
看護師とイラストレーターの両立で活躍する中山有香里さん。「ズルいくらいに1年目を乗り切る看護技術」をはじめとしたズルカンシリーズは、新人看護師の必読書として大人気。「泣きたい夜の甘味処」「疲れた人に夜食を届ける出前店」では2年連続レシピ本大賞コミック賞を受賞しました。看護師が関西弁の小さな魔女と出会い成長する新作漫画「魔女のあとおし」のお話とともに、中山さんの看護師のお仕事について伺いました。

看護学校を卒業後、奈良の大学病院に就職。呼吸器内科と総合診療科、感染症内科の混合病棟で6年勤務。現在は消化器内科クリニックで外来と内視鏡検査を担当。
著書:「ズルいくらいに1年目を乗り切る看護技術(メディカ出版)」や「泣きたい夜の甘味処」「疲れた人に夜食を届ける出前店」など。最新作は「魔女のあとおし」。
Twitter:@musashi_0303
Instagram:zurukan.yukari33
――中山さんが看護師のお仕事のかたわら、漫画を描き始めたきっかけを教えてください。
進路を決めるときに絵はいったん諦めて看護師になったものの、ずっと諦めきれなかったんです。自分にとって唯一自信のあるものが絵で、大人になってからそれを否定されるのが怖かったんですが、思い切って出版社に持ち込んでみようと思いました。
最初はたくさんの会社にイラストを送っても、9割返事はありませんでした。実際にお返事がほぼ無かったり、うちでは使えませんっていうお手紙ももらったりした時に、思ったほどショックを受けなかったんです。勇気を出して告白したけど振られたみたいな感じでした(笑)。すごく傷つくわけじゃないんだったら、ひたすら送り続けてみようという気持ちになり、看護師7年目くらいにようやく「ズルカン」シリーズの出版社さんから声をかけてもらえました。
以前、終末期病棟にいらっしゃる方に雑談の中で「ええな、あんたはこれからなんでもできるんやで」と言われたのがずっと心に残っていて、今振り返ってみると、好きなことに挑戦してみてよかったと思っています。
―この「ズルカン」シリーズは、中山さんの新人の頃の苦労した体験が元になっているんですよね?
最初の1年目は心が病み気味で、本当に辞めたかったです。転職したいとかじゃなくて、この現実から逃げたいと思っていました。自分の経験不足やミスで、患者さんの命を左右するのがすごく怖くかったし、さらに先輩の目も怖かった。怒る先輩に萎縮しちゃって、人間関係が一番しんどかった時期です。ただ、初めて先輩に褒めてもらえた日から、求められていることやラインがやっと明確に把握できるようになって、初めて前向きに頑張れるかもと思えました。先輩も私との関わり合いに葛藤していたはずで、先輩が褒めてくれてお互いに歩み寄れた気がしました。
――当時のそのストレスはどのように解消されていたんですか?
同期が毎日遅くまで一緒に残ってくれて、自販機でジュースを1本買って帰るとか、サーティーワンのアイスを全部制覇しようとか、そういう仕事終わりのほっとする時間に支えられていたなと思います。


――漫画を描いていて、看護師の経験に助けられたことはありますか?
看護師になっていま14年目ですが、病院で働いていると残された時間が少ない人や家に帰りたいけど帰れない人など自分とは違う環境に置かれている人の気持ちに多く触れます。患者さんが出てくるお話を描くときには、そういった心情や風景を思い出します。
――最新作の「魔女のあとおし」は、魔女との出会いを通して看護師・桃子が少しずつ自分を好きになっていくお話ですが、SNSでは「元気がでる」「思わず泣いてしまった」と話題です。頑張っている人の背中をさするような作品に込められたメッセージをお聞かせください。
本を買って読んでもらうには等価交換じゃないですけど、知識とか経験を引き換えにするものだと思っています。取り柄のない私が作品を通して差し出せるものは何かと考えた時に、優しさしかないなと。自分が差し出せる優しさをひたすら漫画で描いています。「魔女のあとおし」を読んだ人が、一歩踏み出すために、少し足を上げるあとおしができたらいいなと思っています。
――ありがとうございました。
▼作品情報
書名:魔女のあとおし
作者:中山有香里
出版社:幻冬舎
発売日:2023/8/23
ご購入はこちらから(amazonのページが開きます)
『魔女のあとおし 第一話』(1)、(2)
『魔女のあとおし 第二話』(1)、(2)

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