
「薬の使い分けBOOK」では、看護師さんが気になる薬の使い分け方法について、薬剤師の笹川大介が解説します。
本記事は、抗インフルエンザ薬についてまとめました。作用・副作用に加えて特徴も記載していますので、ぜひ参考にしてください。

熊本大学薬学部を卒業後、2003年より地元・鹿児島県種子島の薬局に就職。その後、2009年より現職。
各地での講演会やセミナーを多数行っており、最近はYouTubeでオリジナル講義「かんたん薬理学」を精力的に配信している。日経DIクイズの執筆者、薬剤師教育動画「描いてつかむ! 副作用の薬理学」出演などの経験を持つ。
インフルエンザとはインフルエンザウイルスによる感染症です。
突然、38℃以上の高熱が出て、寒気、頭痛、全身倦怠感、関節痛、筋肉痛といった全身の症状が強くあらわれます。やや遅れて、鼻水、咽頭痛、咳などの呼吸器症状が出現します。

ヘマグルチニンは、接着剤のように、ウイルスがヒト細胞に吸着・侵入する役割をします。ノイラミニダーゼは、ウイルスとヒト細胞の結合を切断し、ヒト細胞内で増殖したウイルスを細胞外へ放出させる役割をします。
▼インフルエンザウイルスの構造

抗インフルエンザ薬は、以下の2種類に分けられます。
どちらもインフルエンザウイルスに感染後、早い段階で投与することで、症状を和らげたり、発熱期間を短くしたり、重症化を防いだりする効果があります。
発症後すぐに薬を投与する理由は、ウイルスの増殖と放出が発症後48時間以内にピークに達するからです。増殖したウイルスが細胞から放出してしまった後では薬の効果が期待できません。
また、インフルエンザの患者では、抗インフルエンザウイルス薬の服用の有無や種類にかかわらず異常行動(急に走り出す、徘徊するなど)があらわれることがあります。

それでは具体的な薬の使い分けについて見ていきましょう。

【作用】
インフルエンザウイルスの表面にあるノイラミニダーゼを阻害します。それにより、細胞内で新たに作られたウイルスは細胞表面にとどまり、細胞外へのウイルスの放出が抑制されることで、ウイルスの増殖(体内での拡散)を抑えます。
【特徴】
内服薬、吸入薬、注射薬の3種類があります。
内服薬のオセルタミビルは1日2回、5日間服用します。カプセルに加えてドライシロップ※と呼ばれる剤型もあります。
ラニナミビルは単回(1回:4吸入)で治療が完結します。ただし、吸入したパウダーによって咳が引き起こされ、十分な薬の量が吸入できなかったり、高齢者や小児ではうまく吸入できなかったりするデメリットもあります。
点滴のペラミビルは、内服薬のオセルタミビルと並んで重症例への使用が推奨されています。インフルエンザが重症化して肺炎を合併すると、咳や呼吸困難によって吸入薬の使用が困難となったり、吐き気や喉の異常によってオセルタミビル(内服薬)を使えなくなったりすることがありますが、ペラミビルはその際の貴重な選択肢となります。
オセルタミビル:インフルエンザ治療における第一選択薬であり、世界中で最も使用されています。小児から成人まで年齢を問わず、軽症例から、吸入が困難な重症例でも使いやすい内服薬です。妊婦にも比較的安全に使用可能とされています。
ザナミビル:1日2回を5日間、計10回吸入するため、1回吸入に失敗した場合でも、単回吸入のラニナミビルと比較して、治療への影響が少ないです。オセルタミビルと同じく、使用経験が多く、妊婦にも比較的安全に使用可能とされています。
ラニナミビル:1回(4吸入)で治療が終了するため、利便性が高いです。
ペラミビル:点滴のため、内服や吸入が困難な場合に使用します。
【副作用】
内服薬であるオセルタミビルでは、下痢や吐き気などの消化器症状や頭痛がみられます。
吸入薬は、インフルエンザウイルスの感染部位(喉や気管支)へ直接届いてウイルスの増殖を抑えるため、全身性の副作用がほとんどありません。ただし、気管支喘息などの患者では注意が必要です。インフルエンザウイルスへの感染により気道が過敏になっており、吸入後に気管支攣縮※や呼吸機能の低下がみられた例が報告されているためです。
一般名:バロキサビル(商品名:ゾフルーザ)
【作用】
インフルエンザウイルスに特有の酵素であるキャップ依存性エンドヌクレアーゼ※を阻害します。
mRNAはウイルスを構成するタンパク質の設計図(遺伝情報)です。細胞内ではmRNAの情報をもとにウイルスのタンパク質が作られます。
バロキサビルは、キャップ依存性エンドヌクレアーゼの働きを阻害することでmRNAの合成を阻害し、ウイルス増殖に必要なタンパク質を合成できなくして、インフルエンザウイルスの増殖を強く阻害します。
【特徴】
ノイラミニダーゼ阻害薬とは異なる作用機序を持つ新規の抗インフルエンザ薬です。オセルタミビルと同等の症状改善効果があります。また、ウイルス排出量低減効果はノイラミニダーゼ阻害薬よりも優れているため、周囲への感染性の低下が期待できます。
オセルタミビルが全年齢において推奨されているのに対して、現段階では、バロキサビルは12歳以上での推奨となっています。理由としては、バロキサビルによる治療により、変異ウイルスが12歳未満で多く検出されたことが影響しています。
ただし、日本小児科学会が発表した「2024/25シーズンのインフルエンザ治療・予防指針」において小児(6歳〜11歳)におけるインフルエンザB型にはバロキサビルの使用を考慮すると記載されています。これは、インフルエンザB型に対してバロキサビルがオセルタミビルに比べて有熱期間が短いことが複数の報告で確認されているからです。
【副作用】
下痢や頭痛などの副作用が起こることがあります。
まれですが、出血が報告されています。血便、鼻出血、血尿等があらわれた場合には医師・薬剤師に連絡してください。服用数日後にもあらわれることがあります。
インフルエンザ薬は、薬によっては予防で使用されることもあります。この場合には、治療で使用する投与量や期間が異なる薬があるため注意が必要です。
抗インフルエンザ薬について、もっと知りたいことや、困っていること、そのほかにもこんな薬剤の記事が見たいなどがあればコメントしてください!
これは役立つぞ!とか現場と違うんだけど…というコメントも大歓迎です。
今回の内容はレバウェル看護公式Instagramにてイラストで簡単に解説しています。投稿はコチラ!

熊本大学薬学部を卒業後、2003年より地元・鹿児島県種子島の薬局に就職。その後、2009年より現職。
各地での講演会やセミナーを多数行っており、最近はYouTubeでオリジナル講義「かんたん薬理学」を精力的に配信している。日経DIクイズの執筆者、薬剤師教育動画「描いてつかむ! 副作用の薬理学」出演などの経験を持つ。
記事の制作について
「レバウェル看護 看護師さん向けお役立ち情報」では、
記事の制作・公開にあたってのポリシーを定めています。
詳細は下記よりご確認いただけます。
看護師から寄せられる“よくある質問”
Q. 現役看護師が一番稼げる科はどこ?
一般的に、高度な医療を提供する診療科や収益の多い診療科・クリニックは、高収入を得られる傾向にあります。病院だと救急救命科やICU(集中治療室)など、クリニックでは美容クリニックや人工透析クリニックなどが挙げられます。「看護師が一番稼げる科はどこ?高年収のクリニック・病院や転職のポイント」では、看護師が稼げる科を、詳しく解説しています。規模別の平均給与や、高収入な職場へ転職する際のポイントも紹介しているので、求人探しの参考にしてください。
Q. 看護師がのんびり働ける勤務先は?
病院であれば緊急対応や体力を消耗する業務が少ない外来や回復期・慢性期病棟。病院の外来やクリニックであれば重症患者の処置が少ない診療科は比較的落ち着いた環境といえるでしょう。自身のペースを大事に働きたい方は、現職の悩みを解決できるような環境・働き方を選ぶことがポイントです。「のんびり働きたい看護師向け!おすすめの職場や病院以外の仕事を紹介」では、のんびり働ける勤務先の条件や、おすすめの職場・診療科、のんびり働ける仕事のメリットやデメリットも解説しています。職場探しの参考にしてください。
Q. 看護師1年目で転職しても大丈夫?
1年目であっても転職は可能です。新卒として入職後3年以内に転職する「第ニ新卒」を歓迎する求人も多数出ている状況です。心身に不調がある場合や、職場でハラスメント・法律違反が横行している場合は、無理せず環境を変えたほうが安心です。「看護師1年目で転職しても大丈夫。病院以外の職場や好印象の退職理由を紹介」では1年目の看護師が転職したくなる理由や、仕事が辛いときの対処法、 おすすめの職場などをまとめています。新人看護師が転職に成功するコツや退職の際の注意点も解説しているので、参考にしてみてください。
Q. お礼奉公中でも転職は可能?
お礼奉公の途中でも、看護師が仕事を辞めることは可能ですが、途中で退職してトラブルに繋がるケースもあるので、辞める場合は注意が必要です。「お礼奉公中だけど辞めたい看護師へ!奨学金に関する疑問に答えます」では、「お礼奉公中の看護師は仕事を辞めても良いか」「途中で辞めると奨学金の支払いはどうなるのか」といった疑問や不安にお答えしています。また、奨学金の一括返済を求められたときや、退職を拒まれたときの対処法についてもご紹介しているので、お礼奉公がネックで前に進めずにいる方は、ぜひ参考にしてください。
キャリア
働く場所
選考対策
資格
その他
読みもの
連載
コメントはありません