あぁ、憂鬱です。
アノ日の私はいつになくイライラ。女の子の月に1度の”アレ”なんです。国家試験にも、謝恩会にも、卒業式にもかぶらなかったけど、この忙しい時期に悩まされたくなかったなぁ…。もう女子ってほんと、不便。
我が寮は大浴場で裸の付き合いですが、もちろんアノ日のために個室シャワールームが設置されています。寮には180人近い寮生がいるのに、個室シャワーはたったの2つ!
しかも、1人あたりのシャワー浴時間は「着替えも含めて20分以内」という決まりが!!
グズな私には、この20分という縛りがきびしくて、つらくて……。
慣れてなかった1年生の頃は、トリートメントを流し忘れて出てしまったこともありました。
20分を過ぎると、次の予約の人がドアを『コンコンッ』と鳴らすんです。
中には「まだ?早くしてよぉ!」と声をかけてくる人も……(汗)
うわーん、シャワーくらいゆっくり浴びさせて~!
「のぞみ、今日こそ1番シャワー取るんでしょ? だったらそんなの後にして、行って来ないさよ」と同部屋のひかりに言われ、私ははっとしてシャワー室へと向かいました。
というのも、私には1つ下の後輩・三笠さんという天敵がいるんです!!
三笠さんとはアレの時期がかぶってしまうようで、このシャワーの順番を争うライバルなんです!
ふたりともいつも1番早い18時を狙っていて、順番待ちボートには「①三笠あゆみ18時~」「②児玉のぞみ18時20分~」ということがよくありました。
私はいつも1番になりたいのですが、私がグズグズしていると、三笠さんに1番を奪われてしまうんです!
三笠さんは自分が1番に名前を書きこんだ後に、慌ててやってくる私に向かって不敵なほほ笑みを浮かべながら「すいません」とペンを渡します。
なんだ、なんだ勝利のほほ笑みかぁ~?!うぅ~、くやし~!!
たまに私が18時を取れることもありますが、つい20分を過ぎてしまい、三笠さんに『コンコンッ』されることになってしまいます。
”後輩なんだから先輩に気づかってもいいんじゃないの~?
でも、今日は3年生が早く終わったので、なんと私が18時からの1番に!!やった~。
気持よく1番シャワーを浴びていましたが、気づくと大変!時間がないっ…。
慌てて脱衣所でガサゴソ着替えていると、シャンプーは落とすわ、拾おうとして蹴ってしまうはで、てんやわんや……。
そこへ『コンコンッ』が…。ひゃぁ~!もうちょっとまってよ~。
「先輩? のぞみ先輩、そんなに急がなくても大丈夫ですよ」
「えっ?」
『コンコンッ』の後、珍しく声がしました。その声の主は、あの三笠さんです。
「先輩もたまにはゆっくりしてください」
「えぇっ!?」
私はビックリしてしまいました。だって、「ゆっくりしてください」と言われるなんて、これは何かあるのでは!?
私が警戒していると、三笠さんは、続けて話かけてきました。
「この後、寮で『3年生を送る会』があるから、18時代は私と先輩だけなんです。だから急がなくても大丈夫ですよ」
「ああ、そっか……」
私はすっかり忘れていましたが、今晩は寮内の送別会だったんです。
それでも一応、手を動かし、タオルで水滴を拭いていると、三笠さんはまた話しかけてきました。
「先輩、毎月毎月いつも一緒でしたね」
「そ、そうだったね。健康な証拠じゃない?」
なんだ、なんだ。ライバルからの挑戦状か!? 私は思わず、動揺しました。
「シャワー室、ふたつじゃ足りないですよね?」
「そ、そうだね……」
「いつも3番目の山崎さんって着替えるの遅いから、なんか私、自分が早く終わらせなきゃって焦っちゃうんですよね。それで児玉先輩のことも待っていられなくて、すいませんでした」
え、なんか三笠さんって……超いいやつじゃん!?(山崎さんって、いつも3番だったのか?)
「いいよ、いいよ。私こそ、いつもごめんね」
「児玉先輩は優しいから、いつも急いでくださってありがとうございました」
「ううん、ぜんぜん大丈夫だよ~」
ほんわかと上気した頬が、いつの間にか緩んでしまいました。
こうやって三笠さんと話すことがあるなんて思わなかったなぁ……。
寮の送別会では、シャワーあがりの私と三笠さんで、すっかり意気投合!
その姿に驚いたひかりが小声で、「ちょっと、のぞみ? ずっっとあの子のこと苦手なんじゃなかったの??」と聞いてきたほどでした。
「へ? 三笠さんはいい子だよ。児玉先輩は優しいからって言ってくれてさ~」
「……やっぱり、あんたって……」
「なに?」
「いや、のぞみって……いいなと思って」
「そぉ? そっかなぁ~」
なんだかひかりにも褒められちゃいました。
そんなわけで、名残惜しい送別会の夜は更けていくのでした。
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