2型糖尿病で使用される「経口血糖降下薬」の使い分けを薬剤師が解説!

「薬の使い分けBOOK」では、看護師さんが気になる薬の使い分け方法について、薬剤師の笹川大介が解説します。

本記事は、経口血糖降下薬についてまとめました。作用・副作用に加えて特徴も記載していますので、ぜひ参考にしてください。

この記事を書いた人
笹川大介(ササガワダイスケ)
薬剤師、株式会社ゆかりファーマシー取締役

熊本大学薬学部を卒業後、2003年より地元・鹿児島県種子島の薬局に就職。その後、2009年より現職。

各地での講演会やセミナーを多数行っており、最近はYouTubeでオリジナル講義「かんたん薬理学」を精力的に配信している。日経DIクイズの執筆者、薬剤師教育動画「描いてつかむ! 副作用の薬理学」出演などの経験を持つ。

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糖尿病とは?

糖尿病とは、血糖値が高い状態が長期間続く病気で、1型糖尿病と2型糖尿病があります。全体の約9割が2型糖尿病です。

▼糖尿病の種類

1型糖尿病2型糖尿病
原因インスリンがほとんど分泌されないインスリンの量の不足、インスリンの効きが悪くなる
発症年齢主に小児・若年者中高年に多いが、若年者も増えている
患者割合1割9割
体型やせ型肥満型
治療インスリン注射食事療法・運動療法・薬物治療


1型糖尿病は、膵臓のランゲルハンス島のβ細胞が何らかの原因でインスリンが分泌されなくなる病気です。インスリン製剤による治療が中心となります。生活習慣とは無関係で若年層に多いですが、高齢でも発症することがあります。

2型糖尿病は膵臓のβ細胞から分泌されて血糖値を下げるインスリンというホルモンの量が不足したり(インスリン分泌低下)、分泌はされてもうまく作用しなかったり(インスリン抵抗性)することで起こります。

遺伝や高カロリー、高脂肪食などの過食、運動不足などにより引き起こされます。中高年者に多いですが、若年者の発症も増えています。

1型糖尿病の治療はインスリン注射が必須です。一方、2型糖尿病では、まずは食事療法と運動療法に加えて、経口薬で治療します。病状が進行してインスリンの分泌量が不足したり、一時的に血糖コントロールができない場合にインスリン注射を使用します。

本記事では、2型糖尿病で使用される経口血糖降下薬について解説します。

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経口血糖降下薬の3つの分類

糖尿病の飲み薬はその作用から、大きく3つに分類できます。

薬の分類 分類名 作用
インスリン分泌促進系 SU薬 膵臓に働きかけてインスリンを出させる。インスリン分泌低下を補う。
速効型インスリン分泌促進薬
GLP-1受容体作動薬
DPP-4阻害薬
イメグリミン
インスリン抵抗性改善系 ビグアナイド薬 インスリンを効きやすくする。インスリン抵抗性※を改善する。
チアゾリジン薬
糖吸収・排泄調節系 α-グルコシダーゼ阻害薬 小腸からのブドウ糖の吸収を遅らせる、または、血液中の糖を尿中に排出させる。
SGLT2阻害薬
※インスリン抵抗性
筋肉や脂肪組織、肝臓などで、インスリンが働きにくくなっている状態。
上記3つを、病状の程度(血糖値やHbA1cなどの検査値)に応じて単独で用いたり、作用が異なる薬同士で併用したりします。

それでは3つの薬に関して、具体的な薬と一緒に使い分けを見ていきましょう。

糖尿病に対して使用される主な薬

①インスリン分泌促進系

分類名:SU薬(スルホニル尿素薬)

  • 一般名:グリメピリド(商品名:アマリール)
  • 一般名:グリクラジド(商品名:グリミクロン) など
 

【作用】
膵臓のβ細胞にあるSU受容体に結合し、膵臓からのインスリン分泌を促し血糖値を下げます。

【特徴】
経口血糖降下薬のなかでも作用が強力です。HbA1cを1〜2%低下させる効果が期待できますが、低血糖の懸念があるため、使用頻度は低いです。使用する場合は、できるだけ少量とします。

使い分けのポイント

痩せていて、食事療法・運動療法がきちんとできているのにも関わらず、インスリン分泌が低下しており空腹時血糖値が高い人に適しています。

【副作用】
血糖値に関係なく血糖降下作用を示すため、低血糖※になる可能性が高いです。

※低血糖
必要以上に血糖値が下がってしまう状態で、一般的に血糖値が70mg/dL以下となります。自覚症状は、冷や汗、気持ち悪い、手足がふるえる、ふらつくなどです。

低血糖がみられる場合は、吸収の速い糖分などを摂取します。糖分を摂取しても症状の改善がみられない場合は、医師に連絡してください。

また、ほかの薬と併用する場合にも、低血糖を引き起こす可能性があります。

分類名:速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)

  • 一般名:ナテグリニド(商品名:スターシス、ファスティック)
  • 一般名:ミチグリニド(商品名:グルファスト)
  • 一般名:レパグリニド(商品名:レパグリニド)
 

【作用】
SU薬と同様、膵臓のβ細胞を刺激してインスリンの分泌を促進する作用があります。

【特徴】
SU薬と比較して、作用時間が短いのが特徴です。早く効き、早く効果が切れます。

食後の血糖値の急上昇を防ぐために、食事の直前に飲みます。

使い分けのポイント
空腹時血糖値は高くないものの、食後血糖値が高い人に適しています。

【副作用】
低血糖が起こる可能性がありますが、頻度はSU薬より少ないと言われています。

分類名:GLP-1受容体作動薬

一般名:セマグルチド(主な商品名:リベルサス)

【作用】
インクレチン※の1つであるGLP-1と同様の働きをし、血糖値を下げます。

※インクレチン
腸管で分泌される消化管ホルモンの総称。主にGIPとGLP-1の2つがある。

そもそも体内で血糖値を下げる仕組みを解説すると、まず食事を摂取すると、小腸からインクレチンが血中へ分泌され、膵臓に運ばれます。そこでインスリンの分泌を促すことで、血糖値を下げます。

【特徴】
これまで紹介したSU薬と速効型インスリン分泌促進薬は、血糖値に関係なく血糖を下げるため低血糖が懸念されますが、GLP-1受容体作動薬は血糖値に応じてインスリンを分泌するため、単独投与では低血糖のリスクが低いです。

使い分けのポイント
体重を減らす作用や心血管保護作用もあるため、肥満の人や心血管疾患の既往がある人に適しています。

飲み薬のGLP-1受容体作動薬は、薬の効果を発揮させるために正しい服用方法が求められます。ポイントは以下の3つです。

ポイント理由
①1日のうちの最初の食事または飲水の前に、空腹状態で服用してください。胃の中に食べ物や飲み物があると、有効成分が吸収されず、本来の効果が発揮されないため。
②コップ約半分の水(約120mL以下)とともに1錠を服用してください飲水量が多すぎると、薬の吸収効率が低下する可能性があるため。
③服用時および服用後少なくとも30分は、飲食およびほかの薬剤の経口摂取を避けてください服用後すぐの飲食やほかの薬の服用は、薬の吸収の妨げになるため。


【副作用】
飲み始めに吐き気、下痢、便秘などの胃腸症状があらわれることがあります。体重減少が起こる場合があります。

分類名:DPP-4阻害薬

  • 一般名:シダグリプチン(商品名:グラクティブ、ジャヌビア)
  • 一般名:ビルダグリプチン(商品名:エクア)
  • 一般名:アログリプチン(商品名:ネシーナ)
  • 一般名:リナグリプチン(商品名:トラゼンタ)
  • 一般名:テネリグリプチン(商品名:テネリア)
  • 一般名:アナグリプチン(商品名:スイニー)
  • 一般名:サキサグリプチン(商品名:オングリザ)
  • 一般名:オマリグリプチン(商品名:マリゼブ)
  • 一般名:トレラグリプチン(商品名:ザファテック)
 
 

【作用】
インクレチンを分解する酵素(DPP-4)の働きを抑えることでインクレチンの働きを強め、インスリンの分泌を促します。

【特徴】
インクレチンは血糖値が高いときのみインスリンの分泌を促進するため、DPP-4阻害薬は低血糖リスクが低く、高齢者や合併症の進行した人でも使いやすいです。

1日1〜2回の投与で、食事の影響なく食前・食後どちらでも投与できるため、頻度高く使用されています。

週に1回のみ服用する薬(オマリグリプチン、トレラグリプチン)もあります。

使い分けのポイント
日本人の2型糖尿病に多い非肥満でインスリン分泌能が低下した患者で効果が期待できます。体重を減らす作用がないため、筋肉量の減少が見られる高齢者の糖尿病にも使用しやすい薬です。

【副作用】
飲み始めに便秘、胃部不快感、吐き気、下痢などの症状がみられる場合があります。

分類名:イメグリミン

一般名:イメグリミン(商品名:ツイミーグ)

【作用】
インスリン分泌の低下やインスリン抵抗性が進んでしまう原因に、細胞内のミトコンドリアの機能異常が考えられています。この薬はミトコンドリアへの作用を介して、血糖値に応じたインスリンの分泌を促す作用と、インスリン抵抗性を改善する作用により血糖値を改善します。

【特徴】
インスリン分泌促進作用とインスリン抵抗性改善作用を持ち合わせています。イメグリミンの構造は、ビグアナイド薬のメトホルミンに似ていますが、乳酸の代謝に関わる酵素を阻害しないため、乳酸アシドーシスが起きにくいことも特徴的です。

使い分けのポイント
イメグリミンはほかの血糖降下薬との併用でも有効性が確認されています。特にDPP4阻害薬と併用することで、よりHbA1cが低下することが臨床試験で報告されています。また、メトホルミンやピオグリタゾンなどのインスリン抵抗性改善薬が副作用で投与できないケースに使用することがあります。

【副作用】
主な副作用に、吐き気、下痢、便秘などがあります。

特にビグアナイド系(メトホルミン)との併用で消化器症状が発現しやすいという報告があるため、注意が必要です。単独では低血糖を起こしにくいです。

②インスリン抵抗性改善系

分類名:ビグアナイド薬

一般名:メトホルミン(商品名:メトグルコ)

【作用】
主に、肝臓でブドウ糖が作られるのを抑えて血糖値が高くなるのを防ぎます。また、小腸でブドウ糖の吸収を抑えたり、筋肉や脂肪組織でのインスリンの効き目を高めたりして、細胞内にブドウ糖を取り込むことで血糖値を下げる作用もあります。

【特徴】
メトホルミンを利用して血糖コントロールの改善を目指すと、心筋梗塞などのリスクが減少することが研究で分かっています。また、肥満の有無にかかわらず血糖を低下させ、体重増加もきたしにくいです。薬価も安いこともメリットです。

使い分けのポイント
日本糖尿病学会が発表した「2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム(第2版)」の病態に応じた薬剤選択では、肥満(インスリン抵抗性を想定)、非肥満(インスリン分泌不全を想定)のどちらにおいても推奨薬剤となっており、広く2型糖尿病の治療薬として適しています。

【副作用】
服用開始や増量時に、下痢、吐き気が現れることがありますが、飲み続けるうちに改善されることが多いです。

最も気を付けなければならない副作用は乳酸アシドーシスです。初期症状は、胃腸障害、倦怠感、筋肉痛、過呼吸などです。頻度は稀ですが、治療が遅れると危険なため、上記の症状が見られた場合は、直ちに受診が必要です。

【禁忌】
重度の腎機能障害 

分類名:チアゾリジン薬

一般名:ピオグリタゾン(商品名:アクトス)

【作用】
筋肉や脂肪組織、肝臓に働き、インスリン抵抗性を改善することでインスリンの働きをよくして、血糖値を下げます。

【特徴】
インスリン抵抗性を改善する以外にも、中性脂肪低下作用やHDLコレステロールの増加作用もあり、動脈硬化の進行を抑える効果が報告されています。
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の肝機能を改善します。そのため、「NAFLD/NASH診療ガイドライン2020」では、2型糖尿病を合併するNASHでは投与が推奨されています。

使い分けのポイント
インスリン抵抗性がある人、いわゆる肥満患者に適しています。インスリン抵抗性の目安は、BMI24Kg/㎡以上あるいは空腹時の血中インスリン値5μU/mL以上です。

【副作用】
特徴的な副作用に体重増加と浮腫があります。

ピオグリタゾンは腎臓の尿細管においてナトリウムと水の再吸収を促進します。その結果、体内の水分量が増えて、体重増加や浮腫が出現します。浮腫は顔面や下肢に起こりやすく、比較的女性に多いと報告されています。特に高用量を服用している場合やインスリンとの併用時には高頻度で起こります。

体重増加や浮腫によって、体液が貯留すると心臓にも負担がかかるため、心不全をひき起こすおそれがあります。手足のむくみ、急激な体重増加、息苦しさ、動悸などの症状が見られた際は、医師に連絡するようにしてください。

【禁忌】
心不全およびその既往

③糖吸収・排泄調節系

分類名:α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)

  • 一般名:ボグリボース(商品名:ベイスン)
  • 一般名:アカルボース(商品名:アカルボース)
  • 一般名:ミグリトール(商品名:セイブル)
  

【作用】
炭水化物をブドウ糖に分解する酵素(α-グルコシダーゼ)の働きを抑えて、腸での糖の吸収を遅らせることにより、食後の急激な血糖上昇を抑えます。

【特徴】
糖尿病の発症初期もしくは軽症の2型糖尿病患者では、空腹時の血糖値が正常域であっても、食後高血糖(食後2時間血糖値≧140mg/dL)がみられることが分かっています。食後高血糖が続くと動脈硬化のリスクとなり、脳梗塞や心筋梗塞を起こす恐れがあります。

α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)は、発症初期もしくは軽症の2型糖尿病患者に対して単独で使用したり、食後に著しい高血糖がある患者に対して、ほかの薬と併用したりします。

この薬は食物と混在することで効果を発揮するため、食直前に服用します。食直前に服用しないと十分な効果が期待できません。

単独では低血糖となる可能性は少ないです。

α-GIを服用中に低血糖を起こした場合には、ショ糖(砂糖)ではなくブドウ糖(単糖類)で対処します。α-GIは二糖類から単糖類への分解を阻害する作用があるため、二糖類であるショ糖では血糖値の回復が遅れてしまうためです。

使い分けのポイント
発症初期もしくは軽症の糖尿病、または多剤を服薬しており、HbA1cはコントロールされているものの食後の血糖値が高い人に適しています。

【副作用】
飲み始めに、お腹の張り、おなら、便秘、下痢などの症状が出ることがありますが、飲み続けると徐々に軽減されることが多いです。症状が強いときには早めに受診してください。

高齢の方や消化管の手術をしたことのある方は、腸閉塞が見られることがあるので注意が必要です。また、肝機能障害が起きることがあるので、肝機能検査は必ず定期的に受けるようにしましょう。

分類名:SGLT2阻害薬

  • 一般名:イプラグリフロジン(商品名:スーグラ)
  • 一般名:ダパグリフロジン(商品名:フォシーガ)
  • 一般名:ルセオグリフロジン(商品名:ルセフィ)
  • 一般名:トホグリフロジン(商品名:デベルザ)
  • 一般名:カナグリフロジン(商品名:カナグル)
  • 一般名:エンパグリフロジン(商品名:ジャディアンス)
  

【作用】
腎臓のSGLT2と呼ばれるタンパク質の働きを抑えて、血液中の余分な糖を尿中に排泄することで血糖値を下げます。

【特徴】
インスリンとは関係なく作用するため、効きすぎによる低血糖を起こしにくいと考えられています。

心臓、腎臓の保護作用があるため、冠動脈疾患の既往がある人や心不全を合併している人、慢性腎臓病の人で積極的な使用が勧められています。

使い分けのポイント
ブドウ糖を体外に排出させるので、体重減少効果も期待でき、肥満を合併した糖尿病の患者に適しています。

【副作用】
SGLT2阻害薬は、尿量を増やす作用があります。尿量が増えると、体の水分量が減少するため、水分補給をしないで放置すると、脱水を起こすことがあります。

のどが渇く、疲れやすい、めまいがする、食欲がない、などの症状は脱水が疑われます。脱水は症状を自覚しにくいこともあるため、SGLT2阻害薬を服用中はこまめに水分補給してください。

また、膀胱炎、尿道・膣の感染症が起こることがあります。特に女性は注意が必要です。

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さいごに

経口血糖降下薬について、もっと知りたいことや、困っていること、そのほかにもこんな薬剤の記事が見たいなどがあればコメントしてください!

これは役立つぞ!とか現場と違うんだけど…というコメントも大歓迎です。

今回の内容はレバウェル看護公式Instagramにてイラストで簡単に解説しています。投稿はコチラ!

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プロデュース
看護師のかげ
看護師、イラストレーター。病棟で働きながら医療・看護に関するコンテンツをさまざまな媒体で発表している。 保健師、呼吸療法認定士、終末期ケア専門士。著書に「看護が苦手なかげさんのイラスト看護帖」(永岡書店)ほか。X:@877_727、Instagram:@877_727

この記事を書いた人
笹川大介(ササガワダイスケ)
薬剤師、株式会社ゆかりファーマシー取締役

熊本大学薬学部を卒業後、2003年より地元・鹿児島県種子島の薬局に就職。その後、2009年より現職。

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