
「薬の使い分けBOOK」では、看護師さんが気になる薬の使い分け方法について、薬剤師の笹川大介が解説します。
本記事は、インスリン注射についてまとめました。作用・副作用に加えて特徴も記載していますので、ぜひ参考にしてください。

熊本大学薬学部を卒業後、2003年より地元・鹿児島県種子島の薬局に就職。その後、2009年より現職。
各地での講演会やセミナーを多数行っており、最近はYouTubeでオリジナル講義「かんたん薬理学」を精力的に配信している。日経DIクイズの執筆者、薬剤師教育動画「描いてつかむ! 副作用の薬理学」出演などの経験を持つ。
インスリン※注射は、糖尿病の治療法の1つです。
膵臓のβ細胞から分泌されるホルモンです。主な役割は、血糖値を下げることです。
糖尿病には1型糖尿病と2型糖尿病があり、インスリン注射が必要となるのは1型糖尿病と、2型糖尿病のうち内服薬だけでは血糖値を十分にコントロールできない場合です。
インスリン製剤は、糖尿病の治療に用いられ、体内で不足しているインスリンを主に皮下注射で投与します。

ヒトインスリン製剤は、ヒトのインスリンと同じアミノ酸の並びでつくられたインスリンを製剤化したものです。
インスリンアナログ製剤は、ヒトインスリンのアミノ酸配列や構造の一部を人工的に変化させ、ヒトインスリンと類似した構造(アナログ)を持つように作られたインスリン製剤です。作用の持続時間や効果の発現時間が調整され、より生理的なインスリン分泌に近いインスリン製剤です。
生体でのインスリン分泌は、持続的に一定量分泌される「基礎分泌」と、食事による血糖値の上昇に応じて一過性に分泌される「追加分泌」の2つからなります。


低血糖に注意が必要です。特に追加分泌を補う製剤は低血糖が起こることがあります。
低血糖の自覚症状としては、冷や汗が出る、気持ちが悪くなる、手足がふるえる、ふらつく、力が抜けた感じがするなどの症状です。このような症状がみられる場合は、吸収の速い糖分(ブドウ糖)などを摂取します。
糖分を摂取しても症状の改善がみられない場合は、医師や薬剤師に連絡してください。高所作業や自動車の運転などに従事している場合は特に注意が必要です。
また、注射部位に発赤、痒み、痛み、腫れなどがあらわれる場合があります。
インスリンは、高温になると成分が変性し、薬効が低下するおそれがあります。未使用の製剤は、冷蔵庫にて2〜8℃で遮光して保存します。
使用中の製剤は冷蔵庫に入れず30℃以下の室温で保管します。自動車の中やトースターなどの電化製品のような熱源の近く、窓際などの直射日光があたる場所など、高温になる場所で保管しないようにしてください。
30℃を超えて保管してしまったインスリン製剤は使用せず、新しいインスリン製剤を使うようにしましょう。
インスリン製剤は、作用発現時間や作用持続時間によって6種類(超速効型、速効型、中間型、持効型溶解、混合型、配合溶解)に分けられます。

【特徴】
超速効型インスリン製剤は、追加分泌の補充に用いられる薬です。食事直前の投与で食後血糖を抑えます。
従来型の超速効型インスリン製剤(アピドラ・ヒューマログ・ノボラピッド)では、インスリンの追加分泌を再現するため、食直前に投与しますが、食後40分程度で最高濃度に到達する健康人のインスリン分泌よりも作用発現時間が遅いため、インスリンの効果発現が血糖上昇に追いつかないことが課題でした。
そこで新規の超速効型のインスリン製剤であるルムジェブやフィアスプは、従来型の薬剤に添加剤を加えることで皮下からの吸収を速めた製品です。食直前(食事を始める前、2分以内)に皮下注射します。
またルムジェブとフィアスプは、追加インスリン製剤として初めて食後の注射が可能になりました。食事開始後20分以内の投与に変更することが可能です。
これにより、食事摂取量にムラのある小児や高齢者の患者、食事量が不安定になりやすい※シックデイ時などにおいても食事量を確認してから投与量を決めることができ、インスリン製剤の過剰投与による低血糖を予防できます。
糖尿病患者が、感染症などによる発熱、下痢、嘔吐や食欲不振のため食事ができない状態。
シックデイでは、血糖コントロールが乱れやすくなります。原則としてインスリン治療中には食事がとれていなくてもインスリン注射を続けますが、シックデイの際には主治医に連絡し指示を受ける必要があります。
一般名:ヒトインスリン(ヒューマリンR・ノボリンR)

【特徴】
追加分泌の補充に用いられます。食前の投与で食事による血糖値上昇を抑えます。超速効型が市場に出るまでは、追加分泌を補うのはこの製品のみでした。
速効型インスリンは、効果が現れるまで約30分かかるため、食事30分前の皮下注射が必要です。また、食後の血糖値を生理的なレベルまで下げる量の速効型インスリンを使用すると、次の食事前や夜間の低血糖リスクが高まります。したがって、現在では追加分泌の補充には、速効型よりも前述の超速効型インスリンが多く用いられています。
速効型インスリン製剤は、皮下注射の他に、筋肉内注射や静脈内注射が可能です。高血糖による昏睡(糖尿病性ケトアシドーシス、高血糖高浸透圧症候群など)に対し、シリンジポンプを使用して持続静注したり、点滴ボトル本体内に混注したりして投与することもあります。
一般名:ヒトイソフェンインスリン(ノボリンN・ヒューマリンN)

【特徴】
基礎分泌の補充に用いられます。速効型インスリン製剤のヒトインスリンにプロタミンを添加することで、作用持続時間を長くしています。通常1日1回〜2回投与します。白濁した製剤で、注射をする前に均一になるよう十分に混和する必要があります。
【特徴】
持効型溶解インスリン製剤は、中間型インスリン製剤と同様に基礎分泌を補う目的で使用されます。作用持続時間が中間型より長く、通常、1日1回の投与です。
中間型に比べてインスリン濃度のピークが小さいため、生理的な基礎分泌パターンにより近いです。これにより、夜間の低血糖リスクは少なくなります。また、使用前の懸濁操作は不要です。これらの特徴から現在、基礎分泌の補充に関しては、中間型より持効型が多く使用されています。
持効型溶解インスリン製剤の自己注射を使った治療法の1つにBOT(Basal-Supported Oral Therapy)があります。BOTは、経口血糖降下薬を残したまま持効型溶解インスリンを上乗せする治療方法です。
注射回数が1日1回であり、外来でも導入しやすいといったことから、経口血糖降下薬だけでは血糖コントロールが不十分な患者、高齢など何らかの理由で1日1回しか注射できない2型糖尿病患者などで行われるインスリン療法です。
膵臓からのインスリン分泌が保たれている糖尿病早期の患者では、BOTにより、1日1回の注射で良好な血糖コントロールが得られる場合が多くあります。
2024年11月より、週1回投与の持効型インスリン製剤であるアウィクリが使用可能となりました。これにより注射回数が減少し、治療の手間軽減とインスリン導入のハードルが下がることが期待されます。またアウィクリは前述のBOTでも使用できます。
【特徴】
超速効型または速効型に、中間型を組み合わせた製剤です。インスリンの基礎分泌と追加分泌の両方を補えます。通常1日1〜2回の投与です。
超速効型あるいは速効型の混合比率によって、さまざまな製剤があります。商品名の数字は、超速効型または速効型の割合を示しています。
中間型が混合されているため白濁した製剤で、投与前には混和が必要です。
混合型インスリン製剤は、基礎分泌と追加分泌を同時に補えるため、強化インスリン療法※に比べて、注射の回数を減らせる利点があります。ただし、強化インスリン療法より、厳密な血糖コントロールは困難です。
インスリン製剤を用いて、消失または欠乏したインスリンの基礎分泌と追加分泌の両方を補い、正常なインスリン分泌パターンに近い状態を目指す治療法。
具体的には、超速効型(または速効型)インスリンを1日3回、持効型溶解(または中間型)インスリンを1日1回、合計4回注射します。1型糖尿病、インスリン基礎分泌能の低下した2型糖尿病、厳格なコントロールが必要な場合(糖尿病合併妊娠、手術時など)が適応となります。
一般名:インスリンデグルデク・インスリンアスパルト(商品名:ライゾデグ)
【特徴】
超速効型インスリンのインスリンアスパルト(ノボラピッドの成分)が30%、持効型インスリンのインスリンデグルデク(トレシーバの成分)が70%混ざっています。
混合型と同じく、1つの注射で基礎分泌と追加分泌の両方のインスリンを補うことができます。通常1日1〜2回、食直前に投与します。
混合型は基礎分泌を補う成分が中間型でしたが、配合溶解型においては、持効型インスリン製剤を含有しているため、インスリン濃度のピークが小さく、低血糖リスクが少ないです。
また、混合型では追加分泌を補う成分として速効型を利用している製品があり、それらは食前30分前の投与が必要でしたが、配合溶解型では超速効型インスリン製剤が含有されているため、食直前の投与が可能です。
また、配合溶解型インスリン製剤は懸濁不要です。頻回注射が困難な人や懸濁操作がうまくできない人に適しています。
| 分類 | 用法・用量 | 発現時間 | 最大作用時間 | 持続時間 |
| 超速効型 | 皮下注射従来型:食直前新規:食直前、食事開始後に必要な場合は食事開始後20分以内 | 従来型:10~20分新規:従来型より速い | 30分~3時間 | 3~5時間 |
| 速効型 | 皮下注射・筋肉内注射・静脈内注射皮下注射は食事30分前 | 約30分~1時間 | 1~3時間 | 5~約8時間 |
| 中間型 | 皮下注射1日1回〜2回 | 1~3時間 | 4~12時間 | 18~約24時間 |
| 持効型溶解※ | 皮下注射1日1回 | 約1~2時間 | 3~14時間または明らかなピークなし | 約24時間~42時間超 |
| 混合型 | 皮下注射1日1〜2回食前/食直前 | 10分~1時間 | 30分~12時間 | 18~約24時間 |
| 配合溶解 | 皮下注射1日1〜2回、食直前 | 10~20分 | 1~3時間 | 42時間超 |
※インスリンイコデク(商品名:アウィクリ)を除く
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熊本大学薬学部を卒業後、2003年より地元・鹿児島県種子島の薬局に就職。その後、2009年より現職。
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看護師から寄せられる“よくある質問”
Q. 現役看護師が一番稼げる科はどこ?
一般的に、高度な医療を提供する診療科や収益の多い診療科・クリニックは、高収入を得られる傾向にあります。病院だと救急救命科やICU(集中治療室)など、クリニックでは美容クリニックや人工透析クリニックなどが挙げられます。「看護師が一番稼げる科はどこ?高年収のクリニック・病院や転職のポイント」では、看護師が稼げる科を、詳しく解説しています。規模別の平均給与や、高収入な職場へ転職する際のポイントも紹介しているので、求人探しの参考にしてください。
Q. 看護師がのんびり働ける勤務先は?
病院であれば緊急対応や体力を消耗する業務が少ない外来や回復期・慢性期病棟。病院の外来やクリニックであれば重症患者の処置が少ない診療科は比較的落ち着いた環境といえるでしょう。自身のペースを大事に働きたい方は、現職の悩みを解決できるような環境・働き方を選ぶことがポイントです。「のんびり働きたい看護師向け!おすすめの職場や病院以外の仕事を紹介」では、のんびり働ける勤務先の条件や、おすすめの職場・診療科、のんびり働ける仕事のメリットやデメリットも解説しています。職場探しの参考にしてください。
Q. 看護師1年目で転職しても大丈夫?
1年目であっても転職は可能です。新卒として入職後3年以内に転職する「第ニ新卒」を歓迎する求人も多数出ている状況です。心身に不調がある場合や、職場でハラスメント・法律違反が横行している場合は、無理せず環境を変えたほうが安心です。「看護師1年目で転職しても大丈夫。病院以外の職場や好印象の退職理由を紹介」では1年目の看護師が転職したくなる理由や、仕事が辛いときの対処法、 おすすめの職場などをまとめています。新人看護師が転職に成功するコツや退職の際の注意点も解説しているので、参考にしてみてください。
Q. お礼奉公中でも転職は可能?
お礼奉公の途中でも、看護師が仕事を辞めることは可能ですが、途中で退職してトラブルに繋がるケースもあるので、辞める場合は注意が必要です。「お礼奉公中だけど辞めたい看護師へ!奨学金に関する疑問に答えます」では、「お礼奉公中の看護師は仕事を辞めても良いか」「途中で辞めると奨学金の支払いはどうなるのか」といった疑問や不安にお答えしています。また、奨学金の一括返済を求められたときや、退職を拒まれたときの対処法についてもご紹介しているので、お礼奉公がネックで前に進めずにいる方は、ぜひ参考にしてください。
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