疼痛コントロールにおける看護師の役割とは?観察方法から看護計画まで解説

疼痛は、身体的にも精神的にも大きな苦痛をもたらします。看護師は、患者さんの疼痛をコントロールすることはもちろん、患者さん自身が疼痛コントロールの必要性や方法を理解できるよう、包括的な看護ケアを提供することが大切です。

この記事では、疼痛コントロールの基礎知識や看護ケアをはじめ、臨床で活かせる看護計画までご紹介します。疼痛コントロールにまつわる知識を習得し、患者さんが安楽に過ごすための参考にしてください。

この記事を書いた人
島田綾乃
正看護師
大学病院で10年間、病棟看護師として勤務。 耳鼻咽喉科、腎臓外科、循環器小児科、脳神経外科、SCUでの臨床経験があり、得意分野は外科系。 現在は育児をしながら、看護師ライターとして医療分野の記事を専門に執筆。
※1※2 調査方法:インターネット調査/調査期間:2024年2月7日~2月13日/調査概要:「看護師転職サイト」を対象としたユーザー満足度調査/調査対象:男女、全国、看護師・准看護師資格保有者かつ対象看護師転職サイト利用経験者、20~29歳 107s(※1)、20~34歳 175s(※2)/調査実施:株式会社エクスクリエ/比較対象サービス:「看護師転職サイト」主要10サービス(専用サイトのあるサービスのみ・求人結果の表示ページは除く)

疼痛コントロールで看護師が押さえるべきポイント

疼痛は患者さんの生活の質(QOL)に直結します。看護師は患者さんの痛みを正しく評価し、寄り添ったケアを行うことが大切です。

ここからは、疼痛コントロールで看護師が押さえるべきポイントについて解説します。

疼痛コントロールとは?

疼痛コントロールとは、痛みの種類に合わせて多角的な視点を持って疼痛緩和に取り組むことです。そのため、単に疼痛を緩和するケアではありません。

たとえば、疼痛が出現すると、呼吸促迫や血圧・脈拍の上昇などバイタルサインに影響が出て、症状の増悪につながる危険性もあります。そのため、痛みを取り除くことだけに焦点をあてるのではなく、あらゆる視点からケアすることが大切です。

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疼痛の種類

疼痛には大きく分けて、以下の3つの種類があります。

  1. 侵害受容性疼痛
  2. 神経障害性疼痛
  3. 心因性疼痛

疼痛は患者さんの身体・精神的な苦痛を知らせるサインです。次の章で詳しく触れますが、疼痛の種類や特徴を正しく理解することは、疼痛コントロールのための第一歩といえます。

疼痛の病態生理と原因

次に、疼痛の病態生理と原因について解説します。
前述した3種類の疼痛について、それぞれの特徴と原因をまとめました。

侵害受容性疼痛

擦過傷や打撲、骨折などの炎症や組織の損傷により、受傷部位にブラジキニンやプロスタグランジンなどの疼痛誘発物質が発生して起こる痛みです。これらの物質が末梢神経にある侵害受容器を刺激し、疼痛が生じます。体性痛と内蔵痛があり、患者さんが感じる多くの痛み(主に急性疼痛)がこの侵害受容性疼痛に分類されます。

神経障害性疼痛

国際疼痛学会神経障害性疼痛分科会では、神経障害性疼痛を「>体性感覚神経系の病変や疾患によって引き起こされる疼痛*1」と定義しています。末梢神経から大脳までの侵害情報伝達経路のいずれかに、病変や疾患が存在する際に生じる疼痛です。

心因性疼痛

不安やストレスなどの精神的問題により生じる疼痛を指します。自律神経や内分泌系のほか、免疫系に不調をきたすことで起こり、疼痛によりさらにストレスが増強する場合も珍しくありません。

上記3つの疼痛は単独で現れることもあれば、複数が関与しているケースもあります。疼痛が生じるメカニズムを理解し、種類に合わせた疼痛コントロールを行うことが必要です。

疼痛コントロールの目標

疼痛コントロールにおいて大切なのは、患者さんの苦痛を取り除くための段階的な目標を設定することです。
疼痛コントロール時の目標としては、大きく以下が挙げられます。

  • 痛みによって夜間の睡眠が妨げられない
  • 安静時の痛みが消失する
  • 体動時の痛みが消失する

上記の目標がすべて達成されることが一番ですが、患者さんによってはなかなか疼痛をコントロールできないこともあるでしょう。その場合には、患者さんの望む疼痛コントロールを一緒に考え、少しずつ痛みを緩和しながら安楽に生活が送れるよう、段階的に目標を設定することが大切です。

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疼痛コントロールにおける看護の視点

疼痛の病態生理や疼痛コントロールの目的について理解できたところで、次は疼痛コントロールにおける看護の視点について解説します。

疼痛コントロールにおいて大切なのは、客観的かつ的確な評価およびアセスメントを行うことです。ひとくちに疼痛といっても、患者さんの疼痛への閾値や既往歴などにより、感じ方はさまざまです。さらに、看護師によって評価やアセスメントに偏りがあると、正確な評価や問題提示が難しくなります。そのため、あらゆる情報を集めて疼痛を評価・アセスメントすることが大切です。

この章では、疼痛コントロールにおける看護を実践するうえで必要な、看護の視点や情報について解説します。

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疼痛部位や範囲

疼痛部位や範囲の観察は、疼痛を引き起こす原因を特定するために欠かせない情報の1つです。

評価の際に念頭に置きたいのは、患者さんは最も強い疼痛部位のみを訴えることがあるという点です。しかし疼痛には、関連痛のように原因とは異なる部位に疼痛が出現している可能性もあります。患者さんが訴える場所以外にも痛みが発生していないか、どの範囲で痛みが出現しているのかまで確認する必要があるのです。

疼痛を評価するときには、疼痛を感じる部位や範囲だけを観察するのではなく、疼痛のメカニズムを把握したうえで、多角的にアセスメントすることが大切です。

疼痛パターンと頻度

疼痛の原因や経過の評価において、疼痛パターンと頻度の情報も重要な指標です。痛みがどのような状況で起こるのか、どのくらい続くのかを確認する必要があります。痛みの出方や頻度によって、考えられる原因が異なります。痛みの出方によっても疼痛コントロールの介入方法が変わるため、誤った評価をしてしまうと正しい鎮痛効果を得られない可能性があります。疼痛が出現するパターンや頻度を観察し、疼痛を的確に評価しましょう。

バイタルサイン

疼痛が増強すると、血圧上昇や心拍数の増加、呼吸数の増加などのバイタルサインに変化が生じます。

痛みは、患者さんによって感じ方が異なります。そのため患者さんの訴えのみで評価してしまうと、客観的な評価が難しくなり、適切な介入ができなくなる恐れがあるため注意しましょう。

疼痛に随伴する身体・精神的症状を正しく評価したうえで、バイタルサイン測定による情報や疼痛評価スケールを併用すると、より正確に疼痛の程度を評価できるでしょう。

評価スケールの使用

疼痛を客観的に評価するためには、バイタルサイン測定とあわせて疼痛評価スケールの使用が大切です。主に使用されている疼痛評価スケールは以下の2つです。

  • NRS(Numerical Rating Scale)
  • フェイススケール(FRS:Wong-Baker faces pain rating scale)

ここからは、上記2つの評価スケールの特徴や使用方法について解説します。

NRS(Numerical Rating Scale)

NRSは、痛みを0〜10の11段階に分け、患者さん自身に疼痛のレベルを指し示してもらうスケールです。0が痛みなし、10が今までに経験した痛みや想像できる最大の痛みとして評価します。

フェイススケール(FRS:Wong-Baker faces pain rating scale)

フェイススケールは、人の表情によって痛みを6段階に分類し評価するスケールです。表情で分けられているため、小児や高齢者のほか、認知症患者などNRSの理解が困難な場合も使用しやすく、汎用性が高いスケールといえます。

NRS(数値的評価スケール)とFRS(フェイススケール=表情尺度)について

疼痛コントロールのための看護ケア

ここからは、患者さんが安楽に過ごすための疼痛コントロール方法について解説していきます。看護師として日々のケアに活かせる内容をご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

薬物療法

疼痛を緩和させるため、まず最初の選択肢として挙がるのが薬物療法です。疼痛コントロールで主に使用される薬物療法には以下の種類があります。

薬剤特徴
非オピオイド鎮痛薬軽度〜中等度の疼痛に選択されアセトアミノフェンや非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)などがある
オピオイド鎮痛薬医療用麻薬として急性疼痛やがん性疼痛などに選択される
鎮痛補助薬抗てんかん薬や抗うつ薬などの神経障害性疼痛に対して選択されることが多い
神経ブロックリドカインなどの局所麻酔薬やオピオイドを用いた硬膜外麻酔など、術後の疼痛管理で用いられることが多い

疼痛に対する介入方法は、状況や疼痛の種類によってさまざまです。薬剤を処方するのは医師ですが、患者さんの全身状態や疼痛の様子を的確に評価したうえで、薬効の評価を含めたケアを行うのが看護師の大切な役割といえます。

療養環境の調整

療養環境の調整は、薬物療法と並行して行うケアの1つです。

看護師は、住み慣れた自宅を離れ病室で療養する患者さん、自宅で療養する患者さんなど、さまざまな環境下で生活する患者さんと関わります。患者さんが療養する場が生活の場であるため、生活のしづらさから疼痛が増強しないよう、療養環境を調整することが必要です。

たとえば、患者さんの疼痛の程度やADLに合わせて、ベッド周りの環境を整えるなど、患者さんの要望を聞いて療養環境を調整しましょう。

身体・精神的ケア

疼痛は自律神経系にも影響を及ぼします。疼痛により精神的ストレスが生じることがあれば、精神的ストレスにより疼痛が生じることもあり、疼痛と身体・精神的側面の関連性は非常に高いのです。

たとえば、疼痛により交感神経が優位となると、末梢血管や筋肉が収縮し、末梢循環が低下し疼痛が増強することがあります。適切な薬物療法とあわせて、精神的ストレスを緩和できるよう、細やかなコミュニケーションやタッチングのほか、疼痛の状態に応じて温・冷罨法などの看護ケアを並行しましょう。

疼痛コントロールのための身体的・精神的ケアについて
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【ケース別】疼痛コントロールの看護計画

ここからは、疼痛コントロールが必要な患者さんの看護計画を2例ご紹介します。

疾患や状態、また疼痛コントロールの必要性は患者さん一人ひとり異なります。患者さんの個別性に合わせ、看護計画を立案することが大切です。

術後患者への疼痛コントロール

術後は急性疼痛が生じる時期のため、疼痛コントロールによる鎮痛や創傷治癒促進に焦点をあてて看護計画を立案しましょう。このケースでは「疼痛コントロールを受けることで、安楽に過ごせる」として、以下の計画を立案します。

【O-P(観察)】

  • 疾患名
  • 術式
  • 既往歴
  • バイタルサイン
  • 顔貌(苦悶様顔貌の有無)
  • 疼痛の部位や範囲
  • 疼痛のパターンや程度
  • 疼痛随伴症状の有無
  • 薬物療法(内容、投与回数、効果)
  • 睡眠状況
  • 排泄状況
  • 採血データ(TP、Alb、WBC、CRPなど)
  • 画像データ(XP、CTなど)
  • 栄養状態(食事摂取量など)

【T-P(実施)】

  • バイタル測定
  • モニタリング
  • 疼痛評価(NRSやFRSなどの使用)
  • 薬剤管理
  • ドレーン管理
  • 呼吸管理
  • 療養環境調整
  • 体位変換
  • 清潔ケア
  • タッチング・マッサージ
  • コミュニケーション

【E-P(教育)】

  • 疼痛が出現した際は我慢せず伝えるよう説明する
  • 体動時はドレーンやルート、チューブ類に留意するよう説明する
  • 薬剤の作用・副作用について説明する

術後の急性疼痛に対し、疼痛コントロールがもたらす効果を説明し、疼痛を我慢せず安楽に過ごせるような計画を立案するのがポイントです。

術後の患者さんに疼痛コントロールについて説明しようとする看護師

終末期がん患者への疼痛コントロール

がん性疼痛の場合、1日の大半を占める持続痛と、疼痛が一時的に増強する突出痛を適切にコントロールすることが求められます。このケースの看護目標は「がん性疼痛がコントロールされQOLが維持・向上する」とし、以下のように計画を立案します。

【O-P(観察)】

  • 疾患名
  • 既往歴
  • バイタルサイン
  • 原疾患の治療状況
  • 治療に対する認識や理解
  • 顔貌(苦悶様顔貌の有無)
  • 疼痛の部位や範囲
  • 疼痛のパターンや程度
  • 疼痛随伴症状の有無
  • 倦怠感の有無
  • 薬物療法(内容、投与回数、効果、レスキュードーズ使用状況など)
  • 睡眠状況
  • 排泄状況(尿閉や便秘の有無)
  • 採血データ(TP、Albなど)
  • 画像データ(XP、CT、エコーなど)
  • 栄養状態(食事摂取量など)

【T-P(実施)】

  • バイタル測定
  • モニタリング
  • 疼痛評価(NRSやFRSなどの使用)
  • 薬剤管理
  • ドレーン管理
  • 呼吸管理
  • 療養環境調整
  • 体位変換
  • 清潔ケア
  • タッチング・マッサージ
  • コミュニケーション

【E-P(教育)】

  • 疼痛が出現した際は我慢せず伝えるよう説明する
  • レスキュードーズの使用方法について説明する
  • 薬剤の作用・副作用について説明する

がん性疼痛の特徴を踏まえたうえで、患者さんが安楽に過ごすためにどのようなケアを求めているかという視点を持ち、個別性に配慮した看護計画を立案しましょう。

タッチングマッサージについての解説イラスト

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