「もう手遅れ……」そう思っていませんか?
転職回数が多い、貯金が少ない、子育て中で時間がない――。
そんな状況でも、キャリアとお金を立て直すことはできるのでしょうか?
看護師兼ライターの白石弓夏です。まさに今、そんな状況にいる私が、看護師転職とお金の専門家・きたじーさんに「今日から始められる軌道修正の方法」を相談しました。
今回のテーマは「今からできること」。過去は変えられないけれど、未来は変えられる。転職回数が多くても、子育てで制約があっても、具体的にどんなアクションを起こせばいいのか――今日からできるヒントを聞いていきます。
(※本記事はシリーズ第5回ですが、単独でもお読みいただけます)
▼連載の記事一覧
プロフィール
きたじー
看護師転職とお金の専門家。元医療系転職エージェントとして10年以上、2,000件以上の看護師の相談に乗ってきた。FP(ファイナンシャルプランナー)・キャリアコンサルタントの資格を持ち、家計や保険・資産運用から転職・キャリアまで、看護師の人生をトータルでサポート。著書に『看護師が転職を考えたらはじめに読む本』。
白石弓夏
看護師兼ライター。看護師歴17年以上。小児科、整形外科、派遣など多様な現場を経験。現在は整形外科病棟で非常勤として勤務しながら、ライターとして活動して8年以上。最近の楽しみは、仕事終わりのお酒と推しとまんが、それと美味しいごはんを食べること。著書に『Letters~今を生きる「看護」の話を聞こう~』。
※1※2 調査方法:インターネット調査/調査期間:2024年2月7日~2月13日/調査概要:「看護師転職サイト」を対象としたユーザー満足度調査/調査対象:男女、全国、看護師・准看護師資格保有者かつ対象看護師転職サイト利用経験者、20~29歳 107s(※1)、20~34歳 175s(※2)/調査実施:株式会社エクスクリエ/比較対象サービス:「看護師転職サイト」主要10サービス(専用サイトのあるサービスのみ・求人結果の表示ページは除く)
転職回数は変えられないけど、辞めた理由を知れば未来は変わる
白石弓夏 
これまでの回で、私のキャリアやお金の計画の甘さを痛感しました。
でも、4度の転職回数はもう減らせないし…この状況から、少しでもプラスに持っていくにはどうしたらいいんでしょうか?
きたじー 
済んだことは変えられないので、あらためてこれまでのキャリアで「なにを得たのか」「なにを学んだのか」を振り返るんです。
学んだこと、得たものを再認識する……これがめちゃ大事やと思うんですよ。
白石弓夏 
でも、すぐ辞めちゃった職場は、「なんとなく肌に合わなくて辞めました」というのも正直あるんですよね……。
きたじー 
そこが一番大事なんです。
すぐ辞めちゃったところも、理由は何かしらあるはず。それを分析して自己認識したほうがいいと思います。じゃないと繰り返すんですよ、歴史は。
きたじー 
よくあるのが、「前の職場が悪かった(他責)」で終わらせちゃうパターン。
職場って、基本的に看護師が足りてないからみんな良いことしか言わない。それで入ってみたら、思ってたのと違った。これはなぜ起きたのか……自己分析が大事なんですよね。
白石弓夏 
面接の場で話すためというより、まず自分のために、なにが原因で辞めたかをちゃんと洗い出すってことですね!
きたじー 
そうそう。
たとえば「人間関係が合わなかった」なら、どの点が合わなかったのか。「忙しすぎた」なら、業務量なのか、スピードなのか。掘り下げると、次にどんな職場を選べばいいかが見えてくるんです。
きたじー 
結局のところ、どう自責に捉えるか、がめちゃ大事やと思うんですよ。
「あの職場が悪かった」で終わるのが他責。「私はもっと積極的にコミュニケーションを取れたかも」と考えるのが自責。他責だと次も同じ失敗をするけど、自責なら「次はこうしよう」と対策が取れるんです。
きたじー 
上司に挨拶して無視されたときも、「嫌われてる!」じゃなくて「明日はもっと大きな声で挨拶してみよう」と考える。
自分でコントロールできることに目を向けるのが自責思考です。
白石弓夏 
でも…若い看護師さんだと「全部自分が悪い」って考えて、自分を責めすぎちゃう人もいますよね。
きたじー 
それがしんどいんであれば、まずそこを認識して、楽になるような考え方ができるといいですよね。
さっき言った自責思考は「次はこうしよう」って前向きに考えること。でも若手に多いのは「自分はダメだ」って落ち込むだけのパターンで、それは「自己否定」なんですよね。
きたじー 
毎日必死でそんな余裕ないって思うかもしれないけど、「1、2、3年目なんて30年40年と働く中の1、2、3年目やろ。全部ひよこやん」と思ったほうが楽じゃないですか。
きたじー 
他人は変えられなくて、変えられるのは自分だけ。
個人的には自責傾向のほうが簡単は簡単やと思うんですよね。なんでかといえば、自分でコントロールができるから。看護業界でアドラー心理学(人間の悩みは対人関係にあり、自分でコントロールできることに焦点を当てる心理学)が流行ったのも、そういうことでしょ。
他責だと自分でコントロールができないから、いつまでたってもうまくいかずにモヤモヤしちゃう。
きたじー 
雇われて働く以上、自分の気に食わないことは絶対起きるんです。それが嫌なら、偉くなるか、起業するか、組織マネジメントを学ぶかしかない。
でも、自責で考えれば、自分次第でなんとかなるわけですから。
▼関連記事
看護師が仕事を辞める理由とは?伝え方のコツやおすすめの対処法も紹介
子育て中の働き方──派遣、パート、時短常勤の選択
白石弓夏 
今の私は、子育て中で働ける時間に制約があるんですが、働き方の選択肢っていろいろですよね。
どんなことを考えたらいいんでしょうか?
きたじー 
フルタイム常勤、時短常勤、パート、派遣などが考えられますよね。
フルタイム常勤は、収入もキャリアも維持できますが、保育園の預かり時間に合わせるなら延長保育が必要です。夜勤がある場合は、旦那さんや親のサポート、または院内保育の夜間預かりがポイントですね。
きたじー 
時短常勤は、収入とキャリアを維持しやすい反面、現実的には難しい面もあります。
時短勤務でも帰れてない先輩がいたり、リーダーやらされたり。「え、帰んの?」みたいな雰囲気がある職場やと、自分が申し訳なくなってしんどくなることもある(※詳しくは
第4回で)んですよね。
きたじー 
パートは、同じ職場で継続して働く分、人間関係も築きやすいし、時間の融通も聞きやすく、トラブル時の理解も得られやすい。
ただしボーナスは少なめで、昇給もほぼありません。職場によってはパートでも患者の受け持ちやらされたりするので、そこは事前に確認しておきましょう。
きたじー 
派遣は、時給が高いのと、期間を区切って働けるのがメリットですね。
ただ、派遣法で、病院等の医療機関への派遣が許可されているのは産休代替と紹介予定派遣で、それ以外は基本的に在宅や施設が中心になります。施設では医療行為が限られるので、やりたい仕事次第では向かないですよね。
白石弓夏 
あとは、子どもが急に熱出したりして休まないといけないことを考えると、特に派遣で曜日固定とかで入っていると、急な休みを取りにくいこともありますよね。
きたじー 
派遣は確かに難しい面がありますね。パートなら同じ職場で継続している分、理解を得やすいこともあります。
どちらにしても急な休みに理解がありそうな職場かどうかは、事前に確認しといたほうがいいですね。
きたじー 
結局のところ、サポート環境がどれだけあるかで、選べる働き方が変わってくるんですよ。
まず保育園に入れるかどうかが大前提。その上で、病児保育、親御さんや旦那さんにどこまで頼れるかですね。病児保育は自治体によって助成金が出るところもあるので、「〇〇市(区) 病児保育」で検索しておくと安心です。
▼関連記事
看護師が子育てと仕事を両立するには?働き方や夜勤事情、転職のコツも解説
ダブルインカムの落とし穴──夫婦でお金の話をしよう
きたじー 
白石さんの場合、これからお金を貯めていくにあたって避けて通れないのが「旦那さんとの連携」です。看護師さんは、共働きでダブルインカムなことが多いんですけど、意外と貯金できてない家庭が多いんですよ。
白石弓夏 
えっ、なんでですか? 2人で稼いでいるのに?
きたじー 
お互いが必要な分だけ出し合って、あとは好きに使う。世帯年収が高いから大丈夫だろうと、「俺が使っても奥さんが貯めてるだろう」「私が使っても旦那が持ってるだろう」と甘えてしまって……
で、蓋を開けてみたらどっちもお金がなかった、という事例がわりとあるんですよ。
白石弓夏 
あぁ……うちは旦那がしっかり貯金するタイプだけど、私が……(苦笑)。
でも、お互いに「自分の稼いだお金はある程度自由に使いたい」という気持ちもあるじゃないですか。
きたじー 
わかります。特に看護師さんは「激務のストレス発散で自由にお金を使いたい!」という方が多いし、旦那さんも「自立した奥さんだから」と干渉しないことが多いかもしれないですね。
でも、これから教育費や老後資金を貯めるなら、お互いに先取り貯金を共通の口座で貯めていくといいですね。お互いバラバラだと、考え方がズレちゃうので。
白石弓夏 
そもそも2人で話すきっかけがない人もいるかもしれないですね。これまでしてこなかったのに、急に面と向かって、「お金の会議をしましょう」とできるかといえば……。
きたじー 
まずは、外食しながらとか、リラックスできる場で話してみるのもいいですよ。
あとはカードの明細は見るようにするとか、スプレッドシートで収支を共有するとか。堅苦しく考えすぎず、カジュアルに始めるのが続けるコツです。
きたじー 
現状把握するのって、お金を使わないためじゃなくて、「いくらまでなら自由に使っていいよ!」の線引きのためなんです。
「今」も大事なんで、自由に使えるお金を把握して、旅行とか行けたら良いですよね。
きたじー 
それでも難しければ、プロをうまいこと使ってもらったほうがいいです。たとえば、「旦那の保険は旦那がついてる保険屋さんに任せる」ということがあるんですけど、保険は入った側の人がなんかあったとき用に入るもんやのに、それを使う側の人が話を聞いてない。本当は夫婦で一緒に来なあかんと思うんです。
白石弓夏 
そうか、そこでもうズレてるんですね(笑)。
きたじー 
できれば看護師さんを専門で見ているFPさんに相談してみてください。いや、ほんまにね、看護師の年収をしっかり把握しているFPさんはいないんですよ。ずっと良いときの年収が担保できると……厄介なのが、FPもそう思っているし、看護師の本人も思っているから。「看護師はお金持っていて、どこでも働ける」と思ってる方が多いから、そうじゃないんだよって、最初に伝えておかないとですね。
白石弓夏 
過去は変えられないけど、夫婦での「情報共有」と「ルールの見直し」は今日からできますもんね。やってみます!
理想と現実のギャップを埋める──まず収支を把握することから
白石弓夏 
自分の将来を具体的に考えられたとして、そこから「今できること」とのギャップをどう埋めたらいいんでしょうか……。
きたじー 
実際、予算を組んだら大まかにわかりますね。どれぐらいの生活水準で暮らして、◯歳のときにいくら貯蓄ができるか?って。
ただ、難しいのが、旅行とか貯金とかやりたいこともたくさんあるけど、日常も質素にしたくないと言われると、それは看護師かどうか関係なく、厳しいですよね。
きたじー 
ご飯作りたくないから毎日Uber頼みたい、でも毎年パリに1週間行きたいと言われても厳しい。だって、たくさんお菓子食べたいけど20㎏痩せたいですと言われても無理じゃないですか(笑)。
白石弓夏 
確かに(笑)。考えながら、自分の理想とのギャップを見直すということですか。
きたじー 
だから無理にいきなり浪費をピタッと止めると、ストレスが溜まっちゃう。
僕、今まで看護師さんを何千人と見ているんですけど、浪費癖のある人はそもそも収支を把握していないことが多いんです。
きたじー 
キャッシュレスの人やったら、まず利用明細をスクショして、なにに使っているか把握するところから始めましょう。
毎年旅行に行きたいのに、「私、毎月コンビニだけで3万使っているわ」って判明したら、コンビニ入ったとき「いつもお金使ってるから気をつけよう」「そもそもコンビニ行く回数減らそう」って意識が変わるんですよ。
きたじー 
いきなり制限するんじゃなくて、まずは把握が大事って話ですね。
白石弓夏 
無理をすると、どこかでしわ寄せがきますもんね。自然と使っているお金を減らせるのであればそのほうがいいです。
きたじー 
たとえば1ヶ月で5,000円ずつでも節約できれば年間で6万円貯まるわけなので。なにもしてこなかった方は、まずそこからでいいと思うんですよ。あとは、いつまでに何円あったらいいのか。
なにかあって、引っ越しが必要になっても対応できるお金は確保しておくと安心です。
きたじー 
この記事を読んでくれている看護師さんのようにお金のことを不安に思っている方は、案外きっちりしている方のほうが多いんですよ。「大丈夫やろ」という家のほうが本当はやばいので(笑)。
白石弓夏 
ちょっと前のうちだ(笑)。
きたじー 
「いつまで働きたいのか」も含めて、一度考えてみてください。
仕事が好きでずっと働くのももちろんいいと思うんですけど、徐々に「もうちょっと楽したいかも……」って考える人が多いですからね。いつまで最前線でバリバリ働き続けんねんって。
年齢を重ねていくと、体力的にも精神的にもしんどいですし、どうしても限界がありますから。
白石弓夏 
ずっと頑張れるのって、本当に体力も精神力もある、ごく一部の人だけですもんね。
きたじー 
そうそう。だから結婚してるんやったら、旦那さんと意識を合わせておきましょう。
2人でちょっとずつ貯金していけば、意外とお金の計画は平気やったりもしますからね。
▼関連記事
看護師の貯金は1,000万円を目指せる?具体的な貯金額を設定しよう
今回のポイント
- 転職回数は変えられないが、「なぜ辞めたか」を自己分析し、なにを得たかを言語化できれば次に活かせる
- 自責で考える=自分でコントロールできる。他責だとなにも変わらない
- 子育て中の「派遣」は急な休みへの対応が難しい。周辺のサポート環境(病児保育、ファミサポ、親、旦那)を事前に確認しておくと安心
- ダブルインカムの家庭ほど「相手が貯めているだろう」で貯金ゼロになりがち。夫婦で一緒にFPに相談するのがおすすめ
- FPに相談するなら「看護師専門」のFPを。一般的なFPは看護師の給与レンジを理解していないことが多い
- 「毎日Uber+毎年パリ」は無理。まず収支を把握し、なにに使っているかを知ることから。月5,000円削るだけでも年間6万円の差に
次回は最終回、番外編!
看護師が一番気をつけるべき「怪しい投資・副業の罠」について、きたじーさんがぶった切ります!
▼連載の記事一覧
レバウェル看護のPOINT①
職場に求める条件の整理や、自分に合った働き方が叶う職場の提案など、相談からできます。
レバウェル看護のPOINT②
教育体制や忙しさなど職場の様子が事前に分かるので、転職先選びのミスマッチを防げます。
コメントはありません