
「薬の使い分けBOOK」では、看護師さんが気になる薬の使い分け方法について、薬剤師の笹川大介が解説します。
本記事は、吸入薬についてまとめました。作用・副作用に加えて特徴も記載していますので、ぜひ参考にしてください。

熊本大学薬学部を卒業後、2003年より地元・鹿児島県種子島の薬局に就職。その後、2009年より現職。
各地での講演会やセミナーを多数行っており、最近はYouTubeでオリジナル講義「かんたん薬理学」を精力的に配信している。日経DIクイズの執筆者、薬剤師教育動画「描いてつかむ! 副作用の薬理学」出演などの経験を持つ。
吸入薬は、気管支喘息やCOPDなど呼吸器の病気に使われる薬です。

吸入薬は口から薬剤を吸い込んで肺や気管支に直接作用させるため、以下の利点があります。
吸入薬を吸い込むために必要なのが吸入器(デバイス)です。

▼吸入器の種類と特徴
| pMDI(加圧噴霧式定量吸入器) | ガスの圧力で薬剤を噴射します。吸入するときは、薬の噴射と薬を吸い込むタイミングを合わせる(同調する)必要があります。 |
| DPI(ドライパウダー定量吸入器) | 粉末の薬剤を自分で吸い込むタイプの吸入器です。 |
| SMI(ソフトミスト定量吸入器) | ゆっくりと噴霧される吸入液を吸い込むタイプの吸入器です。 |
気管支喘息は、気道(主に気管支)に炎症が起こることで、咳、痰、息苦しさ、喘鳴※などの症状が現れる病気です。
喘息患者の気管支は発作がないときでも炎症が起きており、そこにアレルゲンやストレスなどの刺激が加わると喘息発作が起こります。
喘息の治療薬には、長期管理薬(コントローラー)と発作治療薬(リリーバー)があります。
| 治療薬 | 種類 | 効果 |
| 長期管理薬 | 吸入ステロイド薬 | 気道の炎症を抑えて発作を予防する。 |
| 長時間作用型β2刺激薬 | 気道を広げて発作を予防する。 | |
| 発作治療薬 | 短時間作用型吸入β2刺激薬 | 発作時に素早く気道を広げる。 |
COPDは、たばこの煙などの有害物質を長期間吸入することで生じた肺の炎症性の疾患です。咳や痰が出やすく、気管支が細くなることで呼吸が苦しくなります。
COPD治療の中心となるのは気管支拡張薬の吸入薬です。以下2つがあります。
それでは、気管支喘息とCOPDに使用される薬の使い分けについて早速見ていきましょう。
| 薬剤名 | 吸入器 | 対象疾患 |
| 一般名:フルチカゾンプロピオン酸エステル(商品名:フルタイド) | pMDI・DPI | 気管支喘息 |
| 一般名:フルチカゾンフランカルボン酸エステル(商品名:アニュイティ) | DPI | 気管支喘息 |
| 一般名:ブデソニド(商品名:パルミコート) | DPI | 気管支喘息 |
| 一般名:シクレソニド(商品名:オルベスコ) | pMDI | 気管支喘息 |
一般名:モメタゾン(商品名:アズマネックス) | DPI | 気管支喘息 |




【作用】
炎症に関係するDNAに作用し、気道の炎症を抑える吸入薬です。
【特徴】
気管支喘息治療における第一選択薬です。吸入ステロイド薬は直接気道に到達して、気道の炎症を強力に抑えます。
発作が起こらないように予防する薬であり、吸ってもすぐに楽になるわけではありません。喘息発作のないときも気道には炎症が残っているため、定期的に吸入を続けることが大切です。
【副作用】
飲み薬や注射薬などのステロイド薬とは比較にならないほど、全身性の副作用が少ないです。
局所の副作用としては、口腔・咽頭カンジダ症※、嗄声(させい)※などがあります。
これらの副作用の予防には、吸入後のうがいが有効です。
| 薬剤名 | 吸入器 | 対象疾患 |
| 一般名:サルメテロール(商品名:セレベント) | DPI | 気管支喘息、COPD |
| 一般名:インダカテロール(商品名:オンブレス) | DPI | COPD |
| 一般名:ホルモテロール(商品名:オーキシス) | DPI | COPD |


【作用】
気管支平滑筋のβ2受容体を刺激することで、気管支を拡張させて咳や息苦しさなどを改善する吸入薬です。
【特徴】
喘息の治療で長時間作用型β2刺激薬(LABA)を使用する場合には、必ず吸入ステロイド(ICS)と併用するか、後述する配合剤(ICS+LABA)を使用します。なぜならLABA単独の治療では気道の炎症を抑えることができないためです。
COPDの治療では、第一選択薬である長時間作用型抗コリン薬(LAMA)が副作用で使用できない場合に、LABAが選択されます。
【副作用】
振戦(手指のふるえ)、動悸、不整脈が起こることがあります。
| 薬剤名 | 吸入器 | 対象疾患 |
| 一般名:フルチカゾン・サルメテロール(商品名:アドエア) | pMDI・DPI | 気管支喘息、COPD |
| 一般名:フルチカゾン・ホルモテロール(商品名:フルティフォーム) | pMDI | 気管支喘息 |
| 一般名:フルチカゾン・ビランテロール(商品名:レルベア) | DPI | 気管支喘息、COPD |
| 一般名:ブデソニド・ホルモテロール(商品名:シムビコート) | DPI | 気管支喘息、COPD |
| 一般名:モメタゾン・インダカテロール(商品名:アテキュラ) | DPI | 気管支喘息 |


【特徴】
ICSとLABAが配合されている吸入薬です。配合剤は吸入器が1種類ですむため、異なる吸入器操作の混乱や誤使用を避けることができ、吸入操作が楽になって治療効果が上がります。
LABAは気管支を広げる作用に加えて、ステロイド薬の抗炎症作用を強めるため、ICSとの併用で相乗効果が期待できます。
そのため初回の喘息治療では、ICSを単独で使用するより、効果を実感しやすいICS+LABA配合剤で開始するケースが多いです。
| 薬剤名 | 吸入器 | 対象疾患 |
| 一般名:プロカテロール(商品名:メプチン) | pMDI・DPI | 気管支喘息、COPD |
| 一般名:フェノテロール(商品名:ベロテック) | pMDI | 気管支喘息、COPD |
| 一般名:サルブタモール(商品名:サルタノール) | pMDI | 気管支喘息、COPD |


【作用】
気管支平滑筋のβ2受容体を刺激することで、気管支を拡張
させて咳や息苦しさなどを改善する吸入薬です。
【特徴】
気管⽀を広げる作⽤が強く、即効性があります。喘息の発作時に使用することで、すぐに呼吸が楽になります。
しかし、SABAはあくまでも発作に対する対症療法であり、喘息治療の基本はICSです。コントローラー(長期管理薬)を使わずにリリーバー(発作治療薬)だけに頼っていると、気道の炎症が進んで喘息が悪化してしまうため注意しましょう。
【副作用】
過剰使用などにより頻脈や動悸などが現れる場合があるため、規定量・規定回数を守った使用が必要です。一定の吸入回数を行っても症状が緩和しない場合は、医療機関の受診をし、ステロイド薬の点滴など適切な対応が必要です。
| 薬剤名 | 吸入器 | 対象疾患 |
| 一般名:チオトロピウム(商品名:スピリーバ) | SMI | 気管支喘息、COPD |
| 一般名:グリコピロニウム(商品名:シーブリ) | DPI | COPD |
| 一般名:アクリジニウム(商品名:エクリラ) | DPI | COPD |
| 一般名:ウメクリジニウム(商品名:エンクラッセ) | DPI | COPD |


【作用】
気管支平滑筋のムスカリンM3受容体(アセチルコリンの受容体)を遮断することにより、気管支を広げて呼吸を楽にし、息切れなどを改善する吸入薬です。
【特徴】
長時間作用型抗コリン薬(LAMA)はCOPD治療の第一選択薬です。毎日規則正しく吸入する薬であり、急な症状の悪化を速やかに鎮める薬ではありません。
LABAと比較すると、呼吸機能の改善効果ではほぼ同等ですが、 増悪の予防効果はLAMAの方が優れています。
【副作用】
口渇、排尿困難、眼圧の上昇などの副作用があります。
【禁忌】
閉塞隅角緑内障の患者や、前立腺肥大などによる排尿障害のある患者には禁忌のため、確認が必要です。
| 薬剤名 | 吸入器 | 対象疾患 |
| 一般名:グリコピロニウム・ホルモテロール(商品名:ビベスピ) | pMDI | COPD |
| 一般名:グリコピロニウム・インダカテロール(商品名:ウルティブロ) | DPI | COPD |
| 一般名:ウメクリジニウム・ビランテロール(商品名:アノーロ) | DPI | COPD |
| 一般名:チオトロピウム・オロダテロール(商品名:スピオルト) | SMI | COPD |



【特徴】
LAMAとLABAの配合剤です。COPDの症状が進行した場合に使います。
配合剤のほうが、それぞれの単剤よりも息切れを改善し、入院やCOPDの悪化を減少させ、患者の生活の質(QOL)を改善したと報告されています。併用する場合には、異なる吸入器操作の混乱や誤使用を避けるため、配合剤(LAMA+LABA)を使用するケースが多いです。
| 薬剤名 | 吸入器 | 対象疾患 |
| 一般名:ブデソニド・グリコピロニウム・ホルモテロール(商品名:ビレーズトリ) | pMDI | COPD |
| 一般名:フルチカゾン・ウメクリジニウム・ビランテロール(商品名:テリルジー) | DPI | 気管支喘息、COPD |
| 一般名:モメタゾン・グリコピロニウム・インダカテロール(商品名:エナジア) | DPI | 気管支喘息 |


【特徴】
抗炎症作用などをあらわすステロイド薬、気管支拡張作用をあらわす抗コリン薬及びβ2刺激薬の3種類の成分を配合した吸入薬です。
気管支喘息の治療におけるICS+LABAや、COPDの治療におけるLABA+LAMAによる2剤併用で、喘息あるいはCOPDのコントロールが不十分である場合に使用されます。
喘息とCOPDのそれぞれの特徴を併せ持つ疾患である「ACO(エーコー)」に対しても使用されます。
吸入薬について、もっと知りたいことや、困っていること、そのほかにもこんな薬剤の記事が見たいなどがあればコメントしてください!
これは役立つぞ!とか現場と違うんだけど…というコメントも大歓迎です。
今回の内容はレバウェル看護公式Instagramにてイラストで簡単に解説しています。投稿はコチラ!
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熊本大学薬学部を卒業後、2003年より地元・鹿児島県種子島の薬局に就職。その後、2009年より現職。
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看護師から寄せられる“よくある質問”
Q. 現役看護師が一番稼げる科はどこ?
一般的に、高度な医療を提供する診療科や収益の多い診療科・クリニックは、高収入を得られる傾向にあります。病院だと救急救命科やICU(集中治療室)など、クリニックでは美容クリニックや人工透析クリニックなどが挙げられます。「看護師が一番稼げる科はどこ?高年収のクリニック・病院や転職のポイント」では、看護師が稼げる科を、詳しく解説しています。規模別の平均給与や、高収入な職場へ転職する際のポイントも紹介しているので、求人探しの参考にしてください。
Q. 看護師がのんびり働ける勤務先は?
病院であれば緊急対応や体力を消耗する業務が少ない外来や回復期・慢性期病棟。病院の外来やクリニックであれば重症患者の処置が少ない診療科は比較的落ち着いた環境といえるでしょう。自身のペースを大事に働きたい方は、現職の悩みを解決できるような環境・働き方を選ぶことがポイントです。「のんびり働きたい看護師向け!おすすめの職場や病院以外の仕事を紹介」では、のんびり働ける勤務先の条件や、おすすめの職場・診療科、のんびり働ける仕事のメリットやデメリットも解説しています。職場探しの参考にしてください。
Q. 看護師1年目で転職しても大丈夫?
1年目であっても転職は可能です。新卒として入職後3年以内に転職する「第ニ新卒」を歓迎する求人も多数出ている状況です。心身に不調がある場合や、職場でハラスメント・法律違反が横行している場合は、無理せず環境を変えたほうが安心です。「看護師1年目で転職しても大丈夫。病院以外の職場や好印象の退職理由を紹介」では1年目の看護師が転職したくなる理由や、仕事が辛いときの対処法、 おすすめの職場などをまとめています。新人看護師が転職に成功するコツや退職の際の注意点も解説しているので、参考にしてみてください。
Q. お礼奉公中でも転職は可能?
お礼奉公の途中でも、看護師が仕事を辞めることは可能ですが、途中で退職してトラブルに繋がるケースもあるので、辞める場合は注意が必要です。「お礼奉公中だけど辞めたい看護師へ!奨学金に関する疑問に答えます」では、「お礼奉公中の看護師は仕事を辞めても良いか」「途中で辞めると奨学金の支払いはどうなるのか」といった疑問や不安にお答えしています。また、奨学金の一括返済を求められたときや、退職を拒まれたときの対処法についてもご紹介しているので、お礼奉公がネックで前に進めずにいる方は、ぜひ参考にしてください。
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