
さまざまな疾患により引き起こされる「肝硬変」。肝臓は沈黙の臓器といわれるように、症状が出現した頃にはすでに病状が進行してしまっていることが多く、合併症のリスクも伴います。
本記事では、肝硬変の病態生理や検査、治療、そして看護計画について詳しく解説しています。症状の早期発見や合併症予防にお役立てください。

肝硬変とは、肝臓が肝炎ウイルス感染などによって傷害され、肝臓内の繊維組織が増加し、肝臓が硬くなって本来の機能を果たせなくなった病態のことです。肝炎ウイルスへの感染以外にも、アルコール性肝疾患や自己免疫性肝疾患、脂肪肝、胆汁うっ滞、慢性心不全などが原因となり得ます。また近年では肥満や糖尿病を基盤にして発症する非アルコール性脂肪肝炎(NASH)が肝硬変へ進展する例も増加しています。
肝硬変は肝臓がんを発症する危険性が高いことも知られています。特に、C型肝炎ウイルス感染による肝硬変の場合はそのリスクが高くなるとされています。
肝臓は肝細胞が障害されても残った肝細胞により機能を代償できるため、肝硬変の初期の段階では肝機能が保たれ、症状がないことが多いです。この状態を「代償性肝硬変」と呼びます。
一方で、病状がさらに進行し、肝機能が代償できないほどに低下した肝硬変のことを「非代償性肝硬変」と呼びます。非代償性肝硬変では、肝臓の機能である代謝や解毒、胆汁の合成と排泄、血液凝固因子の生成が障害されることにより、さまざまな症状が出現します。
代償性肝硬変と非代償性肝硬変は、Child-Pugh分類によって分けられます。
▼Child-Pugh分類
各項目の点数を加算し、合計点により分類する。
| 評点 | 1点 | 2点 | 3点 |
| 肝性脳症※ | なし | 軽度(Ⅰ・Ⅱ) | 昏睡(Ⅲ以上) |
| 腹水 | なし | 軽度 | 中等量以上 |
| 血清ビリルビン※値(mg/dl) | 2.0未満 | 2.0~3.0 | 3.0超 |
| 血清アルブミン値(g/dl) | 3.5超 | 2.8~3.5 | 2.8未満 |
| プロトロンビン時間活性値(%)国際標準比(INR) | 70超1.7未満 | 40~70超1.7~2.3 | 40未満2.3超 |
| classA | 5~6点 |
| classB | 7~9点 |
| classC | 10~15点 |
※ビリルビン:古くなった赤血球中のヘモグロビンが破壊されてできる黄色い色素のこと。血流に乗って肝臓へ運ばれ、胆汁内に排泄される。
※肝性脳症の評価は、肝性脳症の昏睡度分類による
Ⅰ:わずかな注意欠如、多幸感もしくは不安、注意力の持続短縮など
Ⅱ:無気力・無関心、時間の認識障害、顕著な性格変化など
Ⅲ:傾眠~半昏睡、刺激には反応あり、錯乱、全体的な見当識障害、奇妙な行動など
Ⅳ:昏睡、痛覚刺激にも無反応など
代償性肝硬変では、全身倦怠感や食欲不振などの症状が出現することがありますが、自覚症状に乏しいことが少なくありません。
対して非代償性肝硬変では下記のような症状が出現します。

順に解説します。
腹水や浮腫は、血液検査において血清アルブミン値が2.5g/dl以下になると出現するとされ、浮腫は下腿に多くみられます。
肝硬変において腹水や浮腫が生じるメカニズムは下記のとおりです。
肝臓でのタンパク質代謝機能低下→アルブミン合成低下→低アルブミン血症→血漿浸透圧の低下→水分が血管外へ漏出→腹水・浮腫

また、腹水は、門脈や肝動脈からの肝臓への血流が障害され肝臓の表面や肝外門脈枝から水分が漏出することも原因となります。
腹水は血液中の血漿成分が腹腔内に貯留した状態で、胃の圧迫感による食欲不振や息切れ、嘔気などの症状を伴います。
胆汁の合成と排泄の障害によりビリルビンの血中濃度が上昇することで黄疸が出現し、皮膚や眼瞼結膜の黄染がみられます。また、ビリルビンは皮膚の末梢神経を刺激するため、掻痒感が生じることもあります。
手掌紅斑、クモ状血管腫、女性化乳房はいずれも肝臓が女性ホルモンであるエストロゲンを分解できなくなったことで起こる症状です。エストロゲンは血管の収縮を制御する働きももつため、血中濃度が上がることにより毛細血管が拡張した結果、手掌が紅くなったり、男性の場合は女性のように乳房が膨らんだりすることがあります。
肝硬変では門脈から肝臓への血行が障害され、門脈圧が上昇します(=門脈圧亢進症)。

肝臓に流れなくなった血液は門脈から体のあちこちに迂回ルート(=側副血行路)を作り、ほかの静脈へ流れてしまいます。その結果、食道や胃に静脈瘤ができたり、肛門には痔ができたりします。また、腹壁静脈の怒張(メドゥサの頭)もみられます。
そのほかに、肝腎症候群※や肝肺症候群※、門脈肺高血圧症※を生じることもあります。
※肝腎症候群:肝硬変における低アルブミン血症、門脈圧亢進に伴う有効循環血液量減少に伴う腎機能障害
※肝肺症候群:門脈圧上昇に伴い肺内微小動静脈が拡張することで起こる肺のガス交換障害
※門脈肺高血圧症:門脈圧亢進により引き起こされる肺高血圧症のこと
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解毒作用の障害により体内のアンモニアが分解されず血中アンモニア濃度が上昇すると、有害物質が脳にわたり、肝性脳症を引き起こすことがあります。
肝性脳症では、意識障害や自分の意思とは関係なく手指が震える羽ばたき振戦、肝性口臭が見られます。
意識障害については、軽度から昏睡状態に陥るまで、さまざまな程度があります。
肝臓で作られるプロトロンビン、トロンボポエチンなどの血液凝固因子の生成が不足することにより出血傾向となります。また、門脈圧亢進症により脾臓が腫大し、脾臓における血小板を破壊する機能が促進されることも出血傾向の原因です。
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肝硬変の診断の際に行われる主な検査は、血液検査、画像検査、肝生検です。
血液検査では、主に血清ビリルビン値、血清アルブミン値、血小板数、アンモニア、肝線維マーカー、肝酵素(AST、ALT)、γグロブリン、プロトロンビン時間、HBs抗原、HCs抗原の値を調べます。
CTやMRI、超音波検査では、肝臓の外観や門脈血流の評価、腹水の評価を行います。食道・胃静脈瘤の検査では、上部消化管内視鏡検査を実施することもあります。
肝硬変の正確な診断には肝生検が必要です。肝生検には腹腔鏡下肝生検と超音波ガイド下肝生検とがあります。
肝硬変には根本的な治療法がなく、一度硬くなってしまった肝臓を元に戻すことはできません。したがって肝硬変の原因となる疾患の治療と対症療法、病状の進行予防、合併症予防が治療の中心となります。なかには、肝移植が行われるケースもあります。
肝硬変の原因疾患とその治療は下記のとおりです。
| B型肝炎ウイルス | 核酸アナログ製剤 |
| C型肝炎ウイルス | インターフェロン・フリー経口剤 |
| 自己免疫性肝疾患 | 免疫抑制剤、胆汁排泄促進剤 |

また、対症療法と合併症の治療は次のとおりです。
| 腹水 | ・利尿剤投与 ・塩分制限食 ・分岐鎖アミノ酸製剤投与 ・トルバプタン(バソプレシンV2受容体拮抗薬)投与 ・アルブミン製剤投与 ・腹腔穿刺による腹水の排液、腹水濾過濃縮再静注法(CART) ▼難治性腹水の場合 ・腹腔・頸静脈シャント(PVシャント) ・経頸静脈肝内門脈大循環シャント(TIPS) |
| 黄疸・掻痒感 | ・安静 ・ビリルビンの再吸収を抑制する薬の投与 ・抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬などによる掻痒感の抑制 |
| 食道・胃静脈瘤 | ・内視鏡的静脈瘤硬化療法(EIS) ・内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL) |
| 肝性脳症 | ・分岐鎖アミノ酸投与 ・抗菌薬投与 ・高アンモニア血症治療薬投与 ・下剤や合成二糖類製剤による排便コントロール(消化管の浄化、アンモニア産生低下を目的とする) ・カルチニン、亜鉛投与 ・食事療法(タンパク質制限、食物繊維の摂取) |
肝硬変の看護のポイントは次の3つです。
本章では、肝硬変の看護のポイントを網羅した看護計画をご紹介します。ぜひ参考にしてください。
看護目標:肝硬変のあらゆる症状による苦痛が緩和される
| O-plan | ・バイタルサイン ・INOUTバランス ・体重の推移 ・腹水の有無と程度(腹囲、腹部のふくらみ) ・呼吸困難感 ・浮腫の有無と程度 ・黄疸の有無と程度 ・掻痒感の有無と程度 ・腹部膨満感 ・食欲 ・嘔気、嘔吐 ・食事摂取量 ・塩分・水分制限が守れているか ・排便回数と便性状 ・全身倦怠感 ・口臭 ・クモ状血管腫の有無と程度、部位 ・手掌紅斑 ・活動量 ・安静度が守られているか ・睡眠がとれているか ・血液検査データ ・皮下出血などの出血傾向がないか |
| T-plan | ・毎日決まった時間に体重測定を行う。大きな増減がみられたら医師へ報告する。 ・腹水がある場合はセミファーラー位やファーラー位をとり、腹部の圧迫を避ける ・腹水や浮腫があると皮膚が脆弱になるため、締め付けのない衣服を着用し、清潔の保持に努める。 ・呼吸困難時は医師の指示のもと酸素投与を行う ・浮腫がある場合は、枕やタオルを用いて下肢を挙上する ・利尿剤投与により脱水になることがあるため、INOUTバランスをみながら適宜制限範囲内での飲水をすすめる ・掻痒感が強い場合は無意識に掻いてしまうことがあるため、爪を切り、就寝は手袋を装着するのも良い。軟膏や内服薬の投与について医師に相談する ・肝血流量は運動や立位によって減少する。肝血流量の減少を最小限にするため、食後は臥位をとり安静にする ・転倒予防のため、環境整備を行う。履物はかかとのある靴とし、身の回りのケアや排泄などを必要に応じて介助する ・採血の後は十分に圧迫止血を行う ・腹腔穿刺の際は急激に腹水を抜くとショック状態となることがあるため、十分にモニタリングを行う。救急カートを準備しておく |
| E-plan | ・安静の重要性を説明し、安静度を守るよう指導する ・塩分・水分制限を守るよう指導する ・持ち込み食の制限がある場合は、隠れて食事を摂ることがないよう指導する ・腹水や浮腫の程度を把握するために体重測定が重要であることを説明し、強力してもらう ・呼吸困難感や掻痒感など気になる症状や疑問点、不安などがあればすぐに看護師に教えてもらう ・INOUTバランス測定に協力してもらう ・出血を予防するため、転倒に注意してもらう。歯磨きの刺激により歯肉から出血することがあるため、優しい力で磨いてもらう ・皮膚の清潔保持の必要性について指導する ・転倒予防のため、移乗や移動に介助が必要な際は遠慮なく看護師を呼んでもらう |
看護目標:肝硬変による合併症を発症した場合に早期発見され、適切な治療を受けられる
| O-plan | ・バイタルサイン ・INOUTバランス ・意識レベル ・異常行動の有無 ・羽ばたき振戦 ・口臭 ・食事摂取量 ・食事制限の有無(タンパク質) ・排便回数と便性状 ・吐血や下血の有無 ・嘔気、嘔吐の有無 ・内視鏡検査所見 ・痔の有無 ・安静度、活動量 ・血液検査データ |
| T-plan | ・意識障害や異常行動によりルート類の自己抜去や転倒などのトラブルが起こる可能性があるため、頻回に訪室し、ベッドサイドの環境整備を行う。 ・便秘では腸内でアンモニアなどの毒性物質が過剰に吸収されて症状が悪化することがあるため、排便コントロールを行う。便秘傾向にある場合は医師へ相談し下剤やラルツロースなどの薬剤の使用について検討する ・痔があると出血を来すことがあるため、医師に軟膏の使用について相談する ・不穏時は医師へ報告し、鎮静剤などの投与について相談する ・肝性脳症に陥った場合は禁食とし、安静を保持する ・静脈瘤破裂による吐血が起きたら、誤嚥を防ぐために側臥位をとり、吐物はすぐに処理する。気管挿管や酸素吸入、点滴ルート確保、血液検査などが緊急で必要になるため、それらの物品をすぐに使える状態にしておく |
| E-plan | ・硬い食事や刺激物は食道・胃静脈瘤破裂の原因となることがあるため控えてもらう。食事は良く咀嚼するよう指導する ・便回数や便性状の確認の必要性について指導し、便秘傾向、痔があればすぐに知らせてもらう ・羽ばたき振戦など普段と違う症状があればすぐに知らせてもらう ・心身のリラックスが重要であるため、穏やかに生活できるよう指導する |
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看護師から寄せられる“よくある質問”
Q. 現役看護師が一番稼げる科はどこ?
一般的に、高度な医療を提供する診療科や収益の多い診療科・クリニックは、高収入を得られる傾向にあります。病院だと救急救命科やICU(集中治療室)など、クリニックでは美容クリニックや人工透析クリニックなどが挙げられます。「看護師が一番稼げる科はどこ?高年収のクリニック・病院や転職のポイント」では、看護師が稼げる科を、詳しく解説しています。規模別の平均給与や、高収入な職場へ転職する際のポイントも紹介しているので、求人探しの参考にしてください。
Q. 看護師がのんびり働ける勤務先は?
病院であれば緊急対応や体力を消耗する業務が少ない外来や回復期・慢性期病棟。病院の外来やクリニックであれば重症患者の処置が少ない診療科は比較的落ち着いた環境といえるでしょう。自身のペースを大事に働きたい方は、現職の悩みを解決できるような環境・働き方を選ぶことがポイントです。「のんびり働きたい看護師向け!おすすめの職場や病院以外の仕事を紹介」では、のんびり働ける勤務先の条件や、おすすめの職場・診療科、のんびり働ける仕事のメリットやデメリットも解説しています。職場探しの参考にしてください。
Q. 看護師1年目で転職しても大丈夫?
1年目であっても転職は可能です。新卒として入職後3年以内に転職する「第ニ新卒」を歓迎する求人も多数出ている状況です。心身に不調がある場合や、職場でハラスメント・法律違反が横行している場合は、無理せず環境を変えたほうが安心です。「看護師1年目で転職しても大丈夫。病院以外の職場や好印象の退職理由を紹介」では1年目の看護師が転職したくなる理由や、仕事が辛いときの対処法、 おすすめの職場などをまとめています。新人看護師が転職に成功するコツや退職の際の注意点も解説しているので、参考にしてみてください。
Q. お礼奉公中でも転職は可能?
お礼奉公の途中でも、看護師が仕事を辞めることは可能ですが、途中で退職してトラブルに繋がるケースもあるので、辞める場合は注意が必要です。「お礼奉公中だけど辞めたい看護師へ!奨学金に関する疑問に答えます」では、「お礼奉公中の看護師は仕事を辞めても良いか」「途中で辞めると奨学金の支払いはどうなるのか」といった疑問や不安にお答えしています。また、奨学金の一括返済を求められたときや、退職を拒まれたときの対処法についてもご紹介しているので、お礼奉公がネックで前に進めずにいる方は、ぜひ参考にしてください。
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