まだ誰もいない早朝のキッチンで、いつもひかりがしてくれるようにモーニング・カフェオレを煎れました。「今日は脳細胞をいっぱい使うから、甘さは強めにっと」
部屋に戻るとひかりが起きていて、「なんでのぞみが起きてるのよ!?」と驚いています。
「私だって早起きくらいするよ」
「だって、のぞみだよ? 大丈夫?? 今日は長いよ。眠くなっちゃうんじゃないの?」
そう、何を隠そう私、こだまのぞみは、看護学生寮一のお寝坊さんなのです!!
「もういいよ。せっかくカフェオレ淹れてきてあげたのにさ~」
「わぁ、美味しそう! ありがとう」
ひかりはマグカップを奪うと一口、「あれ? このカフェオレ超甘い」。
「今日は脳細胞フル活用するから、あま~くしてみたの」
「そうだね。いよいよ今日が“本番”なんだね…」
今日は看護師国家試験の本番。ひかりの顔は真剣そのものです。頭のいいひかりでも緊張するんだな。
「まあ、もうやるしかないっしょ」と私が言うと、ひかりは笑顔に戻って、「なんか今日、のぞみじゃないみたい」と言いました。(褒められたんだよね?)
都内某大学のキャンパスが試験会場に集合時間30分前に到着。すでに構内は受験生でいっぱいで、どの顔も緊張しています。中にはまだ問題集にかじりついている人も。そんな姿に、なぜかここで一気に緊張感がアップ!!!看護師国家試験は合格率が高いことで有名ですが、100%ではありません。つまりここにいるうちの誰かは…
「あ、荒川先生だ! のぞみ、行こう。ちょっと、のぞみ??」
「あ、う、うん」
恐ろしい想像はしない。しない。
荒川先生の周りにはクラスメイトが集まっています。いつもは厳しい荒川先生が、優しい声で「みなさん、本番だからといって焦りや緊張は禁物ですよ。普段通りの力を出せれば、みなさんは必ず合格できます!自信を持って試験に臨んでください!」 と言いました。
緊張マックスだった私は、その言葉にジーンっときてしまい、ちょっと泣きそうに…。
受験会場の教室に入るとますます緊張が…。8個のお守り(末広がりでいい感じがしたので)を握りしめると、神様たちがタッグを組んで応援してくれている気がしました。神様、ありがとう!!
広い教室にはたくさんの看護師の卵たち。みんな頭が良さそう。
『大丈夫、大丈夫、落ち着け自分』心の中でそう言い聞かせ、筆記用具などを最終確認。
そして、9時50分、試験が始まりました。
お昼なんて食べれないと思っていたのですが、朝から頭をフル回転したせいかお腹がぺこぺこ! 用意したおにぎりを全部食べきり、午後5時までの後半戦スタートです!
ところが……、気合を入れて珍しく早起きしたことと、お昼をしっかり食べ過ぎたせいで、なんと国家試験中だというのに睡魔が襲ってきたのです!!ひかりに言ったら怒られるだろうな。
それでもなんとか5時間20分を戦い抜き、終了した瞬間の疲労感は半端ありませんでした。
でも、出来る限りのことはした(つもり)。試験の手応えは確かにありました(たぶん)。あとは運!?
「のぞみ! どうだった? マークシートずれたりとかケアレスミスしてない?」 と、ひかりが駆け寄ってきました。
「うん。定規できちんとやったから大丈夫」
私がぼうっとしながら、「どうする? カフェでも寄って一息つく?」と聞くと、ひかりは私の正面に来て、「のぞみ、今日は帰って、ちゃんと寝なさい!」と言いました。
ひかりの言うがままに電車に乗ると並んで座ることができました。試験が終わった実感はなく、ただただ疲れたという気持ち…。
「降りるよ」
ほんの一瞬、眠りに落ちたつもりが、ひかりに起こされるともう乗り換えの駅でした!
そうか、私、そうとう疲れてたんだな……。ひかりには何でもわかるんだ。
私は疲労しているのに不思議な安堵を感じ、乗り換えた電車でもひかりに寄りかかってグッスリと深い眠りに落ちました。
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