、患者さんの体の負担や入院期間を減少させる一方、医療者にとっては高い技術を必要とする難易度の高い手術となっています。このような手術の安全性と質を担保するために、治療の一部を支援する手術支援ロボットや治療の過程やゴールを画像等で教示してくれるナビゲーションシステム、さらに手術の工程を自動管理するシステムの開発を目指して技術開発を行っています。
またこのような手術に必要な医療従事者自身の技能を向上させる教育システムについても、情報技術を応用した効果的な手法の構築を目指して研究を行っています。

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研究の詳細について教えてください

安全で質の高い外科手術を行うためには、治療のゴールとそれに向かう工程を最適化することが重要です。画像誘導手術と呼ばれる治療では手術のナビゲーションシステムを使用して、術前や術中に取得した患者さんの画像と手術を連携して、現在治療している場所が医用画像上のどこにあたり、治療のゴール(治療対象となる病変など)や危険な領域(傷つけてはならない重要な血管や神経など)がどこに存在するかをデジタルにリアルタイムに提示することで治療を支援します。
このナビゲーション手術では手術におけるゴールや障害となる解剖の位置・形状情報を知らせてくれることで治療の安全性と正確性を向上させますが、一方で「どのようにゴールに到達するか」「どのように危険領域を避けるか」といった道筋、「工程」を教えてはくれません。我々は熟練医と非熟練医のナビゲーション手術での作業をデータ化して蓄積・分析し、「良い治療工程とはどういうものか」「質の高い手術とはどういうやり方か」をデジタルに理解し、より質の高い治療をデータ化する「手術工程・技能分析」の研究を行っています。
さらにこのナビゲーション情報・工程情報が将来全てデジタルにデータ化されれば、このデータを用いてロボットが治療の一部を自動的に処理することが可能となります。このような手術支援ロボットによる治療の自動化についても研究を行っています。現在は治療中に移動・変形する臓器に対して正確なナビゲーションの元に自動処置を行うレーザ手術ロボットの研究を行っています。
また先述の手術工程・技能分析の技術を用いた教育訓練の装置も開発を行っています。熟練医の統計データをお手本とし、訓練者の技能がどのレベルにあるかを自動的に判定し、弱点の発見やより効果的な教育訓練の方法の導出を行えるようなシステムを構築したいと考えています。

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今後の研究の展望を教えてください

医療の安全性・質の向上には医療従事者の献身的な努力の貢献があるのはもちろんですが、テクノロジーを効果的に利用することは非常に重要です。
医療技術・知見の拡大進化に伴い医療人の職務はさらに複雑難化しています。一方、少子高齢化に伴い、医療を支える働き手の人口は減少する一方で患者の中核である高齢者は増加し、医療人の負担は増える一方です。このような背景の中、医療従事者の努力のみで医療を支えるには限界があり、様々な技術を応用することで医療従事者の負担を減らしつつ医療の質を担保することが必須です。「医療人しか出来ないことは医療人に、機械に出来ることは機械に」という役割分担が重要であり、情報通信技術・IoT技術やロボット技術には医療従事者の良きパートナーとなることが求められていると思います。
私の携わる医療機器の最終的な受益者は治療を受ける患者さんですが、ユーザーは医療従事者です。患者さんをハッピーにさせるためにはその前に医療従事者をハッピーにさせることを考えねばなりません。「医療従事者を笑顔にする技術を創出すれば、その医療従事者が患者さんを笑顔にする」ことが出来ます。この観点から医療従事者の負担を軽減することも考慮に入れた先端医療機器の開発に取り組んでいきたいと思います。治療の一部自動化は精密な治療の実現と共に、医療人の負担を軽減してくれるものと考えています。
今回紹介した技術の他に、私はこの医療従事者の負担を軽減する支援機器の開発にも様々取り組んでおり、手術中の医師や機械出しの看護師といった長時間の立ち仕事の負担を軽減する身につける椅子、「archelis(アルケリス)」の製品開発にも携わりました。(https://www.archelis.com/)
私は研究者ですが、最終的に製品として世に出さなければ目標とする医療の質の向上・医療従事者の負担軽減は実現されません。企業との連携やアントレプレナーシップを持つ若者の支援を通じて、より良い医療の未来に貢献できればと考えています。

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◆東京医科歯科大学生体材料工学研究所の基本情報

中村先生、お話ありがとうございました!
最後に、東京医科歯科大学生体材料工学研究所バイオデザイン分野の基本情報を記載します。

東京医科歯科大学
http://www.tmd.ac.jp/
生体材料工学研究所バイオデザイン分野
http://www.tmd.ac.jp/bd/index.html

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