
「薬の使い分けBOOK」では、看護師さんが気になる薬の使い分け方法について、薬剤師の笹川大介が解説します。
本記事は、抗血栓薬についてまとめました。作用・副作用に加えて特徴も記載していますので、ぜひ参考にしてください。

熊本大学薬学部を卒業後、2003年より地元・鹿児島県種子島の薬局に就職。その後、2009年より現職。
各地での講演会やセミナーを多数行っており、最近はYouTubeでオリジナル講義「かんたん薬理学」を精力的に配信している。日経DIクイズの執筆者、薬剤師教育動画「描いてつかむ! 副作用の薬理学」出演などの経験を持つ。
抗血栓薬は血栓症に使用される薬です。
血栓症とは、血管の中に血の塊(血栓)ができて血管が詰まる病気です。また、血栓がはがれて血流に乗り、その先の血管で詰まってしまった病気を塞栓症といいます。
血栓症は、動脈で血栓ができる動脈血栓症と、静脈で血栓ができる静脈血栓症に分けられます。
動脈血栓症の代表的な疾患は、心筋梗塞、脳梗塞(※心原性脳梗塞を除く)です。
一方、静脈血栓症の代表的な疾患は、脚の静脈に血栓ができる深部静脈血栓症、その血栓がはがれて肺の血管をふさぐ肺血栓塞栓症、そして心房細動と呼ばれる不整脈が原因で起こる心原性脳梗塞です。
▼血栓症の分類と代表的な疾患
| 分類 | 代表的な疾患 |
| 動脈血栓症 | 心筋梗塞、脳梗塞(※心原性脳梗塞を除く) |
| 静脈血栓症 | 深部静脈血栓症、肺血栓塞栓症、心原性脳梗塞 |

抗血小板薬は血液を固まらせる血小板の働きを抑え、血液の流れが速い動脈内での血栓の治療と予防に使用します。
一方で抗凝固薬は、血液を固めるフィブリンなどの血液凝固因子の働きを抑え、血液の流れが遅い心房や静脈での血栓の治療・予防に用いられます。
抗血栓薬に共通する副作用は出血傾向です。歯茎からの出血、鼻血、皮下出血(あおあざ)が起こりやすくなります。
それでは、抗血小板薬と抗凝固薬の使い分けについて早速みていきましょう。
一般名:アスピリン(主な商品名:バイアスピリン)
【作用】
COX(シクロオキシゲナーゼ)という酵素を阻害し、血小板の働きを抑えることで血液を固まりにくくする薬です。
【特徴】

動脈硬化が原因で起こる血栓症の予防や治療で使用されます。
心臓病においては、狭心症および心筋梗塞の治療や再発予防に用いられます。ほかにも、脳の太い動脈がコレステロールなどで狭くなって起こるアテローム血栓性脳梗塞、脳の細い血管が詰まるラクナ梗塞の治療や再発予防に使用されます。
【副作用】
消化性潰瘍が起こることがあります。胃のもたれ、胃痛、便の色が黒くなるなどの症状が続く場合は、医師・薬剤師に連絡してください。
【作用】
ADP(アデノシン二リン酸)という血小板凝集を促進させる物質の働きを抑えることで、血小板の働きを抑えて血液を固まりにくくする薬です。
【特徴】
経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される狭心症や心筋梗塞に対して、アスピリンとともに使用します。PCIとは、動脈硬化が進行して、心臓の細くなった血管に対してカテーテルを使って広げる治療です。広げた部分にステントと呼ばれる金属をはめ込み、血管が広がった状態を維持できるようにします。
このステント部分に血栓ができないようにするため、作用機序の異なるアスピリンと併用します。
クロピドグレル、プラスグレルは、虚血性脳血管障害(アテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞など)の再発予防でも使用されます。
ただし、プラスグレルに関しては、すべての脳梗塞症例で投与可能なわけではありません。大血管アテローム硬化または小血管の閉塞に伴う虚血性脳血管障害の患者、あるいは高血圧症、脂質異常症、糖尿病、慢性腎臓病、最終発作前の脳梗塞既往のいずれかを有する患者に限って使用が認められています。
【副作用】
頻度は非常に稀ですが、重大な副作用として、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、無顆粒球症が起こるケースがあります。発熱、倦怠感、脱力感、寒気、喉の痛みなどの症状がある場合には、すぐに医師・薬剤師に連絡してください。
一般名:シロスタゾール(主な商品名:プレタールOD)
【作用】
PDE(ホスホジエステラーゼ)という酵素を阻害し、血小板の働きを抑えることで血液を固まりにくくする薬です。
【特徴】
アテローム血栓性脳梗塞やラクナ梗塞の再発を抑制します。特にラクナ梗塞に対して効果が高いという報告があります。アスピリンと比較して、脳出血や消化管出血のリスクが低いです。
そのほか末梢動脈疾患(PAD)の治療にも使用します。PADは足や手の動脈が動脈硬化によって狭くなったり詰まったりして血液の流れが悪くなる病気で、足の冷え、しびれ、痛み、潰瘍などのさまざまな症状を引き起こします。
シロスタゾールは間欠性跛行(かんけつせいはこう)※がある場合に有効です。
特に歩いているうちに下肢が痛んで正常に歩けなくなり、休息すると痛みが取れて歩けるようになる状態。
【副作用】
血管拡張作用があるため、動悸や頻脈などの副作用が出る可能性があります。頻脈によって、胸部不快や気分不良といった自覚症状が出たり、狭心症や不整脈へと発展したりする可能性があります。頻脈や動悸がひどいときは医師・薬剤師に連絡しましょう。
一般名:ワルファリン(主な商品名:ワーファリン)
【作用】
ビタミンKの作用を阻害し、ビタミンKを必要とする血液凝固因子(第Ⅱ、第Ⅶ、第Ⅸ、第Ⅹ因子)が肝臓で作られるのを抑えます。それにより、血液を固まりにくくし、血栓ができるのを防ぐ薬です。
【特徴】
心房細動になると、心房の中で血液がよどんで固まりやすくなります。そして血栓ができ、徐々に大きくなります。この血栓が心臓を飛び出して脳に運ばれると、脳の太い血管が詰まって脳梗塞(心原性脳塞栓症)を引き起こします。

この薬は、深部静脈血栓症や肺血栓塞栓症などの病気でも使われます。加えて、後述する、直接経口抗凝固薬(DOAC)を使用できない弁膜症性心房細動(弁の異常が原因となる心房細動)に対しても使用できます。
DOACは高度腎機能障害患者や透析患者に禁忌であり、ワルファリンも同様に高度腎機能障害患者には禁忌です。しかし透析患者へは、脳梗塞の再発予防などにおいて使用を考慮することがあります。
一方、ワルファリンにはデメリットもあり、服用中は納豆、クロレラ、青汁などは摂取を控える必要があります。これらの食品はビタミンKを多く含んでいますが、ワルファリンはビタミンKに拮抗し、効果が減弱するためです。
ワルファリン服用中は定期的に血液凝固能検査(PT-INR)を実施する必要があり、結果によっては用量を調節します。
【特徴】
ワルファリンは十分な効果が出るには服用から2〜3日かかるのに対し、DOACは内服後1時間程度から効果が出ます。そして、ワルファリンとほぼ同等もしくはそれ以上の塞栓症予防効果を示します。
DOAC投与患者の頭蓋内出血の発現率は、ワルファリン投与患者の半分ほどであることが報告されています。
DOACは年齢・体重・腎機能、併用薬などに応じて用量が自動的に決まります。そのためワルファリンのようなこまめな用量調整は不要です。
一般名:ダビガトラン(主な商品名:プラザキサ)
【作用】
血液凝固因子の1つであるトロンビン(第IIa因子)を阻害し、血液が固まるのを抑えて血栓ができるのを防ぐ薬です。
【特徴】
心房細動に起因する心原性脳塞栓症や全身性塞栓症※の発症を抑制します。
複数の臓器や組織の血管を詰まらせた状態
【副作用】
ダビガトランはカプセル製剤であり、カプセルが食道にとどまることで、食道炎や食道潰瘍を起こすことがあります。
対策として、コップ1杯程度の十分な水で服用し、内服後すぐに横にならないようにしてください。
【作用】
血液凝固因子の1つである第Xa因子(FXa)を阻害し、血液が固まるのを抑え、血栓ができるのを防ぐ薬です。
【特徴】
直接トロンビン阻害薬と同じく、心房細動に起因する心原性脳塞栓症や全身性塞栓症の発症を抑制します。加えて深部静脈血栓症や肺血栓塞栓症の治療と再発予防にも使用できます。
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熊本大学薬学部を卒業後、2003年より地元・鹿児島県種子島の薬局に就職。その後、2009年より現職。
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看護師から寄せられる“よくある質問”
Q. 現役看護師が一番稼げる科はどこ?
一般的に、高度な医療を提供する診療科や収益の多い診療科・クリニックは、高収入を得られる傾向にあります。病院だと救急救命科やICU(集中治療室)など、クリニックでは美容クリニックや人工透析クリニックなどが挙げられます。「看護師が一番稼げる科はどこ?高年収のクリニック・病院や転職のポイント」では、看護師が稼げる科を、詳しく解説しています。規模別の平均給与や、高収入な職場へ転職する際のポイントも紹介しているので、求人探しの参考にしてください。
Q. 看護師がのんびり働ける勤務先は?
病院であれば緊急対応や体力を消耗する業務が少ない外来や回復期・慢性期病棟。病院の外来やクリニックであれば重症患者の処置が少ない診療科は比較的落ち着いた環境といえるでしょう。自身のペースを大事に働きたい方は、現職の悩みを解決できるような環境・働き方を選ぶことがポイントです。「のんびり働きたい看護師向け!おすすめの職場や病院以外の仕事を紹介」では、のんびり働ける勤務先の条件や、おすすめの職場・診療科、のんびり働ける仕事のメリットやデメリットも解説しています。職場探しの参考にしてください。
Q. 看護師1年目で転職しても大丈夫?
1年目であっても転職は可能です。新卒として入職後3年以内に転職する「第ニ新卒」を歓迎する求人も多数出ている状況です。心身に不調がある場合や、職場でハラスメント・法律違反が横行している場合は、無理せず環境を変えたほうが安心です。「看護師1年目で転職しても大丈夫。病院以外の職場や好印象の退職理由を紹介」では1年目の看護師が転職したくなる理由や、仕事が辛いときの対処法、 おすすめの職場などをまとめています。新人看護師が転職に成功するコツや退職の際の注意点も解説しているので、参考にしてみてください。
Q. お礼奉公中でも転職は可能?
お礼奉公の途中でも、看護師が仕事を辞めることは可能ですが、途中で退職してトラブルに繋がるケースもあるので、辞める場合は注意が必要です。「お礼奉公中だけど辞めたい看護師へ!奨学金に関する疑問に答えます」では、「お礼奉公中の看護師は仕事を辞めても良いか」「途中で辞めると奨学金の支払いはどうなるのか」といった疑問や不安にお答えしています。また、奨学金の一括返済を求められたときや、退職を拒まれたときの対処法についてもご紹介しているので、お礼奉公がネックで前に進めずにいる方は、ぜひ参考にしてください。
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