抗菌薬投与時における看護のポイントとは?基礎知識から観察方法まで解説

抗菌薬_観察項目

抗菌薬は、臨床現場で多く扱う薬剤の1つです。細菌感染症に対して効果をもたらす反面、投与方法や種類を誤ると耐性菌を作り出してしまう可能性があります。また、投与後の観察を怠ると、アナフィラキシーショックなどの重大な症状を引き起こすこともあり注意が必要です。

この記事では、抗菌薬に関する基礎知識から観察方法、看護のポイントまで解説します。ぜひ日々の看護ケアの参考にしてください。

この記事を書いた人
島田綾乃
正看護師
大学病院で10年間、病棟看護師として勤務。 耳鼻咽喉科、腎臓外科、循環器小児科、脳神経外科、SCUでの臨床経験があり、得意分野は外科系。 現在は育児をしながら、看護師ライターとして医療分野の記事を専門に執筆。
※1※2 調査方法:インターネット調査/調査期間:2024年2月7日~2月13日/調査概要:「看護師転職サイト」を対象としたユーザー満足度調査/調査対象:男女、全国、看護師・准看護師資格保有者かつ対象看護師転職サイト利用経験者、20~29歳 107s(※1)、20~34歳 175s(※2)/調査実施:株式会社エクスクリエ/比較対象サービス:「看護師転職サイト」主要10サービス(専用サイトのあるサービスのみ・求人結果の表示ページは除く)

抗菌薬投与において看護師が押さえるべき基礎知識

臨床現場でよく用いられる抗菌薬には、たくさんの種類があります。抗菌薬の大きな特徴は、それぞれ特定の細菌種にしか効果を示さないという点です。抗菌薬の種類や特徴の違いを理解し、日々の看護ケアに繋げましょう。

この章では、抗菌薬投与において看護師が押さえるべき基礎知識を解説します。

抗菌薬の種類

抗菌薬は大きく分けて以下の6つに分類されます。

  • β-ラクタム系(細胞壁合成阻害)
    • ペニシリン系
    • セフェム系
    • モノバクタム系
    • カルバペネム系
  • グリコペプチド系(細胞壁合成阻害)
  • マクロライド系(蛋白質合成阻害)
  • テトラサイクリン系(蛋白質合成阻害)
  • アミノグリコシド系(蛋白質合成阻害)
  • ニューキノロン系(DNA複製阻害)

それぞれの分類によって、効果のある細菌や対象となる疾患が異なります。抗菌薬への正しい知識を持ったうえで、患者さんの病態にあわせて抗菌薬を投与することが大切です。

▼関連記事
抗菌薬の選択方法について知りたい

抗菌薬と抗生物質の違い

抗菌薬は、細菌や真菌から作られるものと、人工的に合成されたものに分けられます。抗生物質は細菌や真菌に由来するもののみを指し、抗菌薬の中の1つです。抗菌薬と抗生物質の作用機序は同じで、主にタンパク質合成や細胞膜合成の阻害、細胞膜の透過性亢進などがあります。

抗菌薬はほかの薬剤との相互作用を引き起こす可能性があるため、飲み合わせに注意が必要な場面もあります。抗菌薬と抗生物質は臨床現場では同義語として用いられますが、厳密には由来するものに違いがあることを覚えておくと良いでしょう。

薬剤耐性(AMR)への理解

特定の抗菌薬や抗生物質の効果が得られにくくなる、もしくは効果が出なくなる状態を薬剤耐性(AMR)といいます。薬剤耐性菌の出現やまん延により、これまで使用していた抗菌薬での治療が困難となり、感染症の重症化や死亡の危険性が高まるのが特徴です。

薬剤耐性のメカニズムの図解イラスト

なかでも、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)やバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、多剤耐性緑膿菌(MDRP)などの感染症が拡大し、臨床現場でも度々問題となっています。

薬剤耐性菌のまん延防止には、適切な感染対策・管理の徹底や適切な抗菌薬の使用が必要です。

\ 教育体制の整った職場をご紹介 /

抗菌薬投与前における看護師の観察項目

抗菌薬の特徴について理解を深めたところで、ここからは抗菌薬投与前における看護師の観察項目について解説します。

患者情報

抗菌薬は、細菌感染症に対して高い治療効果を発揮する一方で、アナフィラキシーショックをはじめとした重篤な副作用のリスクがある薬剤です。そのため、過去に抗菌薬を使用して副作用が出現した場合、同様もしくは類似した抗菌薬の投与は原則禁忌とされています。

抗菌薬の投与前に患者さんに情報収集している看護師

副作用を確実に予防する方法は存在しないため、投与の際にはあらかじめ患者さんの既往歴やアレルギーの有無などの情報を収集しておくことが大切です。

バイタルサイン

抗菌薬の投与前には、バイタルサインの観察も欠かさずに行いましょう。測定項目は以下のとおりです。

  • 血圧
  • 脈拍
  • 呼吸数
  • 体温

ほかにも、酸素飽和度(SpO2)や意識レベルなどもあわせて観察しましょう。

投与前のバイタルサインは、投与中に状態変化があった際に比較するための大切な情報です。投与前のバイタルサイン測定で状態変化を示す兆候を発見できれば、投与の可否を検討する指標となります。

抗菌薬投与による異常を早期発見するためには、必ず事前にバイタルサインを測定しましょう。

生体モニター

バイタルサイン測定のほかに、生体モニターの観察も大切です。まれに、特定の抗菌薬や抗ウイルス薬などが原因となり、薬剤性QT延長症候群が発症する可能性があります。

薬剤性QT延長症候群は、薬剤の影響により心電図上でQTを認め、心室頻拍(VT)や心室細動(VF)などの不整脈を生じる状態です。めまいや失神などの症状が見られ、突然死することもあるため、すみやかな処置が求められます。このほかにも、生体モニターは患者さんの状態をリアルタイムに観察するための重要な情報が表示されています。異常の早期発見のためには、生体モニターを経時的に観察するようにしましょう。

抗菌薬投与中の看護ケア

抗菌薬投与中は、患者さんの状態を観察することはもちろん、抗菌薬の特性を理解した看護ケアが必要です。

ここからは、抗菌薬投与中に必要な看護ケアについて解説します。

スタンダードプリコーション

抗菌薬投与中は免疫力が低下しやすくなるため、感染症を併発するリスクが高まります。また、抗菌薬は感染症に対する治療として投与しているため、看護師がスタンダードプリコーション(標準予防策)を徹底することが大切です。
以下の対象物を扱う場合には注意しましょう。

  • 血液
  • 体液
  • 分泌物
  • 嘔吐物
  • 排泄物
  • 創傷皮膚
  • 粘膜等

上記の対象物に触れる際には、次の行動(スタンダードプリコーション)を実践してください。

  • 流水下での手洗い
  • アルコール消毒
  • 手袋の着用
  • マスク・ゴーグルの使用
  • エプロン・ガウンの着用
  • ケアに使用した物品の洗浄・消毒

スタンダードプリコーションは、感染予防のほかにも薬剤耐性菌の発現やまん延防止にも効果的なため、正しい手技を身につけておきましょう。

患者への説明

抗菌薬の使用時だけに限りませんが、薬剤を投与する際には必ず患者さんに使用している薬剤や目的について説明しましょう。

抗菌薬内服の指導を行う看護師のイラスト

また、抗菌薬は点滴以外にも内服薬として処方されることがあります。決められた用法用量を守り、正しく内服するよう指導することが大切です。
とくに抗菌薬の場合、薬剤耐性菌の発現が恐れられており、取り扱いに注意が必要です。患者さんにも薬剤耐性菌に関する説明を行い、抗菌薬使用にともなう教育的ケアが重要となります。

抗菌薬投与時における看護師の注意点

抗菌薬を投与したあと、患者さんの異常を早期に発見して考えられる影響を最小限に抑えるには、抗菌薬に関してあらゆる知識を習得しておくことが大切です。

ここの章では、抗生剤投与時における看護師の注意点について解説します。

抗菌薬の初回投与時の注意点

アナフィラキシーショックを含むアレルギー反応は、抗菌薬を点滴投与してから5〜15分以内に起こることが多いとされています。そのため、初回投与時は必ず患者さんのそばから離れず、注意して状態を観察しましょう。

初回投与時に限らず、抗菌薬を投与してから何らかの異常を自覚することがあれば、すぐに報告するよう患者さんへ説明することも大切です。投与中に異常をきたした場合は、直ちに投与を中止し医師へ報告してください。

▼関連記事
抗菌薬投与中にアレルギー反応が出た場合の対応は?

抗菌薬の投与間隔を空ける理由

抗菌薬を1日に複数回投与する際、6時間もしくは8時間ほど間隔を空けて投与するよう指示が出されます。投与間隔を空ける理由は以下のとおりです。

  • 濃度依存性抗菌薬と時間依存性抗菌薬の違い
  • 薬剤耐性菌や副作用の出現予防のため

抗菌薬には、濃度依存性抗菌薬と時間依存性抗菌薬の2種類があります。濃度依存性抗菌薬は血中濃度が一度に上がるため、連続で投与すると副作用の発生リスクが高まるのです。一方で時間依存性抗菌薬は、血中濃度を一定に保つことで効果を発揮する薬剤です。一番低い血中濃度を示すトラフ値が一定の値を下回ると、十分な効果が期待できません。

このような理由から、抗菌薬を投与する際は医師の指示のもと、一定の間隔を保ち投与することが大切です。

高齢者が抗菌薬を使用する際の注意点

高齢者が抗菌薬を使用する場合、腎機能の低下がないか確認することが大切です。抗菌薬のうち、アミノグリコシド系やグリコペプチド系、ニューキノロン系などの抗菌薬は腎排泄型の薬剤とされています。これらの薬剤は、腎機能が低下している患者さんが使用すると、薬剤性腎障害につながるおそれがあるため注意が必要です。

薬剤性腎障害の徴候を早期に発見するためには、尿量の低下や浮腫などの急性腎障害の症状がないかを観察しましょう。

抗菌薬の副作用に対する看護や観察項目

抗菌薬による副作用に対して、不安を抱く看護師の方もいるかもしれません。あらかじめ観察項目と対応方法を理解しておくと安心です。

ここからは、抗菌薬投与により副作用が出現した場合の看護ケアと観察項目について解説します。

主な副作用とアナフィラキシーショックの症状

抗菌薬による副作用のなかで、比較的見られやすいものを以下にまとめました。

  • 消化器症状(胃部不快感や下痢など)
  • 皮膚の発疹や発赤
  • 真菌感染症(カンジダ症など)
  • 薬剤性肝機能障害
  • 薬剤性腎障害
  • アナフィラキシーショック

これらの症状は、初回投与時にのみ出現するわけではありません。副作用のなかには、投与してから数日経過して発症するものもあるため、継続的な観察が必要です。

抗菌薬投与中のアレルギー反応に対応する看護師

また、副作用のなかでも重大な症状を呈するアナフィラキシーショックは、多くの場合投与してから15分以内に発現するため注意して観察しましょう。悪心や動悸などの軽度なものから、呼吸困難感や気道閉塞などの重度なものまで、幅広いアレルギー徴候が出現します。

副作用出現時における看護のポイント

薬剤性アレルギーをはじめとした副作用が出現した場合は、早急に対応しなくてはなりません。副作用出現時における看護のポイントは、以下のとおりです。

【即時型アレルギー(アナフィラキシーショックなど)における救急時対応】

  • 抗菌薬を直ちに中止
  • 医師への報告、応援要請
  • 救急カート、AEDの用意
  • バイタル測定および全身状態の観察
  • 看護記録

【そのほかの副作用】

  • 抗菌薬を直ちに中止
  • バイタル測定および全身状態の観察
  • 医師へ症状報告
  • 患者へ説明
  • 看護記録

これらの対応は、医療施設や患者さんの病態および、医師の指示によって異なることがあります。特にアナフィラキシーショックが発生した場合には、ほかの看護師への応援要請や医師への報告を優先し、同時に全身状態を観察するスキルが求められます。上記のポイントを基本的な対応方法として理解しておくと、自信を持って患者さんに抗菌薬を投与できるでしょう。

▼関連記事
・抗菌薬を同時投与しない理由が知りたい
・抗菌薬はどのくらいの時間で投与すべきか知りたい
・抗菌剤が変更となった場合はすぐに投与したほうがいいのか?

\ 看護師転職サイト 顧客満足度調査No.1 /
20代 相談のしやすさ(※1)20~34歳 連絡の取りやすさ(※2)
※1※2 調査方法:インターネット調査/調査期間:2024 年2 月7 日~2 月13 日/調査概要:「看護師転職サイト」を対象としたユーザー満足度調査/調査対象:男女、全国、看護師・准看護師資格保有者 かつ 対象看護師転職サイト利用経験者、20~29 歳 107s(※1)、20~34 歳 175s(※2)/調査実施:株式会社エクスクリエ/比較対象サービス:「看護師転職サイト」主要10 サービス(専用サイトのあるサービスのみ・求人結果の表示ページは除く)
この記事を書いた人
島田綾乃
正看護師
大学病院で10年間、病棟看護師として勤務。 耳鼻咽喉科、腎臓外科、循環器小児科、脳神経外科、SCUでの臨床経験があり、得意分野は外科系。 現在は育児をしながら、看護師ライターとして医療分野の記事を専門に執筆。
お読みいただきありがとうございました!
いいね・シェアで編集部が喜びます

コメント

コメントはありません

コメントする

0 / 500

※ コメントを投稿する際は利用規約をご確認ください

記事の制作について

「レバウェル看護 看護師さん向けお役立ち情報」では、
記事の制作・公開にあたってのポリシーを定めています。
詳細は下記よりご確認いただけます。

看護師さん向けお役立ち情報 コンテンツ制作ポリシー

看護師の転職で「レバウェル看護」が選ばれる理由

看護師から寄せられる“よくある質問”

  • Q. 現役看護師が一番稼げる科はどこ?

    一般的に、高度な医療を提供する診療科や収益の多い診療科・クリニックは、高収入を得られる傾向にあります。病院だと救急救命科やICU(集中治療室)など、クリニックでは美容クリニックや人工透析クリニックなどが挙げられます。「看護師が一番稼げる科はどこ?高年収のクリニック・病院や転職のポイント」では、看護師が稼げる科を、詳しく解説しています。規模別の平均給与や、高収入な職場へ転職する際のポイントも紹介しているので、求人探しの参考にしてください。

  • Q. 看護師がのんびり働ける勤務先は?

    病院であれば緊急対応や体力を消耗する業務が少ない外来や回復期・慢性期病棟。病院の外来やクリニックであれば重症患者の処置が少ない診療科は比較的落ち着いた環境といえるでしょう。自身のペースを大事に働きたい方は、現職の悩みを解決できるような環境・働き方を選ぶことがポイントです。「のんびり働きたい看護師向け!おすすめの職場や病院以外の仕事を紹介」では、のんびり働ける勤務先の条件や、おすすめの職場・診療科、のんびり働ける仕事のメリットやデメリットも解説しています。職場探しの参考にしてください。

  • Q. 看護師1年目で転職しても大丈夫?

    1年目であっても転職は可能です。新卒として入職後3年以内に転職する「第ニ新卒」を歓迎する求人も多数出ている状況です。心身に不調がある場合や、職場でハラスメント・法律違反が横行している場合は、無理せず環境を変えたほうが安心です。「看護師1年目で転職しても大丈夫。病院以外の職場や好印象の退職理由を紹介」では1年目の看護師が転職したくなる理由や、仕事が辛いときの対処法、 おすすめの職場などをまとめています。新人看護師が転職に成功するコツや退職の際の注意点も解説しているので、参考にしてみてください。

  • Q. お礼奉公中でも転職は可能?

    お礼奉公の途中でも、看護師が仕事を辞めることは可能ですが、途中で退職してトラブルに繋がるケースもあるので、辞める場合は注意が必要です。「お礼奉公中だけど辞めたい看護師へ!奨学金に関する疑問に答えます」では、「お礼奉公中の看護師は仕事を辞めても良いか」「途中で辞めると奨学金の支払いはどうなるのか」といった疑問や不安にお答えしています。また、奨学金の一括返済を求められたときや、退職を拒まれたときの対処法についてもご紹介しているので、お礼奉公がネックで前に進めずにいる方は、ぜひ参考にしてください。

レバウェル看護の新着求人

編集部Pick up

人気記事ランキング

タグから記事を探す

キャリア

働く場所

選考対策

資格

その他

読みもの

連載

LINE

レバウェル看護は相談からでもOK!

\ 登録はカンタン1分! /

無料まずは相談してみる