
術後に注意したい合併症の1つが「イレウス」。
開腹手術では特にリスクが高くなるため注意が必要です。
本記事では術後イレウスが生じる仕組みと、予防法などについて解説します。

術後にイレウスを起こしやすい術式は開腹手術です。開腹手術の後は、全身麻酔の影響などにより、消化管の動きが一時的に停止し、蠕動運動が回復し排ガスや排便がみられるまでに数日ほどかかることがありますが、これは生理的な現象です。
しかし、術後数日経っても排ガスや排便がみられず腹部膨満感がある場合には、イレウスを疑います。
イレウスは、その原因によって機械的イレウスと機能的イレウスの2つに分けられます。それぞれさらに以下のように分かれます。
このうち、術後に起こりやすいのは閉塞性イレウスと麻痺性イレウスです。ここで、イレウスの分類と特徴を簡単に解説します。

機械的イレウスは、腸管が閉塞や屈曲などにより物理的に通過障害を起こしている状態であり、血流障害を伴わない閉塞性イレウス(単純性イレウス)と、血流障害を伴う絞扼性イレウス(複雑性イレウス)の2つがあります。
閉塞性イレウスは、腸の一部分が詰まって閉塞し、通過障害を起こしている状態です。術後の癒着、炎症や腫瘍などによる腸管狭窄、腸管異物(胆石や誤飲した異物など)が原因となります。
閉塞部位より口側の腸管は、貯留した食物残渣やガス、消化液などにより拡張します。そして貯留した残渣などを肛門側へ送り出そうと腸蠕動が活発になることで、聴診で金属音が聴取されます。
絞扼性イレウスは、癒着による索状物や腸捻転、腸重積などが原因で腸管に血行障害が起こる、重篤な病態です。進行が早く、早期に治療できないと腸管が壊死してしまうこともあります。
すべてのイレウスのなかで最も緊急性が高く、外科的治療が必要となるケースが多いです。
機能的イレウスは、腸に器質的な変化はなく、腸管の動きが悪くなることで腸内容物が停滞する病態です。麻痺性イレウスと痙攣性イレウスの2つに分かれます。
麻痺性イレウスは、開腹手術後に発症することが多いイレウスです。麻酔薬の影響や術中の手術操作によって発生した腸管浮腫や炎症などが原因となり、腸管の運動が麻痺してしまう状態です。
痙攣性イレウスは、腸管が痙攣のように収縮して腸内容物が流れにくくなってしまう病態です。手術や外傷、神経障害などが原因となりますが、頻度としては多くありません。
術後にイレウスが起こる原因には、下記があげられます。
開腹手術を受けた患者さんのうち50%~90%の人が腸管癒着を起こすといわれており、閉塞性イレウスのうち、術後の癒着によるものには特に注意が必要です。腸管癒着は術後当日から起こります。
イレウスの主な症状は、腹部膨満感、腹痛、嘔気、嘔吐、排便や排ガスの停止などですが、術後に起こりやすい閉塞性イレウスと麻痺性イレウスとではそれぞれ若干特徴が異なります。
| 症状・所見 | 閉塞性イレウス | 麻痺性イレウス |
| 腹痛 | 強く、発作性 | 無いか、持続性に認める |
| 腸蠕動音 | 金属音を聴取する | 腸蠕動音減弱もしくは消失 |
| レントゲン所見 | 閉塞部位より上部の腸管拡張像を認める(小腸ガス) | 小腸ガス像と大腸ガス像の両方を認める |
聴診で金属音が聴取されるのは、閉塞性イレウスの特徴です。
風船のようにパンパンに膨らんだ腸管の中を消化液などが移動することにより、「キンキン」「カンカン」などといった金属を叩いているような音が聴取できます。「トライアングルやタンバリンを鳴らしているような音」と表現されることもあるようです。
また閉塞性イレウスでは、腸管が閉塞しているにも関わらず腸蠕動が促進されるため、腹痛は強く、発作的に出現します。
そして、閉塞性イレウスでも、麻痺性イレウスであっても、腸内容物の停滞により嘔吐が続く場合や腸管浮腫により腸の吸収能力が低下した場合に、脱水を生じることがあります。その際は、心拍数の増加や血圧低下、尿量減少などの脱水症状が出現します。
ここでは、術後イレウスの検査と診断、治療について解説します。
術後イレウスの診断は、レントゲンやCTの結果、触診や聴診結果により診断されます。
イレウスを起こしている患者さんの腹部レントゲンでは、小腸に二ボー像(ガス像)という特徴的な所見を認めます。CTでは腸管の拡張や腹水の有無、閉塞部位などが確認でき、より詳しい診断が可能です。
また、過去に開腹手術歴がある人やイレウスになったことのある人はイレウスを発症しやすいことがあるため、病歴の聴取も重要です。

術後イレウスの場合、通常は保存的療法で経過をみます。基本的に絶飲食とし、輸液による水分補給と感染予防のための抗菌薬投与を行います。
絶飲食としても症状が悪化する場合には、イレウス管や経鼻胃管を挿入し、腸管の内容物の排出や腸管の減圧を図ります。
症状が軽度の場合には、大建中湯やパントールなど腸蠕動を亢進させる薬剤を投与しながら離床を促して様子を観察することもあります。
また癒着による閉塞性イレウスを繰り返す場合には外科的治療が選択され、癒着の剥離や腸管の切除を行うことがあります。
術後イレウスは、術後に腸管を積極的に動かすことで予防が可能です。ここでは、術前と術後の看護のポイントについて解説します。
術後イレウス予防のためには、術後の早期離床が大変重要です。しかし、患者さんとしては術後にいきなり離床を進められても、困ってしまう人が多いのではないでしょうか。
患者さんに早期離床をしてもらうためには、術前からの関わりが大切です。
術後の身体の回復過程や早期離床の重要性を指導し、術後の流れについてイメージを持てるように支援しましょう。
術後は、早期離床と経口摂取の促進、疼痛やストレスの緩和によりイレウスを予防することが大切です。
術後イレウスの予防で最も重要なのが、早期離床により腸管を動かすことです。
医師からの安静度指示を確認しながら、臥位→ファウラー位→ベッド上座位→端座位→立位→歩行と、徐々に離床を進めます。
まずは座位の保持やベッド横のポータブル便器への移動、ベッドと病室の出入口の往復程度の短距離の移動からで構いません。
その際、患者さんにふらつきや顔色不良などがみられないかを確認し、無理はしないことが大切です。
もし術直後や疼痛が強いなどの理由で離床が難しい場合には、積極的に体位変換を実施しましょう。少しでも身体を動かすことで腸蠕動を促すことがポイントです。
また身体を動かすことは精神的な緊張の緩和にも繋がり、副交感神経が優位になります。消化管の運動は副交感神経により支配されているため、精神的にリラックスすることによっても消化管の動きを促進することができます。
術後イレウスの予防と早期発見には、排ガスや排便の状況、バイタルサイン値や腸蠕動音の聴診、自覚症状の確認も重要です。
バイタルサイン測定時には必ず腸蠕動音を聴取しましょう。通常、腸蠕動音は「グルグル」「ゴロゴロ」などといった音が、5秒~15秒のうちに1回は聴取されるはずです。
麻痺性イレウスでは、5分以上腸蠕動音が聴取できないこともあります。腹部膨満や嘔気などの自覚症状が出現していない場合でも、腸蠕動音の減弱を認めたら積極的に離床を促しましょう。

医師から絶飲食の指示がない限りは、経口摂取の促進も術後イレウスの予防に繋がります。
一般的に、開腹手術後の一時的な消化管の機能低下は小腸で約4時間~8時間、胃で1日、大腸は数日で回復することがわかっています。飲水や食事摂取開始の指示が出たら、少しずつでも口にしてもらうよう支援しましょう。飲食の際にはよく噛んでゆっくりと食べてもらうことが重要です。無理してたくさん食べることや早食いはかえって消化管に負担をかけてしまうため、避けましょう。

疼痛やストレスの存在は交感神経を優位にするため、副交感神経に支配されている消化管の動きは減弱してしまいます。また、疼痛があれば離床に積極的になれないのも当然のことです。
早期離床を促すためにも、疼痛コントロールは積極的に行いましょう。また、ストレスや精神的疲労を悪化させないためにも、睡眠時間を十分に確保できるよう支援することも大切です。
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本記事では、術後イレウスの予防について解説しました。
術後イレウスの予防で最も大切なのは、早期離床です。
患者さんの負担を軽減した上で早期離床を積極的に促すためにも、疼痛コントロールは十分に行いましょう。
また、イレウスの徴候を見逃さないことも重要です。バイタルサインや腸蠕動音の確認をこまめに行いましょう。
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