お役立ち看護師マガジン
2018.12.25
深部静脈血栓症を指すDVTは、臨床でよく耳にする言葉のひとつかと思います。血栓の生成を防ぐため、抗凝固剤を内服している患者さんも多くいますよね。実は、入院患者さんの多くがDVTの危険因子を持っていると言われています。DVTは「深部静脈に血栓が形成されるもの」ということは理解していても、症状や観察項目などを詳しく説明できないという人もいるのではないでしょうか。
「今さら聞けない看護技術・ケアQ&A」第3回のテーマは、「DVTの観察項目が知りたい」。DVTの疑いがある患者さんの観察項目について、なぜそれが重要なのか一緒に学んでいきましょう!
病棟で勤務している3年目の看護師です。先日、下肢にDVTの疑いのある患者さんが入院され、私が担当することになりました。これまでDVTの患者さんを見たことがなく、どのような看護をすれば良いのかわかりません。
DVTの疑いがある患者さんの観察項目で、注意した方が良い項目について教えてください。
DVTは四肢の深部静脈に血栓が形成される病気で、通常は下肢で発生します。看護師がDVTを見抜くために注意すべき観察項目には浮腫、疼痛、腫脹、皮膚の変色などがあります。
DVTは、深部静脈に血栓が形成される病気です。この血栓が脳や心臓に飛ぶと脳梗塞や心筋梗塞を引き起こします。また、血栓が剥がれて血流に乗って移動し、肺の血管に詰まると肺血栓塞栓症を引き起こします。肺血栓塞栓症はエコノミー症候群とも呼ばれ、死に至る可能性があります。
DVTの発生頻度はここ10年ほどで約30倍にも増加しており、DVTによって急性肺血栓塞栓症を起こした場合の死亡率は14%以上とも言われています。更に、心原性ショックを起こした場合の死亡率は30%という非常に高い数字となっています。そのため、DVTを早期に発見し、適切な医療処置を行うことが重要になってきます。
血栓が形成される誘発因子には「血液成分の変化」「血流の変化」「血管壁の変化」があり、これらはウィルヒョウの3要素と呼ばれています。これらの因子は先天性因子と後天性因子に分類されます。後天性因子には、手術・検査・治療・長期臥床などがあり、入院患者さんのほとんどが危険因子を有していると言えます。
危険因子には、具体的には以下のようなものがあります。
・長時間の同一体位
・四肢麻痺がある
・ギプス固定をしている
・静脈内カテーテルを留置している
・手術や集中治療による絶対安静
・術後(特に整形外科領域)
・悪性腫瘍の治療中
・血栓ができやすい素因がある(血液性)
・止血剤や女性ホルモン薬を服用している
・以前にDVTを発症したことがある
DVTの症状としては、浮腫、疼痛、腫脹、皮膚の変色、緊満感、倦怠感などが挙げられます。しかし、DVTの患者さんの約半数は無症状であり、脳梗塞や心筋梗塞、肺血栓塞栓症による症状が異常を知らせる最初のサインとなることもあります。
脳梗塞では、しゃべりづらさや手足のしびれなど、心筋梗塞や肺血栓塞栓症では、胸痛や息苦しさなどが出現します。片方の足が急に痛くなったり、腫れたりする時は、DVTの可能性があるので注意が必要です。
これらの症状は、DVTを早期に発見するための観察項目と言っても良いものばかりです。さらに詳しく説明していきます。
・疼痛や腫脹、皮膚色の変化
下腿が急に腫脹し疼痛が起こります。血栓が形成されたことにより血流がうっ滞し、下腿の腫脹や疼痛が出現したり、発赤やチアノーゼが出現して皮膚色が変化します。片側だけにこのような症状が起きた場合は注意が必要です。すぐに医師に報告する必要があります。
・大腿部や腓腹部(ふくらはぎ)の左右差
定期的に大腿部や腓腹部の太さをモニタリングし、左右差を認めた場合は医師に報告します。DVTでは、左右を比較して1cm以上の周囲径差を認めます。
・浮腫
DVTによる浮腫は、塞栓によって循環障害が起こり、片側だけに浮腫が起こります。心不全や低アルブミン血症などでは両側に浮腫を認めるため、浮腫の観察では両側か片側かを観察し、DVTかそうでないかを判断することが重要です。
・Homansテスト(ホーマンズ徴候)
下腿に血栓があると、膝を軽く押さえて足関節を背屈させると腓腹部に痛みが生じます。これをホーマンズ徴候と言い、血栓の有無の判断に使用される場合があります。
・Loewenbergテスト(ローエンベルグ徴候)
下腿に血圧測定用のカフを巻いて加圧していくと、60~150mmHgの圧で下腿に痛みが生じます。腓腹筋の圧痛は、DVTの徴候のひとつです。
・表在静脈の怒張
表在静脈の怒張が見られた場合は、その上の位置に血流障害があることが多いとされており、DVTを疑う観察項目のひとつです。
・呼吸困難や胸痛
血栓が肺動脈に詰まり肺血栓塞栓症となり、肺梗塞が起こった場合には、呼吸困難や胸痛が出現します。長時間安静状態にあった人が臥床した状態から座位になった際に、呼吸困難や胸痛が出現した場合は、DVTから急性肺血栓塞栓症を発症した可能性があります。これらの症状も頭に入れておくべき重要な観察項目です。
また、DVTが原因で血栓が詰まった際、すぐには症状が現れない場合もあります。DVTのリスクが高い患者さんに対しては、定期的に心電図やSpO2のモニタリングを行い、異常の早期発見に努めることも大切です。
DVTは、入院により発症リスクが高まり、また一度発症すると再発の可能性も高くなります。お話してきた観察項目は、日常の中で意識しながら観察していれば、気付くものがほとんどだと思います。患者さんの身近にいる看護師の観察力が、DVTの早期発見につながると言えるでしょう。これらの観察項目をしっかり頭に入れて看護に活かしていってくださいね。※この記事は、看護のお仕事が運営する看護技術に特化したQ&Aのサイト「ハテナース」からの引用です。
ハテナースでは今さら聞けない看護ケアに関する質問に親切に解説しています。
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