
看護師になって10年が過ぎた今、延命治療や患者の意思決定支援について語りたいと思う。
恐らくこれに関しては正解がない。
もしかしたら私の意見を読んで嫌な気持ちになる方もいるかもしれない。考え方が倫理的にアウトだとか「私はこう思う!」って意見があれば、コメントで教えてほしい。
まず初めに、延命治療って不必要なものではないよね…!?
ここで、不必要とか生きてる人側のエゴって言い切るのは少し怖い。
だって、医療は絶対じゃないから。99%助からない人が、延命治療の結果助かることもあるから。
現に私は、急変で「もう数日で亡くなります」と告げられた人が、数ヶ月間意識不明だったのに突然ドラマのように目が覚めて、リハビリを経て歩けるようになった事例も見たことがある。そう、生命力って無限大なのだ。
しかし、これは一般的な延命治療。いわゆる救急からの延命治療の話。
ここからは、意思決定ができない患者への延命治療の話だ。ドラマの中とは別の現実を、私たち医療従事者は目にする。
恐らく全国的に、こんな感じで家族は選択を迫られるだろう。
ここで問題なのは…延命治療の意思決定が患者本人によるものでない点だ。
上記で書いたほどに症状が悪化した患者は、今後の方針を自分で決めることができず、ほとんどのケースでは患者ではなく家族側の意思決定が尊重されてしまう。
更に残酷だと思うのは、胃ろう造設やCVポート造設、CV挿入を行わず、そのまま経過を見た先にあるのは「死」であること。
つまり家族が延命治療を選ばなければ、患者は死ぬ。
一方で家族が延命治療を選んだ場合、その先にあるのは「寝たきり」状態。
私たち医療者は何人もの寝たきりと呼ばれる患者を見ている。
時折、そんな患者のケアをしながら思いを馳せることがある。
(この人にもし意思があったら、話せたら、どうしてほしかったんだろう…)って。
もちろん、世の中に死んでも良い人間なんていない。どんな人間だって誰かの大切な人だ。家族が延命治療を望む気持ちは分かる。だって、大切な人に死んでほしくないもんね。
しかし…死が訪れることは当たり前なのだ。誰でも生まれたら、最後は100%死ぬ。自然に死を待つことは何もおかしくない。
とはいえ家族は「延命治療をしない」と容易には選べない。
なぜなら自分たちがその選択をしたら、患者を殺す決断をしたみたいだと思うから。
私は療養病棟で働いていたので、大袈裟ではなくこれまで何十人もの患者家族の意思決定を見てきた。
言い方は悪いが…胃ろう造設やCVポート造設をして、高カロリー輸液療法を行って何ヶ月も経った患者は、「生きる」ではなく「生かされている」ように見える。
療養病棟の夜勤はナースコールすらほぼ鳴らない。配膳や下膳も50床に対して3人ほど。そんな現場だった。

家族の中には、自分たちが延命治療を望んだのに「あとどのくらいですかね?」なんて勝手なことを言う人もいた。
…ここまで好き放題書くと、家族の悩みを分かったように言うな!と怒られるかもしれない。
でも実は、私も同じ経験をしたことがある。
私は、祖母のDNAR(蘇生処置拒否)を主治医に伝えた経験がある。
心臓マッサージを受けている祖母を目の前にして、DNARを伝えたのだ。その光景を思い出すと未だに涙が出る。10年以上経っても泣けてしまう。
だから、患者の家族が延命治療を望みたくなる気持ちも分かるのだ。
私は祖母が大好きだった。オシャレで美人だった祖母。私が看護師になるのを誰よりも応援してくれていた。白衣姿を見せたかったけど、間に合わなかった。
祖母は癌だった。
「ばぁばが死んだら真っ先に入れ歯を入れて」「よっしーちゃんがメイクして」「延命治療は絶対にやらないで」「痛くて辛いのは嫌」
闘病生活の3年半、何度も私にそう伝えた。
その日は突然だった。祖母が急変したのだ。
危篤の連絡を受けて病室へ行くとすでにHR(心拍数)30。もう駄目なんだとわかった。
そうこうしていると心停止。
私の母と叔父が「できることは何でもしてくれ」と訴えたので、主治医が心臓マッサージを始めた。アドレナリンも投与される。
主治医が「このまま続けますか!?」「続けるなら人工呼吸器になります」と言うので、私は慌てて母と叔父の意見を遮って「もう、自然にお願いします」と伝えた。
母は「よっしーちゃん、ばぁばが死んじゃうんだよ!?」と取り乱して泣くし、叔父には「勝手なことを言うな」と胸ぐらを掴まれた。
でも私は生前、祖母から自然に逝かせてくれって頼まれていたから。
私だって、大好きな祖母が少しでも生きてくれるなら人工呼吸器でも何でもやってほしかった。1分1秒でも長く一緒にいたかった。看護師になった姿だって見せたかった。
でも…祖母が望んだのは自然な死だったから。
医師にDNARを伝えた瞬間、辛くて悲しくて震えた。
未だに、あのとき心臓マッサージを続けていたら助かったのかな?なんて思いたくなる。

それでも私は、祖母の意思を伝えられたとも思う。だから後悔はない。祖母と生前からどう死にたいかを話し合っておいて良かった。
患者本人も家族も後悔しないためには、延命治療を選択する前にまずその実態を知るのが大事だと思う。
厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査 報告書(令和4年)P58 」によると、経鼻栄養を希望するか?に対する「はい」の回答は、一般国民が54%、看護師が85%と乖離が大きい。
「人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査 報告書(令和4年)P58 」(2024年9月2日参照)
つまり実態を知っている医療者ほど、自分自身に対しては経鼻栄養を望まない割合が高い、ということだ。
非医療者も、延命治療がどのようなものか調べたり主治医や看護師に聞いたりして、それをふまえて本当に望むのか考えてみると良いだろう。
元気な頃から「自分が死ぬときは延命治療しないでね」とか、「心臓マッサージまではしてほしいな」とかを話しておくとよい。
そうするともっと自然な死を迎えられる人は増えるんじゃないかな。
私の場合は、最期について祖母と私の2人だけで話していたから、母と叔父を混乱させてしまった。
最期の迎え方や延命治療については、家族全体で話さないといざと言うときに混乱を招く。
話すことができたら、次は事前指示書を書いてみると良い。

事前指示書とは、判断能力を失ったときに行われる延命処置などの医療行為について、前もって決めておくための文書。家族の意見が異なった場合、基本的には事前指示書に記載されている内容が最優先となる。
もし書く内容に悩んだら、主治医やかかりつけ医、看護師に相談してみると良い。
いろいろと語ったけど…私は思う。
延命治療うんぬんの前に、これって「死ぬこと」に対してマイナスイメージを持たせる日本の教育のせいなんじゃないかって。
死んだら負けみたいな風潮強くない?みんな死ぬのに。
年齢関係無しに死ぬことはもちろん悲しいけど…死ぬことは「悪」みたいな価値観が、この延命治療論争に繋がっているのかなぁ…なんて思う。
今はまだ死について話すことがタブーな世の中だけど、家族で死ぬことについてもっと気軽に話せるようになればいいな、それでみんなの後悔が減るといいな、そう思う。
本記事の感想やご自身のご経験、「こんな内容の記事が読みたい」など、コメントお待ちしています。
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ぶーちゃん
2024年9月18日 00:55
私も現在、療養病棟で働いています。亡くなる方も多いです。私の経験から、死を受け入れられない家族のことを言わせてもらうと、病院に入院させている家族は、患者に会いにくる頻度が少なすぎる!急変については医師から聞いているはずなのに…。いつ面会してもいいですよって言ってるのに…。こういうと家族に怒られるかもしれませんが、たいした会いにも来ないで、延命してくれはないんじゃない?って思うことも多々あります。
一方、訪問看護の経験もあります。訪問看護では、家族が患者を長い時間看ていることが多いので、急変しても家族も満足、家でできることが少ないということもありますが、患者も苦しまずに枯れるように亡くなる方が多いです。全員が家で看取った方がいいとは言いませんが、大事な家族で長生きしてほしいと考えるなら、もっと患者に会いにきてほしいと思います。話ができなくても、寝たきりになっていても、家族と会った時の患者の顔は、満たされた表情になりますから。本人に会って、触れたら、どういう亡くなり方がいいのかおのずと決められると思います。
編集担当の看護師です
2024年9月20日 10:07
ご意見ありがとうございます。私も病棟で看護をしていたので、似た経験があります。延命治療を選んだものの、忙しさや安心感から、面会に来られないご家族が多かったです。患者さんが本当に望んでいたのか、看護中に考えることも、家族に見守られずに亡くなる患者さんに「これでよかったのか」と悩むこともありましたね。今回の記事にもあるように、元気なうちから「死」について家族と話し合い、後悔のない選択ができる社会になればと思います。
まどか
2024年9月24日 10:47
急性期病棟で働いていますが、高齢患者さんが脱水や原因不明の発熱で入院し、点滴治療を始めても自己抜去することが多くって、家族が治療継続かDNARかをすぐ判断しなければならないこともあります。事前指示書は実際にそれをもとに判断される家族はあまり見たことがないですね。。ですが高齢の入院患者さんにはもっと記入を勧めていくほうがいいのかなーとは思います。
みほ
2025年2月21日 21:54
母の話です。脳出血の経過をみるうちに広範囲の脳梗塞を併発し、回復は見込めないと。搬送された時に人工呼吸器をつけ、今は意識は戻らず自発呼吸が少しあるだけです。だんだん状態が悪くなるのを感じながら、どこまでの処置を?と判断しなくてはなりません。本人は延命治療は望んでいなかったので、一番苦痛なく見送りたいと思っています。この処置をしないとこうなっていくというのを教えてもらえると助かります。
編集担当の看護師です
2025年2月25日 14:58
コメントありがとうございます。お母さまの延命治療について悩まれているのですね。
一般的な話にはなりますが…経口摂取ができない場合、経管栄養や点滴による高カロリー輸液をしなければ栄養不足となります。自発呼吸が少ない場合、人工呼吸器による換気の補助がなければ呼吸を維持することができません。これらの処置を選択することは、延命治療となります。
本当に大変な選択であるとお察しします。状況次第ではあるかと存じますが、ぜひ1人で悩まずご家族や医師、看護師と十分に相談してみてはどうでしょうか。ご本人の苦痛がなく、家族にとっても納得でき、後悔のない選択ができることを祈っております。みほさまにとって参考となれば幸いです。
ゆう
2025年3月23日 08:41
私もこの1月に連れ合いを
亡くしました
乳ガンで丸8年、良く我慢をして頑張ってくれたと思います
年末に腫瘍マーカーが急上昇
休暇明けにpetCTを撮った時には、
もう治療の出来る状態ではないと宣告を受けました
本人と一緒に先生の話を聞き
延命治療で元気になるものならしてほしけど、ならないなら延命治療をしない、
最後にDNARを選択しました
今でも迷いは有りますが、
自宅で穏やかな顔で亡くなり
良かったと自分に言い聞かせております
編集担当の看護師です
2025年3月24日 16:29
大切な人の最期の決断を一緒にして自宅で看取りをされたんですね。
今でも迷いはあるというお気持ちは、お相手の最期に真剣に向き合い大きな決断をしてお見送りされたからではないでしょうか。
ご本人さまも最期は穏やかな表情であったことから後悔のない最期だったのではと勝手ながらにも感じました。
生前から自分の最期をどう過ごすかを大事な人と決め、後悔のない最期を誰もが迎えられる世の中になっていけばいいなと思っています。
貴重なコメントありがとうございました。