こんにちは! 私は児玉のぞみ、つばさ病院循環器病棟のナースです!!
あれ、「新人ナースです」って言わないの? と思いました?
ふふふ。私は最近、夜勤にも慣れて、重症度の高い患者さんも受け持たせてもらえるようになったんです。少し前の話ですが、受け持った患者さんが回復されて退院していったんですよ! あの時は嬉しかったなあ。「看護師になってよかった!」って初めて思いました。
その方は谷崎さんという心不全で再入院された患者さんでした。安静にしていれば普通に過ごせますが、少しの運動でも疲労されてしまうので、上半身を起こす際にも谷崎さんに負担がかからないようものすご~く気をつけていました。
谷崎さんのお部屋に行ったら、まずは部屋の温度と湿度が適性かを確認。食事は「薄味すぎて食欲が出ない」とおっしゃるので、プリセプターの及川先輩に相談して、栄養士さんに少し酸味を足してもらいました。すると谷崎さんの食が少し戻られたんです。でも、食べ過ぎるとむくんでしまうので、水分コントロールには注意です!
谷崎さんにとってはつらい我慢の日々でした。そんな中、少しでも毎日を楽しく過ごして欲しいと折り紙でクリスマスツリーを折って飾ったら、谷崎さんは「季節感があって病室が楽しくなったね」ととても喜んでくださいました!(折り紙はイマイチの出来でしたが…)。
そんな谷崎さんが退院されて1ヶ月が経った頃、谷崎さんの奥様が突然、及川先輩と私を訪ねていらっしゃいました。谷崎さんが亡くなられたというのです。
まだ中学生の娘さんと奥さんを残し旅立たれたなんて、谷崎さん……。
私は一瞬、頭の中が真っ白になりました。そこに谷崎さんの笑顔が浮かんできたのです。
私は奥様に向かって、谷崎さんが人知れず頑張っていた姿や、私に話してくださったご家族への思いをとにかく伝えたくて、何を言っているのかわからないくらい必死で話しました。
私の話を静かに聞いてくださった奥様は、少し涙ぐまれてこう言いました。
「児玉さん、本当に主人がお世話になりました。あなたが担当でよかったわ。再入院の時、主人はすごく落ちこむと思ったんだけど、『すごい前向きな看護師さんが担当だから、なんだか大丈夫な気がする』って笑っていたんですよ、あのひと」
申し送りを終えてロッカーへ戻った時、及川先輩が追いかけて来ました。
「私、何かやらかしたのかな?」と思っていると、心配性の及川先輩のハの字眉が、ぎゅっと縮まってへの字になりました。
「せ、せんぱい!?」
及川先輩の目はウルウルしています。
「児玉さん、さっきのご家族への声かけ、きっと届いたと思うよ!!」
及川先輩はそう言い残すと去っていきました。
な、なんだ!? でも、褒められたってことかな?
この日は珍しく、別の病棟に勤務する看護学校の同級生であり看護師寮のルームメイトでもあった親友の高橋ひかりも夜勤明け。夜勤に入るようになってからお互い忙しく、あまり会えていなかったので、今日はランチの約束をしていました。
待ち合わせの場所へ行くと、ひかりはすでに私を待っていて、明るい笑顔で手を振っています。寮生活の頃、毎日見ていたその懐かしい、お姉さんのような笑顔に……。
……あ、ヤバい……。
ひかりの顔を見たとたん、私は公衆の面前にもかかわらずこみ上げるものが……。ああ、もうダメだ~~。
「ひかり~~~」
私はひかりに駆け寄ると、抱きついて声をあげて大泣きしてしまいました。
谷崎さんにもっとしてあげられることがあったんじゃないのかな?
奥さんにもっと伝えられることがあったんじゃないのかな?
私はあんな感謝の言葉をもらったのに……。ああ、ふがいないよ~~。悔しいよ~~。
私は、まだまだ未熟者でした。
わけも言わずに泣きじゃくる私を、ひかりは黙って抱きしめてくれていました。
私はやっとの思いでひかりから離れると言いました。
「わだ、わだし、まだまだぜんぜんだった~。か、看護師ってつらいよ~。でも、でもね、ひかり。私ね、今の自分にできることを、できるだけやっていこうって思ってて……。それが今、私ができる『看護』だって思ったの……」
あえぎながら話す私の頭を、ひかりはポンポンと優しく叩いてくれました。
「のぞみ、頑張ったんだね」
それを聞いたら、また涙が~~~。ひかりはまた私をギュッと抱きしめて、
「これからも、どんなときも、お互い支え合って頑張って行こうね」
と言ってくれました。
つばさ病院、新人ナース児玉のぞみは、いい友達やいい先輩に囲まれて今日も頑張っています! 一人前のナースにはまだまだ及ばないけれど、いつかまた「看護師になってよかった」と思えるように、患者さんのためにできることがもっと増えるように、今の自分を越えて成長していきたい!! と思っています。
「~新人ナースケーススタディ~のぞみ」は最終回です。
今までお読みくださったみなさまに深く感謝申し上げます。ありがとうございました。
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