
「薬の使い分けBOOK」では、看護師さんが気になる薬の使い分け方法について、薬剤師の笹川大介が解説します。
本記事は、排尿障害治療薬についてまとめました。作用・副作用に加えて特徴も記載していますので、ぜひ参考にしてください。

熊本大学薬学部を卒業後、2003年より地元・鹿児島県種子島の薬局に就職。その後、2009年より現職。
各地での講演会やセミナーを多数行っており、最近はYouTubeでオリジナル講義「かんたん薬理学」を精力的に配信している。日経DIクイズの執筆者、薬剤師教育動画「描いてつかむ! 副作用の薬理学」出演などの経験を持つ。
排尿障害とは膀胱に尿を貯め、貯まった尿を体外へ排泄するという排尿の過程に異常をきたす状態を指します。
排尿障害は大きく以下の2つに分けられます。
①排出障害:尿をうまく出せない
②畜尿障害:尿をうまく貯められない

前立腺肥大症は、男性特有の疾患です。膀胱の出口を囲んでいる前立腺が肥大し、尿道を圧迫することによって、尿勢低下や残尿感などの排出障害の症状が起こります。また尿道や膀胱が刺激されることで、頻尿や尿意切迫感などの畜尿障害の症状も起こります。
一方、過活動膀胱は、膀胱が過敏になることで尿が十分に貯まっていなくても、膀胱が勝手に縮まってしまう状態のことをいいます。

原因としては、加齢や脳・神経の病気などさまざまな要因が考えられます。
それでは、前立腺肥大症と過活動膀胱に使用される排尿障害治療薬の使い分けをみていきましょう。

【作用】
尿道や前立腺のα1受容体を遮断することにより、尿道や前立腺の筋肉の緊張を緩めて、尿道を広げることで排尿のトラブルを改善する薬です。
【特徴】
中高年男性の排尿障害(排出障害・畜尿障害)の第一選択薬として推奨されています。
服用開始後、2週間以内に効果があらわれます。
【副作用】
めまいや急な血圧低下による立ちくらみなどの副作用(起立性低血圧)が現われることがあります。
α1受容体遮断薬のなかでも、シロドシンの特徴的な副作用として、射精時の精液量が少なくなる「射精障害」があります。
射精障害は勃起障害(ED)ではありません。また健康に害はありません。服用を続けていても1ヵ月以内に元に戻るといわれています。
白内障などの眼科手術を行うことが決定した場合には、必ず眼科医にα1受容体遮断薬を服用していることを伝えてください。理由として、この薬により、手術中に術中虹彩緊張低下症候群(IFIS)が起こりやすくなるからです。IFISが起こると手術がやりづらくなります。ただし、事前に対策を行えばほぼ問題なく手術は可能です。
一般名:タダラフィル(商品名:ザルティア)
【作用】
前立腺や膀胱、尿道にかけて存在するPDE5(ホスホジエステラーゼ5)と呼ばれる酵素を阻害します。それにより、尿路の血管を広げ血流をよくしたり、膀胱や前立腺の筋肉の緊張を緩めたりして排尿トラブルを改善する薬です。
【特徴】
前立腺肥大症治療薬の第一選択薬として使用される頻度が増えています。効果はα1受容体遮断薬とほぼ同等と考えられています。
頻尿にも効果があり、排出障害と頻尿を有する患者にはよい選択肢になります。
【禁忌】
狭心症で使用する硝酸薬(硝酸イソソルビド、ニトログリセリン、ニコランジルなど)と併用すると過度に血圧が低下するため一緒に服用できません。
【副作用】
頭痛、消化不良(胸焼け)などの副作用が起こることがあります。また、物が見えにくかったり、めまい等を起こすことがあるので、車の運転や高いところでの作業には注意してください。
一般名:デュタステリド(商品名:アボルブ)
【作用】
5α還元酵素を阻害して、前立腺肥大に関わる男性ホルモン(ジヒドロテストステロン)が産生されるのを抑えます。それにより、肥大した前立腺を小さくして排尿障害を改善する薬です。
【特徴】
α1遮断薬やPDE5阻害薬とは異なり、肥大した前立腺そのものを小さくします。即効性がないため、α1受容体遮断薬やPDE5阻害薬と併用することが多いです。
この薬は、服用開始6ヵ月後よりPSA値を約50%減少させます。「PSA(前立腺特異抗原)検査」は、前立腺がんの腫瘍マーカーです。
PSA検査を行う際は、デュタステリドを服用中であることを必ず医師に伝えてください。服用中であっても、PSA検査を通常通り行うことは可能ですが、結果に関しては、測定値を2倍した値を目安にします。
【副作用】
ホルモン関連の副作用があらわれます。「勃起不全」、「性欲(リビドー)減退」、「乳房障害(女性化乳房、乳頭痛、乳房痛、乳房不快感)」などが起こることがあります。


【作用】
膀胱のムスカリン受容体を遮断することで、膀胱の過剰な収縮を抑制し、膀胱に尿を貯めやすくすることで、尿の回数が多い、尿意を強く感じる、尿が無意識に出てしまう等の症状を改善する薬です。
【特徴】
過活動膀胱の治療における第一選択薬です。飲み薬だけでなく、貼り薬もあります。貼り薬のメリットとしては、抗コリン薬にみられる口渇や便秘などの副作用が少なく、嚥下障害がある患者さんに対しても使用可能です。
【副作用】
口の中が渇く(口内乾燥)、便秘、かすみ目、めまい、眠気などの副作用があらわれることがあります。
膀胱の収縮が抑制されるので、排尿障害が悪化して、排尿困難(尿が出にくい)、尿閉(尿が出なくなる)になることがあります。このような症状があるときには服薬を中止し、医師・薬剤師に連絡してください。
【禁忌】
眼圧上昇のリスクがあるため、一部の緑内障(閉塞隅角緑内障)では禁忌であり、使用はできません。

【作用】
膀胱の筋肉に存在するβ3受容体を刺激して、膀胱の筋肉を緩め、膀胱に尿を貯めやすくすることで、尿の回数が多い、尿意を強く感じる、尿が無意識に出てしまう等の症状を改善する薬です。
【特徴】
抗コリン薬で問題となる口渇や便秘などの副作用もほぼなく、眼圧にも影響しないことから、安全で使いやすい薬です。有効性も抗コリン薬と比較して同等といわれています。
特に高齢の過活動膀胱患者に対しては、抗コリン薬の副作用が問題となるため、β3刺激薬が第一選択として用いられることが多くなっています。
【副作用】
稀ですが、重大な副作用として尿閉が起こることがあります。
排尿障害治療薬について、もっと知りたいことや、困っていること、そのほかにもこんな薬剤の記事が見たいなどがあればコメントしてください!
これは役立つぞ!とか現場と違うんだけど…というコメントも大歓迎です。
今回の内容はレバウェル看護公式Instagramにてイラストで簡単に解説しています。投稿はコチラ!
▼連載はバナーをTAP!
熊本大学薬学部を卒業後、2003年より地元・鹿児島県種子島の薬局に就職。その後、2009年より現職。
各地での講演会やセミナーを多数行っており、最近はYouTubeでオリジナル講義「かんたん薬理学」を精力的に配信している。日経DIクイズの執筆者、薬剤師教育動画「描いてつかむ! 副作用の薬理学」出演などの経験を持つ。
記事の制作について
「レバウェル看護 看護師さん向けお役立ち情報」では、
記事の制作・公開にあたってのポリシーを定めています。
詳細は下記よりご確認いただけます。
看護師から寄せられる“よくある質問”
Q. 現役看護師が一番稼げる科はどこ?
一般的に、高度な医療を提供する診療科や収益の多い診療科・クリニックは、高収入を得られる傾向にあります。病院だと救急救命科やICU(集中治療室)など、クリニックでは美容クリニックや人工透析クリニックなどが挙げられます。「看護師が一番稼げる科はどこ?高年収のクリニック・病院や転職のポイント」では、看護師が稼げる科を、詳しく解説しています。規模別の平均給与や、高収入な職場へ転職する際のポイントも紹介しているので、求人探しの参考にしてください。
Q. 看護師がのんびり働ける勤務先は?
病院であれば緊急対応や体力を消耗する業務が少ない外来や回復期・慢性期病棟。病院の外来やクリニックであれば重症患者の処置が少ない診療科は比較的落ち着いた環境といえるでしょう。自身のペースを大事に働きたい方は、現職の悩みを解決できるような環境・働き方を選ぶことがポイントです。「のんびり働きたい看護師向け!おすすめの職場や病院以外の仕事を紹介」では、のんびり働ける勤務先の条件や、おすすめの職場・診療科、のんびり働ける仕事のメリットやデメリットも解説しています。職場探しの参考にしてください。
Q. 看護師1年目で転職しても大丈夫?
1年目であっても転職は可能です。新卒として入職後3年以内に転職する「第ニ新卒」を歓迎する求人も多数出ている状況です。心身に不調がある場合や、職場でハラスメント・法律違反が横行している場合は、無理せず環境を変えたほうが安心です。「看護師1年目で転職しても大丈夫。病院以外の職場や好印象の退職理由を紹介」では1年目の看護師が転職したくなる理由や、仕事が辛いときの対処法、 おすすめの職場などをまとめています。新人看護師が転職に成功するコツや退職の際の注意点も解説しているので、参考にしてみてください。
Q. お礼奉公中でも転職は可能?
お礼奉公の途中でも、看護師が仕事を辞めることは可能ですが、途中で退職してトラブルに繋がるケースもあるので、辞める場合は注意が必要です。「お礼奉公中だけど辞めたい看護師へ!奨学金に関する疑問に答えます」では、「お礼奉公中の看護師は仕事を辞めても良いか」「途中で辞めると奨学金の支払いはどうなるのか」といった疑問や不安にお答えしています。また、奨学金の一括返済を求められたときや、退職を拒まれたときの対処法についてもご紹介しているので、お礼奉公がネックで前に進めずにいる方は、ぜひ参考にしてください。
キャリア
働く場所
選考対策
資格
その他
読みもの
連載
コメントはありません