術後の早期離床における看護ケアの方法|目的や早期離床を進める方法も紹介

手術後の回復を早めるには、早期離床が重要です。看護師は、患者さんの痛みや体調の変化に注意しながら、離床を進めていく必要があります。

この記事では、術後における早期離床の必要性と進め方を解説します。さらに、術後の早期離床を効果的に進める方法や注意点も紹介しますので、手術を受ける患者さんへの看護の参考にしてください。

この記事を書いた人
島田綾乃
正看護師
大学病院で10年間、病棟看護師として勤務。 耳鼻咽喉科、腎臓外科、循環器小児科、脳神経外科、SCUでの臨床経験があり、得意分野は外科系。 現在は育児をしながら、看護師ライターとして医療分野の記事を専門に執筆。
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術後における早期離床の必要性

術後の患者さんの早期離床を進めるには、まず離床の必要性を理解しておくことが大切です。
早期離床は下記の目的で行います。

  • 呼吸器合併症の予防
  • 胃腸の蠕動運動の促進(イレウスの予防)
  • 血液循環の促進
  • 褥瘡の予防
  • 血栓症(エコノミークラス症候群)の予防
  • 筋力低下の防止
  • 回復への意欲を高める

手術後は点滴やドレーン類、疼痛によって、患者さんは体を動かすことに苦痛を感じる場合があります。しかし、早期に離床を進めなければ、回復を遅らせることになりかねません。

そのため、患者さんにも早期離床の必要性を説明し、術後の回復を促しましょう。

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術後における早期離床の進め方

術後の離床は、段階的に進めていく必要があります。

術後は患者さんの状態が不安定です。急に起き上がると血圧の変化や呼吸状態の悪化など状態が悪くなることがあります。そのため、少しずつ離床しなければいけません。
以下の順番で少しずつ離床を進めましょう。

  1. ギャッジアップする
  2. ベット上で手足の運動をする
  3. ベッドで座位になり足踏みをする
  4. ベッドサイドで立位になる
  5. 歩行を始める

上記を基本としますが、術式や患者さんの状態に合わせて離床を進めることが大切です。

術後における早期離床の進め方のイラスト

1.ギャッジアップする

医師より離床の許可が出たら、まずはベッドを起こします(ギャッジアップ)。体を起こす前にバイタルサインを測定しておきましょう。また急激にギャッジアップすると血圧が変動しやすいため、ゆっくり行うことが重要です
ギャップアップ中やギャップアップ後は、疼痛やめまいの有無、バイタルサインなど患者さんの状態を観察しながら行う必要があります。

早期に離床することが理想ですが、術式や術後の状態などを考慮し、開始時期を考えなければいけません。たとえば、脊椎の術後であれば、背中や腰を曲げたりひねったりすることは禁忌です。

2.ベッド上で手足の運動をする

問題なく体を起こせたら、ベッド上で軽く手足の運動をします。膝やひじ、足首、手首を曲げ、手足を動かしましょう。

始める前に、足の血管に沿った発赤やホーマンズ徴候がないか確認します。これらの症状が見られる場合は、深部静脈血栓を疑うため、足を動かすことを中止し、医師へ報告しましょう。

※ホーマンズ徴候
足をまっすぐにした状態で底背屈運動をし、ふくらはぎに痛み生じる状態のこと。
ホーマンズ徴候についての図解イラスト

3.ベッドで坐位になり足踏みをする

手足をベッド上で動かせたら、次はベッドサイドに座り足踏みをします。ベッドサイドに座るときには、患者の状態だけでなく、点滴やドレーン類にも注意しながら進めていくことが必要です

また、すぐに足踏みを始めるのではなく、ベッド上で体を起こし、座位の体勢に慣れてから足を動かしてもらいましょう。

4.ベッドサイドで立位になる

坐位のままで足踏みができたら、看護師が介助しながらゆっくりと立位をとりましょう。この際、起立性低血圧によるめまいやふらつきが見られる可能性があります。患者さんを支え、様子を見ながら進めましょう。

問題なく立位になれたら、その場で足踏み運動を行います。下肢の静脈血栓のリスクを考えて、呼吸状態も観察しましょう。SpO2モニターを装着したまま離床し、常に酸素飽和度をチェックすることが大切です。

立位になった時点で、体調がすぐれない、痛みが強くなったなどがあれば、一度離床を中止して休息をとります。一度に歩行までできないケースもありますので、患者さんの状態に合わせて進めることがポイントです。

5.歩行を始める

しっかりと足を動かしたら、歩行を始めます。最初はふらつきに気をつけ、看護師の付き添いのもと歩き始めましょう。
歩行を始める前は、以下の点にも注意します。

  • 衣服のみだれ
  • 履物の種類(歩行しやすいものか確認)
  • 歩行を妨げるものがないか
  • 点滴やドレーンなどの抜けの有無
  • 点滴スタンドの持ち手の高さ

点滴棒や歩行器につかまりながら歩行する場合は、車輪が滑らないように支持するなどの介助が必要です

術後の早期離床を効果的に進める方法

ここでは、早期離床を効果的に進める方法について紹介します

  • 患者さんや家族の協力を得る
  • 動きやすいように身の回りを整える
  • 疼痛をコントロールする
  • パンフレットを作成して説明する

早期離床をスムーズに進められるように、介入方法や支援を工夫することが大切です。

患者さんや家族の協力を得る

患者さんが主体的に離床するためには、患者さん本人や家族に必要性を説明しましょう。早期離床を進めるには、患者さんや家族への理解は欠かせません。

疼痛などで動きが制限されるなかで、離床することは患者さんにとって苦痛を感じる可能性があります。早期離床の必要性を分かっていても、気持ちが伴わないこともあるでしょう。そのため、離床を前向きに進められない患者さんには、家族に声をかけてもらうなど協力してもらう働きかけも必要です。

また、離床に対し家族を不安にさせないためにも、患者さんだけでなく、家族にも早期離床の説明をしておくと良いでしょう。

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動きやすいように身の回りを整える

離床しやすくするために、衣服など身の回りを整えます。履物やドレーン、点滴などが早期離床の妨げにならないようにするためです。

スリッパは脱げやすく滑りやすいので避け、運動靴やしっかりと足に固定でき歩きやすい靴を使用するように説明します。点滴はルートを延長して、動くときに邪魔にならないようにしましょう。また、ドレーンは袋に入れるなどして、持ち運びしやすいようにするのもポイントです。

患者さんが安全でスムーズに離床できるように、環境を整えることを忘れずに行いましょう。

疼痛をコントロールする

早期離床を進める際には、疼痛をコントロールすることが重要です。疼痛があると早期離床を妨げる原因となり、離床をスムーズに進められません。

臥床時に疼痛がなくても、動き始めると疼痛が強くなる可能性があります。痛みが強い患者さんに対しては、動き始める前に鎮痛剤を使うことを検討しましょう。

早期離床が不安な患者さんに疼痛について説明する看護師

パンフレットを作成して説明する

パンフレットを作成し、術前から患者さんに説明しておくと効果的です。

手術を受ける患者さんは手術や麻酔などさまざまな説明を受けています。不安や緊張が強く、早期離床について説明しても忘れてしまうこともあるでしょう。また、言葉だけではイメージが湧きにくいこともあります。

そこでパンフレットを使い説明することで、早期離床について患者さんから理解を得られやすくなるのです

術後の早期離床時に注意すべき点

患者さんの状態を把握せずに進めると、術後合併症を引き起こす可能性があるため危険です。
術後に離床を進める際には、下記の3つの点に注意しましょう。

  • 早期離床前に状態を観察する
  • 挿入物の管理に注意する
  • 早期離床中に状態が変化したら中止する

早期離床は術後の回復につながります。しかし、観察などを十分に行わなければ、状態を悪化させることもあるので注意が必要です。

早期離床前後に状態を観察する

術後の患者さんの状態は不安定であるため、早期離床を開始する前には十分な観察が必要です。状態を観察し、問題がなければ医師の許可を得て離床を進めていきます。
以下は離床前の観察点です。

  • バイタルサイン
  • 下肢の発赤や浮腫の有無
  • 疼痛の有無
  • 創部の状態
  • 排液の状態(ドレーンを挿入している場合)

術後は手術したことによって、血圧の変動や血栓が起きやすい状態です。そのため、安全に離床を進められるように、看護師によって離床前後の状態観察を十分に行うことが大切です。

挿入物の管理に注意する

術後は点滴やドレーン、膀胱留置カテーテルなどの挿入物が留置されているため、引っ張られて抜けないように注意する必要があります。離床前に固定テープの剥がれがないか、歩行中はチューブが突っ張らないかなどを確認すると安心です。また、ドレーンの種類に応じてドレーンバッグの位置や高さに配慮しましょう。

場合によっては、ドレーンを入れるバックを使用したり、点滴ルートを延長したりして、患者さんが安全に動きやすい環境を作るといいでしょう。

ドレーンの種類によっては、離床時にクランプが必要なタイプもあります。そのため、ドレーンの扱い方も確認しておくと良いです。

早期離床中に状態が変化したら中止する

早期離床を開始し、状態が悪くなった場合はすぐに中止します。動き始めることで、深部静脈血栓などの術後合併症が引き起こされることがあるため注意が必要です。

  • 意識レベル
  • 冷や汗
  • 呼吸数
  • 手足のしびれ
  • 脱力感
  • ドレーンの排液量の変化

歩行時に上記のような症状が現れたらすぐに安静にし、バイタルサインを測定しましょう。「きつい」「これ以上は無理」など、患者さんの訴えからも、症状の出現を予測できます。

早期離床中に患者さんの異変を感じる看護師

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