
在宅医療の最前線で活躍する訪問看護師へのインタビューシリーズ。今回は「株式会社フレアス 訪問看護ステーション水戸」に勤務する坂尾袖衣(さかおゆい)さんを取材。訪問看護のやりがいや大切にしていること、思いについて伺いました。
プロフィール
坂尾袖衣(さかお ゆい)さん
「株式会社フレアス 訪問看護ステーション水戸」(茨城県)勤務。看護学校卒業後、急性期病院にて約4年勤務。外科や内科、救命救急センターでの勤務を経験したのち、2021年5月より開設と同時に現職で勤務。
——現在の職務内容について教えてください。
当ステーションは2021年5月に開設したばかりの訪問看護ステーションです。車で利用者さまのご自宅を訪問しケアを行っています。訪問範囲はステーションからおよそ20キロ圏内の水戸市全域で、可能であれば周辺市内へも訪問しています。水戸市は信号が少ないので、長距離の運転がしやすい地域です。現在、1日の訪問件数は多ければ3~4件、少ないときで1~2件です。利用者さまは誤嚥性肺炎で点滴の処置が必要な方や、ご自宅でリハビリが必要な方など、慢性的な疾患を抱えている方が多くいらっしゃいます。当ステーションでは受け持ち制を取り入れており、ケアはメインの受け持ち担当と、サブの受け持ち担当の2人体制で行なっています。
——訪問看護師になるまでの経歴を教えて下さい。
看護師免許を取得後、新卒で急性期の病院に入職し約4年経験を積みました。担当したのは外科や内科、救命救急センターを支援する混合病棟です。病棟では、救急で運ばれてきた患者さまの処置の方針が決まるまでの対応や、状態が安定した患者さまの対応などを学びましたね。その後、株式会社フレアスへ入職し、2021年5月の立ち上げと同時に当ステーションへ配属されました。
——訪問看護師として働こうと決めたきっかけは何ですか?
看護師1年目のときに、当時の看護師長から訪問看護の仕事内容を聞いて興味を持ったことがきっかけです。看護師長は訪問看護の経験が豊富で、「退院した患者さまの自宅に伺った際に、トイレが和式で介助が大変だった」など、在宅の利用者さまの看護について聞く機会がありました。そのときに、在宅看護ではどんなことをするのか興味が湧きましたね。また、患者さまの退院支援をした際に「ご自宅に戻られたあとの生活状況はどうなっているのだろう」「在宅支援で自分にできることはないか?」と考えるようになり、訪問看護師になりたいと思ったんです。
——訪問看護師になるのに不安はありましたか?
ありました。看護師長に訪問看護の仕事内容を聞くことはありましたが、看護実習でしか訪問看護を経験していなかったので、どのように業務を進めるのかイメージが湧かなかったんです。「何を勉強したら良いのか」「今までの経験が活かせるか」など、不安を感じました。未知の世界へ挑戦するような感覚でしたね。しかし、実際に訪問看護をしてみると、利用者さまの看護についてだけでなく、ご家族との関わり方や保険制度など学べることが多く、大変だなと思うこともありますがやりがいも感じています。
また、当ステーションには20年の訪問看護師経験を持つ管理者がおり、初回の訪問時は同行してもらいました。現在もどういう風に看護をしているのか技術を学ばせてもらっています。すぐに相談にも応えてくれるので、入職して2カ月経った今では安心して看護ができています。

——病院での看護と訪問看護でギャップはありましたか?
良い意味でギャップがありました。勤務面では、夜勤がなくなり日勤のみの勤務で生活リズムが整い体が楽になりましたね。業務面では、物品の取扱いにギャップを感じました。病院では物品は常備されていますが、訪問看護では利用者さまのご負担でご用意いただくため、数や種類が限られます。そのため、足りないものがあれば代替物を探して使うという、臨機応変な対応が求められるんです。看護師としての経験やスキルが鍛えられていると感じますね。
——訪問看護のやりがいは何ですか?
自分が行った看護ケアの反応を間近で見られる点にやりがいを感じています。病棟で勤務していたときは、短い時間で一日に何回か患者さまの病室を訪ねて状態を把握していたため、じっくり話を伺えずもどかしさを感じていました。
しかし訪問看護では、ご自宅にいる間中、一人の利用者さまとしっかり向き合えます。お話を聞いてご本人にあったケアを考え実行する中で、ちょっとでも良い反応があるとうれしいですね。
——印象に残っている利用者さまとのエピソードを教えてください。
状態が良くない利用者さまを担当したときに、命や死について考えたのが印象に残っています。その方は、ずっと点滴をしながらご自宅で過ごされていました。点滴やケアを続ければ、日々を過ごすことはできますが、苦しい時間が続いてしまうのではないかと悩むことがありました。「人工呼吸器をつけることや、点滴を継続することが看護ケアとして最適なのか?」「どういった治療を継続するのがベストか」など、訪問看護の経験が浅い自分が考えて判断するのは難しいなと感じましたね。そのため、こういった場面に直面したときにきちんと説明できる看護師にならないといけないと思いました。

——訪問看護で意識していることは何ですか?
訪問時に利用者さまのニーズを引き出すことを意識しています。利用者さまやご家族が「何を求めているのか」を把握することは、看護ケアをする上で大切です。そのため、利用者さまがご自身の意見を言いやすいように、最初の挨拶や接遇に気を付けています。ほかにも、目線の高さを合わせてお話したり、声のトーンを変えたりするなど工夫しています。
——訪問看護師に挑戦して、良かったと思う点は何ですか?
病院と在宅での看護の違いを知れた点です。病院では社会のルールやマナーを学ぶ機会がほとんどなかったのですが、訪問看護では利用者さまのご自宅に伺うため、マナーに注意しなければなりません。また、病院と在宅の看護では利用者さまを見る視点や、医療の提供の仕方が全く違うことが分かりました。難しいと感じることも多いですが、勉強になると感じています。
――これからどう成長していきたいと考えていますか?
私が訪問しただけで「来てくれてありがとう」「さかおさんが来てくれて元気がでた」と言ってもらえるような訪問看護師になりたいですね。また、現在3つの分野に興味があって、認知症ケア・緩和ケア・褥創ケアのどれか1つでも極めたいと考えています。スペシャリストになって、これからの在宅医療に活かせたら良いなと思います。
——ありがとうございました。
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