看護師マガジン
2019.8.22
元看護師で現在はお笑いタレントとして活躍中の
おかずクラブのオカリナちゃん。
9年間にわたる山あり谷ありの看護学生・看護師時代とこれまでの出会いに感謝するオカリナちゃんの本音トーク。
まずはオカリナワールド全開でお送りする
看護学校時代から上京までの前編をお楽しみください!
~PROFILE~
オカリナ(おかずクラブ)
1984年生まれ、宮崎県出身。高校看護科、看護専門学校、看護師として病院勤務を経て、吉本お笑い養成所NSC東京校入所。現在、相方ゆいPとともに女性お笑いコンビ・おかずクラブとして活躍中。
ーーー高校から看護科ということは、中学の頃から看護師になりたいと・・・
オカリナちゃん:そうなんです。中学校の頃、祖母が脳梗塞で二回倒れたんです。一回目の時は祖母とは別々で住んでたんですけど、それがきっかけで一緒に暮らすようになったんです。それからしばらくして二回目の脳梗塞で祖母が倒れたんです。
当時、私はいつも親に起こしてもらっていたんですが、その朝は親が起こしに来なくて、なんでだろうと思って2階から下りたら、祖母が二回目の脳梗塞を起こして意識がない状態だったんです。
母が准看護師をやっていたので、応急処置をしていたんですよね。救急車を呼んだりハサミを持ってきて服を脱がせたりとか。とにかくビックリしたのを覚えています。身内が目の前でそういう風になるのを見たのが初めてだったので。
「人は死ぬんだ」ということを頭では分かっていても、身近な家族にも起きるんだっていうのがその時はちゃんと理解できてなかったんです。そのとき、親もいつかこんな風に体が悪くなるのかなって想像したら、医師は無理でも看護師には頑張ればなれるんじゃないかって考えたんですよね。看護師だったら普通の人より家族の体調にも気づけて、助けられるんじゃないかなと思ったのが、看護師を目指したきっかけです。
その時、母に「看護師になりたい」って言ったんです。そしたら「いいじゃない」って言ってくれて。
ーーーじゃ、お母さんの後押しもあって15歳で高校から看護科へ。
オカリナちゃん:そうなんです。それで高校は看護科で、しかも寮に入らなきゃいけないところに行ったんですけど、母は私に看護師を勧めたことを全然覚えていなくって。
「なんでうちの子は15歳で(家を出て看護の道に)行っちゃったのかね」って言ったんですよ。
「えっ!お母さんが言ったからだよ」って言いましたけど。(笑)
長い看護師ライフを決定づけたひと言、・・・お母さんは忘れてた。
ーーー高校から看護科に入ってどうでしたか。
オカリナちゃん:寮がマジで嫌でした。(即答!)宮崎県って広いんで遠くから来ている子も多いし、実習とか始まると帰りが遅くなるので看護科の子たちは半分くらい寮に入ってたんです。今は少子化だからどうかわからないですけど、そのときは3人部屋だったんですよ。それも1年生2年生3年生の3人部屋で、とにかくルールが多くて。
ーーー1年生がいきなり先輩と同じ部屋って大変そうですね。
オカリナちゃん:そうなんです。部屋の半分に2段ベッドが置いてあって、もう半分にベッドが1個あるんです。部屋の半分はまるまる全部三年生の先輩の敷地で、二年生の先輩が二段ベッドの下と部屋の残り半分。一年生は二段ベッドの上だけ。居場所はベッドの上しかないので、ほんとにベッドひとつ分が自分の世界でした。
他にもとにかく意味のわかんない決まりもいっぱいあって嫌でした。誰もいない洗面所に挨拶して入るとか、お風呂は3年生しかシャワーを使っちゃいけないとか。パジャマ着ちゃいけないとか。
寮は係も多くて、消灯も全部1年生がやらなきゃいけないとか、掃除とか炊事、お風呂当番とか。特に炊事当番は嫌でした。お弁当のおかずは寮の人がを作ってくれるんですけど、炊事当番が早起きして詰めないといけないんですよ。「あーー今日はこのお弁当食べるんだなぁ」とか「あんまり美味しそうじゃないなぁ」とかって思いながら詰めるんですよ。お昼の楽しみも無い感じですよ。(苦笑)
きびしい寮の話もオカリナちゃんが話すとなんか面白い
ーーー学校や勉強はどうでしたか。
オカリナちゃん:勉強はやっぱり大変でしたね。高校から看護科の専門科目をやるので、ほかのクラスの子が早く帰れる日でも看護科は遅いんですよね。私が高校に入学した頃にちょうど週休二日制が始まったんですけど、うちの学校は私立だから第二第四の土曜日しか休みがなくて、「なんでだよ」って思いながら通ってました。
あと校則も厳しかったんですよ。髪もみんな切らされてました。私は短かったからあんまり影響なかったけど、長い髪で入学した子は全員バッサリと。耳と襟足、眉毛は見えるように切らなきゃいけなくて、 看護科はほんと厳しかったです。
看護学校の規則厳しくなかったですか?髪とか切られませんでした?
ーーー(看護師編集者K)きびしかったですけど、そこまででは…。
オカリナちゃん:どちらの学校ですか。
ーーー(看護師編集者K)埼玉です。
オカリナちゃんと同世代の看護師編集者Kに、同意を求める
オカリナちゃん:だからじゃないですか。地方はきびしいんですよ。
ーーーでも、そんなに学校や寮が厳しくても、「看護師になりたい」という気持ちは3年間折れなかったんですか?辞めたいとは思わなかったですか。
オカリナちゃん:いやいや、入学一日目で思いましたよ。「失敗した!」って。
私が、もっと心が強かったら辞めてたかもしれないです。
辞める勇気もないから、続けたのもあります。
ーーーなるほど。心が強ければ辞められたと。
ーーーそのあとも看護師の道をあきらめることなく看護専門学校に?
オカリナちゃん:そうなんです。高校のときから病院奨学金を借りてたんで、返すためにも専門学校に行かない(看護師にならない)っていう選択肢はなかったですね。だけど、行きたかった学校は落ちちゃって。二次募集をやってる学校が香川にしかなかったんです。それで、受かって香川に行きました。
ーーー専門学校は寮ではなく一人暮らしですか?
オカリナちゃん:一人暮らしでした。
ーーー楽しくなりましたか。
オカリナちゃん:それが、楽しくはなかったです。(また即答!)
本当は寮のある学校に進学予定だったのに落ちちゃったから、友達もいないところで一人暮らしになったっていうのが。しかも、最初下宿みたいなところを選んだんですけど、いざ行ってみるとほかに誰も住んでいないようなところで怖くて怖くて。たった1日で「変えてください」って親に断ってもらって、急遽別のところに住んだんですよ。
ーーーその後、国試を経て関東の病院に就職するわけですね。
オカリナちゃん:それが、わたし国試落ちちゃったんですよ。受かると思ってて完全になめてたんですよね。国試の試験前って学校が早く終わるから、本来は過去問を問いたりとか自主勉強する時間に当てるべきなんです。でも私、そんなに成績が悪くなかったのと模試の結果も悪くなくて、90%以上受かるって判定が出てたんで絶対受かると思ってたから、みんなが勉強しているとき、「香川での生活も最後だわ」とか思って、香川の行ったことない店とか行ったりして遊んじゃってたんですよね。そのとき一緒に遊んでた友達も落ちちゃって、
「あー、ちゃんと落ちるんだな」っていう地獄が待ってました。
ーーー「やっちゃった……」って感じですね。
合否結果が出るのは、就職で上京する準備もしていた頃ですよね。
オカリナちゃん:いや、もう寮に入るために上京しちゃってて。落ちたのを秋葉原で聞いたんですよ。最初友達が調べてくれて「受かってるよ」って言うんで、学校に電話したら「いや、落ちてるよ」って。「え、ええーー!本当ですか?!」って。一緒にいた友達に「ごめん先帰るわ!」って。
国試不合格を語るオカリナちゃん、・・・本当にツラそうだ
ーーーそれは焦りますね。
オカリナちゃん:もう後悔ですよね。精一杯やって落ちたのではないから後悔がすごいんですよね。やってなかったって自分が一番わかってるんで……。病院に入る同期が7人いたんですけど私だけ落ちてて、なのに国試の手続きに落ちているのに一緒に行かなきゃいけなくて。その時間が人生で一番嫌だったかもしれない。合格祝いの買い物にも連れ回されたりして、ほんとすごくみじめな時間でした。
ーーーもう一年待つわけですもんね。
オカリナちゃん:そうです。
ーーーそれは東京で働きながらですか?
オカリナちゃん:そうです。病院によっては正看じゃないとダメですってところもあるんですけど、私が働いていたところは准看としては働かせてくれるっていうので、1年間働きながら来年の国試を待つ感じでした。
ーーー横では同期のみんなが正看で働いてるからつらいですよね。
オカリナちゃん:そうなんですよ。自分だけ基本給違うってわかってるじゃないですか。まぁ受かればよかった話なんですけど、割り切れるまでは辛かったです。
だからこれから受ける人には、ちゃんと努力してほしいなって思います。
国試はナメていると本当に落ちるので。
90何%の合格率が出てて落ちるのは本当みじめですよ。
だってちゃんと勉強してたらほんと落ちないですから。
ーーー(看護師編集者)クラスに1人か2人いるかいないかくらいですよね。
オカリナちゃん:そうそう。1人いるかいないか。
だから今でも、ときどき「国試、クラス全員合格しました」ってツイッターで流れてきたりすると、「ああー、落ちている子はしんどいだろうな」って思っちゃいますもん。
・・・・続きは後編で。
なかなかヘヴィなオカリナちゃんの看護学生時代。
この挫折や後悔の10代を経て、オカリナちゃんの20代ははじまります。
インタビュー後編では、オカリナちゃんの「上京→就職→お笑い芸人の道へ」踏み出す過程を語ってもらいました。看護師の皆さんにとってオカリナちゃんがぐっと近くに感じるエピソードも。ぜひお楽しみください。
*インタビュー後編はこちらから(https://kango-oshigoto.jp/media/article/2499/)
撮影:森信英 (GEO)
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