最近、親しみやすく触れ合えるアイドルのことを自分の恋人だと勝手に思い込み、傷害事件に発展してしまったという悲しい事件がありましたが、看護師も仕事上でひとに親身になってケアをするために、患者さんから恋愛感情をもたれてしまい困惑するというケースが実際に起こっています。
今回は、人が人になぜ執着してしまうのかという恋愛脳のメカニズムを理解し、患者さんから一方的に好意を寄せられて、困惑してしまう場合の対処法を考えていきたいと思います。
人間は目のすぐ上にある前頭眼窩皮質という脳の部位で恋に落ちます。ここはホルモンを出す部位とつながっていて、恋愛ホルモンと言われているテストステロン(女性の場合はエストロゲン)や快楽を感じさせるドーパミンなどを分泌しています。
この恋愛ホルモンには中毒性があると言われており、食事や睡眠を取れなくてもハイな気分にさせたり、恋愛対象を欲するようにしたり、会えないことを苦しくさせたりするのです。
恋愛という形をとった執着。実はこれは相手を想う気持ちではありません。執着は、自分の満たされない思いを相手に求める一歩的な欲求です。「愛されたい」「認められたい」という自己愛であって、「相手を好き」なわけではないのです。
つまり、このような執着を受けてしまったら、その人はあなたを求めているのではなく、その人の「理想」を求められていると思って下さい。そして、あなたは「その人の理想ではない」という態度を取ることが大切です。詳しくは「対処法」でご説明します。
高齢化が進み、医療現場にも高齢者の患者さんが増えていますよね。ご高齢の患者さんは、尊敬するべき人生の大先輩ですが、ときに可愛らしい佇まいやおおらかな優しさで、看護師に癒しを感じさせてくれる存在だという声もよく耳にします。良好な関係性の中で、こうした微笑ましいシーンがあるのはありがたいことですよね。
しかし一方で、近年、高齢者のストーカーが増えているというのも悲しい事実。
仕事熱心に高度成長期を作ってきた世代が定年退職を迎え、バリバリに仕事をしていたころの強い自尊心を持ち続けたまま、女性に強い執着を持ってしまうというケースが増えているというのです。今まで仕事に注いできた熱を恋愛に集中させるため、こうした高齢者ストーカーが増加しているのではと言われています。
恋愛は自由ですし、年齢も関係ありませんが、看護師が仕事としてご高齢の患者さんに寄り添い、良好なコミュニケーションを図ろう接していたところ、こうした一部のご高齢の患者さんから、強い好意をよせられてしまうのです。
しかも看護師は、それが恋愛感情だと気づかずに親身な対応をし続け、その結果、ストーカー行為にまで発展してしまったというケースが増えています。
これは飲食業などの接客業でも多く、問題になっています。
また一般の患者さんでも、身体と心が弱っている時に親身に世話をしてくれた看護師を恋愛対象として見てしまうというケースはあるようです。
問題なのは、それが一人の個人として見ているのではなく、「白衣の天使」というイメージに依存するというケースです。
近代はメディアやゲームの影響を受けた世代の子どもたちが成人しています。彼らの中には、現実的な女性に恋愛に挑むより、看護師という役割に恋愛することの方が楽だという人がいるそうです。
しかし、一度恋愛をしてしまえば、それはバーチャルな世界で留まることができず、現実に存在している看護師に向けられてしまうこともあるのです。
ストーカーの脳は自己都合の塊です。相手の気持ちを考えることなく、自分の欲求を求めるのは恋愛ではなく迷惑行為です。もし、看護師がこのような患者さんに出会ってしまったら、本来の仕事をすることが難しくなってしまうのです。
まず始めに、人と人が恋愛をするのは自由です。それが患者さんと看護師であってもです。
しかし、まったくその気のない相手から一方的に寄せられる恋愛感情に困惑しているのであれば、毅然とした対応をすることが求められます。
◇「自分は職業看護師として、患者さんである相手に接している」という認識をしっかり伝える言動をする。
◇白衣の天使ではなく、1個人として人格を持っていることを相手にわからせる。
◇看護師長や部長に相談するなど、看護師全体でその患者さんの経過のひとつとして捉える。
◇プライベートでは絶対接触しない。
◇相手に気を持たせる、勘違いさせる言動は絶対しないように気をつける。
◇悪質なケース、身の危険を感じたら警察に相談し、周囲の人にも知らせておく。
※警察は看護師と患者さんという関係上、介入が難しいのが現実です。
迷惑行為などの証拠があれば、それを提出できるようにしてください。患者さんは健康になんらかの問題があり、日常生活が送れない不安な状態。看護師として、そんな患者さんに寄り添う看護はとても素晴らしいことです。
しかし、残念なことに一部の患者さんから、過度の好意を寄せられ困惑している看護師がいるのも事実です。
看護師の身の安全のためにも、患者さんのためにも、しっかりと関係性に線を引く態度を取り、その上で患者さんに寄り添う看護をすることが求められています。
それには受け持ちの看護師一人でではなく、全体で看護をしていく意識を、職場全員が共有していくことが大切なのです。
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