「この3年は、100%仕事のために生きた」そう語る、看護師の高堀さん。都内大学病院の混合病棟で患者さんと深く関わり、急性期から慢性期まで技術を磨いてきました。
一方で、その志の高さゆえに突発性難聴になるほど心身を削る日々だったそう。
そんな彼女が次のキャリアに選んだのは、現場の外から看護を支える道です。
大きな方向転換に見えますが、そこには、現場を知り、真摯に向き合ってきたからこその覚悟がありました。彼女を突き動かす、とある夢に迫ります。
プロフィール:高堀さん
25歳、社会人4年目。大学卒業後、付属の大学病院で3年間勤務し、救急科や呼吸器外科の患者をメインに、その他消化器外科内科、整形外科、神経内科、などさまざまな疾患患者の急性期から慢性期までの看護を経験。
今後は現場経験を活かして看護師の労働環境改善、医療課題解決に向けた新規事業立案に従事していく予定。趣味はジャーナリングと散歩。
※1※2 調査方法:インターネット調査/調査期間:2024年2月7日~2月13日/調査概要:「看護師転職サイト」を対象としたユーザー満足度調査/調査対象:男女、全国、看護師・准看護師資格保有者かつ対象看護師転職サイト利用経験者、20~29歳 107s(※1)、20~34歳 175s(※2)/調査実施:株式会社エクスクリエ/比較対象サービス:「看護師転職サイト」主要10サービス(専用サイトのあるサービスのみ・求人結果の表示ページは除く)
看護師を目指した原点はアメリカ生活
編集部 
高堀さんは、都内の大学病院に勤務されてもうすぐ丸3年とのこと。
そして近々、転職を予定されているそうですね。
高堀 
はい。この3年間大学病院で働く中で、看護師の労働環境に課題を感じまして…
次は現場から少し視点を変えて、訪問看護・訪問診療を展開する医療法人の本部で働く予定です。
編集部 
大きなキャリアチェンジですね。
その「労働環境の課題」についてはのちほど詳しく伺うとして、まずは高堀さんの原点を聞いてみたく。
少し遡るのですが、どうして看護師を目指されたのでしょうか?
高堀 
小中学生のうち6年をアメリカで過ごしたこともあり、昔は国連職員に憧れていたんですね。
ただ、国連職員への道が書かれている書籍を読んだ母親から「語学以外にも専門性を持っておかないと通用しないと思うよ」と助言をもらって。やっぱり需要があるのは医療かなと思ったんです。
その中でも、「医師は病気を診る。看護師は人を看る」という言葉に惹かれ、看護師を目指すようになりました。
アメリカで過ごした時期。
患者ではなく人間として。2人で号泣した夜勤
編集部 
人を看る、素敵な言葉ですね。
実際に大学病院で看護師として働かれて3年、多忙な業務のなかで、その言葉は根底にあり続けたのでしょうか?
高堀 
そうですね。この3年間、「患者ではなく人間として接する」という譲れない信念を持って働いてきました。
混合病棟(救急科と呼吸器外科)と、後方床で働いてきたのですが、病院って常に一定の温度と湿度で管理された無機質な空間じゃないですか。
4床部屋の廊下側のベッドに寝たきりだと、外を見れないし、雨も風も光も感じられない…。
だからどんなに業務が逼迫していても、リハビリを兼ねて車椅子で陽の光を浴びて気分転換していただく、みたいなことを心がけていました。
編集部 
ここまでお話を伺う中で、すごく高堀さんのエネルギーを感じており…高堀さんに救われた患者さんは多かったのだろうなと想像できます。
これまでの患者さんとの関わりの中で、特に印象に残っていることはありますか?
高堀 
ある夜勤での出来事で。70歳の患者さんが、輸血し続けないと生きていけない状態になったときに、「私はもうこのまま死にたい」と言われたんです。
病院としては安楽死は認められないけれど、本人が輸血に同意しないことはできる。
でも、その方はやっぱり死への葛藤を強く持ってらっしゃるようにも見えて。「このままでは、この人らしく生きていけないかも。話を聞かなきゃ」と思ったんです。
それで、消灯後に3時間寄り添って、その方の人生を一緒に振り返りました。70年間でできたこと、もっとやりたかったこと。「私は○○さんに死んでほしくないよ。だって、ここまで頑張ったじゃん」と伝えて、最後は2人で号泣しましたね。
その2日後に旅立って行かれて…
ショッキングな体験ではあるんですけど、最期に関われたのは、自分にとって大きなやりがいでした。
編集部 
高堀さんならではの関わりですね…!
夜勤で3時間お話を聞く、多忙な中で難しい部分もあったかと思うのですが、どのように叶えたのでしょう?
高堀 
まさにその通りで、リーダーの先輩も本当に優しくて…
最低限自分の患者さんを回って消灯してから、「ちょっと話を聞きたいので」と、みんなに業務調整してもらってできたことですね。
看護師時代の様子。1年目はまとめて必要物品を用意することが苦手で、よく置き場を行ったり来たりしていました。
100%仕事だった3年、向き合い続けた先の壁
編集部 
大学病院の混合病棟と後方床とのことで、かなり忙しい環境だったかと思うのですが、そこならではの難しさを聞いてみたいです。
高堀 
「後方床」は、ICUやHCUでの治療を終えた直後の、まだまだ状態が不安定でリスクが高い患者さんを受け入れる場所です。7:1看護で、救急科、呼吸器外科、整形外科…など、幅広い疾患の患者さんをみます。
混合病棟で、初めて担当する疾患のケースが次々と送り込まれてくるので、どれだけ勉強を重ねても知識と技術を定着させるのが本当に難しくて。
大学病院なので重症度も高く、聞いたことのない疾患や、調べてもすぐに答えが分からないこともたくさんありました。
国家試験勉強のために作った神経系のイラスト。意外と看護師時代も見返すことがあり、捨てなくてよかった!と思った1冊です。
高堀 
あとは、異常に対するプレッシャーと常に隣り合わせでした。
具体例を挙げると、1年目のとき、寝たきりの患者さんが唇をムニュムニュと動かしているのを見たんです。
私はそれを「この人の癖なんだろうな」と思っていたのですが……先輩から「これはてんかん発作だよ!」と厳しく指導されて。
そんなふうに、「自分が見逃した小さな異常が一大事に繋がってしまうかもしれない」というプレッシャーを、日々強く感じていました。
編集部 
先ほどお話いただいたようなやりがいがありつつも、心身の消耗も大きかったのではないでしょうか。
高堀 
そうですね。もう、100パーセント仕事のために生きた3年間という感じで(笑)。
病院から徒歩10秒の寮に住んでいたこともあって、寝ても覚めても仕事のことばかり…。
家に帰っても「私、あの記録ちゃんと書いたかな?」「あの薬、確実に渡したっけ?」と頭の中がぐるぐるして…2年目の秋には突発性難聴になってしまって。
編集部 
ええっ……!
高堀 
普段ナースコールやアラームなど鮮明で高い音が多いから気づかなかったけど、確かにざわざわしている場所だと「あれ、聞こえてないかもな」と(笑)。
私だけでなく、同期や後輩にもメンタルを崩して辞めていく子がいました。
やりがいのある素晴らしい仕事なのに、「どうしてみんながこんなにすり減ってしまうんだろう?」と。
そこで、個人の頑張りだけではどうしようもない、構造的な課題があるのではと感じたんです。
「5年後にワクワクするか?」で決めた次のキャリア
編集部 
大学病院という最先端の場で3年向き合ったからこそ、痛感されたのですね…。
そこから、転職を決めた背景を改めて教えていただけますか?
高堀 
看護師の労働環境を改善したいな…と思い、訪問看護・訪問診療を展開する医療法人の本部への転職を決めました。
実は大学入学当初から、「自分を含めてみんながこの世から離れるときに『あぁ、自分の人生悪くなかったな」と肯定して亡くなる世の中にしたい』という夢があるんです。
そのためには医療を受ける側も提供する側も幸せになれる「持続可能な日本」を作っていきたくて。
労働環境やシステム面に働きかけたいと思い、今回行動に移した流れになります。
編集部 
元々の夢に繋がるということですね…!素敵です。
患者さんとの関わりや、100パーセント仕事のための3年間だったという話を聞いて、看護への思いは人一倍強い方なのだろうなと感じています。
同じ業界とはいえ、本部に行かれるということで、現場を離れることに迷いはなかったのでしょうか?
高堀 
そうですね…。次は後輩指導にも携わりたいと思って準備していたので、このまま現場に残るか、新しい道へ進むかはギリギリまで悩みました。
最後は「1年後、5年後の自分を想像したとき、どちらの道に進むほうがワクワクするか?」と考えて決めました。
編集部 
確かに何かの選択に迷ったとき、「どちらがワクワクするか」というのは目安になりますよね。
次の訪問看護・訪問診療の医療法人本部では、どんなお仕事をされるのでしょうか?
高堀 
まだ具体的な業務は決まっていないですが、IT化やAI活用などを進めることで、看護師が本来のケアに注力できるような環境を作っていきたいです。
編集部 
高堀さんのやりたいことが叶いそうなキャリア選択ですね…!
編集)高堀さんの高い言語化力の裏側を聞いてみると、5年日記を継続して書いているのだとか。
キャリアに悩む看護師さんへ。努力し続けた自分を誇りに。
編集部 
今キャリアに悩んでいる看護師さんに伝えたいことがあれば、メッセージをお願いしたいです。
高堀 
何よりも、健康と夢を大事にしてほしいです。
目まぐるしい日々の中で考えるのは難しいですが、もし今の場所でもやもやしているなら一度立ち止まってその原因、解決方法を考えてみてほしい。
「看護師になりたい」と願い努力し続けてきた自分を誇りに思って、長く、健康に働いてほしい。そう、心から願っています。
編集部 
高堀さん、貴重なお話をありがとうございました!
3年間、激務の中で患者さんとの関わりを大切にし、走り続けてきた高堀さん。
長く、健康に働くことというのは、どの職場にいても重要で、そのために必要な環境は人によってさまざまかと思います。
高堀さんが話してくれた「今の職場へのもやもや」を感じる瞬間は、業務内容、人間関係、収入、働く時間など多くの要素が噛み合っていることも多いですよね。
「レバウェル看護」は、単なる求人紹介ではなく、ご希望やこれまでのご経験から、あなたに合った次のキャリアを一緒に考えてご提案いたします。
たとえば「収入に不満があったけど、本当に必要なのは人間関係の改善だった」「寧ろ今の職場でもう少し経験を積んだほうが自分のためになる」など、プロの第三者がヒアリングすることで見えてくる視点もあるはずです。
条件があまり決まっていなくても、そもそも転職するか迷っている状態でも大丈夫です。何かを変えたい…と悩んだときは、まずはお気軽にご相談ください。
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この記事を書いた人
「レバウェル看護」は累計利用者数47万人(※)を超える看護師専門の転職支援サービス。 編集部の制作体制には看護師経験者や現役看護師を交え、これまでに1,000記事以上(※)を執筆。 看護師にとっての悩み・不安・疑問を一番に相談する”相談窓口”になることを目指し、医療・介護の現場で尽力している方々をサポートするためのコンテンツを発信中。
(※)2023年6月時点
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