病院・施設インタビュー
2021.6.18
在宅医療の最前線で活躍する訪問看護師へのインタビューシリーズ。今回は、神奈川県大和市にある「訪問看護ステーション Normally(ノーマリー)」に勤める鈴木 香織さんにお話を伺いました。訪問看護師を目指したきっかけや利用者さまとの印象的なエピソードについてお聞きしました。
プロフィール
鈴木 香織(すずき かおり)さん
「株式会社 SelfTranscendence(セルフトランセンデンス)訪問看護ステーション Normally(ノーマリー)」(神奈川県)の訪問看護師。看護の専門学校を卒業後、労災病院の小児科病棟に1年、総合病院にて急性期の混合病棟に7年勤務。その後、有料老人ホームに3年勤めたのち、2020年8月より現職。休日の楽しみは2歳の子どもと一緒に過ごすこと。
ーー現在の職務内容について教えてください。
当ステーションは、精神訪問看護、療養上の医療や介護ケア、在宅でのリハビリテーション、医療機器の管理などのサービスを提供しています。私の訪問担当地域は、事務所がある大和市中央林間や近隣の座間市相模が丘、相模原市南区などです。1日5~6件、多いときは7~8件を車で訪問していますよ。利用者さまの病状は慢性期の方が多く、パーキンソン病の方や在宅酸素を利用している方、ADLが低下しているリハビリメインの方を受け持っています。パート勤務のため、オンコールはありません。
ーーなぜ訪問看護師になろうと考えたのでしょうか?
看護学生時代に訪問看護を学び、「在宅看護って楽しいな」と思っていたことや、祖父が訪問看護を利用していたこともあり、在宅看護に興味を持っていたのがきっかけです。専門学校卒業後に勤めた病院で、家に帰りたがっている患者さまもたくさん看てきました。そういう方たちを継続して支援できるのが、訪問看護だと改めて感じたんですよね。ただ、当時は車の運転免許を持っていなかったので、免許取得のタイミングで訪問看護師になろうと決めました。病院を退職後、有料老人ホームに勤めたのは、病院以外の患者さまの生活の場や看護の場を見ておきたかったからです。利用者さまの過ごし方や普段の様子など、病院との違いを学びましたね。
ーー訪問看護師になるにあたり、「訪問看護ステーション ノーマリー」に入職されたのはなぜですか?
家から通える範囲であったことと、雰囲気がアットホームで良かったことが決め手になりましたね。当ステーションは今年で4周年目の新しい施設なんですよ。まだまだ成長の余地があるので、自分も一緒に学んでいけたらと思いました。また、前職の施設に当ステーションの訪問看護を利用している方がいらっしゃったこともあり、縁があると感じたんです。
ーー訪問看護師になる前に不安はありましたか?
ありました。車の運転が一番不安でした。前職の在職中に運転免許を取得し、訪問看護師になってから運転を始めたんです。就職前1カ月からペーパードライバー講習を受け、入職後も当ステーションに車を借りて運転の練習をしました。しっかり練習したので、当初の不安は解消されましたね。
あとは、一人で訪問看護業務ができるのか心配でした。そのため、最初は先輩看護師に同行して見学したあと見守りで実施する、というのを繰り返し行いました。先輩看護師にしっかりフォローしてもらえたので、安心して一人で行けるようになりましたよ。
ーー実際に働いてみて、ギャップはありましたか?
はい。訪問看護は症状が落ち着いている方が多いと思っていましたが、実際は違いました。一人暮らしで服薬管理ができていない利用者さまもいれば、ご夫婦で介護が必要にもかかわらず、2人で助け合っている利用者さまもいらっしゃったんです。ご自宅で過ごしている利用者さまの症状が、幅広くて驚きましたね。一回施設を経験しているせいか、医療的な措置に関して戸惑うことはありませんでした。
ーー訪問看護の面白さ・やりがいについておしえてください。
在宅ケアを希望されている利用者さまが、訪問看護を利用して元気になることにやりがいを感じます。入職以来、ずっと固定で担当している利用者さまが徐々に良くなっていく様子を見ると、とてもうれしいですね。
ーー訪問看護の大変なところは何ですか。
利用者さまの情報収集と関係機関との連携が大変ですね。利用者さまの体調が悪いときやADLが低下しているときに状況を把握し、すぐ対応しなければなりません。しかし、週1~2回しか訪問していないため、素早い対応が難しいときがあります。
このほか、ご家族や本人が訪問拒否をしている利用者さまの介入が難しいと感じます。担当医の指示で訪問看護に入っても、訪問拒否される場合があるんです。利用者さまのご自宅はプライベートな空間なので、外部の人間に入ってきてほしくない方もいらっしゃいます。あまり話をされなかったり、壁を作ったりする利用者さまに対して、どういう距離感で接すれば良いのか分からないときがあるんですよね。相性もあると思いますが、利用者さまとのコミュニケーションには未だに悩みます。ある利用者さまがあまり話してくれず、「何もしなくて大丈夫です」とおっしゃったときには、拒絶されたことが悲しくて涙が出ましたね。
ーー印象に残っている利用者さまのとのエピソードを教えてください。
末期がんの緩和ケアを行った、70代の女性の利用者さまとのエピソードが印象に残っています。初めは必要最低限のコミュニケーションしか取れず、30分ほどで処置が終わっていたんです。お風呂の介助や訪問数を増やすことを提案をしても、「夫にやってもらうから結構です」とシャットアウトされてしまって。
しかし、そこから2カ月ほど通い続けると、利用者さまの元気が出てきたせいか、急にお話をしてくれるようになりました。先生やケアマネさんではなく「訪問看護の看護師さんが一番話しやすい」と言っていただけたんです。もともと、利用者さまは病状的に倦怠感もすごく強くて、食欲もなかったんですよね。訪問し続けるうちにお薬の効果が出てきて、体調が良くなったんだと思います。実は、利用者さまから拒絶されていると感じて、途中で挫折しそうでした。でも、めげずに「また来ます」と言い続けていたんです。あきらめず、関わり続けて本当に良かったと思います。
ーー訪問看護師として大切にしていることは何ですか?
利用者さまの意向をできるだけ汲み取ることです。なるべく利用者さまのお話を聞いてから、アセスメントを考えるようにしています。なんでも一度提案し、利用者さまの反応が悪ければ、別の手段を試していますよ。
ーーこれからどう成長していきたいと考えていますか?
念願の訪問看護師になり今年で2年目になりますが、改めてこの仕事をずっと続けていきたいと思っています。今後は、認定看護師や訪問看護に役立つ資格を取得して、より一層、専門性を高めていきたいですね。
ーー訪問看護に興味があるけど迷っている、または訪問看護の素晴らしさを知らないというナースへ一言お願いします。
訪問看護師をイメージしたときに、知識のない分野のケアについて不安に思う方もいるでしょう。でも、利用者さまには本当に色々な疾患の方がいるので、分からないことは働きながら学べば良いと思います。ただ、病院に比べたら点滴や採血などの医療処置を行う機会が少ないため、医療処置の経験を積んで技術を磨きたい人には向いていないかもしれませんね。とはいえ、医療処置が全くないわけではありませんし、興味のある方は楽しくできる仕事です。ぜひ挑戦してみてください。
ーーありがとうございました。
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