
看護師に欠かせないスキルである口腔ケア。
口腔ケアは、患者さんの状態を適切にアセスメントしたうえで実施することが大切です。
ただし、口腔ケアの正しい手順や留意点がわからない看護師もいるでしょう。
口腔ケアの看護上の留意点と手順を解説します。この記事を参考に、根拠を持った口腔ケアを実践しましょう。

大学卒業後、集中治療室や心臓血管病棟、循環器内科などで看護師として14年間勤務。主に急性期の看護ケアに携わる。現在は、3人の子育てをしながら、医療・看護・育児にまつわる記事の執筆や監修に力を入れている
X(Twitter):@shota_papa37
口腔ケアとは「歯を磨いて口の中をきれいに保つだけではなく、健康の保持や口腔内の機能向上を目的に実施するケア」のことです。

口腔ケアは以下2つにわけられます。
それぞれについて詳しく紹介します。
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口腔ケアを行う際の看護について知りたい
器質的口腔ケアとは「口の中を清潔に保つケア」のことです。具体的には含嗽(うがい)や歯磨き、義歯の洗浄を行い、食べかすや歯垢、舌苔などを取り除きます。
一方で、機能的口腔ケアとは「話したり、食べたりなどの口腔機能を維持したり、回復したりを目的としたケア」のことです。たとえば、口腔内や口周りのマッサージ、嚥下を促すアイスマッサージなどがあります。
身体の筋肉と同様に、口の筋力は使ったり鍛えたりしなけばおとろえるため、継続的な口腔ケアが大切です。
ここでは、口腔ケアを実施する5つの効果を解説します。それぞれを詳しく見ていきましょう。
口腔ケアを行うと、虫歯や歯周病などを予防できます。
厚生労働省の調査によると、令和2年における虫歯の外来患者数は約29万人、歯肉炎・歯周疾患の患者数は約51万人とされており、多くの方が口腔内のトラブルで悩んでいることがわかります。そのため、口の中を清潔に保ち口腔内のトラブルを予防することが重要です。
厚生労働省「令和2年(2022)患者調査 結果の概要」2022年6月
(2024年2月15日参照)
誤嚥性肺炎を予防できるため、口腔ケアは大切です。口腔内が汚染されたままであると、口の中の細菌が増加し、それらが気管から肺へと侵入することで誤嚥性肺炎を起こすためです。
実際に、誤嚥性肺炎を起こし入退院を繰り返す高齢者の方は多いです。
ほかにも、口の中の細菌が細菌性心内膜炎といった心臓の病気や脳卒中、認知症にも影響します。
そのため、口腔ケアは誤嚥性肺炎だけではなく病気の予防になるといえます。
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口腔ケアが誤嚥性肺炎の予防になる理由は?
口腔ケアの実施により咀嚼力や嚥下力が向上して食べられるものが増えることで、結果として栄養状態の改善も期待できます。
というのも、口腔ケアを行うことで低栄養の原因である味覚や咀嚼力、嚥下機能の低下を予防できるためです。
具体的には、味覚が低下すると味に飽きやすくなったり、飲み込む力や噛む力が低下すると硬く食べにくい肉や野菜を避けたりするようになります。ほかにも、虫歯や入れ歯の不具合などにより食事が偏ったり、食事を摂らなかったりもするのです。
さらに、患者さんの中には「入れ歯を調整するのは面倒だからそのまま使っている」「入れ歯が合わないからもう何年もつけてない」と、入れ歯の不具合を調整しない方もいます。
口腔ケアで患者さんに関わると入れ歯の不具合を発見できます。歯科クリニックに入れ歯の調整を依頼し、患者さんが食べやすくなることで栄養状態の改善が期待できるでしょう。
口腔ケアが認知症の予防になる可能性があります。認知症と口腔ケアが関連すると示した報告には以下のようなものがあります。
これらの報告から、認知機能の維持・向上のためには口腔ケアが重要であるといえます。
口腔ケアはコミュニケーションにも影響します。口腔ケアが十分でないと口臭の要因となったり、見た目に悪影響を与えたりする恐れがあるためです。
実際に、ほかの患者さんに会うことを避けたり、病室から出なくなったりしてコミュニケーションの機会が減るケースもあります。外部からの刺激がなければ生活にハリも生まれないでしょう。
そのため、口臭や見た目の問題が解決できればコミュニケーションが円滑になるきっかけになるかもしれません。交流が盛んになると、ADLの向上や認知機能の向上が期待できます。
患者さんの状態に合わせた看護計画を立案し、以下の手順で口腔ケアを行いましょう。

| 手順 | 観察項目と注意点 | |
| ① | アセスメント | ・患者さんのADLや意識レベルから口腔ケアの必要性を検討し看護計画を立案 ・看護計画を患者さんに説明し同意を得る |
| ② | 必要物品の準備と用具の選択 <看護師の防御具> 手袋、マスク、アイシールド、ガウン、キャップ <口腔ケアで使う物品> 歯磨き粉、歯ブラシ、歯間ブラシ、スポンジブラシ、舌ブラシ、ジェル、マウスウォッシュ、楽のみ、ガーグルベースン、ガーゼ、吸引器、吸引チューブ | ・患者さんに合わせて必要物品を準備 ・口唇や唾液に触れるため標準予防策を実施 ・患者さんが咳き込むと飛沫やエアロゾルが飛散するためフェイスシールドも着用 |
| ③ | 体位の調整 | ・患者さんに声をかけたうえで実施 ・可能な範囲で頭側を挙上(頸部は後屈させない) ・患者さんの状態により頭部を挙上できなければ側臥位 ・麻痺がある方に側臥位をとる場合は麻痺側を上にする |
| ④ | 口腔内の観察 | ・歯や舌の汚れを観察 ・痛みや出血、潰瘍がないか、歯のぐらつきがないか、入れ歯は合っているかを確認(ペンライトを使うと観察しやすい) ・患者さんに噛まれないように注意 |
| ⑤ | 口腔内の清掃 | ・歯ブラシや歯間ブラシでブラッシングし清掃 ・舌ブラシで舌苔を除去 ・出血しやすい場合や口が開かない場合はスポンジブラシを使用 |
| ⑥ | うがい・清拭 | ・うがいができる場合はうがいを実施 ・うがいができない場合は、ガーゼで拭きとる ・保湿剤を塗布し乾燥予防 |
| ⑦ | 片付け・記録 | ・歯ブラシや歯間ブラシは乾燥させなければ菌が付着したままとなるため注意 ・洗面台に置くと歯ブラシが浸潤したままであり、菌が増殖するため注意(特に、大部屋の場合、患者さんの歯ブラシを同じ洗面台で管理しない) ・歯ブラシやコップを紙の上に置かないように注意 ・スポンジブラシはその都度交換することが望ましい ・実施したことを看護記録に記載 |
患者さん自身で歯磨きできる場合も「歯磨きしましたか?」「しっかり磨けましたか?」と声掛けをしましょう。
というのも、歯磨きを忘れたり、検査で絶食となった際に「ご飯を食べてないから歯磨きはしなくても良い」と考えたりする患者さんがいるためです。歯磨きを拒否する患者さんに対しては強制せず、時間をおいて声をかけましょう。
ときには、声掛けだけではなく、歯磨きしている様子を確認したり、仕上げ磨きをしたりする必要があるため注意深く観察してください。
さらに、口腔機能訓練や唾液腺のマッサージを実施すると、口腔機能の向上に期待できます。

口の中に出血や潰瘍などを見つけた際には主治医に報告し、歯科医師の診察を依頼しましょう。
ここでは、口腔ケアに関するQ&Aを4つ紹介します。口腔ケアに関する悩みを解決して、より良いケアを実施しましょう。
寝たきりの患者さんへの口腔ケアでは、誤嚥に気をつけることが重要です。
寝たきりの場合は嚥下機能が低下しており、誤嚥性肺炎を起こしやすいためです。さらに、唾液の分泌が減少し自浄作用がなくなることで口腔内の細菌が繁殖することで、誤嚥性肺炎を起こしやすくなります。
ベッドの頭側を起こしたり、頭側を起こせない場合は側臥位にしたりして口腔ケアをします。最後にガーゼやスポンジブラシで水分をしっかり拭き取り、誤嚥を予防してください。
汚れを十分に取り除けなければバイオフィルムの状態(歯垢が長時間留まり膜を張る)となり、歯科クリニックのクリーニングが必要です。
毎日の口腔ケアで汚れを残さないようにしましょう。
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寝たきりの患者さまへのネブライザー使用時における口腔ケアについて
スポンジブラシを使うケースは以下のとおりです。
スポンジブラシを使うと、傷つけることなく清掃できたり、汚れを除去しやすかったりなどのメリットがあります。
看護師のなかには、口腔ケアの際に「水で口の中を流す」もしくは「拭きとる」で悩む方もいるでしょう。
いずれの方法でも細菌数の減少効果には大差がないという報告もあります。
ただし、水で口の中を洗浄することは誤嚥のリスクを伴う恐れがあります。寝たきりの患者さんや脳卒中後の患者さんなど誤嚥のリスクが高い場合は、拭き取る以外にも市販のジェルを使用すると汚れがふやけて取れやすくなるため安全に口腔ケアを行えるでしょう。
口腔内のアセスメントには、「OHAT(オーハット)」が用いられます。

OHATは口腔ケアのアセスメント指標です。効果的なケアのためには、スタッフ間で共通した評価スケールの使用が欠かせません。
評価を統一できると、スタッフが交代しても質の高い口腔ケアの提供に役立つでしょう。
口腔ケアは看護師に欠かせないスキルです。
適切に口腔ケアを実施できると、口腔内の汚れを除去できるだけではなく、話したり食べたりなどの口腔機能の維持・向上につながります。さらに、誤嚥性肺炎や認知症の予防や栄養状態の改善などの効果も期待できます。
ただし、口腔ケアの手順を間違うと誤嚥のリスクを高める恐れがあります。
そのため、患者さんの状態をアセスメントし、この記事で紹介した留意点を踏まえて安全に口腔ケアを実施しましょう。

大学卒業後、集中治療室や心臓血管病棟、循環器内科などで看護師として14年間勤務。主に急性期の看護ケアに携わる。現在は、3人の子育てをしながら、医療・看護・育児にまつわる記事の執筆や監修に力を入れている
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記事の制作について
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看護師から寄せられる“よくある質問”
Q. 現役看護師が一番稼げる科はどこ?
一般的に、高度な医療を提供する診療科や収益の多い診療科・クリニックは、高収入を得られる傾向にあります。病院だと救急救命科やICU(集中治療室)など、クリニックでは美容クリニックや人工透析クリニックなどが挙げられます。「看護師が一番稼げる科はどこ?高年収のクリニック・病院や転職のポイント」では、看護師が稼げる科を、詳しく解説しています。規模別の平均給与や、高収入な職場へ転職する際のポイントも紹介しているので、求人探しの参考にしてください。
Q. 看護師がのんびり働ける勤務先は?
病院であれば緊急対応や体力を消耗する業務が少ない外来や回復期・慢性期病棟。病院の外来やクリニックであれば重症患者の処置が少ない診療科は比較的落ち着いた環境といえるでしょう。自身のペースを大事に働きたい方は、現職の悩みを解決できるような環境・働き方を選ぶことがポイントです。「のんびり働きたい看護師向け!おすすめの職場や病院以外の仕事を紹介」では、のんびり働ける勤務先の条件や、おすすめの職場・診療科、のんびり働ける仕事のメリットやデメリットも解説しています。職場探しの参考にしてください。
Q. 看護師1年目で転職しても大丈夫?
1年目であっても転職は可能です。新卒として入職後3年以内に転職する「第ニ新卒」を歓迎する求人も多数出ている状況です。心身に不調がある場合や、職場でハラスメント・法律違反が横行している場合は、無理せず環境を変えたほうが安心です。「看護師1年目で転職しても大丈夫。病院以外の職場や好印象の退職理由を紹介」では1年目の看護師が転職したくなる理由や、仕事が辛いときの対処法、 おすすめの職場などをまとめています。新人看護師が転職に成功するコツや退職の際の注意点も解説しているので、参考にしてみてください。
Q. お礼奉公中でも転職は可能?
お礼奉公の途中でも、看護師が仕事を辞めることは可能ですが、途中で退職してトラブルに繋がるケースもあるので、辞める場合は注意が必要です。「お礼奉公中だけど辞めたい看護師へ!奨学金に関する疑問に答えます」では、「お礼奉公中の看護師は仕事を辞めても良いか」「途中で辞めると奨学金の支払いはどうなるのか」といった疑問や不安にお答えしています。また、奨学金の一括返済を求められたときや、退職を拒まれたときの対処法についてもご紹介しているので、お礼奉公がネックで前に進めずにいる方は、ぜひ参考にしてください。
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