
「薬の使い分けBOOK」では、看護師さんが気になる薬の使い分け方法について、薬剤師の笹川大介が解説します。
本記事は、制吐薬についてまとめました。作用・副作用に加えて特徴も記載していますので、ぜひ参考にしてください。

熊本大学薬学部を卒業後、2003年より地元・鹿児島県種子島の薬局に就職。その後、2009年より現職。
各地での講演会やセミナーを多数行っており、最近はYouTubeでオリジナル講義「かんたん薬理学」を精力的に配信している。日経DIクイズの執筆者、薬剤師教育動画「描いてつかむ! 副作用の薬理学」出演などの経験を持つ。
悪心・嘔吐は、上部消化管(口から十二指腸までの部分)に入ってきた有害物質を体外に排出するために備わっている防御機能の1つです。
悪心・嘔吐を制御しているのは、脳の延髄にある嘔吐中枢と化学受容器引き金帯(CTZ)と呼ばれる部位です。悪心・嘔吐は、脳の嘔吐中枢の興奮によって生じます。

悪心・嘔吐の原因には、消化器や内耳の異常、不快な気分、抗がん薬などがあり、制吐薬はその原因に応じて使い分けられます。
【作用】
CTZや上部消化管のドパミン受容体を遮断することで、悪心・嘔吐を抑える薬です。
【特徴】
最も広く用いられている制吐薬です。慢性胃炎や消化性潰瘍による嘔吐、麻薬や抗がん薬投与による嘔吐などに使用されます。
CTZ以外にも上部消化管のドパミン受容体を遮断することで、消化管の動きを促進する働きがあります。それにより、胃内で停滞して悪心・嘔吐の原因となっている胃の内容物が腸管へスムーズに進むため、悪心・嘔吐が改善されます。
ただし、乗り物酔いには効果が期待できません。
【副作用】
腹痛や下痢、めまい感や眠気があらわれます。まれにホルモンの乱れによる生理不順や乳汁分泌もみられます。
気を付けたい副作用に錐体外路症状があります。
▼錐体外路症状で見られる症状
| 薬剤性パーキンソニズム | 体がうまく動かない、手がふるえる、体が前かがみになって小刻みに歩く |
| アカシジア | 足がむずむずする、絶えず歩き回る、足を落ち着きなく揺らす |
| ジスキネジア | 無意識に口が動く、手足が勝手に動く |
| ジストニア | 目が上を向く、ろれつがまわらない、首が反り返る、体が傾く |
上記のような症状がある場合は、すぐに医師や薬剤師に連絡してください。

【作用】
ヒスタミンとよばれる神経伝達物質が嘔吐中枢に存在するヒスタミン受容体に結合するのを阻害し、悪心・嘔吐を抑える薬です。
【特徴】
体動や乗り物酔い、メニエール病による嘔吐に使用されます。
乗り物酔いで使用する場合には、予防のため、乗り物に乗る約30分前に服用します。症状が起こってからの服薬ではあまり効果が期待できません。
【副作用】
眠気や口渇、倦怠感などの副作用が高頻度でみられます。
【禁忌】
閉塞隅角緑内障とよばれるタイプの緑内障には禁忌です。眼圧が上昇し、症状が悪化するおそれがあるためです。
また、前立腺肥大症などで尿の出にくい人も症状が悪化するため、禁忌となっています。
【作用】
CTZや消化管に存在するセロトニン受容体を遮断することで悪心・嘔吐を抑える薬です。
【特徴】
抗がん薬や放射線療法による嘔吐に使用されます。
抗がん薬は脳のCTZを刺激し、その刺激が嘔吐中枢に伝わることで悪心・嘔吐が起こります。また、抗がん薬により消化管の細胞からセロトニンという神経伝達物質が分泌され、これが消化管にあるセロトニン受容体に作用することで嘔吐中枢を刺激して悪心・嘔吐を引き起こします。
抗がん薬による悪心・嘔吐は、発生時期や状況により以下の4種類(急性、遅発性、予期性、突発性)に分けられます。
| 分類 | 症状 |
| 急性悪心・嘔吐 | 抗がん薬投与から24時間以内に生じる悪心・嘔吐 |
| 遅発性悪心・嘔吐 | 抗がん薬投与の24時間後から約1週間に生じる悪心・嘔吐 |
| 予期性悪心・嘔吐 | 抗がん薬のことを考えると誘発される悪心・嘔吐 |
| 突発性悪心・嘔吐 | 制吐薬の予防投与にもかかわらず起こる悪心・嘔吐 |
セロトニン受容体遮断薬は、抗がん薬による急性の悪心・嘔吐に対する予防および治療において中心的な役割を果たす薬です。錠剤、細粒剤、注射剤などがあり、用途によって選択します。
なお遅発性の悪心・嘔吐に対して、従来型のセロトニン受容体遮断薬は効果が不十分でしたが、パロノセトロンは有効性が確認されています。
【副作用】
便秘、頭痛、頭重感、倦怠感、発熱などが起こることがあります。
【作用】
CTZや嘔吐中枢にあるニューロキニン1受容体を遮断することで悪心・嘔吐を抑える薬です。
【特徴】
抗がん薬による嘔吐に使用されます。
抗がん薬によりサブスタンスPという神経伝達物質の分泌が亢進します。サブスタンスPがCTZや嘔吐中枢に存在するニューロキニン1受容体に結合し嘔吐中枢を刺激することで嘔吐が起こります。
この薬はサブスタンスPのニューロキニン1受容体への結合を遮断し、嘔吐中枢への刺激を阻害することで、抗がん薬による急性や遅発性の悪心・嘔吐を抑える作用をあらわします。セロトニン受容体遮断薬では治療効果があらわれにくいとされる遅発性嘔吐に対しても有効です。
ニューロキニン1受容体遮断薬は原則として、ステロイド(デキサメタゾン)および、上述のセロトニン受容体遮断薬と3剤併用して使用します。
【副作用】
比較的よく現れる副作用として、しゃっくり、便秘、下痢、食欲不振、頭痛などがあります。
制吐薬について、もっと知りたいことや、困っていること、そのほかにもこんな薬剤の記事が見たいなどがあればコメントしてください!
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熊本大学薬学部を卒業後、2003年より地元・鹿児島県種子島の薬局に就職。その後、2009年より現職。
各地での講演会やセミナーを多数行っており、最近はYouTubeでオリジナル講義「かんたん薬理学」を精力的に配信している。日経DIクイズの執筆者、薬剤師教育動画「描いてつかむ! 副作用の薬理学」出演などの経験を持つ。
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看護師から寄せられる“よくある質問”
Q. 現役看護師が一番稼げる科はどこ?
一般的に、高度な医療を提供する診療科や収益の多い診療科・クリニックは、高収入を得られる傾向にあります。病院だと救急救命科やICU(集中治療室)など、クリニックでは美容クリニックや人工透析クリニックなどが挙げられます。「看護師が一番稼げる科はどこ?高年収のクリニック・病院や転職のポイント」では、看護師が稼げる科を、詳しく解説しています。規模別の平均給与や、高収入な職場へ転職する際のポイントも紹介しているので、求人探しの参考にしてください。
Q. 看護師がのんびり働ける勤務先は?
病院であれば緊急対応や体力を消耗する業務が少ない外来や回復期・慢性期病棟。病院の外来やクリニックであれば重症患者の処置が少ない診療科は比較的落ち着いた環境といえるでしょう。自身のペースを大事に働きたい方は、現職の悩みを解決できるような環境・働き方を選ぶことがポイントです。「のんびり働きたい看護師向け!おすすめの職場や病院以外の仕事を紹介」では、のんびり働ける勤務先の条件や、おすすめの職場・診療科、のんびり働ける仕事のメリットやデメリットも解説しています。職場探しの参考にしてください。
Q. 看護師1年目で転職しても大丈夫?
1年目であっても転職は可能です。新卒として入職後3年以内に転職する「第ニ新卒」を歓迎する求人も多数出ている状況です。心身に不調がある場合や、職場でハラスメント・法律違反が横行している場合は、無理せず環境を変えたほうが安心です。「看護師1年目で転職しても大丈夫。病院以外の職場や好印象の退職理由を紹介」では1年目の看護師が転職したくなる理由や、仕事が辛いときの対処法、 おすすめの職場などをまとめています。新人看護師が転職に成功するコツや退職の際の注意点も解説しているので、参考にしてみてください。
Q. お礼奉公中でも転職は可能?
お礼奉公の途中でも、看護師が仕事を辞めることは可能ですが、途中で退職してトラブルに繋がるケースもあるので、辞める場合は注意が必要です。「お礼奉公中だけど辞めたい看護師へ!奨学金に関する疑問に答えます」では、「お礼奉公中の看護師は仕事を辞めても良いか」「途中で辞めると奨学金の支払いはどうなるのか」といった疑問や不安にお答えしています。また、奨学金の一括返済を求められたときや、退職を拒まれたときの対処法についてもご紹介しているので、お礼奉公がネックで前に進めずにいる方は、ぜひ参考にしてください。
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