うつ病に使用する「抗うつ薬」の使い分けポイントを薬剤師が解説!

「薬の使い分けBOOK」では、看護師さんが気になる薬の使い分け方法について、薬剤師の笹川大介が解説します。

本記事は、抗うつ薬についてまとめました。作用・副作用に加えて特徴も記載していますので、ぜひ参考にしてください。

この記事を書いた人
笹川大介(ササガワダイスケ)
薬剤師、株式会社ゆかりファーマシー取締役

熊本大学薬学部を卒業後、2003年より地元・鹿児島県種子島の薬局に就職。その後、2009年より現職。

各地での講演会やセミナーを多数行っており、最近はYouTubeでオリジナル講義「かんたん薬理学」を精力的に配信している。日経DIクイズの執筆者、薬剤師教育動画「描いてつかむ! 副作用の薬理学」出演などの経験を持つ。

※1※2 調査方法:インターネット調査/調査期間:2024年2月7日~2月13日/調査概要:「看護師転職サイト」を対象としたユーザー満足度調査/調査対象:男女、全国、看護師・准看護師資格保有者かつ対象看護師転職サイト利用経験者、20~29歳 107s(※1)、20~34歳 175s(※2)/調査実施:株式会社エクスクリエ/比較対象サービス:「看護師転職サイト」主要10サービス(専用サイトのあるサービスのみ・求人結果の表示ページは除く)

うつ病とは

精神的なエネルギーが不足した状態で、強い落ち込みが長く続きます。何ごとにも興味が持てなくなり、むなしさを感じます。

睡眠障害や食欲低下などの身体症状も現れます。うつ病が重くなると、自分を責めて、自殺を図る危険もあります。

そのため、早期発見をして適切な治療を受けることが重要です。

抗うつ薬の使い分けについて

「うつ病・うつ状態」が起きるメカニズムは未だ解明されていませんが、
脳内の神経伝達物質のバランスが崩れることが関係しているのではないかと考えられています。

脳内では、セロトニンやノルアドレナリンといった神経伝達物質が、神経
細胞から出て別の神経細胞の表面にある受容体にくっつくことで情報を伝達していますが、その後またもとの神経細胞に取り込まれます(再取り込み)。

うつ病のさまざまな症状は、脳の中で気分や意欲に関わる働きをするセロトニンやノルアドレナリンが減ってしまうことで起こると考えられています。うつ病の人では、放出される神経伝達物質が少なくなっており、再取り込みをされることでますます少なくなるからです。

抗うつ薬は、これらの神経伝達物質を増やすことで神経伝達を強化し、うつ病の症状を改善します。

かつては三環系抗うつ薬と呼ばれる種類の薬が使用されていましたが、副作用の問題などから、現在では新規抗うつ薬と呼ばれるSSRI、SNRI、NaSSA(ナッサ)が第一選択薬として使用されています。

抗うつ薬は、一般的に少量から始めて徐々に増やしていきます。これは、治療に最適な服用量になるように調節したり、副作用を軽減したりするためです。抗うつ薬は飲み始めてから効果があらわれるまでに2〜4週間ほどかかります。

「効果がない」と患者が自己判断で服用を中止しないよう、治療に時間がかかることを事前に伝える必要があります。

それでは、これらの新規抗うつ薬の使い分けを、新薬であるS-RIMも含めて具体的にみていきましょう。

うつ病に主に使用される薬

分類名:SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)

  • 一般名:パロキセチン(商品名:パキシルCR)
  • 一般名:フルボキサミン(商品名:デプロメール・ルボックス)
  • 一般名:セルトラリン(商品名:ジェイゾロフト)
  • 一般名:エスシタロプラム(商品名:レクサプロ)
   

【作用】
神経細胞へのセロトニンの再取り込みを防ぐことで、セロトニンを増やして、うつ病の症状を改善する薬です。

【特徴】
脳内でセロトニンは、主に精神の安定に関与しています。そのため、SSRIは特に不安や落ち込みが目立つ場合によく処方されます。

薬によっては、不安と関係する病気であるパニック障害や社会不安障害、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などに使用される場合もあります。

【副作用】
薬の飲み始めに、食欲不振や吐き気、腹痛、下痢などの消化器系の副作用があらわれることがあります。

また、離脱症候群に注意が必要です。1ヵ月以上薬を服用した後に、突然中止、または急に減量したときに生じる症状です。不眠、嘔気・嘔吐、焦燥、頭痛などが起こります。特にパロキセチンで生じやすいとされています。

分類名:SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)

  • 一般名:ミルナシプラン(商品名:トレドミン)
  • 一般名:デュロキセチン(商品名:サインバルタ)
  • 一般名:ベンラファキシン(商品名:イフェクサーSR)
  

【作用】
神経細胞へのセロトニンとノルアドレナリンの再取り込みを防ぐことで、セロトニンとノルアドレナリンを増やして、うつ病の症状を改善する薬です。

【特徴】
脳内でノルアドレナリンは、主に意欲上昇に関与しています。SNRIはセロトニンおよびノルアドレナリン両方の働きを強めるため、SSRIの効果に意欲向上が加わります。そのため、SNRIは意欲低下が目立つ場合によく処方されます。

またSNRIのデュロキセチンは痛みに対しても適応があるため、痛みを伴ううつ病には第一選択となりうる薬です。

3か月以上続く痛みを慢性疼痛と呼びます。慢性疼痛を持つ患者さんには、抑うつ症状が多く見られます。また、抑うつ症状が痛みを引き起こし、痛みが慢性化する場合があることも分かっています。

【副作用】
飲み始めに吐き気やめまいといった副作用が出ることがあります。

分類名:NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)

一般名:ミルタザピン(商品名:リフレックス・レメロン)

 

【作用】
神経細胞からのセロトニンやノルアドレナリンの放出を促進して、ノルアドレナリン・セロトニンを増やすことで、うつ病の症状を改善する薬です。

【特徴】
SSRI、SNRIと比較して、効果発現が早く、強力な抗うつ作用があります。

食欲を増進させる作用があり、吐き気などの胃腸障害が少ないのが特徴です。また、眠気が強く出るため、食欲低下や不眠が目立つ場合によく処方されます。高齢者のうつ病は食欲低下や不眠が強いため、この薬が選択されるケースが多いです。

【副作用】
眠くなる、口が渇く、体がだるくなる、体重が増えるなどの症状があらわれることがあります。

分類名:S-RIM(セロトニン再取り込み阻害・セロトニン受容体調節薬)

一般名:ボルチオキセチン(商品名:トリンテリックス)

【作用】
セロトニンの再取り込みを阻害する作用と、セロトニンの受容体を調節する作用により、セロトニンのみならず、ノルアドレナリン、ドパミン、アセチルコリン、ヒスタミンなどの放出を促進して、うつ病の症状を改善する薬です。

【特徴】
現段階(2025年4月)で日本で一番新しく発売された抗うつ薬です。セロトニン、ノルアドレナリン以外の神経伝達物質にも関与することで、幅広い抗うつ効果が期待されます。脳卒中、認知症におけるうつ状態への効果も期待されます。

また、ほかの抗うつ薬で問題となる離脱症候群や性機能障害といった副作用が少ないことも特徴の1つです。

ボルチオキセチンは海外の臨床試験において、うつ病における認知機能障害(集中力・思考力の低下など)の改善効果も認められています。

【副作用】
吐き気や眠気などが生じることがあります。吐き気以外の副作用は他剤よりも少ないです。  

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さいごに

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プロデュース
看護師のかげ
看護師、イラストレーター。病棟で働きながら医療・看護に関するコンテンツをさまざまな媒体で発表している。 保健師、呼吸療法認定士、終末期ケア専門士。著書に「看護が苦手なかげさんのイラスト看護帖」(永岡書店)ほか。X:@877_727、Instagram:@877_727
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笹川大介(ササガワダイスケ)
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