
浣腸は、自然な排泄や自立した排泄行動が難しい患者さんにとって必要な援助です。しかし、苦痛や羞恥心を伴う援助でもあります。看護師は、適切な浣腸の技術を身につけ、可能な限り安全・安楽に実施できるよう工夫することが大切です。
この記事では、浣腸の必要性や禁忌、実施手順、看護のポイントを解説します。さらに臨床現場で感じる疑問や不安に対してQ&Aを用いて紹介しますので、浣腸の看護に不安のある方は参考にしてください。

浣腸を安全に実施するにあたり、適応や禁忌を理解しておくことが大切です。この章では、浣腸の適応や種類などを実施するにあたって必要な基礎知識を解説します。浣腸の援助を予定している方や不安のある方はぜひ最後までお読みください。
浣腸とは、直腸内に薬物を注入し腸の内容物を排除する目的で行う援助です。浣腸は、以下のような患者さんに適応となります。
浣腸液は、直腸内の便に水分を吸収させます。浣腸の役割は、腸壁を刺激し腸蠕動を促進、浸透作用による便の軟化・潤滑化で排便を促すことです。
便秘の患者さんに対しては、最終排便の確認や腹部の状態を観察し、どのようなケアが適切かをアセスメントし浣腸を実施しましょう。浣腸の効果を腸管内のどこに期待するかで、浣腸の種類も変わってきます。
浣腸の種類には、主にグリセリン浣腸と高圧浣腸があります。浣腸の種類により、注入液の種類や作用する部位が異なります。
| 浣腸の種類 | グリセリン浣腸 | 高圧浣腸 |
| 注入液の種類 | グリセリン浣腸液 | 石鹸液 |
| 作用する部位 | 直腸 | 下行結腸、S状結腸 |
上記のうちグリセリン浣腸のほうが、臨床で使用される頻度が高いです。排便を促す作用機序を解説します。

グリセリン浣腸は、形状により、アコーディオン型と把持(はじ)型にわかれています。アコーディオン型の特徴は、容器を簡単に押すことができ浣腸液を注入しやすいということです。また浣腸器によっては、患者さんの不快感を軽減するための逆流防止弁が付いているものもあります。
浣腸の効果や実施する際の手技から、次のような禁忌があります。禁忌を把握しておくことで医療事故を未然に防ぐことができます。禁忌の理由も合わせて確認しておきましょう。
| 禁忌 | 禁忌の理由 |
| 腸管穿孔 | 浣腸液が腸管の外に漏れ腹膜炎を引き起こすことがあるため。 |
| 腸管内出血 | 粘膜からグリセリンが吸収され、溶血や腎不全を起こすことがあるため。 |
| 下部消化管の手術直後 | 縫合部が解離するおそれがあるため。 |
| 急性腹症(悪心・嘔吐・激しい腹痛) | 症状が悪化するおそれがあるため。 |
| 体力が著しく低下、衰弱している | 強制的な排便はショック状態や血圧低下を招く可能性があるため。 |
| 脳圧亢進 | 頭蓋内圧が亢進が増悪する可能性があるため。 |
| 重篤な心疾患 | 動脈瘤の破裂や血圧が高くなる可能性があるため。 |
便秘のケアを適切に行うには、排便状況を把握し便秘の状態をアセスメントすることが重要です。そのためには、便秘の原因や便の性状について正しい知識を身につける必要があります。この章では、得るべき情報や便のアセスメントについて解説します。
浣腸を実施する前に以下の内容を情報収集します。
適切な排便のケアを行うためには、便の正常や異常、便から分かる疾患についても知っておく必要があります。看護師同士で情報提供を行う際に正しく伝えられるよう、正確な便の性状や表現を身につけましょう。
正常な便の量は、100〜250g/回。回数は、3回/週〜3回/日とされています。
便の形状は、ブリストル便形状尺度を用いてアセスメントを行います。以下の1型・2型が便秘です。

便の正常な色は、黄褐色です。鉄剤を服用していると黒色便になります。
逆に灰白色便は、閉塞性黄疸を示す特徴的な色です。閉塞性黄疸など、胆汁が腸管内に排泄されないことによりビリルビンの黄色調が見られず、灰白色の便になります。
ここからは、臨床で頻回に実施されるグリセリン浣腸の手技について解説します。
浣腸の準備として、あらかじめ浣腸液を40~41℃に温めておきます。
ここからは、床上で排泄を行う患者さんに対するグリセリン浣腸の手順を解説します。
・チューブを回しながら挿入すると、肛門括約筋の不随意な収縮を予防することができます。
・臍部に向けて深く挿入すると、粘膜損傷や腸管穿孔を引き起こす可能性があるため、ゆっくり静かに挿入することが大切です。

浣腸を実施する際のポイントを3つ紹介します。
①患者さんへの説明は、不安を軽減できるよう丁寧に行う
お尻から薬剤を入れられることに恐怖や不安を覚える患者さんもいます。浣腸の目的や方法、所要時間を説明し、患者さんの協力を得られるよう実施しましょう。
②浣腸の処置には、合併症があることを認識し浣腸後も観察を行う
浣腸は、粘膜損傷や腸管穿孔、溶血、血尿などの合併症を併発する恐れがあります。合併症を伴う可能性があることを認識し、浣腸後も継続した観察が必要です。
③浣腸後は、排便のアセスメントと排便コントロールを継続する
便秘を繰り返さないために、排便のアセスメントを行います。また、腹部マッサージや温罨法を実施し排便コントロールをすることも大切です。必要に応じて、医師へ薬物療法の相談をすることも看護師の役割です。
左側臥位の姿勢をとることで、体の左側に位置している直腸、S上結腸、下行結腸に浣腸液をうまく流すことができるためです。立位での浣腸は、直腸前壁にカテーテルが当たり直腸穿孔を招く可能性があるため注意する必要があります。
キシロカインゼリーは、血圧低下や呼吸困難などのキシロカインショックを起こす恐れがあるため潤滑剤を使用します。
口呼吸をすることで、腹圧が低下し、肛門括約筋や腹筋の緊張が緩みます。そうすることでチューブが挿入しやすくなります。

カテーテル挿入の長さは、5㎝程度が目安です。肛門の長さは4㎝程度であり、カテーテルを挿入する長さが短いと、肛門括約筋が刺激され浣腸液を保持することが困難となり、早く便意を引き起こします。逆に長すぎる場合は、直腸を傷つける恐れがあるため注意が必要です。
浣腸液による便への軟化や膨張、腸への蠕動運動の効果は3〜10分程度です。浣腸液のみが排泄されないよう、トイレットペーパーなどで肛門を1〜3分程度圧迫し、我慢してもらいます。
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