2種類の抗インフルエンザウイルス薬の使い分けを薬剤師が解説!

「薬の使い分けBOOK」では、看護師さんが気になる薬の使い分け方法について、薬剤師の笹川大介が解説します。

本記事は、抗インフルエンザ薬についてまとめました。作用・副作用に加えて特徴も記載していますので、ぜひ参考にしてください。

この記事を書いた人
笹川大介(ササガワダイスケ)
薬剤師、株式会社ゆかりファーマシー取締役

熊本大学薬学部を卒業後、2003年より地元・鹿児島県種子島の薬局に就職。その後、2009年より現職。

各地での講演会やセミナーを多数行っており、最近はYouTubeでオリジナル講義「かんたん薬理学」を精力的に配信している。日経DIクイズの執筆者、薬剤師教育動画「描いてつかむ! 副作用の薬理学」出演などの経験を持つ。

※1※2 調査方法:インターネット調査/調査期間:2024年2月7日~2月13日/調査概要:「看護師転職サイト」を対象としたユーザー満足度調査/調査対象:男女、全国、看護師・准看護師資格保有者かつ対象看護師転職サイト利用経験者、20~29歳 107s(※1)、20~34歳 175s(※2)/調査実施:株式会社エクスクリエ/比較対象サービス:「看護師転職サイト」主要10サービス(専用サイトのあるサービスのみ・求人結果の表示ページは除く)

インフルエンザとは

インフルエンザとはインフルエンザウイルスによる感染症です。

突然、38℃以上の高熱が出て、寒気、頭痛、全身倦怠感、関節痛、筋肉痛といった全身の症状が強くあらわれます。やや遅れて、鼻水、咽頭痛、咳などの呼吸器症状が出現します。

インフルエンザウイルスの表面には、ヘマグルチニン(HA)とノイラミニダーゼ(NA)と呼ばれるタンパク質があります。

ヘマグルチニンは、接着剤のように、ウイルスがヒト細胞に吸着・侵入する役割をします。ノイラミニダーゼは、ウイルスとヒト細胞の結合を切断し、ヒト細胞内で増殖したウイルスを細胞外へ放出させる役割をします。

▼インフルエンザウイルスの構造

インフルエンザウイルスの構造

抗インフルエンザ薬の使い分けについて

抗インフルエンザ薬は、以下の2種類に分けられます。

  • ノイラミニダーゼ阻害薬
  • キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬

どちらもインフルエンザウイルスに感染後、早い段階で投与することで、症状を和らげたり、発熱期間を短くしたり、重症化を防いだりする効果があります。

発症後すぐに薬を投与する理由は、ウイルスの増殖と放出が発症後48時間以内にピークに達するからです。増殖したウイルスが細胞から放出してしまった後では薬の効果が期待できません。

また、インフルエンザの患者では、抗インフルエンザウイルス薬の服用の有無や種類にかかわらず異常行動(急に走り出す、徘徊するなど)があらわれることがあります。

小児や未成年者は、そばを離れず注意深く観察をするなど特に注意してください。

それでは具体的な薬の使い分けについて見ていきましょう。

インフルエンザ治療で主に使用される薬

分類名:ノイラミニダーゼ阻害薬

  • 一般名:オセルタミビル(商品名:タミフル)内服薬
  • 一般名:ザナミビル(商品名:リレンザ)吸入薬
  • 一般名:ラニナミビル(商品名:イナビル)吸入薬
  • 一般名:ペラミビル(商品名:ラピアクタ)注射薬
 
 

【作用】
インフルエンザウイルスの表面にあるノイラミニダーゼを阻害します。それにより、細胞内で新たに作られたウイルスは細胞表面にとどまり、細胞外へのウイルスの放出が抑制されることで、ウイルスの増殖(体内での拡散)を抑えます。

【特徴】
内服薬、吸入薬、注射薬の3種類があります。

内服薬のオセルタミビルは1日2回、5日間服用します。カプセルに加えてドライシロップ※と呼ばれる剤型もあります。

※ドライシロップ
水に溶かして服用する粉の薬です。粉薬としても、シロップとしても使用できます。甘い味やにおいでコーティングされているため、子どもでも飲みやすい剤形です。

ラニナミビルは単回(1回:4吸入)で治療が完結します。ただし、吸入したパウダーによって咳が引き起こされ、十分な薬の量が吸入できなかったり、高齢者や小児ではうまく吸入できなかったりするデメリットもあります。

点滴のペラミビルは、内服薬のオセルタミビルと並んで重症例への使用が推奨されています。インフルエンザが重症化して肺炎を合併すると、咳や呼吸困難によって吸入薬の使用が困難となったり、吐き気や喉の異常によってオセルタミビル(内服薬)を使えなくなったりすることがありますが、ペラミビルはその際の貴重な選択肢となります。

使い分けのポイント

オセルタミビル:インフルエンザ治療における第一選択薬であり、世界中で最も使用されています。小児から成人まで年齢を問わず、軽症例から、吸入が困難な重症例でも使いやすい内服薬です。妊婦にも比較的安全に使用可能とされています。

ザナミビル:1日2回を5日間、計10回吸入するため、1回吸入に失敗した場合でも、単回吸入のラニナミビルと比較して、治療への影響が少ないです。オセルタミビルと同じく、使用経験が多く、妊婦にも比較的安全に使用可能とされています。

ラニナミビル:1回(4吸入)で治療が終了するため、利便性が高いです。

ペラミビル:点滴のため、内服や吸入が困難な場合に使用します。

【副作用】
内服薬であるオセルタミビルでは、下痢や吐き気などの消化器症状や頭痛がみられます。

吸入薬は、インフルエンザウイルスの感染部位(喉や気管支)へ直接届いてウイルスの増殖を抑えるため、全身性の副作用がほとんどありません。ただし、気管支喘息などの患者では注意が必要です。インフルエンザウイルスへの感染により気道が過敏になっており、吸入後に気管支攣縮※や呼吸機能の低下がみられた例が報告されているためです。

※気管支攣縮
突然の息切れ、息をするときヒューヒューと音がする、息がぜいぜいするなどの症状があります。このような場合には、ただちに医師または薬剤師に相談してください。

分類名:キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬

一般名:バロキサビル(商品名:ゾフルーザ)

【作用】
インフルエンザウイルスに特有の酵素であるキャップ依存性エンドヌクレアーゼ※を阻害します。

※キャップ依存性エンドヌクレアーゼ
ウイルスのmRNAを合成するために必要な酵素。

mRNAはウイルスを構成するタンパク質の設計図(遺伝情報)です。細胞内ではmRNAの情報をもとにウイルスのタンパク質が作られます。

バロキサビルは、キャップ依存性エンドヌクレアーゼの働きを阻害することでmRNAの合成を阻害し、ウイルス増殖に必要なタンパク質を合成できなくして、インフルエンザウイルスの増殖を強く阻害します。

【特徴】
ノイラミニダーゼ阻害薬とは異なる作用機序を持つ新規の抗インフルエンザ薬です。オセルタミビルと同等の症状改善効果があります。また、ウイルス排出量低減効果はノイラミニダーゼ阻害薬よりも優れているため、周囲への感染性の低下が期待できます。

オセルタミビルが全年齢において推奨されているのに対して、現段階では、バロキサビルは12歳以上での推奨となっています。理由としては、バロキサビルによる治療により、変異ウイルスが12歳未満で多く検出されたことが影響しています。

ただし、日本小児科学会が発表した「2024/25シーズンのインフルエンザ治療・予防指針」において小児(6歳〜11歳)におけるインフルエンザB型にはバロキサビルの使用を考慮すると記載されています。これは、インフルエンザB型に対してバロキサビルがオセルタミビルに比べて有熱期間が短いことが複数の報告で確認されているからです。

使い分けのポイント
バロキサビル:現段階では内服薬で唯一、1回の内服で治療が完結します。インフルエンザB型の場合には、ノイラミニダーゼ阻害薬より効果が優れていますので、選択肢の1つとなります。

【副作用】
下痢や頭痛などの副作用が起こることがあります。

まれですが、出血が報告されています。血便、鼻出血、血尿等があらわれた場合には医師・薬剤師に連絡してください。服用数日後にもあらわれることがあります。

【補足】インフルエンザ薬の予防投与

インフルエンザ薬は、薬によっては予防で使用されることもあります。この場合には、治療で使用する投与量や期間が異なる薬があるため注意が必要です。

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さいごに

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プロデュース
看護師のかげ
看護師、イラストレーター。病棟で働きながら医療・看護に関するコンテンツをさまざまな媒体で発表している。 保健師、呼吸療法認定士、終末期ケア専門士。著書に「看護が苦手なかげさんのイラスト看護帖」(永岡書店)ほか。X:@877_727、Instagram:@877_727
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