
「医療・介護の現場ではどのようなヒヤリハットの事例があるの?」と疑問に感じている看護師は多いのではないでしょうか。
ここでは、看護におけるヒヤリハットの事例や防止のための対策、ヒヤリハットが起きた際の対処法などについて、詳しく紹介します。
この記事を最後まで読み終えてもらえたら、ヒヤリハットの事例が分かり、業務に活かすことができるでしょう。
ヒヤリハットを起こさないように、事例について学びたい方はぜひ参考にしてください。
ヒヤリハットという単語は聞いたことがあっても、「詳しくは分からない」という方は少なくありません。
ここではヒヤリハットの定義や医療事故・医療過誤との違いなどについて、分かりやすく解説します。
厚生労働省の「リスクマネージメントマニュアル作成指針」によると、ヒヤリハットについて「患者に被害を及ぼすことはなかったが、日常診療の現場で、“ヒヤリ”としたり、“ハッ”とした経験を有する事例」としています。
具体的には、患者様に実施されなかったものの、実施されたら何らかの被害が予測される場合や、患者様に実施されても被害や経過観察が不要であった場合などです。
したがって、重大事故を未然に防げた状態と言えるでしょう。
ヒヤリハットは、医療現場で起こりえる事故の潜在的なリスクを明らかにできるプロセスです。
適切な対策を講じることで、医療事故を未然に防ぐのに役立ちます。
一方、報告書の内容が乏しかったり、充分なフィードバックを得られなかったりすると、医療事故リスクの見逃しにつながりかねません。
医療事故は医療機関内で発生した人身事故全般を指し、医療従事者の過誤や過失の有無は問われません。
患者様に重大な被害が起きている状態であり、ヒヤリハットよりも深刻なケースが多いです。
一方、医療過誤は医療事故に含まれ、医療機関側の人為的ミスによって患者様の病態が増悪することもあります。
例えば、病室内での転倒による骨折は医療事故となりますが、医療機器の設定ミスによって患者様が亡くなった場合は医療過誤にあたるでしょう。
医療現場ではさまざまな要因が重なり、ヒヤリハットが起こりやすくなります。
医療現場で看護師のヒヤリハット事例が発生する要因は下記のとおりです。
どのような要因でヒヤリハット事例が生じやすくなるのか把握し、防止に役立てましょう。
臨床経験が浅い看護師や、異動してきたばかりの看護師は、知識やスキルが不足しており、業務中のリスクに気付きにくいものです。
日本医療機能評価機構の「医療事故情報収集等事業 平成19年 年報(P31)」によると、医療事故を起こした看護師の経験年数について、下記のように報告しています。
| 経験年数 | 件数 |
| 0年 | 69件 |
| 1年 | 83件 |
| 2年 | 87件 |
| 3年 | 60件 |
| 4年 | 51件 |
| 5年 | 39件 |
| 6年 | 42件 |
| 7年 | 34件 |
| 8年 | 23件 |
| 9年 | 26件 |
| 10年 | 31件 |
| 11~20年 | 157件 |
| 21~30年 | 127件 |
| 30年以上 | 29件 |
臨床経験3年目ほどまでの看護師は、特に医療事故件数が多いことがうかがえます。
心身の不調は業務中の集中力を欠き、業務の効率化が下がるだけでなく、普段なら発見できるようなミスを見逃しやすくなります。
また、業務中に生じる可能性のあるリスクに気付かず、業務を進めてしまうこともあるでしょう。
そのため、万全の状態で働けるように、心身のコンディションを整えることが大事です。
医療の現場で働く看護師は、看護師同士以外にも医師や多職種との連携も必要不可欠です。
しかし、情報共有やコミュニケーションが不足していると、指示を聞き間違えたり、必要な医療・ケアが提供されなかったりと、業務に支障をきたしかねません。
結果的にヒヤリハットにつながる可能性も上がるため、普段から積極的なコミュニケーションを心がけましょう。
看護師は複数の患者様を担当するため、同時に複数の業務を並行して行わなければならない場面は多いものです。
しかし、ケアのタイミングがかぶってしまい、一人で両方の業務をこなすことが難しいケースもあり得ます。
また、慌てて業務に取り組むと集中力を欠き、ミスを誘発するでしょう。
ダブルタスクを抱えた際は、ほかの看護師にサポートを依頼し、ミスを防ぐことが重要です。
看護師は患者様と接する機会が多いため、ヒヤリハットのリスクが高まりやすいです。
看護におけるヒヤリハットとして、下記のような事例が挙げられます。
ヒヤリハットが起きた状況や要因、今後の対策も併せてお伝えするので確認してみましょう。
医療現場で看護師が起こしやすいヒヤリハットの一つに、薬剤・点滴・注射に関する間違いが挙げられます。
薬剤に関する業務はルーティンワークになりがちですが、投与量や投与時間、投与忘れなどは時に重大な事故につながる可能性もあるため注意が必要です。
<事例①服薬時間の間違い>
| 状況 | ・14時に服用させる予定であった解熱鎮痛剤を昼食後に服用させてしまった |
| 要因 | ・服薬させる時間を把握できていなかった |
| 対策 | ・服用時間が異なる薬剤は薬袋に分かりやすく明記しておく |
<事例②点滴指示に関する間違い>
| 状況 | ・中止指示が出ていた点滴を準備してしまったが、投与時に点滴ボトルのラベルが電子カルテに反映されず、患者様には投与しなかった |
| 要因 | ・中止指示を受けていた看護師が点滴を片付けていなかった ・担当看護師が医師の指示を確認していなかった |
| 対策 | ・変更の指示を受けたらすぐに対応する ・医師からの指示はこまめに確認する |
看護師が薬剤に関する業務を行う際は、ダブルチェックや指差し呼称を取り入れ、誤った薬剤が投与されないような対策が欠かせません。
転倒・転落事故は、骨折や外傷による大量出血など、大怪我につながるケースも少なくありません。
高齢者の患者様が多い職場では、車椅子やベッドへの移乗動作も増えるため、転倒転落のリスクに備える必要があります。
<事例①ベッドから転落しそうになった>
| 状況 | ・高齢患者様がベッドから降りて歩き出そうとしたが、自力で立位をとれず床に倒れこみそうになった ・センサーに気付いた看護師がとっさに患者様の身体を支え、転落を防いだ |
| 要因 | ・念のためセンサーマットを導入していたが、患者様の歩き出しは想定していなかった ・患者様が安静状態を理解していると思い込んでいた |
| 対策 | ・安静度について患者様に再度説明する ・サイドセンサーを導入する |
<事例②車いすから転落しそうになった>
| 状況 | ・車椅子のブレーキをかけないまま患者様の移乗介助を行い、患者様が転落しそうになった |
| 要因 | ・車いすのブレーキをかけ忘れていた ・経験年数が浅く、一人での患者様の移乗介助に慣れていなかった |
| 対策 | ・車いすのブレーキをかけるように徹底する ・不慣れな業務は先輩看護師に相談してから行う |
転倒・転落事故は看護師側の不注意だけでなく、認知力の低下や不穏状態など、患者様側の要因によっても発生しうるものです。
予測がしにくいからこそ万全の対策を取り入れ、重大な事故を防ぎましょう。
看護師は多忙さから、複数の業務をこなさなければならないため、確認ミスが増えやすいです。
特に医療機器の場合、取り扱いに関するミスは患者様の生命を左右する可能性もあるため注意してください。
<事例①>
| 状況 | ・医師から投与量1L/分の指示を受けていた患者様が入浴から戻ってきたので、カニューレチューブをボンベから配管へつなぎ変えた ・流量計の調整を忘れそうになり、そばにいた看護補助者に指摘された |
| 要因 | ・入浴後の皮膚処置もしなければならなかったので焦っていた |
| 対策 | ・一つの業務を終わらせてから次の業務に取り掛かるように意識する |
<事例②>
| 状況 | ・輸液ポンプのコンセントがしっかり接続されておらず、充電が切れそうになった ・患者様への薬剤投与に支障はなかった |
| 要因 | ・輸液ポンプの電源がしっかり確保されていなかった |
| 対策 | ・輸液ポンプの電源が確保されているかしっかり確認する |
医療機器を取り扱う際は、操作方法に見落としがないか、患者様の元を立ち去る前にしっかり確認しておくと良いでしょう。
普段担当していない患者様や入院してきたばかりの患者様など、顔と名前が一致していないと誤認が発生しやすいです。
<事例①患者様を間違えて検査室に連れて行った>
| 状況 | ・患者様Aをレントゲン検査のため、検査室に連れて行ったところ、実際に検査があるのは患者様Bであったことが発覚した |
| 要因 | ・レントゲン検査があるのは患者様Aだと思い込んでいた |
| 対策 | ・検査がある際は、検査の内容や患者様の氏名をしっかり確認する |
<事例②患者様を間違えて配膳した>
| 状況 | ・患者様Aに患者様Bの食事を配膳してしまった ・食形態や食札の氏名が異なることに患者様Aが気付き、発覚した |
| 要因 | ・患者様Aに「Bさんですか?」と聞いたら「はい」と返事したので間違えてしまった |
| 対策 | ・患者様自身に聞くだけでなく、ベッドネームやネームタグでも氏名を確認する |
患者様のケアに入る際は、ベッドネームやネームタグなどによる氏名の確認を徹底し、誤認を避けましょう。
ヒヤリハットは、適切な対策を取り入れることで起こりにくくなります。
看護におけるヒヤリハット事例を防止する対策は下記のとおりです。
気軽に取り入れやすい対策を紹介するので、早速試してみましょう。
医療・看護に関する知識が曖昧だと、アセスメントが不十分になり、患者様に生じるリスクに気付くことができません。
また、看護技術の手順や医療機器の取り扱い方法が良く分からないまま業務を進めてしまうと、必要な手順の忘れや、設定ミスなどにつながることもあります。
自信をもって業務に当たれるように、曖昧な知識や手順はしっかりと定着化させましょう。
多忙さや業務量の多さから、看護師間のコミュニケーションが不十分な職場は少なくありません。
しかし、チームワークが欠けると、情報の伝達ミスや共有不足からヒヤリハットにつながりやすくなります。
カンファレンスや業務の合間に、看護師間でしっかりコミュニケーションをとり、チームワークを意識することで、ヒヤリハットの防止が期待できるでしょう。
忙しいと医師の指示確認は疎かになりやすいですが、患者様の容体によって医師の指示は変わるものです。
指示の変更に気付かないまま間違った処置を行えば、重大な過失につながるおそれがあります。
普段から医師の指示をしっかり確認する習慣を身につけておきましょう。
投与経路に関係なく、与薬時は6Rの原則を徹底することで、誤薬を防止できます。
6Rの原則における項目と注意するポイントは下記のとおりです。
| 項目 | 注意するポイント |
| 正しい患者(Right patient) | 同姓同名や似たような名前の患者様と間違えない |
| 正しい薬物(Right drug) | 似たような名称や剤型の薬物や、同じ名称でも濃度の異なる薬物を区別する |
| 正しい目的(Right purpose) | 薬の指示が出ている目的を理解する |
| 正しい用量(Right dose) | 薬物の単位g、mg、μg、mL、mEq、U、IUなど)を確認する |
| 正しい方法(Right route) | 与薬方法によって薬効が異なることを理解する |
| 正しい時間(Right time) | 指示通りの日時・曜日であるか確認する |
職場によっては対象者に与薬するまで、3回6Rのチェックを行うこともあります。
ルーティンワークは業務への慣れから、確認不足が多くなりやすいです。
しかし、医療現場におけるルーティンワークの中には、患者様の命に関わる重大な医療行為も含まれています。
勤務年数に関係なく、看護師はダブルチェックや指差し呼称を取り入れ、見落としによるミスを防ぐことが大切です。
看護師は業務量が多く、ダブルタスクを抱え込んでしまうことがあります。
特に臨床経験の浅い看護師は、業務を引き受けて負担が増大しまいがちです、
ダブルタスクの業務を抱え込んだ結果、ケアや処置の忘れ、患者様の誤認、確認不足といったミスにつながる危険性が上がります。
また、業務の質が下がる可能性もあるため、業務は一つずつしっかりこなし、スキル以上の業務量を任された場合は上司に相談することも検討しましょう。
臨床経験が浅い看護師は、「ヒヤリハットを起こしてしまったらどうすればいいの?」と不安に感じやすいものです。
ここでは、ヒヤリハット事例を起こした看護師の対処法を紹介します。
ヒヤリハット事例が起きた状況をシミュレーションしながら、チェックしてみましょう。
もしもヒヤリハットを起こしてしまったら、速やかに医師や先輩看護師に報告しましょう。
自分の感想や意見ではなく、ヒヤリハットが起きた状況について冷静に伝えることが重要です。
患者様の治療に影響を及ぼす可能性がある場合、治療の中断やケアの変更などが必要となるかもしれません。
ヒヤリハットは、重大な事故を未然に防げた状態です。
しかし、全てのケースでケアが未実施なわけではありません。
患者様に誤ったケアが実施されてしまったケースでは、患者様の容体に変化をきたしていないか判断するために、一時的にバイタルサイン測定や全身チェックを行います。
もしも臨床経験が浅く、適切な対応を判断できないようであれば、医師や先輩看護師に指示してもらい、落ち着いて対応しましょう。
ヒヤリハット発生から24時間以内を目安に、再発防止のために報告書を作成します。
ただし、報告書は反省文ではないため、過度に自分を責めるような文章は不要です。
ヒヤリハットが起きた状況について分かりやすく記載し、作成後は速やかに直属の上司に提出しましょう。
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インシデントレポートの書き方や例文を紹介!書く際のポイントとは?
ヒヤリハットの報告書は、カンファレンスの時間を活用して、部署内のスタッフで共有します。
問題意識の向上や意見交換などを通じて、再発防止に努めるのが目的です。
ヒヤリハットの周知は、チーム内のコミュニケーションの向上にもつながります。
ここでは、看護におけるヒヤリハットの事例についてよくある質問を紹介します。
看護師が働く医療現場は些細なミスでも、患者様の命に関わることがあるため、気持ちを切り替えることは簡単ではありません。
しかし、ネガティブな感情を引きずっていると、業務に集中できず、ヒヤリハットの連発につながってしまう可能性があります。
ヒヤリハットを起こしてしまったときは、防止策を取り入れ、同じミスを繰り返さないことが大切です。
また、まずは目の前の業務一つ一つに集中して取り組むことで、自然と気持ちが前向きに切り替えられます。
ヒヤリハットの件数は、看護師の適性に直結するとは限りません。
ヒヤリハットが起こる要因には、経験年数や心身の不調などが挙げられます。
これまでにヒヤリハットが起きた状況や要因を冷静に分析し、どのような改善策を取り入れれば防げるか、自分なりに振り返って考えてみるのがおすすめです。
もしもヒヤリハットが多い原因が職場環境にある場合、部署異動や転職も視野に入れると良いでしょう。
ヒヤリハットは患者様への未実施のケースや、被害・経過観察が不要なケースなど、重大な事故を未然に防げた状態です。
しかし、適切な対策や対処法を取り入れなければ、医療事故リスクの見逃しにつながりかねません。
ヒヤリハットの対策として、曖昧な知識や手順があればしっかりと定着化させるほか、チームワークを意識し、ダブルチェックや指差し呼称など確認作業も徹底しましょう。
また、与薬時の6Rの原則の順守や医師の指示の確認なども大切です。
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看護師から寄せられる“よくある質問”
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Q. 看護師がのんびり働ける勤務先は?
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Q. 看護師1年目で転職しても大丈夫?
1年目であっても転職は可能です。新卒として入職後3年以内に転職する「第ニ新卒」を歓迎する求人も多数出ている状況です。心身に不調がある場合や、職場でハラスメント・法律違反が横行している場合は、無理せず環境を変えたほうが安心です。「看護師1年目で転職しても大丈夫。病院以外の職場や好印象の退職理由を紹介」では1年目の看護師が転職したくなる理由や、仕事が辛いときの対処法、 おすすめの職場などをまとめています。新人看護師が転職に成功するコツや退職の際の注意点も解説しているので、参考にしてみてください。
Q. お礼奉公中でも転職は可能?
お礼奉公の途中でも、看護師が仕事を辞めることは可能ですが、途中で退職してトラブルに繋がるケースもあるので、辞める場合は注意が必要です。「お礼奉公中だけど辞めたい看護師へ!奨学金に関する疑問に答えます」では、「お礼奉公中の看護師は仕事を辞めても良いか」「途中で辞めると奨学金の支払いはどうなるのか」といった疑問や不安にお答えしています。また、奨学金の一括返済を求められたときや、退職を拒まれたときの対処法についてもご紹介しているので、お礼奉公がネックで前に進めずにいる方は、ぜひ参考にしてください。
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