同じ患者さまはふたりといませんが、そんな中でもなかなか心を開いてくださらない気難しい患者さまに出会い、どう接すればいいのか悩んでしまう看護師も少なからずいるかもしれません。
患者さまにもよりますし、看護師にもよりますので、コミュニケーションに正解は存在しません。
だからと言って、なにもせずただ悩み続けている時間もありませんよね。
そこで今回は、脳科学と心理学の中に、なんとか解決の糸口を探ってみたいと思います。
脳には、長い進化の歴史の中で種族保存や生命維持のためのプログラムとして、ある傾向が備わっています。その傾向は人によって差はありますが、現代社会を生きる私たちの脳の中で、ある程度の類似した傾向が存在するのは間違いなさそうです。
それは下記のような傾向です。
安定することで「安全を維持したい」という脳の働きが起きています。
しかし、現状が良い状況でなくても変化を嫌い、現状にしがみつこうとする癖があるようです。
良くも悪くも脳には「自分で決めたことに対する忠誠心」のようなものが発生します。
詐欺は、「自分が決断した」と思わせることで、その後、どんどん詐欺の深みにハマるように利用することがあると言われています。
上記に似ていますが、特に「なかなか人を受け入れない方」に多い傾向として、一度心を許すと逆にどこまでも心を許してしまって相手を疑わなくなるという傾向があります。
会話の中で出身地が一緒だったり、同年代だったりすると、急に親近感を覚えることがありますよね。
種族保存のために「仲間」は脳にとって大事な存在。共通項が見つかると、心の距離がぐっと近づくようです。
本当は歩み寄りたい人でも、まずは相手の出方を待つ傾向があります。
相手が「歩み寄りたい」という態度がない場合、自分から心の壁を越えるのは至難の業なのです。
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~ここでポイント~
看護師は、患者さまが「通常の状態(日常と同じ状況)」ではないことを理解する
・病気であるという不安を抱えた状況
・薬などの副作用で、普段とは違う性格になっている可能性
・症状による感情の変化。神経伝達物質の異常な分泌があるかも
・非日常の中での、「看護師」と「患者」という関係性
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前章の内容とポイントを踏まえ、看護師が患者さまに取ると有効なコミュニケーションのコツを考えていきたいと思います。
人は拒否されることを恐れます。また協力体制にある味方なのかを判断します。
関係性ができていない段階で、できるだけ相手の言動を拒否しない態度が求められます。
人は「頭」でわかっていても「心」の動きが激しい時は、理解を受け入れることが難しいものです。
そんなときに無理強いをすれば、相手に対してより固まってしまい、その後、開きづらくなってしまうかもしれません。
人は一度取った自分の言動を変更する(否定する)ことが難しい生き物です。
それを変えさせるのは、相手にとって「意外な言動」・「驚き」です。
「今までの常識が通用しない」と感じた瞬間に「新しい価値観」を探す、まさにその時に人が心を動かすのです。
感情的になっている時は落ち着くのを待つとお伝えしたが、実は理性的でしっかりしている時も、心を開かない傾向があります。
こうした時は客観的視点でこちらの様子見をしている可能性が高いのです。
そういう場合は、相手の褒めるべきところを素直に口にするのが良好な関係を築くのに有効です。
感情的になっていないので、ポジティブな内容を受け入れやすくなっています。
客観的になっているので、褒めていることを「ウソっぽい」と感じることはありますが、それでも人の脳は、褒められることを拒否しづらいので、最終的には受け入れてもらえる可能性が高いのです。
心の壁を越えるためには、ただ待っているだけではなにもできません。
そこで使えるもののひとつ目は、「言葉」です。
ただし、「言葉」は相手の心を開くことも閉じさせることもあります。
通常の状態であれば、人はポジティブな言葉を発する人に好感を感じます。
ただし、病気など特別な状況にある患者さまの場合、必ずしもそうとは限りません。
ポジティブな言葉が絵空事のように聞こえ、無理解を感じさせてしまうことがあるからです。
ハンドタッチに関しては、看護の世界でもかなり大きな効果が実証されています。
ハンドタッチを始めは拒否される患者さまもいますが、あなたが看護師というプロであるかぎり、あきらめずに続けることで、壁を越えることができる可能性は高いでしょう。
もちろん自分とその患者さまとの関係性だからこその距離感を考えることが重要ですが、ハンドタッチにはただ触れるという以上の心の交流が可能なことは、看護師さんならすでにご承知でしょう。
前章の内容を受け、患者さまになにかを積極的にしてほしい場合は、あなたが強制したり、指示を出すと、あまり効果が出ない可能性があります。
その場合は、患者さま自身に考えていただく時間を取り、ご自身が決断できるように情報を提供し、決断を待つようにしてください。
忙しい看護の中で待つことは難しいと感じるかもしれませんが、強制した場合とご自身で決断してもらった場合では、結果的にどちらが治療をスムーズにすすめることができるか、その患者さまのケースに照らして、考えてみてくださいね。
以上、駆け足で脳科学と心理学から、患者さまの心の壁を越えるためのコツを考えてきましたが、いかがでしたでしょう。始めにもお話した通り、十人十色なので、正解はありませんが、何かのヒントとなって、今、まさに心の交流を必要としている患者さまとのコミュニケーションに、少しでも役立つことを願っています。
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