利用者さまとの関わりが日々の癒やし。「明日も頑張ろうと思える」施設看護師インタビュー・三澤 和美さん

2021.2.17

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介護分野で活躍する施設看護師へのインタビューシリーズ。今回は5人の子どもを育てながら、老年看護に携わってきた三澤 和美(みさわ かずみ)さんを取材しました。亡き祖父母との思い出を心に留め、利用者さまとの関わりに活かしている三澤さん。今回は、施設看護師として大切にしていることや病院との違いについてお聞きしました。

プロフィール

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三澤 和美(みさわ かずみ)さん
埼玉県挟山市にある「社会福祉法人 石心福祉会 特別養護老人ホーム オリーブ 」に勤務。子ども5人の母。看護専門学校卒業後、外科病棟を中心に勤務し、脳外科や整形外科、小児外科などを経験。5年ほど勤めてから、結婚を機に20代で退職。それ以来、特養やデイサービスで施設看護師として働き、老年看護に携わっている。2016年から派遣として現職へ。現在は正職員として勤務。趣味は子どもたちの試合応援やマッサージに行って気分転換をすること。

家庭と仕事の両立のため、施設で働くことを選択

ーー現在の職務内容について教えてください。

勤務先は、埼玉県挟山市にある「社会福祉法人 石心福祉会 特別養護老人ホーム オリーブ」です。当施設は従来型とユニット型のタイプがあり、私は従来型の「富士見の館」で働いています。主な業務内容は、日々のバイタルを含む状態観察、褥瘡を中心とした皮膚トラブルのケア、急変時の対応、薬の管理、病院受診時の付き添い、看取りケアといった利用者さまの健康管理です。介護業務に関しては、介護士が1人で難しいときに協力して行うようにしています。

看護スタッフは夜勤がなく、オンコール体制です。オンコールは1人で担当するため、全利用者さまの対応ができるよう情報共有をしています。ただ、私はまだ1番下の子どもが小学生なのでオンコール担当はしていません。いずれやりたいと思っています。

ーーなぜ施設看護師になろうと考えたのでしょうか?

施設看護であれば、家庭と仕事の両立ができると思ったからです。外科で働くのも好きでしたが、結婚・出産をすると夜勤も難しくなり、どうしても働ける時間に制約がありました。看護師としてのブランクをあまり空けたくなかったので、家庭と両立できる職場として施設看護が1つの候補に挙がりましたね。結婚後に引っ越した先が静岡で、周りに施設が多かった影響もあったと思います。病院より施設のほうが自宅から近くて、通勤がしやすい環境でした。現在の施設は、勤務時間や通勤のしやすさなど、働きやすい条件が整っていたので選びました。最初は派遣として勤務していましたが、そのまま直接雇用契約をして、今は正職員として働いています。

 
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祖父母との思い出が施設看護師としての原点

ーー施設看護師になる前に不安はありましたか?

施設には医師が常駐していないので、いざというときに自分の経験で判断できるかどうか不安でした。病院であれば、病状に沿って治療方針が決まっているので、看護師の仕事も明確です。しかし、施設では一人ひとりの利用者さまに対して臨機応変に動かなければなりません。当時は「自分のスキルで判断できるか」という心配がありました。ただ、「高齢者とコミュニケーションを取ること」に関して不安はありませんでした。私は、亡くなった祖父母に可愛がられた記憶が今でも強くあり、一緒に過ごした時間がとても楽しい思い出として残っています。その経験があるので、老年看護への抵抗はありませんでした。実際に働いてみても、その気持ちは変わりません。どんなに忙しくても、利用者さまと一緒に笑いあった時間があるだけで心がホッとします。利用者さまは人生の先輩で、いろんな知識も持っていらっしゃいます。チャーミングでユーモアにも溢れていらっしゃいます。ふとした瞬間に「こんな話で笑ったな」「楽しかったな」と思い返すだけで癒やされますね。そうした日々の積み重ねがあって、「明日も頑張ろう」と思えます。

ーー施設看護のやりがいについて教えてください。

施設看護のやりがいは、利用者さまの5年後・10年後を見据えた看護が提供できることだと思います。最期まで医療と生活の両方の側面から関われるのが魅力ですね。病院だと、病気が治るとすぐ退院が基本です。それも看護師として喜びではありますが、退院後に「どのように生活をしているのか」「必要な看護や支援が受けられているのか」など、様子を知ることができません。その部分に関しては、患者さまとの関係が密になればなるほど寂しさを感じます。その点、施設の場合は一人ひとりの利用者さまと密に長く関わって、サポートできるやりがいがありますね。

ーーそのほかに病院と施設で違いを感じたところはありますか?

はい。利用者さまへのサポートやアプローチの仕方に違いがあります。病院の場合は、治療を優先するために患者さま自身の気持ちに添えないこともありますが、施設は生活の場なので、利用者さまの意思を尊重しないと良いケアにはなりません。病院で働いていたときのように「看護はこうあるべき」という看護観のまま利用者さまに関わると、なかなか心を開いてもらえず、ケアに繋がらないことがあります。利用者さまが施設で過ごす時間は、その方の人生の最終章でもあるのです。そのため施設看護師は「どうしたら利用者さまらしく過ごせるか」を考えてサポートしていくことが大切です。一人ひとりに合わせて柔軟にアプローチしていく必要がありますね。

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「笑顔」と「連携」が利用者さまのケアへと繋がる

ーー施設看護の大変なところは何ですか?

大変なところは、利用者さまとのコミュニケーションと看取りケアの2つです。利用者さまの健康面や生活面から適切なケアを考える必要があるため、コミュニケーションや観察力が大事になります。そうはいっても、最初は利用者さまと話が続かないこともあって、なかなかうまくいきませんでした。先輩看護師やほかのスタッフの様子を見て、利用者さまとのコミュニケーションの取り方を学んでいきましたね。

また、施設は高齢者が生活しているので、看取りは避けて通れません。病棟勤務のときも病状が急変して亡くなる患者さまもいましたが、どんな状況でも看取りは精神的につらく、慣れるものでもありません。看取りケアには正解がないので、毎回「自分はこの方にとって良いケアができたのかな」という自問自答をしています。ケアに迷ったときには「自分の祖父母だったら何を望むか」「何をしてあげたいか」と原点に戻って考えるようにしています。

ーー施設看護師として大切にしていることは何ですか?

利用者さまと接するときには「笑顔を絶やさない」ことを大切にしています。信頼関係が築けていないと良いケアには繋がらないので、どんなに忙しくても利用者さまと話す時間を持つようにしていますね。普段から何気ない話をするように心がけることで、利用者さまが望んでいるケアを考えていくことができると思います。そのためにも、笑顔で話しやすい雰囲気を作り出すことが大切です。

また、施設にいる他職種のスタッフと連携を取るために「看護師」という壁を作り出さないように気をつけていますね。たとえば、介護士は私たちが知らない利用者さまの一面を知っていたり、ご家族に接する機会が多かったりします。24時間体制で利用者さまのケアをしている介護士に相談することで、新たな気づきを得られることがたくさんありますね。栄養士も食事介助の様子を共有してくれます。「今日のこの食べ物が食べづらかったみたいです」と些細な情報をこまめに伝えてくれるので、生活のケアに繋がります。看護師や介護士、栄養士など、それぞれ立場が異なるので意見がぶつかることもありますが、お互いの視点や考えを知るのは良いことだと思います。そうした意見交換があることで、さらに良いケアを提供できるのではないでしょうか。利用者さまのためにも、「医療は看護の分野だから看護師の仕事」という壁を作らないことが大切だと思っています。

施設でしか学べない看護があることを知ってほしい

ーーこれからどう成長していきたいと考えていますか?

長く介護分野に携わってきたので、「老年看護を極めたい」という思いがあります。いずれ認定看護師の資格にも挑戦してみたいですね。まだ現実的には難しいですが、自分が積み上げてきた経験を活かしていきたいと思っています。

ーー施設看護に興味を持っている看護師へアドバイスをお願いします。

病院のように最先端の医療技術を学ぶのは難しいですが、施設でしか学べない看護もたくさんあると思います。特に、施設看護師として働くなかで、コミュニケーション能力や観察力は磨かれていきます。一人ひとりの利用者さまとじっくり関われるのも施設の魅力です。特養の施設に対するイメージもそれぞれ違うと思うので、まずは見学してほしいですね。そして、施設の雰囲気を感じて良いと思ったら、思い切って施設看護の世界に飛び込んでみてはどうでしょうか。実際に働いてみないと分からないこともたくさんあります。また、結婚や育児など、自分のライフスタイルが変わったときに選択肢の一つとして施設看護を考えてみるのもおすすめです。私も5人の子どもを育てながら続けてこられたので、家庭との両立はしやすい環境だと思います。ぜひチャレンジしてほしいです。

ーーありがとうございました。

▼記事に関連する施設の情報はこちら(看護のお仕事)

特別養護老人ホームオリーブ 富士見の館

 
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