
周手術期の管理で欠かせない血糖値のコントロール。
特に術後は血糖値が上昇しやすいため、より厳密な管理が必要です。血糖値が上昇したままだと、さまざまな合併症を起こす恐れがあるためです。
ただし、術後の血糖値はメカニズムが複雑であり、苦手な方が多いかもしれません。
本記事では、血糖値が上昇する理由やメカニズム、看護ケアを解説します。周手術期の看護ケアに役立てましょう。

大学卒業後、集中治療室や心臓血管病棟、循環器内科などで看護師として14年間勤務。主に急性期の看護ケアに携わる。現在は、3人の子育てをしながら、医療・看護・育児にまつわる記事の執筆や監修に力を入れている
X(Twitter):@shota_papa37
術前に糖尿病を指摘されていない患者さんでも、術後は高血糖の状態になりやすいです。これを「外科的糖尿病」といいます。
もともと糖尿病がある方や侵襲が大きい手術を受けた方は、特に、術後に血糖値が上がりやすいです。ここでは、術後に血糖値が上がる理由やメカニズムを解説します。
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糖尿病の既往がない患者さんの術後の血糖測定について知りたい
術後、血糖値が上昇する理由は以下の3つです。
手術を受けたあとの数時間は、カテコラミンの影響を受けてインスリンの分泌が抑制されます。そのため、糖尿病ではない患者さんでも血糖値が上がるのです。
血糖値が高い状態のままだと、創部の治癒遅延や脳梗塞などを起こしやすくなります。
そのため、適切な血糖コントロールが大切です。

手術の侵襲によるストレスがかかると、交感神経が刺激されます。
すると、ストレスホルモン(アドレナリン、グルカゴン、コルチゾールなど)の分泌や炎症性サイトカインの分泌が亢進します。これらのホルモンによって、以下の変化が起こります。
結果的に、術後に血糖値が上昇するのです。
たとえば、消化器外科の手術のうち、肝切除や膵切除、食道切除などでは手術の侵襲が大きくストレスホルモンの分泌も多くなるため、高血糖を起こしやすいといわれています。
血糖値が上昇するメカニズムを押さえて看護ケアを実践しましょう。

通常、血糖値の上昇は術後3日〜1週間で起こり、手術の侵襲が落ち着くとともに正常に近付きます。
ただし、もともと糖尿病があり血糖値のコントロールが悪い場合は、1週間経ったあとも血糖値が高い状態が続く恐れがあります。高血糖の状態が続くことで、糖尿病性ケトアシドーシスが進行して意識を失う恐れがあります。
そのため、定期的に血糖値を測定して、血糖値が上がる前に介入したり高血糖を早期発見したりすることが大切です。
術前の血糖値のコントロールが不良であると、術後の血糖値の変動が大きくなります。
術前後の高血糖は創部の治癒遅延や心筋梗塞などにつながる恐れがあるため、術前からの血糖値の管理が大切です。糖尿病がない方と比較し、糖尿病がある方は、早めに入院して厳密に血糖値を管理する場合があります。
さらに、血糖値のコントロールがつかない場合(HbA1c>8.5%)は、手術の延期を検討する病院もあります。
また、患者さんが入院前から飲んでいる薬の確認も術前の血糖値管理には欠かせません。
というのも、血糖値を下げる薬の1つであるビグアナイド系薬剤(メトグルコやグリコランなど)を飲んでいる方に造影剤を使用すると、乳酸アシドーシスや肝不全、腎不全を起こす恐れがあるためです。
そのため、ビグアナイド系薬剤は造影剤を使う手術の48時間前までに服用を中止しなければなりません。薬を中止したあとの血糖値の推移にも注意しましょう。

ここでは、術後の血糖管理のポイントと看護上の問題点を解説します。
術後は、手術部位感染(Surgical Site Infection;SSI)の予防が重要です。
SSIの原因菌には、黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌などが挙げられます。これらは、疾患の有無に関係なく、常在菌として鼻腔内や皮膚表面などさまざまなところに存在しています。
つまり、術後の創部の感染リスクは常にあるのです。
特に、血糖値のコントロールが不良であれば、創部の治癒遅延を起こす可能性が高まります。以下のポイントに注意し観察しましょう。
これらの項目に加え、血液データや発熱の有無の観察が必要です。
また、心臓バイパス術では、内胸動脈を使って手術をする場合があります。血糖値のコントロール不良に、内胸動脈を使うことによる胸骨の血流低下が加わることで、縦隔炎や胸骨感染のリスクが高まるため注意してください。
血糖値が高い状態が続くと、脳梗塞や心筋梗塞を起こす恐れがあります。
糖尿病の患者さんは、もともと動脈硬化が進んでいるため、脳梗塞や心筋梗塞のリスクは高いといえます。
術後は、全身の状態が安定していないため、脳梗塞や心筋梗塞を起こしても、治療ができない場合もあります。
特に、脳梗塞で使われる静注血栓溶解(rt-PA)は、術後は出血を増強させるため使えません。そのため、脳梗塞が起きても症状が残ってしまう可能性があります。
意識レベルや瞳孔所見、麻痺の有無などの観察と合わせて、心電図の異常や胸痛がないか観察し、異常の早期発見に努めましょう。
消化器外科の患者さんの空腹時血糖値は140mg/dl以下での管理が推奨されています。
ただし、病院によって術後の管理方法は違うため、血糖値の基準が異なる可能性があります。そのため、術後は、主治医の指示に従った血糖値のコントロールが重要といえます。
術後は高血糖だけではなく、低血糖も問題となりやすいです。というのも、術後は多くの場合、インスリン注射で血糖値をコントロールするためです。
たとえば、病院によっては超即効型であるヒューマリンRを持続投与する場合があります。ヒューマリンRは、作用が持続する時間は3〜5時間と短いものの、効果が出るまでが10〜20分と早いため、血糖値が下がりやすいです。
特に術後の患者さんは鎮静剤を使用する場合が多く、自覚症状を確認できないため、低血糖の発見が遅れる恐れがあります。

さらに、術後は全身の状態が安定するまで絶食管理です。食事を再開したあとも、食欲がなく必要な量を食べれない場合や状態の変化により急に食事が食べられなくなる場合があります。
そのため、2~4時間ごとに血糖値を測定し厳重に管理することが大切です。術後の低血糖について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
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低血糖の看護とは?3つの予防法と実際になったときの対処法を解説
血糖値のコントロールは、周手術期の管理で欠かせません。
というのも、術前に糖尿病を指摘されていない患者さんでも、術後は血糖値が上昇しやすいためです。血糖値が高いままだと、創部の治癒不全や心筋梗塞などを起こす恐れがあります。
血糖値が高くなる理由やメカニズムを押さえたうえで看護ケアを実施しましょう。

大学卒業後、集中治療室や心臓血管病棟、循環器内科などで看護師として14年間勤務。主に急性期の看護ケアに携わる。現在は、3人の子育てをしながら、医療・看護・育児にまつわる記事の執筆や監修に力を入れている
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Q. お礼奉公中でも転職は可能?
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