
「は?あなたが休む必要があるの?」
これは、看護師の僕が育休取得を相談したときに、師長さんから言われた言葉です。
みなさんは「男性看護師の育休」ってどう思いますか?
2022年10月に「産後パパ育休」がスタートし、メディアでも連日男性の育児休業が話題になりましたね。
しかしながら、厚生労働省の「令和4年度雇用均等基本調査」によると、2022年に男性で育休を取ったのは約17%と、まだまだ少数派のようです。
厚生労働省「令和4年度雇用均等基本調査」(2024年3月18日参照)
僕自身は、第2子が生まれた2017年に院内で初めて男性看護師として育休を取りました。
そこで僕の実体験をもとに、育休取得で感じた不安や師長さんとバトった経験を伝えたいと思います。


「第2子が生まれたら、今度は絶対育休を取りたい!」ひそかに僕は決心していました。
実は第1子のときも育休を取りたいと考えていたのですが、当時院内で新しい部署に異動したばかりだったため、泣く泣く断念したんです。
その結果、子どもが熱を出したのに妻に任せっきりで仕事に行ったり、夜泣きで大変だったのに夜勤で疲れ果てて手伝えなかったり…。その上、初めて立った瞬間は仕事で立ち会えなかったんです。このときの妻への申し訳なさと後悔がずっと心残りでした。
本音を言えば、2人目は1年間育休を取って妻とじっくり子育てしたい、でも僕の職場では当時、男性のスタッフの育休取得の前例がなくて。
第1子のとき生まれてすぐの1ヶ月間がとにかく大変だったことから、せめて…という思いで、生後1ヵ月までの間で育休を取ることを決意しました。
育休中は妻を助けるためにも「授乳以外はすべてやろう」くらいの熱量で動きました(笑)。看護師なので、おむつ替えも特に抵抗はありませんし。
妻からは「夜は私が頑張るから、昼間は寝かせてほしい」と言われたので、昼間は妻を起こさないように子どもと過ごすことに全力投球。
ただ、やんちゃ盛りの2歳の長男と生まれたばかりの次男。どうやったら静かに過ごせるか、かなり苦戦しましたね(笑)。

妻に当時のことを聞くと、「育休を取っても何もしない人もいるだろうけど…ちゃんとするもんね!助かるなあと思ってた!」と。

夫婦間では育休取得について話し合えたものの、もちろん不安はありました。
ここでは、男性が育休を取るときに感じる不安を僕の実体験をもとに紹介します。
この話を聞いたことがある方は少なくないでしょう。
たとえば、看護師の世界で昇進するためには、看護師長の推薦が必要です。1ヵ月でも育休を取ると、残されたスタッフに負担がかかり、結果として看護師長からの印象も悪くなります。
ましてや僕の病院では、育休を取った男性看護師はおろか、他職種の男性を含めても前例がない。だから、そのような環境下で育休を取ることが、自分のキャリアに傷をつけないかは正直少し不安でした。
実は子どもが生まれる前までの僕は仕事1本で、
と思っているタイプでした。
そのため、管理職への憧れもゼロではなかったんです。
でも、管理職になれば、定時で帰れなくなるどころか、毎日2時間の残業もザラ。
僕は昇進したいのか?家族との時間を大事にしたいのか…?と改めて考えた結果、「出世できなくても、子どものそばにいる時間を増やしたい」と、育休を取ることに納得できたんです。

子育て予定の男性看護師のなかには、育休を取るべきか、キャリアを重視するべきか迷っている方は多いでしょう。
キャリアのことは子育てが落ち着いてからでも考えられるかもしれませんが、子育てって今しかできません。
そして、何より奥さんは出産後、十分に身体が回復していません。
今は産後パパ育休の制度もありますし、大変な時期を家族で一緒に乗り越えるために、育休を取りましょう!
育休を取ることをスタッフに伝えるまで、
という点がひたすらに不安でした。
当時の僕は、病棟経験も約10年目。組織の中ではだいぶ上のほうで、僕の先輩に当たるのは管理者と数人のスタッフのみ。
普段は、先輩と後輩の関係で仕事をお願いしたときに気持ちよく対応してくれるものの、今回の件はどうだろう…?
そんなふうに、師長さんのことよりも、スタッフに嫌われるんじゃないか?ということを気にしていました。
2人目育児に当たり妻の収入が減るなかで、自分自身も育児を取って、1ヵ月の収入が7割になることへの不安は大きかったですね。
だから、まずは家計簿をつけて現状を知って、保険を見直して、飲み会は最低限にして。
もちろん、お弁当は作って、お茶は持っていくなど工夫しました。
節約したり貯金したり、何をしても不安は消えず…。
最終的には妻の「なるようにしかならないよ!」という言葉で安心したような気がします。

「は?あなたが休む必要があるの?」
忘れもしないこの言葉。
これは、僕が育休を取ることを師長さんに報告した際に言われた言葉です。
男性の育休の体験談をネットで調べていたので、なんとなく想像はしていましたが、本当にこんなことを言われるとは…(笑)。
僕の職場の師長さんは、医師とのトラブルが起こったとき「先生は神。悪いのはすべて看護師」というスタンスなんです。
そんな医者信者で看護師への思いやりのない師長さんだからこそ、報告する日は、朝からずっと師長さんの手が空くタイミングや機嫌が良いタイミングを気にしていました。
ナースステーションの師長さんの席を何回も通ったり、表情をチラチラ見たり。
残念ながら上記の工夫の効果はまったくなく、冒頭の言葉のほかにも
などと言われたのを覚えています。

こうした反論はおおかた予想していたので、事前に答えを用意していました。男性が子育てをする大切さや妻の大変さ、何より私が子育てをもっとしたい気持ちなど。
それでも、何を伝えてもムダ。師長さんには散々小言を言われたあと、「はい、わかりました」と呆れられたような形で了承されました。

第一子の子育て中から、僕はほかのスタッフと休憩室でよく子どもの話をしていました。
とよく話していたんです。
だからこそ、すんなり受け入れてくれて、「絶対、育休を取ると思ってました!頑張って」との温かい言葉をくれたのだと思っています。
今でもスタッフには本当に感謝しています。僕が抜けてもスタッフの補充がないなかで、チームをまとめてくれたり、夜勤に多く入ってくれたりとみんなで協力してくれました。
男性看護師って自分からコミュニケーションを取っていかないと孤独になりがち。
だから、進んで女性看護師の輪に入って話して仲良くなれると、育休を取るときに「◯◯くんのためなら」と協力してくれますよ。
育休取得は権利として認められているものの、育休を取ると職場に迷惑がかかるのは事実です。だから、僕は育休を取ることを師長さんに報告してから時間をかけてさまざまな準備をしました。
病棟には10年以上前に作られたマニュアルしかありませんでした。これまで、スタッフの経験や言い伝えなどをもとに業務をしていたのです。
だから、病棟に10年以上いる僕が抜けることで「分からないことが増えスタッフが困るのでは?」と考えました。
実際に普段から、ケアの方法や処置の手順について後輩から聞かれたり、先輩とも「これどうやるんだっけ?」と確認することが多かったんです。師長さんも細かい業務のことは僕に尋ねてくるほど(笑)。
そこで、育休に入る前に、すべての看護技術や処置の手順のマニュアルを作ることを決意。1年目の新人看護師でもマニュアルを見たらわかるという状態を目指しました。
約10ヵ月間、昼ご飯を早く切り上げたり、夜勤中の仮眠休憩を取らなかったりして、ひたすら本と論文を読んでマニュアルをコツコツ作成。育休に入るちょうど1ヵ月前に、ようやく完成しました。
冊子にしたマニュアルをスタッフに渡すと
と好評でした。
「マニュアルを見てくれれば、僕がいなくても仕事で困ることはないかな」と安心しきったのを今でも覚えています。
育休を取るときには、自分がいなくても病棟が回るという状況を作ることが大切です。
ちょっと難しいかもしれませんが、これから育休に入る方は一度、考えてみてくださいね。
看護師って1人でたくさんの役割を抱えていますよね。チーム内の活動や委員会、看護研究…。挙げればキリがありません。
これから育休を取る予定の方は、一度、自分が持っている役割や業務を洗い出すようにすることをおすすめします。
そして、育休でいなくても困らないように、スタッフに引き継ぎましょう。
口頭で説明するだけでは「あれ?どうやってやるっけ?」となりかねないので、文章にまとめたり、数カ月間は一緒に教えながら委員会の活動をしたりするとスムーズに引き継ぎできます。

ひたすら育児やお金に関するYouTubeを見たり、本を読み漁ったりしました。ほかにも、節約して貯金したり、勉強してFP試験を受けたり。
妻とも「どのような子育てをしようか」「子ども2人の育児をどう分担しようか」など、子育てについてたくさん話し合いましたね。
子どもがいないときと、1人いるとき、そして2人いるとき。大変さが全然違います。
だから、夫婦で育児についてじっくり話して準備しましょう。
僕が育休を取ることを報告した際に散々言われた根本の原因は、師長さんの心をつかんでいなかったことだと思っています。
「先生は神。悪いのは看護師」というスタンスの師長さんをどうしても好きになれなくて。きっと、僕が師長さんを信頼していなかったのが本人に伝わっていたのかもしれません。
ただし、僕ら病棟で働く看護師の中で、権力を持っているのは明らかに看護師長ですよね(笑)。
気持ちよく育休を取りたい方は、今のうちに看護師長の心をつかんでおきましょう。
▼育休が明けて復帰したときの話はこちら!
男性看護師が育休後に職場復帰した話!周りの反応や大変だったことなど実体験を話します!



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