吸入療法|薬剤の特徴や合併症、看護のポイント

吸入療法は、呼吸器疾患の患者さんはもちろんのこと幅広い領域で適応となる治療法です。体内に正しく薬剤を届けるためには、正確な吸入療法の方法を知っておく必要があります。新人の看護師でも任されることが多くあり、薬剤の種類や看護のポイントを把握することが大切です。

この記事では、吸入療法の基礎から適応疾患、吸入器の種類、看護のポイントを解説します。吸入療法を実施する予定のある方は、ぜひ参考にしてください。

この記事を書いた人
平野 芹奈
看護師
看護師資格、日本救急医学会認定ICLS取得。 急性期病院にて、脳神経外科、脳神経内科、血液内科の病棟看護師として勤務。その後、トラベルナースや派遣看護師、正社員などの働き方を選択し、脳神経外科専門病院・CRC、保育園看護師、コールセンター管理職を経験してきました。 現在は、Webライター、美容医療系のSNS運用代行を行っています。
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吸入療法とは?

吸入療法とは、吸入器を使用しエアロゾルにした薬物を吸い込む治療方法です。エアロゾルとは、空気中に固体や液体の微粒子が浮遊している状態のことを示します。

吸入療法の特徴は、少ない量でも薬剤の粒子を気道や肺に薬剤を届けられることです。小児から高齢者まで幅広い年齢の患者さんに実施されます。

吸入療法の目的と作用効果

吸入療法の目的と作用効果は、以下の通りです。

【吸入療法の目的】

  • 呼吸器疾患の治療
  • 呼吸器症状の緩和

【吸入療法の効果】

  • 気管支の拡張作用
  • 気道粘液の溶解作用
  • 消炎作用
  • 洗浄作用
  • 湿潤作用
  • 喀痰作用

上記のほか、全身麻酔の導入時に吸入が使用されることがあります。

吸入療法の適応

吸入療法が行われる主な疾患は、気管支喘息慢性閉塞性肺疾患です。そのほかにも、痰の喀出が困難な場合や気道の炎症、手術前後の気道洗浄の際も吸入療法の適応となります。吸入療法は経口薬と比較し薬剤が直接届くため効果が得られやすく、副作用が生じにくいのが特徴です。
妊娠中にも使用できるため、妊娠合併喘息の第1選択薬は吸入ステロイド薬となります。

吸入器の種類

吸入器は、大きくネブライザーと定量吸入器の2種類に分類されます。吸入器の種類により薬剤の粒子の大きさが変わるため、到達部位に合わせた吸入器の選択が必要です。呼吸とのタイミングを合わせるために、噴霧式MDI製剤を使用する際は呼吸補助器具(スペーサー)の使用も検討します。

▼吸入器の種類と特徴

  吸入器の種類(粒子の大きさ) 吸入器の特徴
ネブライザー ジェット式(5~15μm) ジェット気流によりエアロゾルが発生。勢いがあるため、小児や呼吸のタイミングを合わせることが難しい方に有効。
超音波式(1~5μm) 超音波振動によりエアロゾルが発生。大量の噴霧が可能であり、マウスピースやマスクを使用し吸入。超音波式ネブライザーは液面を振動させる必要があるため、薬剤が沈殿するステロイド懸濁液の使用は不可。細菌感染防止のために衛生管理を徹底する。
定量吸入器 噴霧式MDI製剤(3~8μm) 薬剤と液化ガスを混合させ、圧を加えることで霧状となり噴霧される(スペーサーを使用)。
弱い吸気でも吸入しやすいが、噴霧と呼吸のタイミングを合わせる必要がある。
ドライパウダー式DPI製剤(5~10μm) 薬剤を粉末化し吸入。持ち運びが可能。強い吸気が必要。

粒子の大きさにより、薬剤の到達部位が変わってきます。超音波ネブライザーは、細かな粒子のため肺胞まで薬剤を到達させることが可能です。

吸入器の種類のイラスト

吸入療法に使用される代表的な薬剤

吸入薬は、作用の発現時間によって長期作用型と短期作用型に分けられます。

  • 長期作用型:気管支喘息などの症状コントロール
  • 短期作用型:迅速な症状の緩和

以下で、代表的な吸入薬の効果や特徴を紹介します。

吸入ステロイド薬

吸入ステロイド薬は、長期的な気管支喘息のコントロールを目的とする第一選択薬です。β2刺激薬との配合で効果が増大します。

【効果】

  • 抗炎症効果
  • 抗アレルギー効果
  • 気道分泌の抑制
  • 気管支喘息の発作予防

【副作用】

  • 嗄声
  • 口腔内カンジダ
  • 咽喉頭刺激症状(疼痛や異物感など)

β2刺激薬

β2刺激薬は、気管支平滑筋のβ2受容体を刺激し、気管支平滑筋を弛緩させる作用があります。効果は、主に気道の拡張と気道分泌物の排泄促進です。作用時間により、2種類に分類されます。

【作用時間による分類】

  • 長時間作用型β2刺激薬(LABA)
    呼吸器疾患の長期管理薬として使用されます。効果作用時間が、12時間程度と長いことが特徴です。ほかの薬剤と同時に使うことが多く、喘息治療では吸入ステロイド薬と、COPDの治療では抗コリン薬との併用が一般的です。
  • 短時間作用型β2刺激薬(SABA)
    発作時の治療薬として使用されます。効果発現時間が30分と早く、喘息の発作時やCOPDの呼吸困難を予防するために有効です。

【副作用】

  • 心機能の亢進(動悸、頻脈、不整脈、振戦、頭痛、低カリウム血症)

抗コリン薬

抗コリン薬には、気管支を拡張する効果があります。作用効果が緩やかであり、長時間作用型は1日1回の使用で24時間持続するのが特徴です。COPDの気管支拡張に対する第1選択薬になります。

【副作用】

  • 口渇
  • 口腔感染
  • 排尿困難
  • 心悸亢進
  • 緑内障の悪化
  • 前立腺肥大症の悪化

看護師は、薬の作用や副作用、対処方法を把握しておくことが大切です。患者さんが正しく吸入をするためには、個々に合わせた吸入指導を行っていくことが必要となります。

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吸入の手順とポイント

この章では、ネブライザーと定量吸入器の使用方法と使用する際の看護のポイントを紹介します。どちらの吸入も、臨床で頻繫に行われる治療方法です。

ネブライザーを使用する場合

ネブライザーを使用する手順と看護のポイントを解説していきます。

【手順】

  1. ネブライザー本体に回路と物品をセットする
  2. 作用水槽の規定量まで滅菌蒸留水を入れる
  3. 薬剤を噴霧槽に入れる
  4. 噴霧量と風量をセットする
  5. 患者さんにマウスピースまたは、マスクを装着してもらいタイマーをセットする
  6. 吸入終了後は、排水・洗浄をしたのち乾燥させる

【看護のポイント】

  • マウスピース周囲の空気を一緒に吸い込むことで気流が発生し、エアロゾルを細気管支まで到達させることができることを患者さんへ指導する。
  • 噴霧させることから細菌が繁殖しやすく、使用後は洗浄と乾燥が必要
ネブライザー使用時の看護のポイント

定量吸入器を使用する場合

定量吸入器を使用する手順と看護のポイントを紹介します。

【手順】

  1. 吸入器を振り、薬剤と噴霧ガスを混合させる
  2. 初めて使用する場合は、試し噴霧を行う
  3. 軽く息を吐いた後、5秒程度かけてゆっくり吸入する
  4. 息を3~5秒程度止め、ゆっくり吐く
  5. 吸入後は、うがいを行う
定量吸入器使用時の吸入のポイント

【看護のポイント】

  • MDI製剤は、速く吸うことで薬剤到達率が低下するため、ゆっくり吸入する
  • DPI製剤は、粉末のため、速く深く吸い込むことが大切
  • 速く吸うことでコールドフォン現象(冷たい薬剤を急激に吸い込むことで発生する咳嗽)を起こしやすいため注意が必要
  • クローズドマウス法でむせてしまう場合は、オープンマウス法で行う

オープンマウス法とクローズドマウス法

オープンマウス法クローズドマウス法
対象小児粒子が大きい薬剤
主にMDI製剤が適応
すべての吸入器
方法口と吸入器を3~4㎝程度離す
息を吸い始めると同時に吸入する
5秒程度息を止める
吸入口を軽く加える
息を吸い始めると同時に吸い込む
吸入器を外してから5秒程度息を止める

吸入の看護と注意点

吸入療法の目標は、患者さんが正しく薬剤を吸入し、治療を継続することです。そのために必要な、呼吸状態の観察と合併症予防のための看護のポイントを紹介します。

吸入療法に必要な観察項目と看護のポイント

【患者さんが吸入を行う際に必要な観察項目】

  • 呼吸状態(呼吸回数・呼吸パターン・呼吸音・呼吸困難感)
  • SPO2
  • バイタルサイン
  • 咳嗽の有無と程度
  • 痰の量・色・性状
  • 検査結果(胸部CT・レントゲン・動脈血液ガス・喀痰培養)
  • 飲水量
  • 室内環境(湿度・換気)

【吸入療法を行う際に確認する看護のポイント】

  • 吸入器に合った適切な使用方法か?
  • 吸入時は、上半身を起こし深呼吸が可能な姿勢で吸入できているか?
  • 喀痰しやすい体勢で吸入できているか?
  • 吸入後、薬剤の効果は得られているか?
  • 吸入療法に伴う合併症は出現していないか?

吸入療法に伴う副作用と看護ケア

吸入療法には、薬剤による嗄声や口腔内カンジダなどの副作用が出現します。副作用を予防するためには、吸入後のうがいが大切です。吸入による嗄声が日常生活へ影響を及ぼす場合は、薬剤や吸入方法を変更する必要があります。患者さんの状態を観察し、副作用を事前に防ぐために適切な看護や指導を行うことが大切です。

吸入療法の副作用について患者に説明する看護師

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