
看護師であれば毎日のように行う点滴や静脈内注射ですが、輸液の目的や役割を完全に理解し投与することは難しいことだと思います。数多くある輸液の種類や必要性について悩む方もいらっしゃるはずです。
輸液の基本を把握しておくと安全にかつ効率的に輸液を管理できます。ですが、輸液管理を一歩間違えることで患者さんの治療に大きな影響が出るでしょう。
この記事では、輸液の目的から種類、看護のポイントを紹介します。現場で使用する輸液製剤の例も一覧で紹介しているため、ぜひ参考にしてください。

輸液製剤協議会によると、輸液とは、静脈内に投与する薬液のことです。投与する量が50ml未満の薬液を注射、50ml以上を輸液といいます。
体液のバランスが崩れると、生命維持に必要な水分や電解質などが不足するため補給が必要です。輸液は、補液とも呼ばれ現場によって言い方が異なります。
輸液を行う主な目的は、以下の通りです。
維持輸液と補充輸液を組み合わせて体液のバランスを整えていきます。
浸透圧とは、細胞内液と細胞外液の電解質濃度を均一に保とうとする力のことです。
細胞外液の濃度が低い場合は、細胞内に水分が入り細胞が膨張します。反対に、細胞外液の濃度が高い場合は、細胞内の水分が出ていくために細胞が縮む仕組みです。
体液とほぼ等しい浸透圧の液を等張液、高い浸透圧の液を高張液、低い浸透圧の液を低張液と呼びます。

輸液製剤は、大きく4つに分類されます。
輸液を投与する目的や特徴、実際にどのような場面で投与するのかを解説します。
水分輸液製剤とは、水分や糖質を補給する目的で投与される輸液製剤です。現場では、5%ブドウ糖輸液を使用します。5%ブドウ糖輸液は、脱水状態や低エネルギー状態の改善に役立つ輸液製剤です。
電解質輸液製剤とは、水分と電解質を補給する目的で投与する輸液製剤です。浸透圧により等張性電解質輸液と低張電解質輸液に分けられます。
等張性電解質輸液とは、細胞外液の代わりになる水分や電解質を急速に補充する目的で投与する輸液製剤です。等張電解質輸液は、細胞外液補充液とも呼ばれ電解質濃度が細胞外液とほぼ同じであり、下痢や嘔吐、発汗などによる脱水状態の際に投与されます。
【等張電解質輸液の種類と特徴】
| 生理食塩液 | 等張電解質輸液の基本であり、浸透圧が細胞外液とほぼ等しい。大量の投与で、高ナトリウム血症や代謝性アシドーシスを起こす可能性があるため注意が必要。 |
| リンゲル液 | 生理食塩水よりも細胞外液に近い電解質組成である輸液。熱傷や出血性ショックが対象。 |
| 乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液 | 代謝性アシドーシスを防ぐために、生理食塩水に乳酸や酢酸を添加した輸液。 血液のpHを保つ目的で投与される。 |
| 重炭酸リンゲル液 | 等張性電解質輸液の中で最も細胞外液に近い電解質組成。マグネシウムが添加されており、細胞外液のマグネシウム補給が可能。ほかの等張性電解質輸液と比べ高価であり、救急や手術などの重篤な患者さんに投与される。代謝性アシドーシスを防ぐ効果もある。 |
低張電解質輸液とは、生理食塩水と5%ブドウ糖が混合された輸液製剤です。ブドウ糖は、代謝されると水分に変化するため、体全体に水分を補給できます。低張電解質輸液は、水分と電解質の割合によって4つの種類にわけられます。
【低張電解質輸液の種類と特徴】
| 1号液(開始液) | 生理食塩水の割合が最も多い輸液。カリウムを含んでおらず、救命救急など病態がはっきりしていない患者さんに使用する。 |
| 2号液(脱水補給液) | ナトリウムイオンやクロールイオン、細胞内に多く含まれるカリウムイオン、乳酸などが添加されている。水分と電解質を補給するために投与される、脱水補給液。 |
| 3号液(維持液) | 1日に必要とされる水分・電解質が補給できるよう調整された輸液であり、維持輸液と呼ばれる。経口摂取が難しい患者さんに投与する。 |
| 4号液(術後回復液) | 5%ブドウ糖液の割合が最も多く、電解質濃度が低い。カリウムが含まれていないことから腎機能が低下している患者さんに使用される。 |
食事から栄養を摂ることが難しい患者さんに対して、栄養補給を目的とする輸液製剤です。投与方法は、中心静脈栄養と末梢静脈栄養の2種類があり、長期的な管理が必要な場合は中心静脈栄養での投与を行います。
【栄養輸液の種類と特徴】
| アミノ酸輸液 | 病態に合わせ、アミノ酸の補給を目的とする輸液。糖質や電解質も含まれている。 |
| 高カロリー輸液 | 電解質と糖質が基本であり、アミノ酸やビタミンなどの栄養素が添加されている高栄養の輸液。現場では、TPNと呼ばれている。 |
| 脂肪乳剤 | 必須脂肪酸の補給を目的としている輸液。ブドウ糖のみでのエネルギー補給は、高血糖やインスリン分泌異常を起こす可能性があるため、脂肪乳剤を併用する。 |
そのほかに、血漿増量輸液や浸透圧利尿剤などの輸液があります。
血漿増量輸液とは、分子の大きいアルブミンなどを含む輸液剤です。血管へ水分を引き込むため、出血性ショックなどの循環血液量の減少時に投与となります。多量の輸液で、腎不全や凝固異常を招く可能性があるため注意が必要です。アルブミンは、感染に対しての安全が確実に確保されていないことからインフォームドコンセントが重要となります。
浸透圧利尿剤とは、水分やナトリウムの再吸収を抑制し尿量の排泄を促進させる輸液です。腎不全の予防や脳浮腫の治療に投与されます。
輸液製剤の種類と現場で使用することが多い商品名と会社名を紹介します。
【水分輸液製剤】
【電解質輸液製剤】
等張性電解質輸液(細胞外液補充液)
| 輸液製剤の種類 | 商品名 | 会社名 |
| 生理食塩液 | 大塚生食注 | 大塚製薬工場 |
| テルモ生食 | テルモ | |
| 生理食塩液 | ニプロ | |
| リンゲル液 | リンゲル液 | 大塚製薬工場 |
| 乳酸リンゲル液 | ラクテック注 | 大塚製薬工場 |
| ポタコールR輸液 | 大塚製薬工場 | |
| ソルラクト輸液 | テルモ | |
| 酢酸リンゲル液 | ソルアセトD | テルモ |
| ヴィーンD | 扶桑薬品工業 | |
| 重炭酸リンゲル液 | ビカネイト輸液 | 大塚製薬工場 |
低張電解質輸液
| 1号輸液(開始液) | ソリタ‐T1号輸液 | エイワイファーマー |
| ソルデム1輸液 | テルモ | |
| 2号輸液(脱水補給液) | ソリタ‐T2号輸液 | エイワイファーマー |
| ソルデム2輸液 | テルモ | |
| 3号輸液(維持液) | ソリタ‐T3号輸液 | エイワイファーマー |
| ソルデム3A輸液 | テルモ | |
| フルクトラクト注 | 大塚製薬工場 | |
| フィジオ35輸液 | 大塚製薬工場 | |
| 4号輸液(術後回復液) | ソリタ‐T4号輸液 | エイワイファーマー |
| ソルデム6輸液 | テルモ |
【栄養輸液製剤】
| アミノ酸製剤 | アミノレバン点滴静注 | 大塚製薬工場 |
| キドミン輸液 | 大塚製薬工場 | |
| ネオアミユー輸液 | エイワイファーマー | |
| プロテアミン12注射液 | テルモ | |
| 高カロリー輸液(PPN:抹消静脈栄養輸液) | ビーフリード輸液 | 大塚製薬工場 |
| エネフリード | 大塚製薬工場 | |
| 高カロリー輸液(TPN:中心静脈栄養輸液) | ハイカリック液 | テルモ |
| フルカリック | テルモ | |
| ピーエヌツイン | エイワイファーマー= | |
| 脂肪乳剤 | イントラリポス輸液 | 大塚製薬工場 |
【その他の輸液製剤】
| 血漿増量剤 | サヴィオゾール輸液 | 大塚製薬工場 |
| ボルベン輸液6% | 大塚製薬工場 | |
| 浸透圧利尿剤 | マンニットールS注射液 | 陽進堂 |
| グリセオール | 太陽ファルマ |
電解質の役割は、筋肉細胞・神経細胞が正常に機能するために浸透圧の調節を行うことです。脱水や浮腫などは、電解質のバランスが崩れる「電解質異常」により起こります。
脱水は、体内の水分量が不足している状態であり、ナトリウムが欠乏している場合と水分が欠乏している場合があります。脱水の種類に対する原因や看護のポイントを解説します。
▼ナトリウム欠乏型脱水

ナトリウム欠乏型脱水とは、体液のナトリウムが失われた状態であり、多量の出血や嘔吐・下痢などが原因で起こります。循環血液量が減少し、血圧が低下することで眩暈や頭痛・吐き気などが出現してくる病態です。細胞外液に水分を補給する必要があり、等張電解質輸液の生理食塩水や乳酸リンゲル液などが対象となる輸液製剤です。
▼水分欠乏性脱水

水分欠乏性脱水は、細胞外液と細胞内液の両方の水分が欠乏している状態です。
飢餓状態や熱中症が原因であり、口渇や尿量減少、意識障害、昏睡などが出現します。血漿の浸透圧が上昇しているため、低張電解質輸液である3号輸液(維持輸液)や5%ブドウ糖液が対象となる輸液製剤です。
【看護のポイント】
脱水時の輸液における看護のポイントです。脱水の種類に応じて、投与する輸液製剤が変わってきます。そのため脱水の原因を理解することが大切です。多量の輸液により肺水腫などの合併症を起こすこともあります。状態の変化に迅速に気が付くことが大切になります。
浮腫とは、細胞と細胞間質に水分が貯留している状態です。浮腫は、静脈血管内圧の上昇、血漿膠質浸透圧低下、ナトリウム貯留、リンパ障害、血管透過性浮腫など、さまざまな状態から起こります。病態や状態に応じて、アルブミン製剤や利尿剤を組み合わせた投与が必要です。
▼関連記事
浮腫の原因とアルブミン、ラシックスの効果的な投与順について知りたい
【看護のポイント】

浮腫を起こしている患者さんの血管や皮膚は弱く、血管外漏出に注意する必要があります。皮下組織に水分が溜まると点滴の抜去部位から浸出液が漏れ、感染症の原因となるため丁寧なケアが大切です。

記事の制作について
「レバウェル看護 看護師さん向けお役立ち情報」では、
記事の制作・公開にあたってのポリシーを定めています。
詳細は下記よりご確認いただけます。
看護師から寄せられる“よくある質問”
Q. 現役看護師が一番稼げる科はどこ?
一般的に、高度な医療を提供する診療科や収益の多い診療科・クリニックは、高収入を得られる傾向にあります。病院だと救急救命科やICU(集中治療室)など、クリニックでは美容クリニックや人工透析クリニックなどが挙げられます。「看護師が一番稼げる科はどこ?高年収のクリニック・病院や転職のポイント」では、看護師が稼げる科を、詳しく解説しています。規模別の平均給与や、高収入な職場へ転職する際のポイントも紹介しているので、求人探しの参考にしてください。
Q. 看護師がのんびり働ける勤務先は?
病院であれば緊急対応や体力を消耗する業務が少ない外来や回復期・慢性期病棟。病院の外来やクリニックであれば重症患者の処置が少ない診療科は比較的落ち着いた環境といえるでしょう。自身のペースを大事に働きたい方は、現職の悩みを解決できるような環境・働き方を選ぶことがポイントです。「のんびり働きたい看護師向け!おすすめの職場や病院以外の仕事を紹介」では、のんびり働ける勤務先の条件や、おすすめの職場・診療科、のんびり働ける仕事のメリットやデメリットも解説しています。職場探しの参考にしてください。
Q. 看護師1年目で転職しても大丈夫?
1年目であっても転職は可能です。新卒として入職後3年以内に転職する「第ニ新卒」を歓迎する求人も多数出ている状況です。心身に不調がある場合や、職場でハラスメント・法律違反が横行している場合は、無理せず環境を変えたほうが安心です。「看護師1年目で転職しても大丈夫。病院以外の職場や好印象の退職理由を紹介」では1年目の看護師が転職したくなる理由や、仕事が辛いときの対処法、 おすすめの職場などをまとめています。新人看護師が転職に成功するコツや退職の際の注意点も解説しているので、参考にしてみてください。
Q. お礼奉公中でも転職は可能?
お礼奉公の途中でも、看護師が仕事を辞めることは可能ですが、途中で退職してトラブルに繋がるケースもあるので、辞める場合は注意が必要です。「お礼奉公中だけど辞めたい看護師へ!奨学金に関する疑問に答えます」では、「お礼奉公中の看護師は仕事を辞めても良いか」「途中で辞めると奨学金の支払いはどうなるのか」といった疑問や不安にお答えしています。また、奨学金の一括返済を求められたときや、退職を拒まれたときの対処法についてもご紹介しているので、お礼奉公がネックで前に進めずにいる方は、ぜひ参考にしてください。
キャリア
働く場所
選考対策
資格
その他
読みもの
連載
コメントはありません