
人工呼吸器と聞くと、「命に直結するもの」「機械操作への理解が必要なもの」といったイメージが強く、苦手意識を抱く看護師は多いのではないでしょうか。
しかし大切なポイントさえ押さえておけば、自信をもって人工呼吸器装着中患者への看護ができるはず。
本記事では、人工呼吸器看護の要になる部分についてポイントを絞って解説します。

人工呼吸器は主に呼吸不全に対して、換気量の維持や酸素化の改善、呼吸仕事量の軽減(呼吸による酸素やエネルギーの消費を抑える)を目的として使用します。人工呼吸器は、呼吸不全を引き起こしている原疾患が改善するまでの間、呼吸を助けるシステムのことです。つまり、人工呼吸器を使っても呼吸不全そのものの治療をできるということではありません。
また人工呼吸器は、全身麻酔や鎮静剤による呼吸抑制時や、心臓血管外科などの手術後など、呼吸不全以外のケースに対する全身管理の一環として使うこともあります。
人工呼吸器の適応になる病態はさまざまです。
肺炎や喘息発作などによる急性呼吸不全や、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺がんによる慢性呼吸不全の増悪時には、酸素化や換気の維持が難しく生命維持に影響を及ぼすことがあるため、人工呼吸器の適応となります。
もう1つ知っておきたいのが、筋疾患による呼吸筋麻痺で、筋委縮性側索硬化症(ALS)などの進行性疾患が挙げられます。病状の進行に伴い呼吸筋が衰えて最終的には自力で呼吸ができなくなるため、人工呼吸器による呼吸サポートを選択する患者さんもいます。このケースでは人工呼吸器の離脱ができないため、ゆくゆくは在宅人工呼吸器を使用することになります。
人工呼吸器には、手動式と機械式の2種類があります。

手動式人工呼吸は、ジャクソンリースやバッグバルブマスクを用いた人の手による一時的な人工呼吸です。急変時や蘇生時、全身麻酔後の弱い呼吸などの際に使用し、一時的な人工呼吸ではまかなえない場合にはそのまま機械式人工呼吸器に移します。
機械式人工呼吸器は一般的によくイメージされるもので、機械により人工呼吸を行います。
気管内挿管や気管切開下で用いるものは侵襲的陽圧式人工呼吸器、鼻やフェイスマスクなどを用いるものは非侵襲的人工呼吸器と呼ばれます。
人工呼吸器の設定やモードの種類は、人工呼吸器管理の肝となる部分です。ここでは人工呼吸器の主な設定項目とモードの種類について解説します。
人工呼吸器では以下の設定を行うことで、患者さん一人ひとりに合った呼吸補助を行います。
主な設定項目は以下の通りです。
人工呼吸器の設定には従量式と従圧式の2種類があります。

従量式では患者さんに吸ってほしい量の空気を一定速度で送り込みます。一定の量の空気を送り込めるため、気道抵抗がある場合でも換気量の保持が可能なのがメリットです。しかし、肺のコンプライアンスが低い(肺が膨らみにくい)と、一定量の空気を送り込むために強い圧力がかかり、組織が損傷してしまうリスクがあります。
従量式設定の場合には、最高気道内圧を十分に観察する必要があることを覚えておきましょう。
| 従量式のメリット | 1回換気量が保証される |
| 従量式のデメリット | 肺が硬いケースで圧損傷(気胸など)のリスクがある |
| 従量式の注意点 | 気道内圧を観察する |
一方従圧式では設定した吸気圧が維持されるため、設定以上の圧力になることがなく、従量式設定と比較すると組織損傷のリスクは低いといえるでしょう。また、自発呼吸と同調しやすいという特徴もあります。
従圧式設定は、肺機能が低下している患者さんや、肺が未熟な小児などに対して用いるケースが多いです。
注意しなければならないのは、肺のコンプライアンスが低いと換気量が十分に確保できなくなってしまう点。従圧式設定の場合には、1回換気量をしっかり確認しましょう。
| 従圧式のメリット | 圧損傷のリスクが低い |
| 従圧式のデメリット | 1回換気量が保証されない |
| 従圧式の注意点 | 1回換気量を観察する |
換気回数は1分間における強制換気の回数を、吸気時間では1回の強制換気にかける時間を設定します。
自発呼吸があるケースでは、自発呼吸の状況に併せて強制換気の回数が設定されることが多いといえます。
続いて人工呼吸器の代表的なモードについて解説します。
A/Cモードは、簡単にいうと機械にすべてを任せるモードです。
自発呼吸が無い場合や筋弛緩薬の使用などによって自発呼吸を止めている場合が適応になります。回復の過程で自発呼吸が強くなったり増えてきたりすると、患者さんが呼吸苦を感じるため注意が必要です。
強制換気+補助換気で最もポピュラーなのが、SIMVモードです。
自発呼吸があるときのみ使えます。自発呼吸の中に強制換気が間欠に入りますが、換気のタイミングは患者さん自身に委ねられます。
しかし、一定期間自発呼吸が見られない場合は通常の強制換気を行う設定もあります。
▼関連記事
人工呼吸器のSIMVモードの概要と観察ポイントを知りたい|レバウェル看護 技術Q&A(旧ハテナース) (kango-oshigoto.jp)
CPAPも、自発呼吸がある患者さんに用いるモードの1つで、最も自然な呼吸に近いモードです。自発呼吸に対して換気の補助はせず、吸気時にも呼気時にも一定の陽圧をかけておくことで呼吸をサポートします。
APRVも自発呼吸を主体とするモードです。換気能力の低い重症呼吸不全患者などに対して、肺胞を開き低酸素血症を改善させる目的があります。
その他に、PEEPとプレッシャーサポート(PS)についても簡単に触れておきます。
PEEPはあらゆる設定において使われることが多く、呼気時に気道内圧が0にならないように弱い一定の圧をかける機能です。
またプレッシャーサポート(PS)は、自発呼吸の吸気に合わせて一定の圧でガスを送り込み呼吸に必要な力を補助的に加える機能です。
人工呼吸器では、呼吸の異常や機械の異常があった際にアラームが鳴ります。
アラームは患者さんの命に直結するものであり、何よりも重要なポイントです。
アラーム音が聞こえたら、まずは患者さんのもとへ駆けつけます。直接人工呼吸器を見ないことには、アラームの種類もわかりません。機械にもよりますが、消音ボタンがあるものがほとんどのため消音ボタンを押しましょう。
そして、ただちに患者さんの呼吸状態(努力呼吸、胸郭の動き、チアノーゼ、モニター数値など)を観察します。異常が見られた場合はその原因をアセスメントし、痰の吸引や体位変換などを行いましょう。
明らかに呼吸状態が悪い場合にはすぐに医師へ報告し、ほかの看護師を呼び、手動による人工呼吸に切り替えます。
人工呼吸器管理をしている患者さんのもとには必ずジャクソンリースやバッグバルブマスクをすぐに使える状態で設置しておきましょう。
呼吸状態に異常が見られない場合は、機械側に何らかのトラブルが生じていることになります。多く見られるのは次の通りです。
呼吸器回路は目で見ても異常が発見しにくいため、必ず手で触って確認しましょう。
呼吸状態や全身状態が改善し人工呼吸器から離脱していく段階を、ウィーニングと呼びます。モードを徐々に自発呼吸に近くする方法が一般的です。
人工呼吸器からの離脱は呼吸への負荷が大変大きくなるため、呼吸状態を慎重にアセスメントしながら慎重に進めるのがポイントであるといえます。
▼関連記事
抜管時の準備と観察項目について教えてほしい|レバウェル看護 技術Q&A(旧ハテナース) (kango-oshigoto.jp)
人工呼吸器装着中は、患者さんには少なからず負担がかかります。苦痛を軽減できるよう、看護計画を充実させましょう。
人工呼吸器を要する状態は呼吸苦が強く、人工呼吸器を使いさえすれば呼吸苦が無くなるというわけではないという点を理解しておきましょう。

安楽な呼吸には、人工呼吸器の使用に加え、体位変換や挿管チューブの固定状況の確認を行います。体位変換の際は、気管チューブのゆるみなどが起きないよう、2名以上の看護師での実施がおすすめです。
また、人工呼吸器装着中は、モニター類やコード類、点滴など患者さんをつなぐライン類が多くなることがほとんど。ラインが身体に巻き付いてしまうことなどで起きやすい褥瘡予防も、大切な観点です。
排痰ケアも、呼吸管理において重要な部分です。人工呼吸器管理中は、どうしても気管が乾燥しやすくなり、痰の性状は粘り気が強くなります。痰を上手く出せないと、呼吸機能の低下や呼吸苦に繋がります。時には無気肺を生じることもあるため、気管・口鼻腔吸引や体位ドレナージなどにより痰を積極的に排出していきましょう。
スクイージング、胸郭可動域トレーニングなど、肺リハビリテーションも推奨されます。
理学療法士の専門分野であるため、必要時は医師の指示の下、理学療法士の介入を依頼しましょう。
▼関連記事
人工呼吸器装着中の患者さんにギャッジアップをするのは何故ですか|レバウェル看護 技術Q&A(旧ハテナース) (kango-oshigoto.jp)
人工呼吸器の使用には、合併症のリスクが伴います。そして、機械の操作ミスや管理不足による事故のリスクもあります。
ここでは、合併症と人工呼吸器を管理する上で常に意識しておきたいポイントについて解説します。
人工呼吸器使用中に注意したい合併症の代表例が、人工呼吸器関連肺炎(VAP)です。細菌の流出や汚染されたエアゾールの吸入、下気道での痰貯留などが原因となり、重症化しやすく、死亡率も高いです。

人工呼吸器関連肺炎は口腔ケアや排痰ケアの徹底、側臥位の保持などにより予防ができるため、日々のケアに取り入れましょう。
人工呼吸器を使用している際に必ず理解しておきたいのが、高濃度酸素投与により発生するCO2ナルコーシスです。
慢性呼吸不全の患者はCO2量の調節がうまくできず、濃度酸素投与によりCO2貯留に拍車がかかります。このことで中枢神経系への作用による意識障害や、呼吸停止のリスクも生じます。
それを踏まえても酸素投与が必要な場合は、通常低濃度から投与を開始し、呼吸状態を注意深く観察する必要があります。
過度な加温による気道熱傷も、重大な合併症の1つです。加温・加湿器に十分な水が入っているかを確認することで防げます。
人工呼吸器の回路には水が溜まります。ウォータートラップという水を溜める部分が付いていることが多いですが、呼吸器回路やウォータートラップを高く持ち上げてしまうと、水が患者側へ流れ込み気管に入ってしまいます。
命に関わるトラブルのため、人工呼吸器回路に触れる際は必ず回路を挿管チューブや気管切開孔の高さよりも低く保ちましょう。
▼関連記事
人工呼吸器合併症について知りたい|レバウェル看護 技術Q&A(旧ハテナース)
人工呼吸器装着中の看護において、設定やモードの確認に加えて機械自体の管理、点検も重要です。
最低でも、勤務開始時と中間、そして勤務終了時の3回は、人工呼吸器の設定を確認するようにしましょう。
機械自体の異常に気付いたり不明な点が出てきたりした場合は、臨床工学技士(ME)に依頼し一度機械を見てもらいましょう。
本記事では、人工呼吸器看護について解説しました。
人工呼吸器の看護の学習では、人工呼吸器が必要な理由とモード、アラーム対応についての理解から進めましょう。
どのような状況や設定であっても、患者さんの状態をアセスメントし、人工呼吸器のサポートを受けつつ正常な呼吸をできているかどうかを見極める力を身に着けていきましょう。
▼関連記事
人工呼吸器装着時の患者さまの看護ポイントについて教えて下さい|レバウェル看護 技術Q&A(旧ハテナース) (kango-oshigoto.jp)

記事の制作について
「レバウェル看護 看護師さん向けお役立ち情報」では、
記事の制作・公開にあたってのポリシーを定めています。
詳細は下記よりご確認いただけます。
看護師から寄せられる“よくある質問”
Q. 現役看護師が一番稼げる科はどこ?
一般的に、高度な医療を提供する診療科や収益の多い診療科・クリニックは、高収入を得られる傾向にあります。病院だと救急救命科やICU(集中治療室)など、クリニックでは美容クリニックや人工透析クリニックなどが挙げられます。「看護師が一番稼げる科はどこ?高年収のクリニック・病院や転職のポイント」では、看護師が稼げる科を、詳しく解説しています。規模別の平均給与や、高収入な職場へ転職する際のポイントも紹介しているので、求人探しの参考にしてください。
Q. 看護師がのんびり働ける勤務先は?
病院であれば緊急対応や体力を消耗する業務が少ない外来や回復期・慢性期病棟。病院の外来やクリニックであれば重症患者の処置が少ない診療科は比較的落ち着いた環境といえるでしょう。自身のペースを大事に働きたい方は、現職の悩みを解決できるような環境・働き方を選ぶことがポイントです。「のんびり働きたい看護師向け!おすすめの職場や病院以外の仕事を紹介」では、のんびり働ける勤務先の条件や、おすすめの職場・診療科、のんびり働ける仕事のメリットやデメリットも解説しています。職場探しの参考にしてください。
Q. 看護師1年目で転職しても大丈夫?
1年目であっても転職は可能です。新卒として入職後3年以内に転職する「第ニ新卒」を歓迎する求人も多数出ている状況です。心身に不調がある場合や、職場でハラスメント・法律違反が横行している場合は、無理せず環境を変えたほうが安心です。「看護師1年目で転職しても大丈夫。病院以外の職場や好印象の退職理由を紹介」では1年目の看護師が転職したくなる理由や、仕事が辛いときの対処法、 おすすめの職場などをまとめています。新人看護師が転職に成功するコツや退職の際の注意点も解説しているので、参考にしてみてください。
Q. お礼奉公中でも転職は可能?
お礼奉公の途中でも、看護師が仕事を辞めることは可能ですが、途中で退職してトラブルに繋がるケースもあるので、辞める場合は注意が必要です。「お礼奉公中だけど辞めたい看護師へ!奨学金に関する疑問に答えます」では、「お礼奉公中の看護師は仕事を辞めても良いか」「途中で辞めると奨学金の支払いはどうなるのか」といった疑問や不安にお答えしています。また、奨学金の一括返済を求められたときや、退職を拒まれたときの対処法についてもご紹介しているので、お礼奉公がネックで前に進めずにいる方は、ぜひ参考にしてください。
キャリア
働く場所
選考対策
資格
その他
読みもの
連載