日本での病棟勤務歴通算6年、現在西オーストラリア、パース市内の公立病院一般内科勤続10年目の看護師Kayです。
残念なことですが、日本でのナースのお仕事は、3K「キケン」「キタナイ」「キツイ」などと言われたり、実際はそれ以上に大変だとも言われることもあるようです。
私が日本の病棟で働いていた11年前に比べれば介護補助機の導入などで少しは良くなってきていると聞きますが、それでも、看護師さんの体への負担はまだまだ大きいのではないでしょうか?
オーストラリアの場合はどうかというと、オーストラリアのナースは色々な面で守られているんですよ。
今回はオーストラリアの看護師を守るシステムをいくつかご紹介しますね。
ナースの仕事は常日頃から危険と隣り合わせです。
せん妄や認知症の患者さんが混乱して暴れたり、時には「家に帰る」と言ってそれを止めるスタッフともみ合いにったりする場合だってあるわけです。
それ以外にも日本でも話題のモンスターペイシェント、その家族からスタッフへ向けての言葉の暴力など、身の危険を感じることも少なからずあります。
そんな時、私たちを守ってくれるのが「コードブラック」です。
このコードが発生されると病院のセキュリティーのスタッフが駆けつけてくれます。
セキュリティーと一緒に時間外の時は当番に当たっているCNS(クリニカルナーススペシャリスト。日本で言うと師長さんクラスのナースです)が駆けつけてくれて、現場スタッフから状況を聞いて、その場の問題解決を手伝ってくれます。
セキュリティーのスタッフも日本の警備員とはかなりイメージが違い、みんながっちり体系、筋肉ムキムキで刺青もバリバリ入っていて、強面の人が多いです。そんな人たちだから、ぞろぞろ病室に入ってくるだけでかなりの威圧感!
さっきまで「家に帰るんじゃ!」と杖を振り回していた認知症のおじいちゃんも借りてきた猫みたいにおとなしくなってしまいます。
混乱して暴れて仕方ない患者さんも数人で押さえてくれて、ナースが鎮静剤の注射を打つのに協力してくれます。
強面揃いなマッチョなセキュリティースタッフですが、普段は笑顔が優しい私たちの強力なお助けマンです!(もちろん女性のセキュリティースタッフもいますよ。)
ナースのお仕事はなんといっても肉体労働!
車椅子への移動介助、重たい点滴バッグが入った箱を持ち上げたり、患者さんの着替えを手伝うためにかがんだりする動作も少なくありません。
体位交換、オムツ交換などで腰を痛めてしまうナースも多いと思います。
そこで、大活躍するのがスライドシート!
私の勤めている病棟では自力でベッド上の移動が困難な患者さんの床頭台には必ずスライドシートが常備されています。
このスライドシートは患者さんの体の下に敷いて引っ張ることで体位変換をするのに使用します。
パラシュートの素材でできているのでとても軽くてシートどうしの摩擦が少ないので滑りやすく、患者さんをベッド上で動かすのにとても便利です。
最近では日本の介護用品の中でも見かけるようになりましたが、初めてこのシートを見た時はその便利さにかなりの衝撃を受けました!
スライドシートよりももっと衝撃を受けたのは「ホイスト」です!
オーストラリアでは看護師の怪我を防ぐために患者さんを持ち上げることはしません(この事はまた後でお話しします)。
日本と違ってお年寄りでも体格がいい人が多いので持ち上がらないのです!
そこで、ベッドから車椅子や車輪のついたシャワーチェアー、リクライニングシートなどに移動させる時に使うのがこのホイストです!
ホイストとは自力で歩行や起立、座位保持の難しい患者さんをスリングで釣り上げて移動させる機械です。
「患者さんを機械で釣り上げるなんて!?」と感じるかもしれませんが、患者さんにとっても腕や肩、膝や腰に負担をかけることなく安全に移動させることができる優れモノなんです!
機械によっては秤も付いていて、移動の最中に体重測定だってできちゃうんですよ!
このホイストは各病棟に2個常備されており、その他に天井に固定されたシーリングホイストが付いた部屋が4部屋(2人部屋、4人部屋、個室2部屋)あります。
安全上、ホイストを使うときは2人必要ですが、それでも移動させるのが難しい患者さんもいますし、腰や膝の負担もないので大助かりです。
1998年からオーストラリア全国で「NO LIFT POLICY(ノーリフトポリシー:持ち上げない運動)」が始まり、看護現場でスライドシートやホイストなどの介護補助器を使うことが浸透しそれに伴い看護師の怪我や労災が減少したとの報告があるんですよ。
私の働いている病院ではスタッフを怪我から守るためにナーススタッフは「マニュアルハンドリング(人力作業)講習」を年に一回必ず受けなくてはなりません。
これは、ボディーメカニクスを考慮した介助者の体の負担を軽くする動作や患者さんの支え方の講習です。
この講習でもスライドシートの安全、有効な活用法なども習います。
時間に追われてつい無理な態勢で患者さんを支えたりしてしまいがちですが、年に一回でもこの知識をリフレッシュさせることで、「自分の体を怪我から守る」という意識づけもリフレッシュされるのでスタッフの体への負担もだいぶ軽減されると思います。
いかがだったでしょうか?
これはほんの一部ですが、オーストラリアではこうやってナースが守られているので私たちも安心して働くことができます。
「安心安全」これはこっちで働き始めて強く感じたことの一つです。
もちろん、看護の仕事は大変ですが、こういったサポートがあるのでストレスや怪我が減りのびのびと働けるのだと思います。
日本でもこうした看護師の身を守るための教育や安全への取り組みが進むといいですね。
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