
気胸は突然発症する肺疾患です。健康な人に突然発症することもあり、身体的な苦痛だけでなく、精神的な動揺や不安も大きいことが考えられます。看護師には、気胸の病態や治療について理解したうえで、患者さんの苦痛や不安を和らげるケアが求められます。
本記事では、気胸に関する基礎知識や看護のポイントと看護計画について解説しています。
気胸の看護ケアに不安がある人はぜひ最後までお読みください。

気胸とは、何らかの原因で胸膜が破れ、肺から胸腔内に空気が漏れて、肺が部分的にあるいは完全につぶれてしまう状態のことです。病名ではなく、「状態」のことを指します。

肺はゴム風船のような性質をもち、吸気時に膨らんで呼気時にしぼみます。この肺の動きは胸腔内圧※の変化によってコントロールされています。
※胸腔内圧:胸腔の中にかかっている圧力のこと。胸腔とは、横隔膜と胸郭からなる、肺や心臓を包んでいる空間のこと。
胸腔内圧は陰圧に保たれ、肺を外側へ引っ張る力が常に働いています。吸気時には胸腔内圧がさらに低下する(=肺を外側に引っ張る力がより一層強くなる)ため、肺が十分に膨らみ、必要な空気を取り込むことができます。呼気時には胸腔内圧は多少高くなりますが(=肺を引っ張る力が弱まる)、陰圧が完全に無くなるわけではないため肺がつぶれることはありません。
しかし、胸膜に穴が開いて空気が肺から胸腔内へ漏れてしまうと胸腔は陰圧を保つことができなくなり、肺は膨らむことができなくなります。この状態が、気胸です。
胸膜に穴が開く主な原因は、「ブラ」「ブレブ」と呼ばれる肺嚢胞の破裂です。ブラ、ブレブは肺尖部にできやすい内部に過剰に空気が溜まった嚢胞のことで、若く長身で痩せた男性にできやすいとされています。中が空洞であるため、表面が破れるとそこから空気が抜け出してしまいます。
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気胸には、自然気胸、外傷性気胸、医原性気胸の3種類があります。
気胸の中で最も頻度が高いのが、自然気胸です。自然気胸はさらに特発性自然気胸と続発性自然気胸に分けられます。
肺に基礎疾患がない人に発症した自然気胸のことを、特発性自然気胸とよびます。ブラやブレブの破裂によって臓側胸膜※が破れることが原因で、10~20代の若く背の高い、瘦せ型の男性に好発します。安静時に突然発症するのが一般的ですが、ストレッチやダイビング、高所飛行中に発症することもあります。
※臓側胸膜:肺や心臓、気管、気管支などを覆う胸膜のこと
ほとんどの場合で完全回復しますが、空気の漏れの原因となった箇所に再度穴があくことも多く、30~50%の人に再発がみられる、再発率の高い疾患です。
慢性気管支炎や気管支喘息、肺気腫、肺がんなどの、肺に基礎疾患をもつ人が発症する気胸を続発性自然気胸といいます。この場合、肺の予備能力がもともと低下した状態での発症であり、特発性自然気胸より重篤化しやすい傾向にあります。
続発性自然気胸の1つに、月経随伴性気胸があります。月経の前後で女性に発症する気胸で、子宮内膜症が肺や横隔膜に広がり、月経の際に肺や横隔膜に穴が開くことにより胸腔内に空気が漏れることが原因です。
外傷性気胸は、交通事故や転落、切傷などにより壁側胸膜が損傷し、空気が胸腔内に漏れ出した状態のことをいいます。肋骨の骨折による壁側胸膜※の損傷や、胸部をナイフで刺されるなどで胸壁に穴が開き、外と胸腔が繋がってしまうこと(=開放性気胸)が原因となります。
※壁側胸膜:肋骨や肋骨周囲の筋肉を覆っている胸膜のこと
外傷性気胸の場合、出血を伴う血気胸の状態となることもあります。
肺生検や中心静脈カテーテル挿入時の鎖骨下静脈穿刺、胸骨圧迫などの医療行為の合併症として気胸が生じることがあり、これを医原性気胸とよびます。
気胸の主な症状は胸痛、呼吸困難、咳嗽です。症状の程度は、肺のしぼみ具合などによって異なります。
続発性自然気胸でもともとの肺疾患が重度である場合や外傷性気胸では、著しい呼吸障害を認め、喘鳴やチアノーゼが出現することがあり、ショック状態に陥るケースもあります。
気胸が疑われる際は、まず胸部X線検査を行い、肺のしぼみ具合により重症度分類がなされます。

| 軽度気胸 | 肺尖部が鎖骨より上にある状態 |
| 中等度気胸 | 肺尖部が鎖骨より下にある状態 |
| 高度気胸 | 肺が完全にしぼんでいる、あるいはそれに近い状態 |
| 緊張性気胸 | 高度気胸で、胸腔内に漏れた空気が肺や心血管を圧迫している状態。 死に至る可能性のある重篤な病態 |
また、気胸以外の肺疾患の確認やブラ・ブレブの数・大きさの評価のために、胸部CT検査を実施することもあります。ですが、CTではブラとブレブの区別できず、まとめてブラとしています。
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気胸の治療は重症度により異なります。
軽度気胸の場合は自然軽快が期待できるため、特別な治療は要さず自宅で安静にして外来で経過をみるのが一般的です。
入院加療が必要となるのは中等度気胸からで、胸腔穿刺や胸腔ドレナージにより胸腔内の空気を体外へ排出し、肺の再膨張を促す治療を行います。生命に関わる病態である緊張性気胸の場合は、緊急で胸腔内の空気を体外へ排出させる必要があるため、胸腔穿刺や胸腔ドレナージの処置が急がれます。
胸腔穿刺や胸腔ドレナージの目的は、胸腔内に溜まった空気を排出させることで肺の拡張を促し、呼吸困難を改善させることです。
胸腔穿刺は第2肋間、鎖骨中線上を穿刺しそこから空気を脱気する処置で、主に緊張性気胸の際に行います。あくまでも一時的な処置であるため、穿刺後は引き続き胸腔ドレナージの適応を考慮します。
気胸における胸腔ドレナージでは、肺尖部(鎖骨線上の第2肋間)からカテーテルを挿入し、胸腔ドレナージ専用のドレーンバッグに接続することで、胸腔内の空気を持続的に排出させる方法です。
胸腔ドレナージでは胸腔内を陰圧に保つために、持続吸引装置とよばれる機器を利用します。排液ボトル・水封ボトル・吸引圧制御ボトルの3つのボトルで構成されており、それぞれの仕組みについて理解しておく必要があります。
| 排液ボトル(左) | 胸腔ドレーンに直接接続されており、胸腔内の空気や排液が直接排出される場所 |
| 水封ボトル(中央) | 中央の境界壁で2つの管に分かれ、境界部が蒸留水で水封されている。胸腔内から排出された空気は気泡となって肉眼で確認できる。外気は蒸留水によってブロックされ、一方弁機能が働く。 |
| 吸引圧制御ボトル(右) | 注入する滅菌蒸留水の量により、吸引圧を調節するためのボトル。吸引圧は-1cmH2Oごとに設定可能。 |
また、胸腔ドレナージ中は合併症が起こることがあります。起こり得る合併症とその症状は下記のとおりです。

| 再膨張性肺水腫 | 潰れていた肺がドレナージにより一気に膨らむことで、肺血流の亢進や肺血管透過性亢進により肺水腫が生じることがある。呼吸困難、SpO2の低下、咳嗽などがみられる。 |
| 逆行性感染 | ドレーン刺入部からの細菌侵入により生じる。 ドレーン刺入部に、発赤や腫脹、熱感、疼痛を認め、発熱を伴うこともある。 |
| 皮下気腫 | 肺やドレーン刺入部から皮下に空気が漏れることにより生じる。ドレーン刺入部の皮膚を触診した際にザラザラとした感覚(=握雪感)があれば皮下気腫の可能性があるため、マーキングを行い、拡大しないかを観察する。初期には症状がみられないが、進行すると皮下に溜まった空気が気管を圧迫し呼吸困難やSpO2の低下がみられる。 |
| 臓器・血管損傷 | ドレーン挿入時に肺や肝臓、脾臓などの臓器や血管を損傷することがある。 血性排液、血圧低下、SpO2の低下などが出現する。 |
胸腔ドレナージを行っても空気の漏れが改善しない場合や気胸が再発した場合、両側性の気胸の場合には胸腔鏡下手術が選択されることもあります。続発性自然気胸でもともとの肺の状態が著しく悪い場合には、手術ではなく、チェストチューブから薬剤を注入して肺とその周囲とを癒着させる胸膜癒着術を実施することがあります。
ここからは、気胸の患者さんへの看護計画の例と看護のポイントについて解説します。治療法や重症度に合わせて、適切な看護ケアを提供しましょう。
気胸の看護では、呼吸困難や胸痛などの症状を和らげ、患者さんが安楽に過ごせるように介入するのがポイントです。看護計画の例は下記のとおりです。
看護目標:気胸による呼吸困難や疼痛が改善され、安楽に過ごせる
| O-plan | ・バイタルサイン ・SpO2モニター値の推移 ・胸郭の動き ・呼吸音:上肺野での呼吸音減弱の有無に注意する ・咳嗽の有無と程度 ・胸痛の有無と程度 ・胸部レントゲン所見 ・血液ガスデータ ・食事摂取量 ・便性状、排便の頻度 |
| T-plan | ・呼吸困難時は医師の指示の下、酸素投与を行う ・安楽な体位となるよう工夫する ・清潔ケアは呼吸負荷が増大しないよう配慮し、呼吸苦が強い場合は無理をせず、中断する ・胸痛時には疼痛コントロールを行う ・便秘時は医師に相談し、必要に応じて排便コントロールを行う |
| E-Plan | ・呼吸困難時は看護師に知らせるよう伝える ・胸痛があれば我慢せず看護師に知らせてもらう ・胸痛に対して疼痛コントロールができることを伝える ・排便時の怒責により胸腔内圧が高まることがあるため、なるべく怒責をかけないようにしてもらう ・硬便や便秘が続く際には看護師に知らせてもらう |
気胸で入院する患者さんの多くは、胸腔ドレナージの適応となります。胸腔ドレナージの治療を安全に受けてもらえるよう、看護ケアにあたりましょう。
看護目標:胸腔ドレナージによる合併症が発生せず、効果的な治療が受けられる
| O-Plan | ・バイタルサイン ・呼吸性変動※の有無 ・エアリーク※の有無 ・ドレーン刺入部の感染兆候の有無(発赤、熱感、腫脹、疼痛) ・皮下気腫の有無 ・ドレーンの固定は適切になされているか ・ドレーンとドレナージボトルの接続にゆるみがないか ・吸引圧が医師の指示通りになっているか ・ドレーンチューブにねじれや屈曲、閉塞がないか ・ドレーン挿入に伴う疼痛の有無と程度 ・水封ボトルと吸引圧制御ボトルに滅菌蒸留水が入っているか ・鎮痛剤の使用状況 |
| T-Plan | ・ドレーンの固定を適切に行う。 ①粘着性弾性テープを、ドレーンが固定できる大きさの長方形型にカットしたものを3枚用意し、丸く角取りする ②1枚目は皮膚に直接貼り、2枚目はドレーンの上からΩ張りし、3枚目には左右それぞれに切れ込みを入れて②の上から貼り、ドレーンの固定を補強する。 ・排液バッグはドレーン刺入部よりも低い位置に保ち、点滴棒に固定する。 ・挿入したドレーンの太さや硬さによっては疼痛が出現することもあるため、必要に応じて疼痛コントロールを行う ・ドレーンの接続部が外れた場合は、ドレーンをクランプし、新しい排液バッグを準備する。ドレーン接続部を十分に消毒してから新しい排液バッグにつなぎ、クランプを解除する。その後、ドレーンの接続外れにより排液バッグを交換したことを医師に報告する。 ・ドレーン自己(事故)抜去時は、ドレーン刺入部をガーゼで保護し、刺入部から肺に空気が入らないようにする。すぐに医師へ報告し、ドレーン再留置の準備を行う。 |
| E-Plan | ・体動や移動はゆっくりと行ってもらい、ドレーンの接続部に圧力がかからないように注意してもらう ・万が一ドレーンが抜けてしまったら、ただしに看護師に知らせてもらう ・ドレーンチューブが屈曲、閉塞、ねじれないように注意してもらう ・疼痛があれば無理せず知らせてもらう |
※呼吸性変動:水封ボトルの水位が呼吸によって変動すること。水位は吸気時に上昇し、呼気時に下降する。
※エアリーク:空気漏れのこと。胸腔内から排出された空気は排液ボトルから水封ボトルへ移動し、水封ボトルの蒸留水内で気泡として確認できる。気胸における胸腔ドレナージでは常時気泡が出現するが、病状の改善に伴い気泡の出現が断続的となり、やがて消失する。
エアリークの消失や呼吸性変動の減少、胸部レントゲン所見などにより気胸の改善が確認できたら、医師により胸腔ドレーンを抜去します。胸腔ドレーン抜去時は患者さんに深呼吸を促し、大きく吸気した息を止めた状態で一気に引き抜きます。これは、肺に空気が入り込むのを防ぐためです。抜去前に患者さんに説明し、練習できると良いでしょう。
ドレーン抜去後は呼吸状態を注意深く観察し、医師の指示により胸部X線検査を行い、肺の再膨張を確認しましょう。

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Q. 看護師がのんびり働ける勤務先は?
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