
吸入療法は、呼吸器疾患の患者さんはもちろんのこと幅広い領域で適応となる治療法です。体内に正しく薬剤を届けるためには、正確な吸入療法の方法を知っておく必要があります。新人の看護師でも任されることが多くあり、薬剤の種類や看護のポイントを把握することが大切です。
この記事では、吸入療法の基礎から適応疾患、吸入器の種類、看護のポイントを解説します。吸入療法を実施する予定のある方は、ぜひ参考にしてください。

吸入療法とは、吸入器を使用しエアロゾルにした薬物を吸い込む治療方法です。エアロゾルとは、空気中に固体や液体の微粒子が浮遊している状態のことを示します。
吸入療法の特徴は、少ない量でも薬剤の粒子を気道や肺に薬剤を届けられることです。小児から高齢者まで幅広い年齢の患者さんに実施されます。
吸入療法の目的と作用効果は、以下の通りです。
【吸入療法の目的】
【吸入療法の効果】
上記のほか、全身麻酔の導入時に吸入が使用されることがあります。
吸入療法が行われる主な疾患は、気管支喘息と慢性閉塞性肺疾患です。そのほかにも、痰の喀出が困難な場合や気道の炎症、手術前後の気道洗浄の際も吸入療法の適応となります。吸入療法は経口薬と比較し薬剤が直接届くため効果が得られやすく、副作用が生じにくいのが特徴です。
妊娠中にも使用できるため、妊娠合併喘息の第1選択薬は吸入ステロイド薬となります。
吸入器は、大きくネブライザーと定量吸入器の2種類に分類されます。吸入器の種類により薬剤の粒子の大きさが変わるため、到達部位に合わせた吸入器の選択が必要です。呼吸とのタイミングを合わせるために、噴霧式MDI製剤を使用する際は呼吸補助器具(スペーサー)の使用も検討します。
▼吸入器の種類と特徴
| 吸入器の種類(粒子の大きさ) | 吸入器の特徴 | |
| ネブライザー | ジェット式(5~15μm) | ジェット気流によりエアロゾルが発生。勢いがあるため、小児や呼吸のタイミングを合わせることが難しい方に有効。 |
| 超音波式(1~5μm) | 超音波振動によりエアロゾルが発生。大量の噴霧が可能であり、マウスピースやマスクを使用し吸入。超音波式ネブライザーは液面を振動させる必要があるため、薬剤が沈殿するステロイド懸濁液の使用は不可。細菌感染防止のために衛生管理を徹底する。 | |
| 定量吸入器 | 噴霧式MDI製剤(3~8μm) | 薬剤と液化ガスを混合させ、圧を加えることで霧状となり噴霧される(スペーサーを使用)。 弱い吸気でも吸入しやすいが、噴霧と呼吸のタイミングを合わせる必要がある。 |
| ドライパウダー式DPI製剤(5~10μm) | 薬剤を粉末化し吸入。持ち運びが可能。強い吸気が必要。 |
粒子の大きさにより、薬剤の到達部位が変わってきます。超音波ネブライザーは、細かな粒子のため肺胞まで薬剤を到達させることが可能です。

吸入薬は、作用の発現時間によって長期作用型と短期作用型に分けられます。
以下で、代表的な吸入薬の効果や特徴を紹介します。
吸入ステロイド薬は、長期的な気管支喘息のコントロールを目的とする第一選択薬です。β2刺激薬との配合で効果が増大します。
【効果】
【副作用】
β2刺激薬は、気管支平滑筋のβ2受容体を刺激し、気管支平滑筋を弛緩させる作用があります。効果は、主に気道の拡張と気道分泌物の排泄促進です。作用時間により、2種類に分類されます。
【作用時間による分類】
【副作用】
抗コリン薬には、気管支を拡張する効果があります。作用効果が緩やかであり、長時間作用型は1日1回の使用で24時間持続するのが特徴です。COPDの気管支拡張に対する第1選択薬になります。
【副作用】
看護師は、薬の作用や副作用、対処方法を把握しておくことが大切です。患者さんが正しく吸入をするためには、個々に合わせた吸入指導を行っていくことが必要となります。
この章では、ネブライザーと定量吸入器の使用方法と使用する際の看護のポイントを紹介します。どちらの吸入も、臨床で頻繫に行われる治療方法です。
ネブライザーを使用する手順と看護のポイントを解説していきます。
【手順】
【看護のポイント】

定量吸入器を使用する手順と看護のポイントを紹介します。
【手順】

【看護のポイント】
| オープンマウス法 | クローズドマウス法 | |
| 対象 | 小児粒子が大きい薬剤 主にMDI製剤が適応 | すべての吸入器 |
| 方法 | 口と吸入器を3~4㎝程度離す 息を吸い始めると同時に吸入する 5秒程度息を止める | 吸入口を軽く加える 息を吸い始めると同時に吸い込む 吸入器を外してから5秒程度息を止める |
吸入療法の目標は、患者さんが正しく薬剤を吸入し、治療を継続することです。そのために必要な、呼吸状態の観察と合併症予防のための看護のポイントを紹介します。
【患者さんが吸入を行う際に必要な観察項目】
【吸入療法を行う際に確認する看護のポイント】
吸入療法には、薬剤による嗄声や口腔内カンジダなどの副作用が出現します。副作用を予防するためには、吸入後のうがいが大切です。吸入による嗄声が日常生活へ影響を及ぼす場合は、薬剤や吸入方法を変更する必要があります。患者さんの状態を観察し、副作用を事前に防ぐために適切な看護や指導を行うことが大切です。

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