こんにちは。私は児玉のぞみ、つばさ病院循環器病棟の新人看護師です。
先日は少しだけ落ち込んでいましたが、看護学校の友人たちもそれぞれ頑張っているんだと再確認。
パワーをもらって、のぞみ、復活です!!
そんな私とは違い、私のプリセプター・及川教子先輩は心配症のせいで色々悩んでるみたい。
今日はそんな及川先輩のお話……。
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私、及川教子は今年からプリセプターになりました。でも、看護師3年目のまだ未熟者な自分が新卒の指導なんて……。
4月。私が受け持つことになったプリセプティは児玉のぞみさん。明るく元気なのは良いのですが、児玉さんはなんというか、少し慌てん坊で早とちり。いつも気が気ではないのです。でも、児玉さんは悪い子ではないし、むしろ前向きな良い子なのですが……。
私は指導法をいろいろ考え、毎日就業後のロッカールームで児玉さんに”覚え書きメモ”を渡すことにしました。児玉さんの頭から教えたことがサッパリ消えても、これを読み返せば思い出せるようにと思ったんです。
今日もメモを渡したところ、「及川先輩って細かいですよね~。こんなに書いてあったら読むだけで疲れそうです~」と笑っていました。
今日もとても大事なポイントを書いておいたんだけど、ちゃんと読んでくれたんだろうか……。
その日、夕食は同期の松山紀子と食べました。紀子はとてもおおらかで、安心して話ができる同期の一人です。
話は自然と受け持ちのプリセプティのことに。
「最近の大塚さん、良くなってきたでしょ? 前はビクビクしてたのに、ちょっと大人びてきたように感じるのよね。この前も留置針の刺入をちゃんと一人でできたし」
「え? そんなこと一人でやらせてるの?」
紀子のプリセプティは大塚さくらさん。大塚さんは少しおとなし過ぎるけれど、人の話を真剣に聞いてくれる新人さんです。
「やらせてみなきゃ、一生できないままじゃない」
紀子はそう言うと、今度は児玉さんのことを聞きたがりました。
プリセプティと上手くいっている紀子に話づらいけけど、聞いて欲しい気持ちもあり、私は児玉さんのエピソードを少しだけ話しました。
すると紀子は大爆笑で、「師長、わかってるわ~。あんたら、いい組み合わせだよ」というのです。
私はとてもそうは思えません。
児玉さんのようなタイプこそ、紀子がプリセプターだったらよかったのに。私は大塚さんみたいな静かな子の方がやりやすかった……とは言えませんでしたが。
「まあ、教えるって難しいよね。見守るのが一番つらいし。自分でやっちゃえる方が楽なのにね」
「……」
任せて、見守るか……。でも、あの児玉さんにはまだちょっと……。
翌日の勤務後、私が今日の重要なポイントを書いたメモを持ってロッカーに行くと、「及川先輩っていつもメモをくれて親切だよね」という大塚さんの声が聞こえ、私は立ち止まりました。
すると児玉さんが「あれはさ、私のためじゃないんだよ」というのです!?
「え?どういう意味?」という大塚さんに激しく同意しつつ、私は聞き耳を立ててしまいました。
すると児玉さんが言いました。
「及川先輩は心配性過ぎるんだよね。だからさ、メモを渡すことで安心したいんだよ、自分が」
え……。
私はすごいショックを受けました。児玉さん、そんなことを思ってたんだ。
私は持っていたメモを握ったままその場を離れました。
収集のつかない思いで頭の中がゴチャゴチャして、気づいたら涙が出ていました。なんか……、なんか悔しい。
翌日から私は児玉さんに”覚え書きメモ”を渡しませんでした。ついメモは作ってしまうのですが。
児玉さんはメモを渡されなかたことに不安の色を見せるでもなく帰って行きました。
メモを渡さなくなって数日後。
児玉さんの受け持ち患者さま、今井さんは心臓リハビリの中間評価日のため、いつもより30分早いリハ室への誘導になっていました。リハビリの開始は9時半。今、すでに9時20分です。
児玉さんはナースステーションで看護計画の見直し中。私は時計と児玉さんを何度も見ました。
児玉さん、気づいてないのかな……? いや、気づいているよね……。言った方がいいかな? もう8分前だし。いや、私はちゃんと「入り」で言ってあるし……。
児玉さん、時計壊れてる? ほら、もう誘導しないと5分切っちゃうよ。今井さんはそんな急いで移動できないんだし……。
ああ、もうダメ!
「こだ…」と喉元まで声が出かかった時、児玉さんが急にイスから立ち上がり、「及川先輩! 今井さんのリハ室誘導、行ってきま~す!」と元気よく言って出て行ったのです。私は思わず、「いってらっしゃ~い!」と児玉さんのノリで応えてしまいました。
すると紀子が私の肩に暖かくて厚みのある手を置き、「ちゃんと成長してるじゃない」と言いました。
そうか、児玉さん、ちゃんと成長してたんだ……。
その時はそう思いましたが、後になってみると紀子は、実は私に言ったんじゃないかという気がします。
そう、私は心配なあまりに、プリセプティに過保護になっていたのです。
任せること、見守ること、それは児玉さんのためだけじゃなく、プリセプターの私にとっても大事なことだったのかもしれません。
この日を堺に、私は前より児玉さんを信じることにしました。児玉さんを信じることは、ちゃんと指導できていると自分に自信を持つことなのです。
児玉さんも私の信頼を感じ取っているのか、前より少し誇らしげになったような感じがします。
まあ、児玉さんの場合、そういう時ほど要注意なんですけどね……(汗)。
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「今井さ~ん、リハビリ順調でよかったですね!」
「そうね。これからも頑張るわ」
私、児玉のぞみの声かけに、笑顔で答えてくれる今井さん。やっぱり患者さんの笑顔っていいな~。
まあ、実を言うと、リハ室誘導のことを忘れていたんですけど、あの時、看護計画書の脇に置いてあったリハビリ管理シートを見たおかげでギリギリ気づけて、ラッキー!
及川先輩も最近は私の成長に、細かいメモメモ攻撃から卒業させてくれたみたい。
よ~し、先輩の期待に応えて、明日も頑張らなくちゃ!!
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