
吸引は、医療現場で頻回に行われる看護ケアの1つです。
吸引の手順や方法を誤ると、低酸素血症や不整脈を起こしたり、気道が出血したりする恐れがあります。
本記事では、口腔や鼻腔、気道の吸引方法を解説します。吸引に不安がある方や気管挿管や気管切開の吸引の経験がない方に参考してもらえると幸いです。

大学卒業後、集中治療室や心臓血管病棟、循環器内科などで看護師として14年間勤務。主に急性期の看護ケアに携わる。現在は、3人の子育てをしながら、医療・看護・育児にまつわる記事の執筆や監修に力を入れている
X(Twitter):@shota_papa37
吸引とは「痰や鼻汁などを自力で十分に出せない場合、器械を使って出すケア」のことです。ここでは、吸引の目的や適応、合併症を解説します。
吸引の目的は、口腔内や鼻腔内、気道内の分泌物の除去です。気道の通りが良くなり、肺胞のガス交換能を改善できます。結果として、息苦しさの軽減につながるのです。
ただし、吸引は身体的、精神的な苦痛を伴います。具体的には「吸引は痛いからイヤだ」「また吸引されるって思うと憂うつになる」と考える患者さんもいるでしょう。そのため、可能な限り苦痛を軽減できる手技を身につけることが大切です。
吸引の適応は、以下のとおりです。
病棟によっては「必ず2時間ごとに吸引する」「体位変換をしたタイミングで行う」などとルールが決められているところがあるかもしれません。
吸引は、侵襲的な看護ケアです。決められた業務として行うのではなく、患者さんの状態を観察しアセスメントしたうえで吸引の実施を判断しましょう。
吸引の主な合併症は、以下の4つです。
可能であれば、まずは患者さんに自己喀痰を促しましょう。それでも喀痰できない場合は、吸引を検討してください。全身の状態に注意したうえで実施しましょう。
ここでは、経口・経鼻の吸引の手順と看護上の注意点を解説します。

| 手順 | 看護上の注意点 |
| ①吸引の必要性をアセスメントする | 決められた業務という理由で吸引しない。 |
| ②患者さんに説明し了承を得る | 身体的、精神的な苦痛を伴うケアであるため、可能な限り了承を得る。 |
| ③実施前の準備 ・必要物品:吸引機、カテーテル(10~12Fr)、通水用の水、聴診器、パルスオキシメーター、血圧計など ・看護師の準備:手洗いをしたうえで防護服(ゴーグル、マスク、エプロン、手袋)を着用 ・患者さんの準備:臥位とする | ・痰や鼻汁などが飛び散るため防護具を着用する。 ・口腔内が見やすく、吸引しやすいなどの理由から仰臥位とする。 |
| ④吸引圧は20kPaに設定する | ・吸引圧は、カテーテルを塞いで確認する。 ・20kPaを超えた圧は、気道の粘膜を損傷する恐れがある。ほかにも、空気を多量に吸うため、無気肺や低酸素血症を起こす可能性がある。 |
| ⑤吸引を実施 [口腔の吸引]カテーテルを10~13㎝挿入 [鼻腔の吸引]カテーテル5~20cm挿入 | ・喉頭蓋を刺激すると、嘔吐反射が起こる恐れがあるため注意する。 ・キーゼルバッハ部位は出血しやすいため注意する。 ・10秒位以内。1回で分泌物が取れないときは患者さんの状態をみて、複数回にわけて行う。 |
| ⑥通水 | 吸引カテーテルから吸引ビンまでの接続チューブをきれいにするために通水する。痰や分泌物の粘度が高くきれいにならないときは、数回通水を繰り返す。 |
| ⑦終了 | ・合併症の発生がないか、患者さんの全身状態を観察する。 ・吸引の効果を確認する。 ・片付ける。 |
経口や経鼻、どちらの吸引から先にするのか分からない方は、以下のページで解説しているため参考にしてください。
▼関連記事
吸引は口腔と鼻腔どちらから先に行うのか?
看護師が行う鼻腔吸引の方法やコツについて
気管挿管や気管切開の場合の吸引方法には「閉鎖式吸引」と「開放式吸引」があります。

可能であれば、閉鎖式吸引で行います。
というのも、閉鎖式吸引では気道が大気に開放されないためです。人工呼吸器の回路を外さないため、肺胞が虚脱する危険性をなくし、分泌物が周囲に飛び散ることもありません。
ここでは、患者さんに吸引する場合の手順と注意点を解説します。
| 手順 | 看護上の注意点 |
| ①吸引の必要性をアセスメント | 決められた業務という理由で吸引しない。 |
| ②患者さんに説明し了承を得る | 鎮静剤投与中で反応がみられない場合でも声をかける。 |
| ③実施前の準備 ・必要物品:吸引機、カテーテル(10~12Fr)、ポート用のシリンジ(2.5㎜)、閉鎖式吸引カテーテル、通水用の滅菌水と水道水、聴診器、パルスオキシメーター、血圧計など ・看護師の準備:手洗いをしたうえで防護服(ゴーグル、マスク、エプロン、手袋)を着用 ・患者さんの準備:臥位とする | ・ポート用のシリンジでチューブのカフ上部に貯留した痰を吸引する。 ・痰や鼻汁などの飛沫が散るため防護具を着用する。 ・口腔内が見やすく、吸引しやすいなどの理由から、患者さんを仰臥位とする。 ・チューブの位置や固定を吸引前に確認する。 |
| ④吸引圧は20kPaに設定する | ・吸引圧はカテーテルを塞いで確認する。 ・20kPaを超えると、気道の粘膜を損傷する。ほかにも、空気を多量に吸うため無気肺や低酸素血症を起こす恐れがある。 |
| ⑤吸引の実施 [閉鎖式吸引の場合]コントロールバルブのロックを解除して、カテーテルを挿入する。コントロールバルブを押しながら引き抜く。 [開放式吸引の場合]清潔手袋を使用し吸引をする。気管・気管切開チューブと回路の接続を外して吸引する。 | ・カテーテル先端がチューブから1~2cmほど出るようにする。 ・吸引時は刺激を受けて体動が激しくなり、事故抜去につながるため注意する。 ・10秒位以内。1回で取れないときは患者さんの状態をみて複数回にわけて行う。 ・開放式吸引の場合、患者さんに菌が侵入しないようにするために清潔手袋を使って吸引する。外した回路は不潔とならないようにする(滅菌手袋を出した際の紙袋に乗せておくなど) |
| ⑥通水 | ・閉鎖式吸引カテーテルのマーカーがスリーブ内に来るまで引き出したうえで滅菌水で通水する。吸引瓶までは水道水で通水する。 ・開放式吸引の場合は、チューブ内を通水できるようにする。 ・分泌物の粘度が高くきれいにならないときは、複数回にわけて通水する。 |
| ⑦終了 | ・合併症の発生がないか全身の状態を観察する。 ・吸引の効果を確認する。 ・片付ける。 |
気管挿管・気管切開の吸引は、特に患者さんに影響を与えやすい看護ケアです。
吸引の刺激により血圧が上がったり、脈拍が早くなったりします。ときには、体動が激しくなり患者さんから蹴られたり叩かれたりする場合もあるでしょう。そのような状態が続くと、事故抜管のリスクが高くなります。
そのため、患者さんの状態を把握し、安全を確保したうえで実施しましょう。
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閉鎖式吸引の吸引方法と注意点が知りたい
吸引に関する3つのQ&Aを紹介します。ここで、吸引に関する悩みを解決しましょう。
患者さんが喀痰しやすくなる方法のひとつは、体位ドレナージです。

体位ドレナージとは、肺から分泌物を吐きだしやすい角度に身体を傾けたり、そのまま支えることです。カップ状に手を丸めて背中や胸をたたく(胸部軽打法)こともあります。
体位ドレナージのほかに、喀痰しやすくなる方法には以下があります。
吸引を第一選択とするのではなく、痰が出しにくい原因を考え、患者さんに合った方法を選びましょう。
吸引は「仰臥位、かつ後頚部後屈」で実施しましょう。というのも、気道確保の姿勢となり、吸引しやすくなるためです。ただし、分泌物が気管に入りやすくなるため、口腔内をよく観察したうえで実施してください。
口腔内の吸引は、看護師がしっかりと口腔内を観察しながら吸引できる姿勢としましょう。

カテーテルは、原則その都度交換しましょう。
ただし、コストの問題から再使用する場合もあります。その際は、ドライ乾燥法もしくは薬液浸漬法で対応してください。
一般的には、ドライ乾燥法が用いられています。カテーテルをアルコールで拭いたあと、容器で保管する方法です。
口腔内・鼻腔内用と気管用は、別の容器で保存しましょう。
吸引は看護ケアに欠かせないスキルであり、身体的、精神的な苦痛を伴います。適切な方法で吸引しなければ、低酸素血症や不整脈など患者さんの状態が悪化する恐れがあります。
本記事を参考に、吸引へのケアの理解を深めましょう。

大学卒業後、集中治療室や心臓血管病棟、循環器内科などで看護師として14年間勤務。主に急性期の看護ケアに携わる。現在は、3人の子育てをしながら、医療・看護・育児にまつわる記事の執筆や監修に力を入れている
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看護師から寄せられる“よくある質問”
Q. 現役看護師が一番稼げる科はどこ?
一般的に、高度な医療を提供する診療科や収益の多い診療科・クリニックは、高収入を得られる傾向にあります。病院だと救急救命科やICU(集中治療室)など、クリニックでは美容クリニックや人工透析クリニックなどが挙げられます。「看護師が一番稼げる科はどこ?高年収のクリニック・病院や転職のポイント」では、看護師が稼げる科を、詳しく解説しています。規模別の平均給与や、高収入な職場へ転職する際のポイントも紹介しているので、求人探しの参考にしてください。
Q. 看護師がのんびり働ける勤務先は?
病院であれば緊急対応や体力を消耗する業務が少ない外来や回復期・慢性期病棟。病院の外来やクリニックであれば重症患者の処置が少ない診療科は比較的落ち着いた環境といえるでしょう。自身のペースを大事に働きたい方は、現職の悩みを解決できるような環境・働き方を選ぶことがポイントです。「のんびり働きたい看護師向け!おすすめの職場や病院以外の仕事を紹介」では、のんびり働ける勤務先の条件や、おすすめの職場・診療科、のんびり働ける仕事のメリットやデメリットも解説しています。職場探しの参考にしてください。
Q. 看護師1年目で転職しても大丈夫?
1年目であっても転職は可能です。新卒として入職後3年以内に転職する「第ニ新卒」を歓迎する求人も多数出ている状況です。心身に不調がある場合や、職場でハラスメント・法律違反が横行している場合は、無理せず環境を変えたほうが安心です。「看護師1年目で転職しても大丈夫。病院以外の職場や好印象の退職理由を紹介」では1年目の看護師が転職したくなる理由や、仕事が辛いときの対処法、 おすすめの職場などをまとめています。新人看護師が転職に成功するコツや退職の際の注意点も解説しているので、参考にしてみてください。
Q. お礼奉公中でも転職は可能?
お礼奉公の途中でも、看護師が仕事を辞めることは可能ですが、途中で退職してトラブルに繋がるケースもあるので、辞める場合は注意が必要です。「お礼奉公中だけど辞めたい看護師へ!奨学金に関する疑問に答えます」では、「お礼奉公中の看護師は仕事を辞めても良いか」「途中で辞めると奨学金の支払いはどうなるのか」といった疑問や不安にお答えしています。また、奨学金の一括返済を求められたときや、退職を拒まれたときの対処法についてもご紹介しているので、お礼奉公がネックで前に進めずにいる方は、ぜひ参考にしてください。
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