浣腸とは?禁忌や合併症、手順と看護のポイント!

浣腸は、自然な排泄や自立した排泄行動が難しい患者さんにとって必要な援助です。しかし、苦痛や羞恥心を伴う援助でもあります。看護師は、適切な浣腸の技術を身につけ、可能な限り安全・安楽に実施できるよう工夫することが大切です。

この記事では、浣腸の必要性や禁忌、実施手順、看護のポイントを解説します。さらに臨床現場で感じる疑問や不安に対してQ&Aを用いて紹介しますので、浣腸の看護に不安のある方は参考にしてください。

この記事を書いた人
平野 芹奈
看護師
看護師資格、日本救急医学会認定ICLS取得。 急性期病院にて、脳神経外科、脳神経内科、血液内科の病棟看護師として勤務。その後、トラベルナースや派遣看護師、正社員などの働き方を選択し、脳神経外科専門病院・CRC、保育園看護師、コールセンター管理職を経験してきました。 現在は、Webライター、美容医療系のSNS運用代行を行っています。
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浣腸とは?浣腸の基礎を看護の視点から解説

浣腸を安全に実施するにあたり、適応や禁忌を理解しておくことが大切です。この章では、浣腸の適応や種類などを実施するにあたって必要な基礎知識を解説します。浣腸の援助を予定している方や不安のある方はぜひ最後までお読みください。

浣腸の適応

浣腸とは、直腸内に薬物を注入し腸の内容物を排除する目的で行う援助です。浣腸は、以下のような患者さんに適応となります。

  • 自然排便が困難な場合
  • 自立した排泄行動が困難な場合
  • 排便・排ガスを促す場合
  • 腸管の検査・手術前
  • 腸重積症整復の治療

浣腸液は、直腸内の便に水分を吸収させます。浣腸の役割は、腸壁を刺激し腸蠕動を促進、浸透作用による便の軟化・潤滑化で排便を促すことです。

便秘の患者さんに対しては、最終排便の確認や腹部の状態を観察し、どのようなケアが適切かをアセスメントし浣腸を実施しましょう。浣腸の効果を腸管内のどこに期待するかで、浣腸の種類も変わってきます。

浣腸の種類と作用

浣腸の種類には、主にグリセリン浣腸と高圧浣腸があります。浣腸の種類により、注入液の種類や作用する部位が異なります。

浣腸の種類グリセリン浣腸高圧浣腸
注入液の種類グリセリン浣腸液石鹸液
作用する部位直腸下行結腸、S状結腸

上記のうちグリセリン浣腸のほうが、臨床で使用される頻度が高いです。排便を促す作用機序を解説します。

  1. グリセリン浣腸液が直腸内に滞留している便へ浸透し、便が軟らかくなる
  2. 浸透圧の影響で直腸内に水分が移動
  3. 腸内容積が増大し、腸が刺激されることにより蠕動運動が亢進される
  4. 便が滑りやすくなり排便が促される
グリセリン浣腸の作用機序の解説イラスト

グリセリン浣腸は、形状により、アコーディオン型と把持(はじ)型にわかれています。アコーディオン型の特徴は、容器を簡単に押すことができ浣腸液を注入しやすいということです。また浣腸器によっては、患者さんの不快感を軽減するための逆流防止弁が付いているものもあります。

浣腸の禁忌

浣腸の効果や実施する際の手技から、次のような禁忌があります。禁忌を把握しておくことで医療事故を未然に防ぐことができます。禁忌の理由も合わせて確認しておきましょう。

禁忌禁忌の理由
腸管穿孔浣腸液が腸管の外に漏れ腹膜炎を引き起こすことがあるため。
腸管内出血粘膜からグリセリンが吸収され、溶血や腎不全を起こすことがあるため。
下部消化管の手術直後縫合部が解離するおそれがあるため。
急性腹症(悪心・嘔吐・激しい腹痛)症状が悪化するおそれがあるため。
体力が著しく低下、衰弱している強制的な排便はショック状態や血圧低下を招く可能性があるため。
脳圧亢進頭蓋内圧が亢進が増悪する可能性があるため。
重篤な心疾患動脈瘤の破裂や血圧が高くなる可能性があるため。
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浣腸を実施する前に把握すべき情報とアセスメント

便秘のケアを適切に行うには、排便状況を把握し便秘の状態をアセスメントすることが重要です。そのためには、便秘の原因や便の性状について正しい知識を身につける必要があります。この章では、得るべき情報や便のアセスメントについて解説します。

浣腸を実施する前の問診と情報収集の項目

浣腸を実施する前に以下の内容を情報収集します。

  • 最終排便日
  • 便の量と性状(色、形状)
  • 排便パターン(回数、時間帯、所要時間)
  • 自覚症状(便意、腹痛、腹部膨満感、排便痛、残便感、肛門部の違和感)
  • 生活習慣(食生活、水分摂取量、運動量)
  • 既往歴
  • 服薬状況
  • ストレス状況
  • 身体所見(腸蠕動音の減弱/亢進、ガスによる腹部膨満)

便の性状をアセスメント

適切な排便のケアを行うためには、便の正常や異常、便から分かる疾患についても知っておく必要があります。看護師同士で情報提供を行う際に正しく伝えられるよう、正確な便の性状や表現を身につけましょう。

正常な便の量は、100〜250g/回。回数は、3回/週〜3回/日とされています。

便の形状は、ブリストル便形状尺度を用いてアセスメントを行います。以下の1型・2型が便秘です。

ブリストルスケールのイラスト

便の正常な色は、黄褐色です。鉄剤を服用していると黒色便になります。
逆に灰白色便は、閉塞性黄疸を示す特徴的な色です。閉塞性黄疸など、胆汁が腸管内に排泄されないことによりビリルビンの黄色調が見られず、灰白色の便になります。

アセスメントのポイント!
タール便は、上部消化管出血の特徴です。血液が便と混ざって排泄までに時間を要するため黒色に変化します。鮮紅色の便は、下部消化管出血です。黒色に変化する前に、鮮紅色のまま排泄されます。
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グリセリン浣腸の手技

ここからは、臨床で頻回に実施されるグリセリン浣腸の手技について解説します。

グリセリン浣腸の必要物品

  • ディスポーザブル浣腸器
  • 潤滑剤
  • 温度計
  • 湯入りのピッチャーやバケツ(浣腸器の湯煎に使用)
  • 手袋・エプロン
  • バスタオル
  • ガーゼ
  • 処置シーツ
  • ビニール袋、膿盆(廃棄物入れ)
  • 差し込み便器またはオムツ(臥床状態で実施する場合)
  • トイレットペーパー

グリセリン浣腸の準備と手順

浣腸の準備として、あらかじめ浣腸液を40~41℃に温めておきます

浣腸液の温度について
直腸は37.5~38℃前後です。浣腸液の温度が直腸よりも低いと、腸壁の毛細血管が収縮して血圧が上がり、悪寒などを引き起こす可能性があります。しかし、43℃以上の場合は腸粘膜が損傷する可能性もあるため、浣腸液は適正な温度に温めておきましょう。

ここからは、床上で排泄を行う患者さんに対するグリセリン浣腸の手順を解説します。

  1. 患者さんに説明を行い、バイタルサインを測定
  2. 羞恥心に配慮し、カーテンやバスタオルでプライバシーを保護
  3. 膝を曲げ、左側臥位になってもらう
  4. 臀部を露出し、処置シーツを敷く
  5. トイレットペーパー、ビニール袋、ガーゼ、潤滑剤の物品を配置
  6. 浣腸器のキャップを外し、チューブ内の空気を抜く
  7. ストッパーをチューブの先端から約5㎝の場所へ移動させる
  8. チューブの先端に潤滑剤を塗布
  9. 口呼吸を促し、肛門からチューブを挿入
  10. 浣腸液を50mlあたり15秒の速度で注入
  11. チューブを抜く(チューブに血液の付着がないか確認)
  12. 3~10分程度経過するか、排便の訴えが強くなった場合に排便してもらう
  13. 陰部・肛門部を清潔にする
  14. 浣腸終了後は、便の性状や量を記録
  15. 血便や肛門部出血、血尿などの観察を継続
挿入時のポイント!

・チューブを回しながら挿入すると、肛門括約筋の不随意な収縮を予防することができます。
・臍部に向けて深く挿入すると、粘膜損傷や腸管穿孔を引き起こす可能性があるため、ゆっくり静かに挿入することが大切です。

グリセリン浣腸の準備の解説イラスト

浣腸を実施する際の看護ポイント

浣腸を実施する際のポイントを3つ紹介します。

患者さんへの説明は、不安を軽減できるよう丁寧に行う
お尻から薬剤を入れられることに恐怖や不安を覚える患者さんもいます。浣腸の目的や方法、所要時間を説明し、患者さんの協力を得られるよう実施しましょう。

②浣腸の処置には、合併症があることを認識し浣腸後も観察を行う
浣腸は、粘膜損傷や腸管穿孔、溶血、血尿などの合併症を併発する恐れがあります。合併症を伴う可能性があることを認識し、浣腸後も継続した観察が必要です。

③浣腸後は、排便のアセスメントと排便コントロールを継続する
便秘を繰り返さないために、排便のアセスメントを行います。また、腹部マッサージや温罨法を実施し排便コントロールをすることも大切です。必要に応じて、医師へ薬物療法の相談をすることも看護師の役割です。

浣腸にまつわるQ&A

なぜ左側臥位にするのか?

左側臥位の姿勢をとることで、体の左側に位置している直腸、S上結腸、下行結腸に浣腸液をうまく流すことができるためです。立位での浣腸は、直腸前壁にカテーテルが当たり直腸穿孔を招く可能性があるため注意する必要があります。

キシロカインゼリーではなく潤滑剤を使用する理由は?

キシロカインゼリーは、血圧低下や呼吸困難などのキシロカインショックを起こす恐れがあるため潤滑剤を使用します。

口呼吸が必要な理由は?

口呼吸をすることで、腹圧が低下し、肛門括約筋や腹筋の緊張が緩みます。そうすることでチューブが挿入しやすくなります。

浣腸をする際に口呼吸が必要な理由についての解説イラスト

カテーテル挿入の適切な長さは?

カテーテル挿入の長さは、5㎝程度が目安です。肛門の長さは4㎝程度であり、カテーテルを挿入する長さが短いと、肛門括約筋が刺激され浣腸液を保持することが困難となり、早く便意を引き起こします。逆に長すぎる場合は、直腸を傷つける恐れがあるため注意が必要です。

浣腸液の注入後に我慢する理由は?どのくらい我慢するの?

浣腸液による便への軟化や膨張、腸への蠕動運動の効果は3〜10分程度です。浣腸液のみが排泄されないよう、トイレットペーパーなどで肛門を1〜3分程度圧迫し、我慢してもらいます。

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