「看護師なら食いっぱぐれないし、稼げるはず」と思っていたのに、転職を4回繰り返してきた18年目の私の給与は、3~4年目のときとほぼ同じ。
実は、看護師の給与は「経験年数」がそのまま反映されるわけではなく、働く場所の「規模」や「法人」によって年収に100万円以上の差がつくことも。
看護師兼ライターの白石弓夏です。今回、看護師転職とお金の専門家であるきたじーさんに、誰も教えてくれない「看護師の給与のリアル」を相談してみました(※本記事はシリーズ第2回ですが、単独でもお読みいただけます)。
本記事のテーマは「看護師の給与の仕組みと年収幅」です。
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プロフィール
きたじー
看護師転職とお金の専門家。元医療系転職エージェントとして10年以上、2,000件以上の看護師の相談に乗ってきた。FP(ファイナンシャルプランナー)・キャリアコンサルタントの資格を持ち、家計や保険・資産運用から転職・キャリアまで、看護師の人生をトータルでサポート。著書に『看護師が転職を考えたらはじめに読む本』。
白石弓夏
看護師兼ライター。看護師歴17年以上。小児科、整形外科、派遣など多様な現場を経験。現在は整形外科病棟で非常勤として勤務しながら、ライターとして活動して8年以上。最近の楽しみは、仕事終わりのお酒と推しとまんが、それと美味しいごはんを食べること。著書に『Letters~今を生きる「看護」の話を聞こう~』。
※1※2 調査方法:インターネット調査/調査期間:2024年2月7日~2月13日/調査概要:「看護師転職サイト」を対象としたユーザー満足度調査/調査対象:男女、全国、看護師・准看護師資格保有者かつ対象看護師転職サイト利用経験者、20~29歳 107s(※1)、20~34歳 175s(※2)/調査実施:株式会社エクスクリエ/比較対象サービス:「看護師転職サイト」主要10サービス(専用サイトのあるサービスのみ・求人結果の表示ページは除く)
18年目で年収450万円。給与は規模と法人次第
白石弓夏 
今日はズバリ年収の話を聞きたいんです。
私、少し前まで都内個人病院の整形外科で非常勤として勤めていたんですが、もし常勤になったとしても、年収は450万円、多くても500万円に届かないくらいなんです。
でも、総合病院・夜勤ありで働いていた5〜6年目のときで、すでに500万円近くもらっていたんですよ。
看護師歴18年目になっても年収が上がらないのって、転職回数が多いからなんでしょうか?
きたじー 
結論から言うと、看護師の給与って「病床規模」と「どういう法人か」でだいたい決まっちゃうわけなんですよ。
たとえば、100〜200床くらいの民間の個人病院やと、給与レンジは年収500万円くらいが相場。
一方で、大学病院や大きい法人(特に都市部)ならもっと上が見込めますけど、そういうところは若手の採用が優先だったり、中途採用でも30代前半まで、みたいなケースが多い。
きたじー 
つまり、年収600〜700万円クラスを狙いたいなら、30代前半までにある程度のキャリアを築いていないと、まず届かない「ハードモード」に入っちゃうことが多いです。
もちろん、30代後半以降でも管理職として入職するとか、インセンティブのある訪問看護でバリバリ稼ぐ道はあります。
でもそれは、「ポチッと求人応募して年収アップ」みたいな簡単な話じゃなくて、自分のスキル・経験で勝ち取りに行く相当な努力が必要になるってことです。
白石弓夏 
でも求人サイトで「月給40万円!」みたいな高給与を謳うところもありますよね。
ああいうのを見ると、まず怪しいと思っちゃうんですけど……。
きたじー 
もちろん、そういう高給与の求人はありますよ。
ただ、ずっと出ている求人は比較的人が辞めやすい環境だったり、給与は高いけど休みが少ないとかは全然ある。
あと、「20時間分の固定残業代含む」みたいな求人で、「固定残業」を理解しないまま入ると、あとで「基本給だけで見ると安くない?」と気付いたり。
それに、そういう職場って忙しい場合が多いですからね。
きたじー 
そもそも考えないといけないのは、「そこまでの給与額面がほんまにいるのか?」ってことなんです。
無理に激務で給与を上げるより、実は「支出」を見直すだけでお金の不安が解消されることも多い。
このあたりは、次回の「貯金と将来設計」のテーマで詳しくお話ししますね。
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「若き日の年収の残像」と転職の現実
白石弓夏 
確かに……なんとなく「年収500万円」が目標になっていたりしますけど、本当に必要な手取りで考えるとまた違いますよね。
きたじー 
みんなそうなんですけど、「若き日の年収の残像」をずっと追いかけているんですよ。
きたじー 
「あのときはこんなにもらえたのに、なんで今、私こんだけしかもらえないの」っていう憤りを持っているんですよね。
20代で総合病院で夜勤バリバリやっていた頃の給与が基準になっているんです。
特に、ずっと給与の高い法人で働いていて、前の職場も給与が高かった、その前も高かった……って方は要注意ですよ。生活水準がそこベースになっちゃっているから、転職で給与が下がることを受け入れられない。
白石弓夏 
ちなみに、転職するときって、経験年数が給与に反映(経験加算)されるものですか?
きたじー 
職場によりますね。ちゃんと反映される病院もあれば、満額では評価されないところもあって。
たとえば看護師5年目だとして、転職先では「うちの給与レンジでいうと2年目さんと同じ給与です」って言われたり、地域によっては加算幅が小さくて、「経歴や実務経験は半分しか見ません」ってところもあったり。
白石弓夏 
そんなことが……。
きたじー 
ラダー制度と賃金評価がリンクしてない病院も多いし、結局は法人に依存しちゃう。
「どこで働くか」次第で決まるっていうのが現実やから、つらいですよね。
みんな現場であんなに必死に頑張ってるのに、もっと評価されるべきやと僕は思います。
働く場所で変わる生涯年収──知っておきたい給与レンジ
白石弓夏 
働く場所で変わる年収幅として、「急性期病院」と「個人病院」などで働き続けると、どれくらい差が出るものなんですか?
きたじー 
たとえば、国公立の急性期病院で10年働いたとしたら、残業代込みですけど年収600~650万円ぐらいは普通やと思います。
700万円に届く方もそれなりにいる。
これ、管理職じゃなくてもいくんですよ。
白石弓夏 
えええ! 管理職じゃなくて700万円!?
きたじー 
なんでなのって。答えは簡単なんですよ。
新卒からずっと同じ大きな法人にいるから。
一方で、個人病院やと、やっぱり500〜550万円ぐらいで止まりますよね。賃金表がそれ以上ないっていうパターンもあるので。
白石弓夏 
耳が痛い……。ちなみに、慢性期や施設、訪問看護はどうなんでしょう?
きたじー 
慢性期病院は、関東やと450〜550万円ぐらいまでがレンジ。老健や特養もほぼイコールぐらいですね。
訪問看護は、大手やと500万円ぐらい出るのが当たり前、一般的なところやったら400〜450万円ぐらいが適正ですよね。
白石弓夏 
クリニックはどうなんですか?
きたじー 
クリニックは美容も含めるとピンキリで、たとえば美容だとインセンティブもあって450万〜600万円くらい。
あとクリニックにありがちなのが、院長の采配で給与が決まる職場で、開業時からいる職員のほうが給与高くなる傾向がありますね。
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給与を上げるには?管理職・退職金・副業という選択肢
白石弓夏 
目先の給与だけでなく、5年後10年後に年収を上げていきたい場合、たとえばどういうキャリアパスがあるんでしょうか?
きたじー 
「長く働いたらたくさん給与のもらえるところで、できるだけ長く働くしかない」ですよね。
いろんなスキルを取ったとしても、評価がされにくいっていうのが看護師のしんどいところ。なぜなら人事部がないから。看護師個々の働きぶりやスキルを評価して、給与や昇給に反映する仕組みが整ってなかったり、そもそも評価するのが難しかったりするのが原因なんです。
「長く働く」でいうと、給与もですが、自分が無理なく続けられる環境・働き方か?もポイントです。
きたじー 
あとは、給与以外で補う意識も必要ですよね。住宅手当などの福利厚生や、ちゃんと退職金が出るかとか。たとえば最近だと企業型DC(企業型確定拠出年金)制度があるかもひとつポイントに。
そういうものがあると、老後の資金は増やせる可能性が全然あるので。あとは「副業OKか」でプラスアルファを狙うのもアリかなと。
白石弓夏 
認定看護師や専門看護師の資格を取ったり、管理職を目指すのはどうですか?
きたじー 
認定・専門に関しては、手当が出るならもちろんメリットは大きいですよね。
ただ、だいたい半分くらいは手当ナシっていうのが現実ですし、資格を取った結果職場に評価されて給与が上がるという流れなので、「給与を上げるためだけ」に取りに行くと、思ってたのと違うってなりかねない。
看護を究める「武士」みたいなもんですから、自分の流儀を究めていきたいなら全然いいと思います。
きたじー 
もちろん、「管理職」を目指すっていうのも1つの手段やと。
「人をマネジメントできる」と、一定の給与は取れるんですよ。業務や責任が増えるからやりたくない方もいるとは思うんですが、やっぱり手当が付くし、自分で職場環境を改善できる可能性だってある。
中間管理職以上はどこも人が足りないって困っているから、転職もしやすいし、重宝されますよ。
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企業転職は「給与アップ」の道になるのか?
白石弓夏 
ちなみに年収を上げるための転職として、一般企業で働くみたいなケースはどうなんですか?
きたじー 
一般企業だと、だいたいが総合職入社じゃないので、どうしても給与の頭打ちはありますね……。あくまで「専門職(特殊人材)」としての扱いになりやすいので。
産業保健師で企業に入っても、将来の幹部候補である総合職とは給与レンジが全然違うんです。同じ会社・同じ大卒でも、そこは「別の職種」として明確に区別されているのが現実なんですよね。
きたじー 
医療機器メーカーの研究開発職とかやったら高給与取れるケースはあると思うんですけど、狭き門ですよね……。
ベテランになって、「やっぱり給与上げたいから企業に行きたい」って、時すでに遅し。企業に行きたいなら、早く挑んだほうがいいと思います。
白石弓夏 
今日はかなり厳しい現実を突きつけられましたね(笑)。
安易に転職を繰り返して条件を落としてしまうと生涯年収が下がることや、法人による給与レンジの圧倒的な差……。
私、5~6年目のときの給与をなんとなく目標にしていたんですが、それって完全に「若き日の残像」だったんですね(遠い目)。
白石弓夏 
給与を上げる近道はなく、結局は「長く働ける良い職場」を見つけて、そこでキャリアを積み上げることが一番の正攻法なんだと痛感しました。
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看護師の仕事を長く続けるには?コツや職場探しのポイントを紹介
今回のポイント
- 看護師の給与は「規模と法人」で決まりやすい
- 高給与を狙うなら30代前半までに大手・公立に入り、長く勤めるのが最強かも?!
- 「若き日の夜勤バリバリ年収」を基準にしない。ライフステージに合わせた給与と支出のバランスを
- 転職で経験年数が給与に反映されない職場もある
- 認定・専門資格は看護を究める「武士の道」。給与アップ目的なら長い目でみると「管理職」が有利(重宝される)
- 企業転職は夢を見すぎないこと。専門職採用の給与レンジには限界がある場合が多い
次回は「お金のこと、考えてなかった……」というテーマで、貯金や将来設計についてさらに深掘りしていきます!
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