
精神科に進む看護師は少ないので、精神科看護師はどんな役割があり、どんな思いを持って働いているのか、同じ看護師でも知らない方が多いと思います。
精神科を好きな私が、一度は身体科に進んだものの精神科に挑戦したい看護師さん、新卒で精神科に進むことを迷っている看護学生さんの背中を押せたら…そんな思いで書きます。
大学を卒業してから5年。
最初の3年間は精神科単科病院に勤務し、その後、精神科訪問看護ステーションで1年半働きました。現在は、精神科のクリニックに務めています。気付けばずっと、精神科に関わる仕事をしています。
私が新卒で精神科を選んだきっかけは、実習での経験です。
いろんな疾患の方がいる中で、私が担当させてもらったのがアルコール依存症の患者さんでした。アルコール依存症とは、簡単に言うと「お酒を止めたいと思っていても、止められない病気」です。
担当患者さんとお話しをする中で、孤独がイヤだから、飲み仲間とは今後も会い続ける予定だと伺いました。このままでは退院後にまたお酒を飲んで体調を崩してしまうんじゃないか…とモヤモヤしていたのですが、そんなとき、実習の指導者さんに「あなたはどう感じているの?」と尋ねられたんです。

それまで患者さんの課題やそれに対する看護ばかりを考えていて、私自身の感情など意識したことはなかったため、この問いかけにはかなり戸惑いました。
そこから、「私は患者さんのことが心配なんだ」と気付いて。「その気持ちを患者さんに伝えてみたら?」という助言を受け、思い切って、こういう理由で心配に思っていますと患者さんに伝えてみました。
すると、「おっしゃるとおりで自分でもそう思っているんだよね。どうしたらいいんだろう」という反応が返ってきて。一緒に対策を考えることができたんです。
「看護師自身の感情を活用して、患者さんと関係を築き、看護に繋げていく」…こんなやり方があるのがとても驚きで、面白く、難しいと思いました。「もっと精神科でのかかわりができるようになりたい!」そう思い、精神科に進むことを決めました。
精神科で働いているなかで、心を揺さぶられることはやはり多いです。
私が新人時代にショックを受けた経験を書きます。
自分と同年代の女性患者さんが「死にたい」と自殺企図を繰り返しており、やむを得ず精神保健指定医により拘束の指示が出ました。患者さんから協力は得られず抵抗されたため、男性看護師5人で抑えて拘束したんです。

「患者さんの安全を守るため」と頭では分かっていても、どうしても現実と感情のギャップが大きくて。「どうして死にたいと言っている患者さんを、拘束してまで止めるんですか」と先輩に質問もしました。
先輩なりの考えを一生懸命伝えてくれて、先輩も悩みながら看護師の仕事をしているのだと知って少し安心した覚えがあります。
何度も入退院を繰り返したのち、その患者さんは「死にたい」だけではなく「やりたい」と思うことも話してくれるようになり、結果論ではありますが、あのとき命を救えて良かったと思えました。
精神科で働くと、驚くことは多いかもしれません。ただその違和感を先輩に質問し、病棟全体に気づきをもたらすことが若手の役目でもあるのだと思います。
実際、後輩の反応にハッと気付かされたことがありました。強迫性障害の10代の患者さんで、どうしてもいろいろなことが気になって、決められた時間内に入浴を終えられない状況でした。
時間の制限を作っている理由は複数あり、たとえばこんなふうです。
これらの理由があり、制限時間が来たら、患者さんが洗体に満足できているか?にかかわらず強制的に切り上げるようになっています。
それで、この患者さんご本人は「待って!もうちょっとだから!お願い!!」と叫ばれていて。それを見た後輩の看護師は胸を痛めたようで涙を流しながら途中で退席しました。

看護の目的があるとはいえ、普通の感覚だと苦しいよな…と気付かされました。こんなふうに、新人が持っている「普通の人の感覚」が、患者さんへの対応で必要なことがあります。
一方で、人間は順応するものですし、逆に言うとその環境に慣れないときついですから、違和感は少しずつ無くなるものです。新人の言葉を受け入れている組織は、そういう点で倫理観もアップデートされていくのだと思います。
何をしても、自己満足の域を出ないと私は思っています。退院がゴールでも、ありがとうと言われることが目的でもありません。
ではなにがやりがいとなっているか?と問われれば、自分自身が人間として柔軟で強くなっていくことと、その自分がまた少しだけ患者さんの生きやすさのお手伝いができたかもしれない、そう実感することなのかなと思います。
「あの関わりはベストだったのか」「あの患者さんの言葉や行動の意味は何だったのか」、考え続けることを忘れずに一人ひとりに誠実に向き合って自分のできることを一つひとつすること。その中で自分も変わっていき、また次の患者さんに向き合っていく。精神科はおもしろいです。
少し話を遡って、新卒時の職場選びについて書きます。
通っていた学部の付属の大学病院では、配属希望が通るかが分からず、私は絶対に精神科に行きたいと心が決まっていたため、単科病院に進むことを決めました。
実はアルコール依存症の患者さんを受け入れている病院も限られているので、近隣のいくつかの県の病院を10箇所見学しました。同級生の8割は1〜3箇所の大学病院・総合病院を見て決めていたので、私は比較的多くの病院を見て回ったほうだと思います。
精神科に限らずですが、病院によって雰囲気は結構違うので、実際に見て回ったのは良かったです。
たとえば、残業も気にせず患者さんとの対話の時間を作りたい看護師が多いのか、ワークライフバランスを重視して終業時間に帰る看護師が多いかによって雰囲気は違います。
地味ですが建物がきれいだと看護師のイライラも少ないように感じましたし、都会なのか、地方なのかによって、働くスタッフや患者さんの雰囲気も変わります。
あと学生のときはそこまで気が回りませんでしたが、病状の重い患者さんの病室がナースステーションに近いか?など、建物内部の動線が良いか?も重要だと感じます。同じ患者数と看護師数でも、設備の違いで効率よく業務を行えるかどうかが変わるためです。
いろいろな要素がある中でも私は、一番患者さんの回復を願って向き合っている雰囲気を感じた病院に決めました。病院見学の対応をしてくれたのは若手の看護師さんでしたが、患者さんや看護について質問したときにその看護師さんなりの考えをしっかり伝えてくれました。
入職してからもきっと私の疑問に付き合ってくれるだろうと思ったし、普段から患者さんの言葉にもそのように対応しているのだろうなと。実際に働いてみて、そのときの感覚はズレていなかったです。
この点はまず、精神科を続けたいと思っているなら、問題はないです。実際に私は病棟、訪問看護、そしてクリニックと精神科で転職をしてきましたが、手技の面でも問題なく働くことができています。
いずれ身体科に行きたいと思っている場合も、最初の精神科の病棟によっては一連の技術を身につけられるでしょう。
たとえば私は精神科救急病棟の配属で、アルコール依存症の方も含め、患者さんの疾患はさまざまでした。点滴、採血の指示も多くあり、単発バイトでも採血やワクチン接種の仕事ができるくらいには手技に自信を持てるようになりました。数は多くなかったですが吸引や経鼻経管栄養、酸素の管理なども一通り学べましたね。
あとは、自分がどれだけ貪欲に吸収できるか?で可能性は無限大です。実際、40代で精神科未経験で入職してきた人がいたのですが、謙虚に年下の看護師から教わっている姿を見て、そう思いました。
友人の中には、まず身体科で経験を積んで、いずれは精神科にも行きたいと考えている人もいましたが、私は「今やりたいと思っていることを、今やりたい」性格なので、このようなキャリアを選びました。
精神科分野では転職しても困らなかったですし、興味の範囲も当初から変わらなかったので、結果として最初から精神科に行って良かったと思っています。
精神科看護師の仕事は、患者さんの病状悪化に伴いできなくなったセルフケアを補い、向上させることです。
たとえば骨折をしたら1人で移動や入浴ができなくなるように、うつ状態や幻聴が悪化すれば社会生活が困難となります。またその人の生活に戻れるように、人それぞれ症状の出方も介入への反応も異なりますから、一筋縄ではいきません。
そういう、「人と人との関わり」も楽しんで働いてもらえればと思います。
ご意見、感想などありましたら、コメントいただけると嬉しいです。
次回、病院から訪問看護へ転職したときのエピソードを書きます。

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りょう
2025年4月28日 14:15
興味はありつつも避けがちな精神科看護師…単純ながら精神科看護師ありかもと思えた。
あお
2026年6月2日 21:36
いま現在、就活に悩んでいる3年であり精神科に進んでみたいという気持ちがある一方、新卒で進んでもいいのかと考えていたので勉強になりました。